取締役会議事録のひな形・記載例|会社法の作成要件とAI作成術【2026年】
取締役会議事録は、取締役会での決定を会社法上の正式な記録として残す文書です。会社法369条3項で作成と出席役員の署名・記名押印が義務づけられ、371条1項で取締役会の日から10年間の本店備置きが求められます。代表取締役の変更や本店移転などでは、この議事録が商業登記の添付書面になるため、様式のわずかな不備が補正の原因になります。
本記事では、会社法と会社法施行規則101条の要件を押さえた取締役会議事録のひな形・議案別の記載例を示したうえで、AIでドラフトを作り、司法書士・弁護士・法務担当が要件をチェックして仕上げる実務手順を解説します。株主総会議事録とは別機関・別要件である点にも触れ、混同を防ぎます。
この記事で分かること
- 取締役会議事録の作成・保存義務と、株主総会議事録との違い
- 会社法施行規則101条が定める記載事項(必須項目と場合により必要な項目)
- そのまま使える取締役会議事録のひな形(基本テンプレート)
- 代表取締役の選定・重要財産の処分など議案別の記載例
- AIでドラフトを作り、人が会社法要件をチェックする実務手順とプロンプト
取締役会議事録とは — 会社法上の位置づけと作成義務
取締役会は、業務執行の決定や代表取締役の選定・解職を行う会社の機関です(会社法362条)。その議事について作成が義務づけられるのが取締役会議事録で、単なる社内メモではなく、会社法が記載事項・署名・保存を定める法定文書です。
作成・署名・保存の3つの義務
取締役会議事録には、大きく3つの法的義務があります。
- 作成義務:取締役会の議事について、法務省令の定めるところにより議事録を作成する(会社法369条3項前段)。書面または電磁的記録で作成します(会社法施行規則101条2項)。
- 署名・記名押印義務:書面で作成した場合、出席した取締役および監査役は、これに署名し、または記名押印しなければならない(会社法369条3項後段)。電磁的記録の場合は電子署名によります(会社法369条4項)。
- 備置義務:株式会社は、取締役会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならない(会社法371条1項)。
また、取締役会の決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。反対したのであれば、その旨を議事録に記録しておくことが自衛になります。条文の実在と最新版はe-Gov法令検索の会社法で確認できます。
株主総会議事録との違い(混同に注意)
実務で最も多い誤りが、株主総会議事録と取締役会議事録の混同です。両者は別の機関の記録で、要件も異なります。
比較項目 | 取締役会議事録 | 株主総会議事録 |
|---|---|---|
機関・決定者 | 取締役会(取締役) | 株主総会(株主) |
署名・押印 | 出席取締役・監査役の署名または記名押印(369条3項) | 署名義務の定めなし(会社法上は不要。議長・出席取締役の記載は規則で必要) |
記載事項の根拠 | 会社法施行規則101条 | 会社法施行規則72条 |
備置期間 | 本店に10年間(371条) | 本店に10年間・支店に写しを5年間(318条) |
役員変更登記などで議事録を添付するとき、どちらの機関の決議事項かを取り違えると登記が通りません。株主総会議事録側の作り方やAI活用は司法書士の登記業務にAIを組み込む方法(株主総会議事録・登記申請書のドラフト)で扱っています。
取締役会議事録の記載事項(会社法施行規則101条)
記載事項は会社法施行規則101条3項が定めます。「議事の経過の要領及びその結果」とあるとおり、発言を一言一句記録する必要はなく、要点で足ります。ただし要点を落とすと、後日その決議の有効性を疑われるリスクが残ります。
必ず記載する項目
- 開催の日時および場所(会場にいない取締役・監査役等が出席した場合は、その出席方法=Web会議等も含む)
- 議事の経過の要領およびその結果(議案ごとの説明・審議・採決結果)
- 出席した取締役・監査役、および出席した会計参与・会計監査人・株主がいればその氏名または名称
- 議長の氏名(議長が存する場合)
場合により記載する項目
- 特別の利害関係を有する取締役がいるときは、その取締役の氏名。特別利害関係人は議決に加われないため(会社法369条2項)、氏名と「議決に加わらなかった」旨を残します。利益相反取引の承認や代表取締役の解職の対象者などが典型です。
- 招集手続きの特例(招集権者以外の取締役・監査役の請求による招集など)に該当するときは、その旨。
