路線価の見方|奥行価格補正率表と借地権割合の計算例【令和8年分】
路線価の見方は、突き詰めると「路線価図に書かれた数字とアルファベットと記号の3つを読み分けること」に尽きます。たとえば道路沿いに「215D」とあれば、1平方メートルあたり215,000円、借地権割合60%という意味です。
検索で多いのは、その先の2つの疑問です。1つは「令和8年分の奥行価格補正率表はどれを使えばよいか」。答えは、国税庁が配布している「調整率表(平成31年1月分以降用)」で、令和8年分の評価にもそのまま使います。2026年10月時点で、令和8年分専用の新しい表は公表されていません。もう1つは「借地権割合をどう計算に使うか」。借地権は自用地の価額×借地権割合、地主側の貸宅地は自用地の価額×(1-借地権割合)が基本の形です。
この記事では、国税庁が公開している令和8年分(2026年分)の路線価図と調整率表をもとに、記号の読み方、奥行価格補正率表の引き方、評価額の計算、形の悪い土地の補正、借地権割合の使い分けまでを実務の順番どおりに整理します。
この記事で分かること
- 路線価図の「215D」という表記が何を意味するか(数字=千円単位の1平方メートル単価、A〜G=借地権割合)
- 令和8年分で使う奥行価格補正率表(全7地区区分の早見表)と、表の引き方・奥行距離の測り方
- 正面路線価 × 奥行価格補正率 × 地積で評価額を出す3ステップと計算例
- 不整形地・間口狭小・セットバックなど、路線価図だけでは出ない4つの調整
- 借地権・貸宅地・貸家建付地の計算式と、借地権割合A〜G別の早見表・計算例
- 路線価が付いていない土地の倍率方式と、特定路線価の申出
- 路線価の調べ方をAIで時短する範囲と、任せてはいけない判断
路線価とは|見方を学ぶ前に押さえる3つの前提
路線価は地価公示価格の80%程度を目途に定められる
路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額です。国税庁は「1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めている」と説明しています(国税庁「令和8年分の路線価等について」)。
実務でつまずきやすいのは、ここを「時価そのもの」と誤解する点です。路線価はあくまで相続税・贈与税の申告のために定められた評価基準であり、売買価格とも固定資産税評価額とも別物です。顧問先に説明するときは、この3つが別の物差しであることを最初に切り分けておくと後の説明が楽になります。
使うのは「課税時期の属する年分」の路線価図
路線価図は毎年更新されます。国税庁は、相続や遺贈の場合は被相続人が亡くなった日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日が属する年分の路線価図・評価倍率表を使うと明示しています。その年分がまだ公開されていない場合は、公開されてから評価を行います(国税庁 No.4604 質疑応答 Q6)。
「亡くなったのが1月で、申告するのが翌年の春」というケースでは、うっかり手元で開いている最新年分の路線価図を見てしまいがちです。年分は路線価図の説明部分の左右端に表示されているので、作業のたびに目視する習慣をつけると事故を防げます。
令和8年分は2026年7月1日に公開済み
令和8年分の路線価等は、2026年7月1日(水)に国税庁ホームページで公開されました。国税庁のサイトには平成30年分から令和8年分までの9年分が掲載されており、過去の相続分もさかのぼって確認できます(財産評価基準書 路線価図・評価倍率表)。
なお、公開後に誤りが見つかった箇所は「路線価図等の正誤表」で訂正されます。申告前に正誤表を必ず確認する、というのは国税庁自身が案内している手順です。ここを飛ばして数字を確定させる事務所は少なくないので、チェックリストに入れておく価値があります。
路線価図の見方|「215D」の数字とアルファベットを読む
数字は千円単位の1平方メートル単価
地図部分の道路に沿って書かれた数字が路線価です。単位は千円なので、「215」とあれば215,000円/平方メートルを意味します。円単位と読み違えると評価額が1,000分の1になるため、最初に必ず単位を声に出して確認します。
A〜Gのアルファベットは借地権割合
数字の右隣に付くA〜Gの記号は借地権割合です。国税庁の「路線価図の説明」では次のとおり定められています。
記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
したがって「215D」は、1平方メートルあたり215,000円・借地権割合60%という読み方になります(国税庁「路線価図の説明」)。自用地(他人の権利が付いていない更地の状態)だけを評価する場合はアルファベットを使いませんが、借地や貸家がある土地に当たった瞬間に必要になります。計算での使い方は後半の「借地権割合の見方と計算」で詳しく扱います。
