メールを添削してほしい時のAIプロンプト|コピペで敬語・誤字を直す依頼文と添削例
「以下のメールを添削してください」とAIに頼むと、たいていは直した文章が返ってきます。ただ、一言だけで頼むと文体ごと別人のように書き換えられたり、原文にない約束や期日が足されたりします。このページには、メール添削・校正をAIにお願いするときに、そのままコピーして貼れる依頼文(プロンプト)を並べました。下の枠をコピーしてChatGPTなどのチャット欄に貼り、末尾に自分のメール本文を貼って送信するだけで使えます。
想定しているのは、税理士事務所・会計事務所から顧問先へ出す資料依頼・お詫び・督促・断りのメールと、経理・総務の担当者が取引先へ出すメールです。敬語・誤字脱字・言い回しのどこをAIに見てもらい、どこを人が最後に見るかも表にしています。
貼る前の注意:顧問先の社名・担当者名・金額は【顧問先名】【金額】のように伏字にしてから貼ってください。士業には法令上の守秘義務があり、「AIに入れた時点」が問題になります(詳しくは後半の「士業がAI添削で必ず守る3つの線引き」で扱います)。
この記事で分かること
- メール1通を貼るだけで敬語・誤字脱字・言い回しを整える万能の添削プロンプト(コピー用)
- 顧問先への督促メール1通の添削前→添削後の全文例と、AIが直した点・人が直した点
- 「一行で頼みたい」「書き換えずに校正だけしてほしい」ときの短い依頼文と、追加で頼むときの一言
- 社外・お詫び・断り・催促・資料依頼・社内報告の用途別プロンプト6種
- 文化庁「敬語の指針」で二重敬語・「伺う」「のほど」「させていただく」の可否を自分で確かめる方法(該当ページ付き)
- 顧問先の氏名・金額を貼らずに、添削の精度を落とさない伏字の手順
記載内容は2026年10月時点のものです。プロンプトは文章だけで書かれているため、特定のサービスに依存せず、手元のチャット型AIにそのまま貼って使えます。
まずこれをコピー:メール添削の万能プロンプト
相手も用件も選ばない基本形です。役割・観点・出力形式の3点を指定してあるため、「直して」と一言頼むより指摘が具体的になり、毎回同じ品質で返ってきます。
あなたは日本語ビジネスメールの校正担当者です。
以下の【メール】を添削してください。
観点:
- 敬語の誤り(尊敬語・謙譲語・丁寧語の取り違え、二重敬語)
- 誤字脱字・表記ゆれ
- トーン(相手:【取引先/顧問先/社内】 目的:【依頼/報告/お詫び】)
- 分かりやすさ(一文は50字以内、結論を先頭に)
出力:
1. 修正後の全文(そのまま送れる形で)
2. 主な修正点と理由を箇条書きで3〜5点
制約:
- 金額・日付・氏名・社名などの事実は変更しない。誤りの疑いがある箇所は指摘だけする
- 書かれていない情報を補わない
- 元の文にない謝罪・約束・期日を追加しない
【メール】
(ここに自分のメール本文を貼り付け)使い方は3ステップ
- 置き換える:【取引先/顧問先/社内】と【依頼/報告/お詫び】を実際の状況に書き換える
- 貼る:【メール】の下に自分の文章を貼り付けて送信する
- 戻す:出てきた全文をコピーし、伏字にした固有名詞・金額を自分で戻してから送信する
3つ目の工程が実務では一番大事です。詳しくは後述の「顧問先の情報をそのまま貼らない」で扱います。
出力イメージ(ビフォーアフター)
依頼メールの一節を上のプロンプトにかけると、二重敬語と冗長さが次のように整理されます。
【Before】お忙しいところ大変恐縮ではございますが、ご資料の方をお送りいただけますようお願い申し上げたく存じますので、何卒よろしくお願いいたします。
【After】お忙しいところ恐れ入りますが、資料をお送りいただけますでしょうか。何卒よろしくお願いいたします。
修正点 | 内容 |
|---|---|
冗長な敬語の整理 | 「お願い申し上げたく存じます」の重ね言葉を「お送りいただけますでしょうか」に |
「〜の方」の削除 | 「ご資料の方を」→「資料を」とぼかし表現を除去 |
一文の分割 | 長い一文を依頼と結びの二文に分け、読みやすく |
顧問先メール1通の添削前→添削後(全文の作例)
一文だけでなく、メール1通を丸ごと万能プロンプトにかけた例です。事務所から顧問先へ、月次資料が届いていないことを伝える督促メールを想定しています(社名・氏名は伏字にした状態です)。
添削前
