法務×AI

36協定届の書き方とAI活用|様式第9号の記載例・提出前チェック【2026年】

36協定届とは(労働基準法36条・様式第9号)

36協定届とは、労働基準法36条にもとづき「時間外労働(残業)・休日労働をさせる」ために労使で結んだ協定を、所轄の労働基準監督署へ届け出る書類です。協定を結ばず、または届け出ずに法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて働かせると、それ自体が労基法違反になります。実務では、この一枚の届出が「残業を合法にする前提」であるという点を、まず事業主に理解してもらうことが出発点になります。

2021年4月からは使用者の押印・署名が不要になり、過半数代表者が適正に選出されたかを確認するチェックボックスが新設されました。様式は一般条項の様式第9号と、特別条項付きの様式第9号の2の2種類が基本です。書き方の細部でつまずくと差し戻しになりやすく、社労士・労務担当が押さえるべき論点は意外と多いのが現場感です。

本記事では、書き方・届出・提出前チェックに加えて、下書きや記載チェックにAIをどう使えるかまでを整理します。AIはあくまで補助であり、最終的な内容確認と届出責任は社労士・事業主にある点を先にお断りしておきます。

この記事で分かること

  • 様式第9号(一般条項)の記載項目と記入のポイント
  • 様式第9号の2(特別条項)と時間外労働の上限規制(年720時間ほか)
  • 所轄労基署への届出・本社一括届出・e-Gov電子申請の流れ
  • 提出前チェックリスト(よくある不備)
  • 36協定届の作成・チェックにAIを安全に使う具体的プロンプト例

様式第9号(一般条項)の書き方

様式第9号は、時間外・休日労働が原則の限度時間(月45時間・年360時間)の範囲に収まる場合に使う一般条項の様式です。記載は事業場(本社・支店・工場・営業所など)ごとに行うのが原則で、まず事業の種類・事業場名・所在地・労働者数といった基本情報を埋めます。冒頭に労働保険番号や法人番号を記入する欄もありますが、ここは記入必須ではありません。

時間外労働をさせる「具体的事由」と業務の種類

時間外労働の事由は具体的に書く必要があります。「業務の都合」「使用者の判断による」といった抽象的な表現は認められず、実務では「月末の請求・決算事務が集中するため」「受注増による製造対応のため」のように、誰が読んでも状況が分かる粒度で記載します。あわせて業務の種類、その業務に従事する労働者数を記入します。

延長できる時間・起算日・有効期間

1日・1か月・1年それぞれについて、延長できる時間の限度を記入します。1か月は45時間以内、1年は360時間以内が原則の上限です。1年の時間を数えるための起算日を必ず定め、有効期間(通常1年間)と整合させます。起算日は賃金計算期間の初日などに合わせると管理しやすく、現場では「起算日と有効期間開始日のズレ」が差し戻しの典型例になります。

過半数代表者と協定当事者

労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、なければ労働者の過半数を代表する者と協定します。過半数代表者は、管理監督者でないこと、投票・挙手など民主的な手続きで選ばれたことが要件で、使用者が指名した者は無効です。様式内のチェックボックス(適正な選出であることの確認)に印が無いと有効な協定として扱われないため、記入漏れに注意します。

記入欄

記載例・ポイント

時間外労働をさせる具体的事由

月末の経理・決算事務の集中に対応するため

業務の種類 / 労働者数

経理事務 / 5人

1日の延長時間

3時間

1か月の延長時間

30時間(上限45時間以内)

1年の延長時間

250時間(上限360時間以内)

起算日

2026年4月1日

有効期間

2026年4月1日〜2027年3月31日

過半数代表者の選出方法

投票による選挙(チェックボックスにチェック)

特別条項(様式第9号の2)の書き方と上限規制

臨時的に限度時間(月45時間・年360時間)を超えて労働させる可能性がある場合は、様式第9号の2(特別条項付き)を使います。特別条項は「あくまで臨時的・突発的な事情」に限られ、恒常的な残業の追認には使えません。特別条項を付ける場合でも、法律で定められた絶対的な上限を超える協定は結べない点が最重要です。

特別条項でも超えられない上限

働き方改革関連法により、特別条項を結んでも次の上限を超えることはできません(大企業2019年4月、中小企業2020年4月から全面適用)。この数値をAIに書かせると誤りが混入しやすいため、必ず厚労省の記載例と突合してください。