地区区分は数字を囲む記号で判定する
路線価の数字を囲んでいる記号は地区区分を表します。ビル街地区・高度商業地区・繁華街地区・普通商業・併用住宅地区・普通住宅地区・中小工場地区・大工場地区の7区分があり、次の章で扱う奥行価格補正率などの調整率はこの地区区分ごとに違う数値が定められています。地区区分を読み違えると、補正率の表の見る列がまるごとずれます。
さらに、記号の一部が「黒塗り」「斜線」になっていることがあります。国税庁の説明では、この塗り分けによってその地区区分が適用される範囲の詳細が示されるとされており、路線価図の説明部分の左端に「地区及び地区と借地割合の適合範囲を示す記号の一覧」が掲載されています。判断に迷う塗り分けが出てきたら、自分の記憶ではなく毎回その凡例に戻るのが安全です。
「倍率地域」と書かれていたら路線価は使わない
地図部分に路線価ではなく「倍率地域」と記載されている場合、その地域の土地は路線価方式では評価しません。評価倍率表に切り替えます(後述)。地方の案件では、同じ市内でも駅前が路線価地域、少し外れると倍率地域、という混在が普通に起こります。
奥行価格補正率表【令和8年分】|地区区分別の早見表と引き方
令和8年分も「平成31年1月分以降用」の調整率表を使う
奥行価格補正率は、道路からの奥行が短すぎたり長すぎたりして使い勝手が落ちる土地の評価を調整する率です(財産評価基本通達15)。数値は通達の付表1に定められ、国税庁は評価明細書とあわせて「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」として配布しています。
2026年10月時点で、国税庁の「評価明細書・調整率表」ページに掲載されている調整率表はこの版が最新で、令和8年分用として別の表は出ていません。通達の付表1 奥行価格補正率表も「平成30年分以降用」と表示されており、改正履歴の最後は平成29年の改正です。つまり「奥行価格補正率表 令和8年」を探している方は、この表をそのまま令和8年分の評価に使えます。
注意したいのは逆のケースです。平成29年分以前の相続をいまさら評価し直す場面(更正の請求や期限後申告など)では、表の数値が違います。国税庁の付表1のページには旧表へのリンクもあるので、課税時期の年分と表の適用年分を必ず突き合わせる習慣をつけておきます。
奥行価格補正率表(全地区区分)
国税庁の調整率表から転記した数値です。奥行距離の欄は「以上〜未満」で読みます(たとえば「10〜12」は10メートル以上12メートル未満)。
奥行距離(m) | ビル街 | 高度商業 | 繁華街 | 普通商業・併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
4未満 | 0.80 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.85 | 0.85 |
4〜6 | 0.80 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.90 |
6〜8 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
8〜10 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
10〜12 | 0.90 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.96 | 0.96 |
12〜14 | 0.91 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.97 |
14〜16 | 0.92 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 0.98 |
16〜20 | 0.93 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.99 | 0.99 |
20〜24 | 0.94 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
24〜28 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 1.00 | 1.00 |
28〜32 | 0.96 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 0.95 | 1.00 | 1.00 |
32〜36 | 0.97 | 1.00 | 0.96 | 0.97 | 0.93 | 1.00 | 1.00 |
36〜40 | 0.98 | 1.00 | 0.94 | 0.95 | 0.92 | 1.00 | 1.00 |