件名:資料の件
【顧問先名】 経理ご担当者様
いつもお世話になっております。【事務所名】の【担当者名】です。
先日お願いしていた10月分の資料の方ですが、まだこちらに届いておりません。
月次の締めがありますので早急に送って下さい。
通帳のコピーと請求書と領収書になります。
11月10日(月)までにお願いします。
ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さいませ。
宜しくお願い致します。添削後(作例:AIの出力を人が確認した想定)
件名:【ご依頼】10月分の月次資料のご送付について(11月10日まで)
【顧問先名】
経理ご担当 【担当者名】様
いつもお世話になっております。【事務所名】の【担当者名】です。
先日お願いしました10月分の月次資料について、ご連絡いたしました。
本日時点で、こちらではまだ受領を確認できておりません。
行き違いでお送りいただいている場合は、ご容赦ください。
■お送りいただきたい資料
・通帳のコピー(10月分)
・請求書
・領収書
■期限
11月10日(火)までにお送りいただけますでしょうか。
月次の締め作業に使用するため、期限を設けております。
ご都合が難しい場合や、ご不明な点がございましたら、このメールにご返信ください。
何卒よろしくお願いいたします。直した箇所 | 誰が直したか | 理由 |
|---|---|---|
件名「資料の件」→用件と期限が分かる件名 | AI | 受信一覧で開く前に用件が伝わるように |
「まだ届いておりません。早急に送って下さい」→受領を確認できていない旨+行き違いへの配慮 | AI | 詰問調に読める表現を、確認を促す表現へ |
「資料の方」「〜になります」の削除 | AI | ぼかし表現・バイト敬語的な言い回しの整理 |
依頼物を箇条書きにし、期限を独立させた | AI | 何を・いつまでに、が一目で分かるように |
「下さい/宜しく/致します」の表記 | AI | 一通の中で表記をそろえた(事務所の表記ルールがあればそれに合わせる) |
「11月10日(月)」→「(火)」 | 人 | AIは「2026年11月10日は火曜日では」と指摘だけした。カレンダーで確かめてから人が直した |
最後の行がポイントです。万能プロンプトには「事実は変更しない。誤りの疑いは指摘だけ」と入れてあるので、AIは日付を勝手に書き換えず指摘にとどめます。曜日の判定はAIも間違えることがあるため、日付・曜日・金額は必ず人がカレンダーや原資料で確かめてから直す、という分担にしておくと事故が起きません。
AIに見てもらう観点と、送る前に人が見る観点
メール添削で確認する観点は、大きく敬語・誤字脱字・言い回し・事実の4つです。AIが得意なところと、AIには判断材料がないところを分けておくと、確認の手間が減ります。
観点 | AIに任せられること | 送る前に人が見ること |
|---|---|---|
敬語 | 尊敬語・謙譲語の取り違え、二重敬語、「させていただく」の重なり | 所長・同僚など身内を立てていないか。AIの指摘が「敬語の指針」と食い違っていないか(後述) |
誤字脱字・変換ミス | 同音異義語(以上/異常、保証/補償、精算/清算)、送り仮名、表記ゆれ | 顧問先名・担当者名の漢字(正しい表記はAIには分からない) |
言い回し | 冗長な表現、詰問調、長すぎる一文、結論の位置 | 相手との関係に合う温度か。普段の事務所の文面から浮いていないか |
事実・数字 | 日付と曜日の食い違い、文中の数字が前後で合っていないことの指摘 | 金額・期限・書類名を原文や資料と突き合わせる(AIに直させない) |
宛名・添付 | 「添付のとおり」など添付に触れている箇所の洗い出し | 実際にファイルを添付したか。宛先・CCは合っているか |
一行で頼む・校正だけ頼むときの依頼文
万能プロンプトを貼るほどでもない、という場面のための短い型です。「以下のメールを添削して」の一言に、条件を一つ二つ足すだけで、返ってくる文章の質が変わります。
一行版:とりあえず添削してほしい
以下のメールを、【顧問先/取引先/社内】に送るビジネスメールとして、敬語・誤字脱字・言い回しを添削してください。金額・日付・名前は変えないでください。