項目

上限

休日労働の扱い

時間外労働(年間)

年720時間以内

休日労働は含まない

単月の合計

100時間未満

休日労働を含む

複数月(2〜6か月)平均

80時間以内

休日労働を含む

月45時間を超えられる回数

年6回まで

特別条項の様式には、限度時間を超えて労働させる具体的事由、超える場合の手続き(労使の協議など)、健康・福祉確保措置、割増賃金率なども記載します。ここでも「臨時的に必要がある場合」を具体的に書くことが求められ、抽象的な事由は認められません。

届出の流れ(所轄労基署・本社一括届出・電子申請)

作成した協定届は、有効期間の開始前までに提出します。届出は事業場ごとが原則で、方法は窓口持参・郵送・電子申請の3通りです。控えが必要な場合は原本と写しの2部を用意します。

所轄の労働基準監督署へ提出

届出先は、その事業場を管轄する労働基準監督署(支署)です。複数の事業場を持つ企業では、原則として事業場ごとに、それぞれの所轄署へ提出する必要があります。

本社一括届出とe-Gov電子申請

一定の要件を満たせば、複数事業場分をまとめて本社の所轄署へ提出する「本社一括届出」が使えます。電子申請なら本社一括届出の要件が緩和され、事業場ごとに異なる情報はCSV(一括届出ツールで作成)で添付し、共通事項を申請画面に入力する運用です。電子申請の窓口はe-Gov電子申請(労働基準関係手続)で、2021年4月からは電子署名・電子証明書も不要になり、24時間提出できるため実務の負担が大きく下がります。手続きの詳細は厚生労働省「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について」で確認できます。

提出前チェックリスト(よくある不備)

差し戻しの多くは、記載内容そのものより「要件の抜け」で起きます。現場で多い不備を提出前に一つずつ潰しておくと、再提出の手間を防げます。

  • 過半数代表者の選出不備:管理監督者を代表にしていないか、投票・挙手等の民主的手続きを踏んだか。チェックボックスの記入漏れも頻出。
  • 上限規制の超過:特別条項の年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間・年6回を超える設定になっていないか。
  • 起算日と有効期間のズレ:1年の起算日と有効期間開始日が整合しているか。
  • 具体的事由の抽象化:「業務の都合」等になっていないか。
  • 事業場単位の漏れ:事業場ごとに作成・届出しているか(本社一括の対象か)。
  • 提出期限:有効期間の開始前に届け出ているか。

なお、就業規則や社内規程との整合(残業命令の根拠規定など)も合わせて点検すると安全です。規程側の下書き・整合チェックについては就業規則・社内規程のドラフトとチェックをAIで行う方法も参考になります。

AIを36協定届の作成・チェックにどう使うか

36協定届の実務でAIが効くのは、ゼロから正解を出させる場面ではなく、「たたき台を速く作る」「人間のチェック観点を洗い出す」「説明文を整える」といった補助の場面です。上限時間や様式番号のような一次情報はAIが誤りやすいため、AI出力は必ず厚労省の様式・記載例と突合するのが大前提です。士業AIのような法務・業務効率化AIを使えば、下書きや記載チェックの補助をチャットで完結できます。

プロンプト例1:具体的事由の下書き

あなたは労務の専門家です。36協定届(様式第9号)の
「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」欄の記載案を3つ作成してください。
・事業場:【事業場名】(業種:【業種】)
・対象業務:【業務内容】
・条件:抽象語(業務の都合等)を避け、状況が第三者に伝わる具体的な表現にする

うまくいかない例→直し方:業種だけ与えると「繁忙期対応のため」など曖昧な案が返りがちです。「決算・請求」「受注増」など繁忙の原因を条件に足すと、具体度が上がります。

プロンプト例2:上限規制の突合チェック

次の36協定(特別条項)の設定が、法定の上限に違反していないか点検してください。
判定は「厚労省の上限規制の記載例に照らして要確認の箇所」を挙げる形にし、
断定はせず確認ポイントとして列挙してください。
・1年の時間外:【○時間】/単月の時間外+休日:【○時間】
・複数月平均(時間外+休日):【○時間】/月45時間超の回数:【○回】