40〜44 | 0.99 | 1.00 | 0.92 | 0.93 | 0.91 | 1.00 | 1.00 |
44〜48 | 1.00 | 1.00 | 0.90 | 0.91 | 0.90 | 1.00 | 1.00 |
48〜52 | 1.00 | 0.99 | 0.88 | 0.89 | 0.89 | 1.00 | 1.00 |
52〜56 | 1.00 | 0.98 | 0.87 | 0.88 | 0.88 | 1.00 | 1.00 |
56〜60 | 1.00 | 0.97 | 0.86 | 0.87 | 0.87 | 1.00 | 1.00 |
60〜64 | 1.00 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.99 | 1.00 |
64〜68 | 1.00 | 0.95 | 0.84 | 0.85 | 0.85 | 0.98 | 1.00 |
68〜72 | 1.00 | 0.94 | 0.83 | 0.84 | 0.84 | 0.97 | 1.00 |
72〜76 | 1.00 | 0.93 | 0.82 | 0.83 | 0.83 | 0.96 | 1.00 |
76〜80 | 1.00 | 0.92 | 0.81 | 0.82 | 0.83 | 0.96 | 1.00 |
80〜84 | 1.00 | 0.90 | 0.80 | 0.81 | 0.82 | 0.93 | 1.00 |
84〜88 | 1.00 | 0.88 | 0.80 | 0.80 | 0.82 | 0.93 | 1.00 |
88〜92 | 1.00 | 0.86 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
92〜96 | 0.99 | 0.84 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
96〜100 | 0.97 | 0.82 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
100以上 | 0.95 | 0.80 | 0.80 | 0.80 | 0.80 | 0.90 | 1.00 |
原本の調整率表は、同じ数値が続く範囲をセルの結合で表しています。上の表はそれを1行ずつに展開したものです。申告書に添付する根拠としては、国税庁のPDFそのものを確認したうえで評価明細書に転記してください。
表の引き方|「地区区分の列」と「奥行距離の行」の交点を読む
手順は2つだけです。まず路線価図の囲み記号から地区区分を決めて列を選び、次に奥行距離から行を選びます。たとえば普通住宅地区で奥行30メートルなら、「28〜32」の行と「普通住宅」の列が交わる0.95です。路線価が200,000円なら、200,000円×0.95=190,000円が1平方メートルあたりの価額になります。
見落としやすいのは、同じ奥行30メートルでも普通商業・併用住宅地区なら1.00、繁華街地区なら0.98と、列によって数値が変わる点です。普通住宅地区は奥行10メートル以上24メートル未満で1.00になり、それより奥行が長くなると早めに減額が始まります。住宅地の奥に長い土地は、補正率だけで数パーセント評価が下がることがあります。
奥行距離の測り方|不整形地は「地積÷間口距離」
長方形の土地なら、奥行距離は正面路線から奥の境界までの長さです。奥行が一様でない土地は平均的な奥行距離を使い、国税庁は「想定整形地の奥行距離を限度として、不整形地の面積をその間口距離で除して得た数値」とする考え方を示しています。質疑応答事例では、地積600平方メートル・間口35メートル・想定整形地の奥行20メートルの土地について、600÷35=17.1メートル(20メートル未満なのでこれを採用)と計算しています(国税庁 質疑応答事例「不整形地の奥行距離の求め方」)。
境界ちょうどの数値にも注意します。奥行がちょうど12メートルなら「12〜14」の行(12メートル以上)を使います。測量図の数値を四捨五入してから表を引くと行がずれることがあるため、端数は図面のまま扱うのが安全です。
同じ調整率表に載っている加算率・補正率
調整率表には、奥行価格補正率のほかに側方路線影響加算率・二方路線影響加算率・不整形地補正率・間口狭小補正率・奥行長大補正率・規模格差補正率の算定表などがまとめて載っています。次の章の計算で使う加算率は次のとおりです。
地区区分 | 側方路線影響加算率(角地) | 側方路線影響加算率(準角地) | 二方路線影響加算率 |
|---|---|---|---|
ビル街 | 0.07 | 0.03 | 0.03 |
高度商業、繁華街 | 0.10 | 0.05 | 0.07 |