(ここにメール本文を貼り付け)うまくいかない例→直し方:「添削して」だけで送ると、全文が丁寧すぎる別人の文体に書き換わることがあります。その場合は「直すのは誤りのある箇所だけにして、それ以外は元の文のままにしてください」を足してください。
校正だけ版:文章は書き換えず、誤りだけ指摘してほしい
「メールの校正をお願いします」と頼みたいとき、多くの人が求めているのは書き直しではなく誤りの指摘です。本文に手を入れさせない指示を最初に置きます。
以下のメールを校正してください。文章の書き換えはしないでください。
- 誤字脱字・変換ミス・送り仮名の誤り
- 表記ゆれ(例: 下さい/ください、致します/いたします)
- 敬語の明らかな誤り
- 日付と曜日の食い違い
指摘は「該当箇所 → 修正案 → 理由」の一覧で示してください。
問題がなければ「指摘なし」とだけ答えてください。
【メール】
(貼り付け)うまくいかない例→直し方:問題のない文にまで「より良い表現」を提案してくることがあります。「誤りではない好みの言い換えは挙げないでください」と足すと、指摘が誤りだけに絞られます。
送信直前版:宛名・件名・期限・添付だけ確認したい
以下のメールを送信前に点検してください。本文は書き換えないでください。
- 宛名(社名・部署・氏名・敬称)の書き方に不自然な点はないか
- 件名だけで用件が分かるか(分からなければ件名案を2つ)
- 相手にしてほしいことと期限が本文に書かれているか
- 「添付」「別紙」に触れている箇所の一覧
【メール】
(貼り付け)最後の項目は、添付の付け忘れを防ぐためのものです。AIはファイルが本当に添付されているかまでは確認できないので、一覧に出た箇所を見ながら自分で添付を確かめてください。
返ってきた添削をもう一段直す一言
一度で思いどおりにならなくても、最初から頼み直す必要はありません。同じ会話の続きで、次の一言を送れば調整できます。
- 「もう少し柔らかくしてください。日頃からやり取りのある顧問先です」
- 「もう一段丁寧にしてください。初めて連絡する相手です」
- 「内容は変えずに、全体を3割ほど短くしてください」
- 「件名の案を3つください」
- 「元の文から変えた箇所を【】で囲んで示してください」
最後の一言は特に便利です。変更箇所が見えるので、数字や固有名詞まで変わっていないかを短時間で確認できます。
用途別コピペプロンプト6選(士業事務所→顧問先)
実務では「何のメールか」でAIに求めたい直し方が変わります。ここからは事務所から顧問先へ出す場面ごとに、そのままコピーできる形で並べます。どれも末尾に自分の文章を貼るだけで動きます。
1. 社外向けの通常メールを整える
案内・連絡など、内容は決まっていて表現だけ確認したいときの型です。関係性を壊さない範囲に修正を限定させます。
以下は、会計事務所から顧問先の担当者へ送るメールです。
関係性を保ったまま、送信できる状態に整えてください。
- 敬語の誤りと二重敬語を直す
- 一文を短くし、依頼事項が一目で分かるようにする
- 前置きが3行を超える場合は2行にまとめる
- 用件・期限・相手にしてほしいことを、この順で明確にする
修正後の全文と、直した点を3点だけ示してください。
金額・日付・固有名詞は変更しないでください。
【メール】
(貼り付け)2. お詫びメールの温度を合わせる
お詫びは、謝りすぎても事実を超えた責任を認めても問題になります。謝罪の範囲を広げないという制約を必ず入れます。
以下のお詫びメールを添削してください。相手は顧問先です。
- 冒頭で何について詫びているかを明確にする
- 原因・対応・再発防止の順に並べ替える
- 言い訳に読める表現があれば指摘する
- 過度にへりくだった表現(重ねた謝罪語)は1回に整理する
制約:
- 元の文に書かれていない責任・補償・期日を絶対に追加しない
- 謝罪の対象範囲を広げない
修正後の全文と、追加すべき情報が不足していれば質問の形で挙げてください。
【メール】
(貼り付け)3. 断りメールの角を取る
受任できない依頼や追加業務の辞退など、断りは表現ひとつで関係が変わります。代案の有無をAIに勝手に決めさせないのがコツです。
以下の断りメールを、角が立たない表現に整えてください。相手は顧問先です。
- 結論(お受けできない旨)は曖昧にせず、丁寧に明示する
- 理由は簡潔に1〜2文へ整理する
- 相手の依頼そのものへの敬意を最初に置く
- 冷たく読める言い回しがあれば代替案を提示する
制約:
- 元の文にない代替案・紹介先・条件付き受諾を追加しない
修正後の全文と、印象がきつく残る箇所を指摘してください。
【メール】
(貼り付け)断り文そのものをゼロから作りたい場合は、断りメールをAIで作成する角の立たない言い回しを扱った記事のほうが早く目的に届きます。
4. 催促メールを「責めない」文面にする
資料未着や入金遅延の催促は、事務所側が最も文面に悩む場面です。事実と依頼だけを残し、感情語を落とさせます。
以下の催促メールを、相手を責めない表現に整えてください。相手は顧問先です。
- 事実(依頼日・未着の項目)と依頼(いつまでに何を)だけを残す
- 「まだ届いていません」等の詰問調を、確認を促す表現に変える
- 相手が既に送付済みの可能性への配慮を1文入れる
- 期限を明示し、遅れる場合の連絡方法を添える
制約:
- 日付・金額・書類名は変更しない
- 元の文にないペナルティや強い警告を追加しない
修正後の全文と、変更した表現の意図を3点示してください。
【メール】
(貼り付け)5. 資料依頼メールを分かりやすくする
依頼は「何を・いつまでに・どう送るか」が揃っていないと往復が増えます。抜けをAIに検出させる型です。
以下の資料依頼メールを添削してください。相手は顧問先の経理担当者です。
- 依頼物を箇条書きに整理する
- 期限・提出方法・不明時の連絡先が揃っているか点検し、欠けていれば「不足」として指摘する
- 専門用語には短い補足を添える(例:「試算表(月次の集計表)」)
- 依頼の理由を1文で添える
制約:
- 依頼していない資料を勝手に追加しない
修正後の全文と、不足している項目の一覧を示してください。
【メール】
(貼り付け)依頼する資料の中身そのものに迷う場合は、確定申告・決算・月次の資料チェックリスト付きの顧問先への資料依頼メール例文で文面と依頼物を決めてから、このプロンプトで仕上げると早く済みます。
6. 社内報告メールを短くする
所内共有は読み手の時間が資源です。結論から始まる形へ組み替えさせます。
以下の社内報告メールを、30秒で読める長さに整えてください。
- 冒頭1行に結論(何が起き、何を判断してほしいか)を置く
- 経緯は箇条書きで3点以内に圧縮する
- 依頼事項と期限を最後に明示する
- 敬語は社内向けの適度な丁寧さ(過剰な謙譲語は削る)
制約:
- 数値・日付・顧問先名は変更しない
修正後の全文のみを出力してください。
【メール】
(貼り付け)観点をひとつに絞りたいとき
「全文を書き換えられたくない、敬語だけ見てほしい」という場面では、観点を限定した短い型が便利です。
以下の文章の敬語のみを点検してください。
- 尊敬語・謙譲語・丁寧語の取り違え
- 二重敬語(例:「お伺いさせていただく」)
- 過剰なへりくだり
各指摘を「該当箇所 / 分類 / 修正案」の表で示し、
最後に敬語だけを整えた全文を提示してください。
敬語以外の表現は一切変更しないでください。
【文章】
(貼り付け)以下の文章を、意味を変えずに分かりやすく整えてください。
- 一文は40字程度を目安に分割
- 結論を先に、理由・補足を後に
- 主語と述語の対応を明確に
- 敬語のレベルは元の文章と同じに保つ
修正後の全文と、読みやすくするために行った工夫を3点示してください。
【文章】
(貼り付け)顧問先とのやり取りがチャット中心なら、顧問先へのチャットワーク返信例文とAIプロンプト集のほうが文体の前提が近く、そのまま流用できます。メール文面をゼロから起こす場面は顧問先メールをAIで時短作成する税理士事務所のテンプレが対応しています。
うまくいかない例と、その直し方
添削がうまくいかないときは、たいていプロンプトに一文足りていないだけです。現場で多い5つの症状と、追記すべき指示を対応表にしました。
症状 | プロンプトに足す一文 |
|---|---|
硬すぎる・お役所文書になる | 「日頃からやり取りのある相手です。堅苦しさを一段落とし、漢語調の言い回しは平易な語に置き換えてください」 |
丁寧すぎる・二重敬語が増える | 「敬語は一動作につき一種類までとし、二重敬語を作らないでください。『させていただく』は文中1回まで」 |
書いていない事実を足してくる | 「元の文にない情報を補わないでください。補足が必要な箇所は本文に書かず、末尾に質問として挙げてください」 |