- 会社法が定める一定の意見・発言(監査役の意見など)があったときは、その概要。
- 決議の省略(みなし決議)による場合は、その旨等(会社法370条・施行規則101条4項)。定款に定めがあり、議案について取締役全員が書面等で同意し、監査役が異議を述べないときは、取締役会決議があったものとみなされますが、この場合も議事録の作成は必要です。
署名・押印と電子署名の実務
押印する印鑑は、法律上「実印でなければならない」と一律に決まっているわけではありません。ただし、代表取締役の選定を議題とする取締役会議事録を登記に使う場合など、出席取締役の個人実印での押印と印鑑証明書の添付が求められる場面があります(商業登記規則61条関連)。どの場面で実印が要るかは登記の種類で変わるため、登記添付用かどうかを最初に確認してから押印方法を決めるのが安全です。電子化する場合は、出席取締役・監査役全員のクラウド型電子署名等(会社法369条4項)で対応します。
取締役会議事録のひな形(基本テンプレート)
まずは骨格となるひな形です。【 】がプレースホルダで、会社の実情に合わせて置き換えます。議案部分は次章の記載例と差し替えて使ってください。
取締役会議事録
開催日時 令和【 】年【 】月【 】日( )午前【 】時【 】分〜午前【 】時【 】分
開催場所 当会社本店会議室(【所在地】)
取締役の総数 【 】名 出席取締役数 【 】名
監査役の総数 【 】名 出席監査役数 【 】名
議長 代表取締役 【氏名】
上記のとおり出席があり、本取締役会は適法に成立した。
定刻、代表取締役【氏名】は議長となり、開会を宣した。
議事の経過の要領及びその結果
第1号議案 【議案名】の件
議長は、【提案の理由・内容】について説明し、その承認を求めた。
審議の結果、出席取締役全員の一致(または 賛成【 】名・反対【 】名)をもって、
本議案を原案どおり承認可決した。
第2号議案 【議案名】の件
(同様に記載)
以上をもって本日の議事を終了し、議長は午前【 】時【 】分閉会を宣した。
上記の議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、本議事録を作成し、
出席した取締役及び監査役の全員が次に記名押印する。
令和【 】年【 】月【 】日
【会社名】 取締役会
議長・代表取締役 【氏名】 印
出席取締役 【氏名】 印
出席監査役 【氏名】 印Web会議で開催した場合は、開催場所の下に「【氏名】取締役はWeb会議システムにより出席し、映像・音声が即時に他の出席者へ伝わる状態であることを確認した」等の一文を加えます。施行規則101条3項が求める「出席の方法」を満たすためです。
議案別の記載例
議事の経過は「議長の説明 → 審議 → 採決結果」の順で簡潔にまとめます。よく使う議案の記載例を挙げます。
代表取締役の選定
第1号議案 代表取締役選定の件
議長は、代表取締役【氏名】の任期満了に伴い、代表取締役を選定する必要がある旨を述べ、その候補として取締役【氏名】を提案した。審議の結果、出席取締役全員の一致をもって、取締役【氏名】を代表取締役に選定することを承認可決した。なお、被選定者は席上その就任を承諾した。
代表取締役の変更登記に添付する場合、出席取締役の押印・印鑑証明書の要否を登記の種類ごとに確認してから作成します。
重要な財産の処分・多額の借財
第2号議案 多額の借財の件
議長は、運転資金として【金融機関名】から金【 】円を、期間【 】年、利率年【 】%で借り入れたい旨を説明し、その承認を求めた。審議の結果、出席取締役全員の一致をもって、本借財を承認可決した。
「重要な財産の処分・譲受け」「多額の借財」は取締役会の専決事項です(会社法362条4項)。金額基準を社内規程で定めている場合は、その基準に照らして取締役会決議が必要かを判断します。
利益相反取引の承認(特別利害関係に注意)
第3号議案 利益相反取引の承認の件
取締役【氏名】は本議案につき特別の利害関係を有するため、議決に加わらなかった。議長は、当会社と取締役【氏名】との間の【取引内容】について説明し、その承認を求めた。審議の結果、当該取締役を除く出席取締役全員の一致をもって、本取引を承認可決した。
特別利害関係取締役の氏名と「議決に加わらなかった」旨を明記するのがポイントです。これを落とすと決議の有効性を争われる余地が生まれます。
AIで取締役会議事録をドラフトする実務手順