普通商業・併用住宅 | 0.08 | 0.04 | 0.05 |
普通住宅、中小工場 | 0.03 | 0.02 | 0.02 |
大工場 | 0.02 | 0.01 | 0.02 |
出典は上と同じ国税庁の調整率表(平成31年1月分以降用)です。
路線価から評価額を計算する3ステップ
ステップ1|正面路線価に奥行価格補正率を乗じる
基本の算式は「正面路線価 × 奥行価格補正率 = 1平方メートルあたりの価額」です。正面路線は、原則として、その宅地が接する各路線の路線価に奥行価格補正率を乗じた金額が高いほうの路線とされます。奥行価格補正率が同額になる場合は、原則として路線に接する距離の長いほうが正面路線です(国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価)。
「広いほうの道路が正面」と思い込んでいる方が多いのですが、判定基準は補正後の金額です。角地の案件では必ず両方の路線で計算してから比べます。
ステップ2|側方路線・二方路線の加算を足す
2つ以上の路線に接している場合は、側方路線影響加算額(角地)と二方路線影響加算額(表と裏の2面が道路)を上乗せします。加算率は前章の表のとおり地区区分に応じて定められています。地区の異なる2以上の路線に接するときは、正面路線の地区に応じた率を適用します。
なお、側方路線に接していても現実に角地としての効用を持たない場合は、側方路線影響加算率に代えて二方路線影響加算率を適用すると国税庁が注記しています。現地や住宅地図を見ずに図面だけで処理すると、この判断が抜けます。
ステップ3|地積を乗じて評価額を出す
1平方メートルあたりの価額が固まったら、地積を乗じて評価額を算出します。国税庁が示している計算例を整理すると、次のようになります。
区分 | 一路線に面する宅地 | 二路線に面する宅地 |
|---|---|---|
路線価 | 300C(300,000円) | 正面300C/側方200C |
奥行価格補正率 | 0.97(奥行35メートル) | 正面0.97/側方1.00(奥行20メートル) |
側方路線影響加算率 | — | 0.08 |
1平方メートルあたりの価額 | 291,000円 | 307,000円 |
地積 | 700平方メートル | 700平方メートル |
自用地の価額 | 203,700,000円 | 214,900,000円 |
借地権の価額(借地権割合70%) | 142,590,000円 | 150,430,000円 |
いずれも普通商業・併用住宅地区、平成31年1月分以降用の調整率による計算例です(出典:国税庁「路線価図の説明」)。上の奥行価格補正率表で「32〜36」の行と「普通商業・併用住宅」の列を引くと0.97、「20〜24」の行なら1.00で、計算例の数値と一致します。側方路線が加わるだけで自用地の価額が1,120万円動く、という感覚を持っておくと、概算の精度が上がります。
実際の申告では「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(令和6年分以降用)」に沿って計算します。自作の集計表で完結させず、明細書の欄の順に埋めていくほうが、後から第三者がたどれる資料になります。評価額を申告書のどこに転記するかは、相続税申告書の書き方と記入順序で確認できます。
路線価図だけでは出ない4つの補正
不整形地・間口狭小・奥行長大
形が整っていない土地は、不整形地補正率を乗じて減額します。間口が狭い土地は間口狭小補正率、奥行が長すぎる土地は奥行長大補正率を併せて使います。いずれも補正率は調整率表に地区区分別で載っており、根拠は財産評価基本通達20・20-4です(国税庁 No.4604 質疑応答 Q2〜Q4)。
セットバックを必要とする宅地
建築基準法の規定で道路として提供しなければならない部分(セットバック部分)は、通常どおりに評価した価額からその部分に対応する価額の70%相当額を控除して評価します(財産評価基本通達24-6)。幅員4メートル未満の道路に面した古い住宅地では頻出します。
私道・利用価値が著しく低下している宅地
私道の評価、および騒音・高低差などで利用価値が著しく低下している宅地の評価には、それぞれ専用の取扱いがあります(国税庁 No.4622 私道の評価、No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価)。減額要素は納税者側が拾わないと誰も拾ってくれないため、現地写真とセットで検討記録を残しておきます。
地積規模の大きな宅地
三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外の地域で1,000平方メートル以上といった面積要件を満たす宅地には、規模格差補正率による減額があります(国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価)。適用要件は地区区分や都市計画の区域区分にも及ぶため、面積だけで判断しないことが重要です。