元より長くなる | 「修正後の文字数を元の文以下に収めてください」 |
毎回トーンがぶれる | 「以下の過去メールの文体に合わせてください」と、自分の送信済みメールを1通見本として貼る |
とくに注意:勝手に事実を足すパターン
生成AIは、もっともらしいが誤った内容を出力すること(ハルシネーション)があります。添削の文脈では「対応いたします」「◯日までにご連絡します」といった、原文にない約束を自然な流れで補ってしまうのが典型です。金額や日付が別の値に書き換わることもあります。だからプロンプト側で「事実は変更しない・情報を補わない」と縛り、出力後は原文と数字・日付・固有名詞を突き合わせてから送る工程を外さないでください。
AIの敬語指摘が正しいとは限らない
AIは敬語を概ね適切に扱いますが、許容範囲の表現を誤りと指摘したり、逆に「〜になります」「〜の方」といったバイト敬語的表現を追認したりすることがあります。判断に迷ったら、文化庁の「敬語の指針」(平成19年2月2日 文化審議会答申)という一次資料に当たるのが確実です。同答申は敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に整理しています。実務でつまずきやすいのは謙譲語IとIIの区別で、前者は立てる相手が動作の向かう先にいるとき(顧問先に「伺う」)、後者は聞き手に丁重に述べるとき(「明日は出張に参ります」)に使います。この区別を知っていれば、AIの提案を採るかどうかを自分で決められます。
文化庁「敬語の指針」で、AIの敬語指摘を自分で検証する
敬語の添削でAIと判断が割れたとき、最後に効くのは一次資料です。ここでは実務で揉めやすい論点について、文化審議会答申「敬語の指針」の記述と該当ページを示します。ページ番号まで分かれば、所内の指導や顧問先への説明でそのまま根拠として出せます。以下のページ数は、同答申PDFの本文に印刷されているページ番号です。
「二重敬語」はどこからが誤りか(p.30)
同指針は二重敬語を「一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったもの」と定義し、例として「お読みになられる」(「お読みになる」に尊敬語の「……れる」を重ねたもの)を挙げています。そのうえで「一般に適切ではないとされている」としつつ、習慣として定着しているものは別扱いだと明記しています。指針が定着例として挙げているのは次のとおりです。
- 尊敬語:お召し上がりになる/お見えになる
- 謙譲語Ⅰ:お伺いする/お伺いいたす/お伺い申し上げる
つまり「お伺いする」は、形の上では二重敬語でも指針上は容認されています。AIが「お伺いします」を一律に誤りとして直してきた場合、その指摘は採らなくて構いません。
「敬語連結」は二重敬語ではない(p.30〜31)
二つ以上の語をそれぞれ敬語にして接続助詞「て」でつないだ形を、指針は二重敬語と区別して「敬語連結」と呼びます。「お読みになっていらっしゃる」「お読みになっていただく」などがこれに当たり、「個々の敬語の使い方が適切であり,かつ敬語同士の結び付きに意味的な不合理がない限りは,基本的に許容される」とされています。多少くどく感じても、誤りではありません。
一方で指針は、不適切な敬語連結として「伺ってくださる」「伺っていただく」「伺ってください」を挙げています。「伺う」が向かう先を立てる語であるのに、「くださる」「いただく」が自分の側を立ててしまい、立てる相手がねじれるためです。窓口案内でよくある「隣の窓口で伺ってください」は、この理由で不適切とされています。AIはこの種のねじれを見落としやすく、人が確認する価値が残る領域です。
「伺う」と「参る」はどう使い分けるか(p.13・p.22)
指針は敬語を5種類に整理し、謙譲語Ⅰを「伺う・申し上げる」型、謙譲語Ⅱ(丁重語)を「参る・申す」型としています。謙譲語Ⅰは行為が向かう先の人物を立てる敬語、謙譲語Ⅱは聞き手に対して丁重に述べる敬語で、働きが違います。
この違いが実務で効くのは、「自分側は立てない」という原則(p.22)と組み合わせたときです。指針は、他人に向かって「明日父のところに伺います」と述べるのは不適切だとしています。「伺う」が、向かう先である自分側の父を立ててしまうからです。この場合は「明日父のところに参ります」が適切な述べ方になります。顧問先へのメールで所内の人間の動きを書くときも同じ構造で、「所長のところへ伺います」ではなく「参ります」が筋です。