うまくいかない例→直し方:「違反ですか?」と二択で聞くと、AIが誤った上限値を前提に自信満々で答えることがあります。「確認ポイントとして列挙」「断定しない」と指示し、最終判断は必ず様式・記載例で裏取りします。

プロンプト例3:従業員向け説明文の作成

36協定の締結にあたり、従業員へ配布する説明文の下書きを作成してください。
・対象:【事業場名】の全従業員
・盛り込む点:36協定の目的、時間外労働の上限(会社が定めた範囲)、
 過半数代表者の選出方法、問い合わせ先
・トーン:専門用語を避け、平易に。A4半ページ程度

うまくいかない例→直し方:長い法令解説になりがちです。「A4半ページ」「平易に」と分量とトーンを固定すると、配布向けの実用的な文面になります。

プロンプト例4:提出前チェックリストの生成

社労士が36協定届(様式第9号の2)を労基署へ提出する前の
セルフチェックリストを作成してください。
・観点:過半数代表者の選出、上限規制、起算日と有効期間、具体的事由、
 事業場単位、提出期限、チェックボックスの記入
・出力:チェックボックス形式の箇条書き

うまくいかない例→直し方:観点を指定しないと一般論に流れます。自事務所で過去に差し戻された論点を観点に足すと、実務に即したリストになります。AIが挙げた項目は必ず一次情報で裏取りしてください。

労務相談の回答づくりにAIを使う発展的な使い方は労務相談の回答をAIで下書きする方法、助成金申請での効率化は助成金申請をAIで効率化する方法で扱っています。36協定は「特定様式の書き方・届出」に主題を絞っているため、周辺業務はそれぞれの記事を参照してください。

AI活用の注意点(守秘義務・個人情報・様式の突合)

便利さの裏で、社労士がAIを使う際に外せない注意点があります。いずれも「AIに任せきりにしない」という一点に集約されます。

守秘義務と個人情報

顧問先の従業員名簿や個人が特定できる情報を、そのままプロンプトに貼るのは避けます。事業場名・氏名は【事業場名】等のプレースホルダに置き換え、必要な範囲だけを入力するのが基本です。入力データの学習利用可否など、利用するAIのデータ取り扱いポリシーも事前に確認します。

最新様式との突合とハルシネーション対策

AIは、存在しない様式番号や誤った上限時間(例:年間の数値を取り違える)を、もっともらしく出力することがあります。生成物は必ず厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーの最新様式・記載例と突き合わせ、数値・様式番号・記載欄を一つずつ確認してください。最終的な内容確認と届出の責任は、社労士・事業主にあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 36協定を届け出ずに残業させると、どうなりますか?

協定の締結・届出なしに法定労働時間を超えて働かせると労基法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。上限規制の超過も同様に罰則の対象です。

Q. 一般条項(様式第9号)と特別条項(様式第9号の2)はどう使い分けますか?

残業が月45時間・年360時間の範囲に収まる見込みなら様式第9号、臨時的にこれを超える可能性があるなら様式第9号の2を使います。特別条項でも年720時間などの上限は超えられません。

Q. 電子申請と紙の届出はどちらが良いですか?

複数事業場を持つ企業や本社一括届出を使いたい場合は、電子署名不要で24時間提出できるe-Gov電子申請が効率的です。1事業場のみなら紙でも大きな差はありません。

Q. 36協定の作成をAIに任せてしまって良いですか?

下書きや記載チェックの補助までにとどめてください。上限時間や様式は誤りが混入しやすく、最終確認と届出責任は人(社労士・事業主)にあります。AI出力は必ず厚労省の様式・記載例と突合します。

Q. 過半数代表者は誰でもなれますか?

管理監督者はなれません。投票・挙手など民主的な手続きで選ばれた者である必要があり、使用者が指名した者は無効です。

士業AIは、法務・労務の下書きや記載チェックの補助に使える士業向けAIで、メール登録のみ・クレジットカード不要で無料から試せます。36協定届のたたき台づくりやチェック観点の洗い出しに、まずは気軽に活用してみてください。

参考文献

FREE TRIAL

士業AIで業務を効率化しませんか?

税務・会計・法務の専門業務を AI がアシスト。 まずは無料でお試しいただけます。

無料で試す

クレジットカード不要・数分で開始