借地権割合の見方と計算|借地権・貸宅地・貸家建付地
借地権割合とは|どこで確認するか
借地権割合は、土地の価額のうち借地人の権利にあたる部分の割合です。借地事情が似ている地域ごとに定められ、路線価地域では路線価図のA〜Gの記号、倍率地域では評価倍率表の「借地権割合」欄で確認します。
2つ以上の路線に面する土地や、路線価地域と倍率地域が接する土地では、どの割合を使うか迷います。国税庁は、こうした場合の借地権割合は原則として路線価地域の正面路線価に表示してある借地権割合によると説明しています(国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」)。角地で正面と側方の記号が違うときは、ステップ1で決めた正面路線の記号を使う、と覚えておけば迷いません。
借地権は「自用地の価額 × 借地権割合」
借地権(建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権)の価額は、自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めます(国税庁 No.4611 借地権の評価)。なお、定期借地権や一時使用目的の借地権は別の評価方法になるため、借地契約書で借地権の種類を最初に確かめます。
貸宅地は「自用地の価額 ×(1 − 借地権割合)」
借地権の目的となっている土地(貸宅地)を地主側で評価するときは、自用地としての価額から「自用地としての価額×借地権割合」を差し引きます。式をまとめると、自用地の価額×(1-借地権割合)です。借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地を評価する場合は、借地権割合を20%として計算します(国税庁 No.4613 貸宅地の評価)。取引慣行の有無は記号だけで機械的に決まるものではないので、地域の実情と契約内容を見て判断します。
貸家建付地は借家権割合と賃貸割合まで使う
アパートなど貸家の敷地は、次の算式で評価します。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
借家権割合は財産評価基準書で都道府県ごとに定められており、令和8年分の東京都では100分の30(30%)です(国税庁 財産評価基準書「東京都 借家権割合」(令和8年分))。賃貸割合は各独立部分の賃貸状況から計算します。課税時期に一時的に空室だっただけと認められる部分は、賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとされており、その判定要素として「空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であること」などが挙げられています(国税庁 No.4614 貸家建付地の評価)。
ここは税務調査で論点になりやすい箇所です。募集広告の記録や賃貸借契約書の日付を、評価の根拠資料として最初から綴じておくことをおすすめします。相続税申告全体で必要になる資料は、相続税申告チェックシートで添付書類を整理する手順にまとめています。
借地権割合別の早見表|自用地を100としたときの割合
上の3つの算式に借地権割合A〜Gを当てはめると、自用地の価額に対する割合は次のようになります。貸家建付地は、借家権割合30%・賃貸割合100%(満室)と仮定した試算です。
記号 | 借地権割合 | 借地権 | 貸宅地 | 貸家建付地(借家権30%・満室) |
|---|---|---|---|---|
A | 90% | 90% | 10% | 73% |
B | 80% | 80% | 20% | 76% |
C | 70% | 70% | 30% | 79% |
D | 60% | 60% | 40% | 82% |
E | 50% | 50% | 50% | 85% |
F | 40% | 40% | 60% | 88% |
G | 30% | 30% | 70% | 91% |
貸家建付地の減額幅は「借地権割合×借家権割合×賃貸割合」なので、借地権割合が同じでも借家権割合(都道府県ごと)や空室の状況で変わります。表はあくまで当たりを付けるための目安です。
計算例|「215D」の土地を4通りに評価する
普通住宅地区、正面路線価「215D」、奥行15メートル(奥行価格補正率1.00)、地積200平方メートル、ほかの補正はないものと仮定して試算します。
評価の区分 | 計算 | 評価額 |
|---|---|---|
自用地 | 215,000円 × 1.00 × 200平方メートル | 43,000,000円 |