「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」は誤りか(p.62)
「〜のほど」を回りくどいとして削るAIがありますが、これは誤りの指摘ではなく文体の好みの問題です。分かりやすい根拠として、「敬語の指針」を答申した文化審議会の資料自身が、この言い回しを使っています。同答申に収められた文部科学大臣諮問理由説明(平成17年3月30日)には、「このことの重要性にかんがみて御検討のほどよろしくお願いいたします」という一文があります。公的な文書で現に使われている定型表現であり、社外メールで避けなければならない性質のものではありません。
短くしたければ「ご確認をお願いいたします」で足ります。どちらを選ぶかは事務所の文体の問題であって、AIに決めさせる必要はありません。
「させていただく」を使ってよい条件(p.40〜41)
指針は「(お・ご)……(さ)せていただく」を、ア)相手側または第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合に使われる形式だと説明しています。この2つの条件をどの程度満たすかで適否が決まる、という判断基準です。
指針は例として、許可を求める「コピーを取らせていただけますか」は基本的な用法に合致するとしつつ、ア)の条件がない場面での「発表させていただきます」はやや冗長で、「発表いたします」のほうが簡潔だとしています。メール1通に「させていただく」が3回も4回も出てくるときは、許可も恩恵もない箇所を「いたします」に戻すのが、指針に沿った整理です。
AIの指摘を採る/採らないの早見表
AIがよく出す指摘 | 「敬語の指針」での扱い | 実務の結論 |
|---|---|---|
「お伺いします」は二重敬語だから直すべき | 習慣として定着した二重敬語の例として明記(p.30) | 採らない。そのままでよい |
「お読みになっていただく」はくどいから直すべき | 敬語連結。不合理がなければ基本的に許容(p.30) | 好みで判断。誤りではない |
「隣の窓口で伺ってください」は問題なし | 不適切な敬語連結として例示(p.30〜31) | AIが見落としがち。人が直す |
身内の行動にも「伺います」でよい | 「自分側は立てない」原則に反する(p.22) | 「参ります」に直す |
「ご確認のほど」は冗長だから削るべき | 同答申に収められた公的文書自身が使用(p.62) | 誤りではない。文体の選択 |
「させていただきます」は一律に避けるべき | 許可・恩恵の2条件で適否が決まる(p.40〜41) | 条件のない箇所だけ「いたします」へ |
この6行を手元に置いておくだけで、AIの指摘に振り回される場面はかなり減ります。原典は文化庁「敬語の指針」(PDF・全82ページ)として全文が公開されており、上のページ番号でそのまま該当箇所を開けます。
士業がAI添削で必ず守る3つの線引き
ここだけは効率より優先してください。事務所の信用に直結します。
1. 顧問先の氏名・金額・固有名詞をそのまま貼らない
添削したいメールには、顧問先名・担当者名・報酬額・申告内容といった情報が普通に含まれます。貼り付ける前に置換してください。
- 顧問先名・担当者名 →【顧問先名】【担当者名】
- 金額・税額 →【金額】(桁感が必要なら「◯百万円」程度に丸める)
- 物件所在地・個人の住所・マイナンバー等 → 削除するか【住所】に置換
- 案件を特定できる固有の事情 → 一般的な表現に言い換える
置換した状態で添削させ、返ってきた全文に自分で実際の値を戻す。この往復を癖にすれば、表現の精度は落ちません。事務所全体のルールに落とし込む手順は、ChatGPTの情報漏洩対策として士業事務所が顧問先情報を守る手順にまとめています。
2. 守秘義務は「AIに入れた時点」で問われる
税理士・弁護士・司法書士・社労士はいずれも法令上の守秘義務を負い、事務所の情報管理は本人の責任範囲です。税理士であれば税理士法第38条(秘密を守る義務)がその根拠で、メール添削のつもりでも顧問先の情報を外部サービスに入力すれば同じ問題になります。どこまでなら入力してよいかの判断基準は、顧問先データをAIに貼ってよいかを税理士法38条と守秘義務から整理した記事で詳しく扱っています。個人情報保護委員会も生成AIサービスの利用に関する注意喚起(令和5年6月2日)で、個人情報を含むプロンプトの入力について利用目的の範囲や本人の同意といった論点を整理しています。「便利だから」で判断せず、事務所として入力可否の線を決めてから使い始めてください。