取締役会議事録は様式が定まっているため、AIによるドラフト作成と相性が良い文書です。安全に使う原則は、AIには構成と下書きを任せ、会社法上の要件チェックは人が行うことです。契約書などと同じく、条文の当てはめや固有名詞の正確性は最後に人が確認します。この考え方は弁護士の条文リサーチAIとハルシネーション対策でも詳しく整理しています。
ドラフト作成プロンプトの例
あなたは商業登記に詳しい司法書士の補助者です。
次の条件で取締役会議事録のドラフトを作成してください。
会社法施行規則101条3項の記載事項(開催日時・場所、議事の経過の
要領及びその結果、出席者、議長、特別利害関係取締役があればその氏名)
を必ず満たすこと。
・会社名:【会社名】(仮名で可)
・開催日時/場所:【日時】/本店会議室
・出席:取締役【出席数/総数】、監査役【出席数/総数】
・議長:代表取締役【氏名】
・議案:①代表取締役の選定(【氏名】を選定)
②【議案2】
・各議案は「議長の説明→審議→採決結果」の順に要点で記載
・特別の利害関係を有する取締役の有無を確認し、いれば氏名と
「議決に加わらなかった」旨を明記
・末尾に出席取締役・監査役の記名押印欄を付すうまくいかない例 → 直し方
失敗例:AIは審議内容をすべて「全員一致で可決」と均一に書きがちで、利益相反取引でも特別利害関係取締役の除外を書き落とすことがあります。また、実在しない条文番号や、株主総会の用語(「議決権の過半数」など)を取締役会の記載に混ぜてしまうことがあります。
直し方:プロンプトで「特別利害関係取締役の有無を確認し、該当者は氏名と議決不参加を明記」と指示し、出力後に施行規則101条3項の項目を1つずつ突き合わせます。条文を引用させた場合は、必ずe-Gov法令検索で実在と最新版を確認します。
投稿前の要件チェックリスト
- 開催日時・場所(Web出席なら出席方法)が書かれているか
- 取締役・監査役の総数と出席数、定足数(過半数出席)を満たすか(会社法369条1項)
- 各議案に議事の経過の要領と採決結果があるか
- 特別利害関係取締役の氏名と議決不参加の記載漏れがないか
- 議長・出席取締役・監査役の記名押印欄があるか、登記添付なら押印方法は適切か
- 会社名・氏名・金額・日付など固有名詞が原資料と一致するか
情報管理の注意
議事録には未公表の経営情報や個人情報が含まれます。AIに投入する際は、会社名・氏名を仮名化する、または業務情報を学習に使わない設計の法務特化AIを使うなど、守秘義務と両立する運用が前提です。士業AIの法務AIは、e-Gov法令データなどの公的情報を参照しつつ、契約書レビューや登記書類・議事録ドラフトの作成を支援する設計です。汎用AIより導入工数が低く、条文確認と下書き作成を一貫して行えます。
よくある質問
Q. 押印は必ず実印ですか?
一律に実印と決まっているわけではありません。ただし代表取締役の選定を決議した議事録を登記に添付する場合など、出席取締役の個人実印と印鑑証明書が必要になる場面があります。登記添付用かどうかで要否が変わるため、用途を先に確認してください。
Q. 電子データでの保存・電子署名は認められますか?
認められます。議事録は電磁的記録で作成でき(会社法施行規則101条2項)、その場合は出席取締役・監査役全員の電子署名で対応します(会社法369条4項)。10年間の備置き(371条)も電磁的記録で満たせます。
Q. 議事録に署名しない取締役がいるとどうなりますか?
署名・記名押印は出席した取締役・監査役の義務です(369条3項)。欠席者の署名は不要ですが、決議に参加して議事録に異議をとどめない取締役は賛成と推定されます(369条5項)。反対した場合はその旨を議事録に残しておくことが重要です。
Q. AIが作った議事録をそのまま使ってよいですか?
ドラフトとして使い、会社法・施行規則の要件チェックと固有名詞の確認を人が行ってから確定させてください。特に条文引用の正確性、特別利害関係の記載、登記添付時の押印方法は人による最終確認が欠かせません。
まとめ:ひな形で骨格を固め、AIで下書き・人で要件確認
取締役会議事録は、会社法369条の作成・署名、371条の10年保存という法定要件を満たす必要があり、記載事項は会社法施行規則101条が定めます。株主総会議事録との違いを押さえ、議案ごとに議事の経過の要領と採決結果を残すことが基本です。
様式が定型的なため、ひな形で骨格を固め、AIで下書きを作り、要件チェックリストで人が確認する流れにすれば、品質を保ちながら作成時間を大きく短縮できます。司法書士・弁護士の登記・法務業務全体でのAI活用は司法書士・弁護士のためのAI活用ガイドも参考にしてください。まずは仮名データでの下書き作成から試してみてください。