3. 無料版の学習設定を確認してから使う
サービスやプランによっては、入力した内容がモデルの改善に利用される設定が既定になっている場合があります。導入前に次を確認します。
- 入力データが学習に使われるか、オプトアウト設定があるか
- 業務利用向けのプラン(学習除外の規約)を選べているか
- 所内に生成AIの利用ルールが文書化されているか
- 会話履歴の保存期間と、削除の手順
業務に合うAI添削環境の選び方
添削に使える環境は増えました。GmailのGemini校正機能(Proofread)は2026年2月から各エディションへの展開が始まり、簡潔さや能動態への言い換えまで提案します。文書作成側ではWordのCopilotによる文章の書き換え(Rewrite)のように、その場で複数案に整える機能も普及しています。選択肢が増えた今は「自分の業務に合うか」で選ぶ段階です。
判断軸 | 確認するポイント |
|---|---|
日本語・業務文書の精度 | 敬語やビジネス文書の言い回しが自然か、的外れな提案が少ないか |
機密の扱い | 入力データの学習利用、オプトアウト、業務利用に適した規約か |
導入の手軽さ | 登録の容易さ、コスト、既存業務に組み込みやすいか |
士業AIの業務効率化AIでできること
士業AIは、税理士・会計士・司法書士・弁護士をはじめ士業を問わず使える業務効率化AIです。日本語の業務文書に特化しており、無料登録のみで数分から利用を始められます。本記事のメール添削のほか、メール下書き・文書要約・議事録整形といった共通業務に対応します。事務所スタッフや経理担当の日常業務でどう使うかは、事務所スタッフ・バックオフィス向けの活用ページで用途別にまとめています。目的別のツールの使い分けを俯瞰したい場合は業務効率化のためのAI活用ガイド、会議記録まで一続きにしたい場合は議事録をAIで無料作成する方法が続きになります。
よくある質問
AIに「以下のメールを添削して」とだけ伝えれば足りますか
直した文章は返ってきますが、それだけでは不十分です。相手(顧問先か社内か)・目的(依頼か謝罪か)・変えてほしくない箇所、この3点を書かないと、AIは文体を勝手に決め、事実の部分まで書き換えることがあります。冒頭の万能プロンプトは、この3点をあらかじめ埋め込んだ形にしてあります。
AIが添削したメールは、そのまま送って大丈夫ですか
金額・日付・氏名・書類名を原文と突き合わせてから送ってください。添削を頼んだだけでも、原文にない期日や約束を自然な流れで足してくることがあります。伏字にした固有名詞を戻す作業と同じタイミングで確認すれば、手戻りは一度で済みます。
無料でメールを添削できますか
本記事のプロンプトは文章だけで構成されているため、無料で使えるチャット型AIでそのまま動きます。士業AI も無料登録のみで利用を始められます。事務所として継続的に使うなら、入力内容が学習に使われない設定・規約かどうかを先に確認してください。
AIは日本語の敬語を正しく判定できますか
おおむね自然な日本語には整いますが、前章のとおり「敬語の指針」と食い違う指摘も出ます。表現の候補出しはAI、採るかどうかの判断は人、と役割を分けるのが安全です。
メール以外の文書にも使えますか
使えます。稟議書・報告書・日報などの社内文書は、稟議書・経費精算書・日報を含む社内文書テンプレートのまとめで書式を用意してから同じ添削プロンプトにかけると、早く仕上がります。税務まわりの文面や資料作成まで広げたい場合は、税理士のChatGPTプロンプト集が業務別に対応しています。
まとめ
メール添削は、上のプロンプトを1つコピーするだけで今日から始められます。うまくいかないときは、症状に対応する一文をプロンプトに足す。顧問先の氏名と金額は伏字にしてから貼る。返ってきた全文は、数字と固有名詞を原文と突き合わせてから送る。この3つを守れば、表現の質を上げながら事故を避けられます。
まずは手元のメール一通を、冒頭の万能プロンプトに貼り付けてみてください。日本語の業務文書に特化したAIで、その第一歩を試せます。