借地権(借地人側) | 43,000,000円 × 60% | 25,800,000円 |
貸宅地(地主側) | 43,000,000円 ×(1 − 60%) | 17,200,000円 |
貸家建付地(満室) | 43,000,000円 − 43,000,000円 × 60% × 30% × 100% | 35,260,000円 |
貸家建付地(賃貸割合80%) | 43,000,000円 − 43,000,000円 × 60% × 30% × 80% | 36,808,000円 |
借家権割合は東京都の令和8年分(30%)を使いました。他の道府県の土地なら、その年分の財産評価基準書で借家権割合を確認して差し替えます。賃貸割合が下がると評価額が上がる、という向きの関係は顧問先にも伝わりにくいので、説明資料では満室時と現状の2行を並べて見せると納得されやすくなります。
路線価が付いていないとき|倍率方式と特定路線価
倍率方式は固定資産税評価額 × 評価倍率
路線価が定められていない地域の土地は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。固定資産税評価額は都税事務所や市(区)役所・町村役場で確認でき、倍率は評価倍率表に掲載されています(国税庁 No.4606 倍率方式による土地の評価)。
評価倍率表の見方で注意する2点
評価倍率表の「適用地域名」欄が「一部」または「路線価地域」となっている場合、その町・大字の中に路線価地域と倍率地域が混在しています。この場合は路線価図で対象地がどちらに所在するかを確認する必要があります。また、「宅地」欄に「路線」と表示されていれば、その地域は路線価地域です(国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」)。
路線価のない道路にだけ接しているなら特定路線価
路線価地域の中で、路線価が設定されていない道路のみに接している土地を評価する必要があるときは、「特定路線価設定申出書」を納税地の所轄税務署長に提出して路線価の設定を申し出ることができます。国税庁は、設定には概ね1~2月程度の期間を要するとしています(国税庁 No.4607 特定路線価の設定の申出)。
相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月です。特定路線価の申出を後回しにすると期限直前で身動きが取れなくなるため、現地確認の段階で「この道路に路線価が付いているか」を確認し、着手時期を決めてしまうのが実務的です。相続手続きの期限全体は相続手続きの期限一覧と起算点の落とし穴で確認できます。
路線価の調べ方をAIで時短する|任せてよい範囲と線引き
路線価の評価は「読み取り」「転記」「検算」「説明文の作成」という工程に分解できます。このうち生成AIが効くのは、判断を伴わない工程です。
AIに任せてよい | 人が判断する |
|---|---|
算式に数値を当てはめた検算 | 正面路線の判定・地区区分の読み取り |
評価明細書の記載順にもとづく確認手順の作成 | 減額要素を適用してよいかの可否判断 |
相続人向けの説明文・報告メモの下書き | 現地の状況と図面の食い違いの解釈 |
必要資料と取得先の一覧化 | 補正率表のどの行・列を使うかの最終確認 |
そのまま使えるプロンプト2例
あなたは相続税の財産評価に詳しい税理士の補助者です。
次の条件で、自用地としての価額を計算する過程を段階ごとに示してください。
- 正面路線価:【300,000】円/平方メートル
- 地区区分:【普通商業・併用住宅地区】
- 奥行距離:【35】メートル/奥行価格補正率:【0.97】
- 側方路線価:【200,000】円/平方メートル、奥行【20】メートル、補正率【1.00】、側方路線影響加算率【0.08】
- 地積:【700】平方メートル
条件に書かれていない補正率は推測せず「未入力」と明示してください。
最後に、私が国税庁の調整率表で再確認すべき項目を箇条書きで挙げてください。次の評価計算のメモを、相続人(税務の専門家ではない方)向けの説明文に書き直してください。
【計算メモを貼り付け】
条件:
- 専門用語には初出でかっこ書きの説明を添える
- 「概算であり、最終的な評価額は税理士が確定する」旨を末尾に必ず入れる
- 600字以内、断定を避けた表現にするうまくいかない例と直し方
最も多い失敗は、補正率そのものをAIに答えさせることです。「奥行35メートル・普通商業併用住宅地区の奥行価格補正率は?」と聞くと、それらしい数値が返ってきますが、根拠は生成モデルの推測であって調整率表ではありません。補正率は必ず人が国税庁の調整率表から読み取り、プロンプトに数値として渡す——これが唯一の直し方です。AIには「与えた数値で計算する」「与えていない数値は未入力と言わせる」という役割だけを割り当てます。
同じ理由で、路線価そのものをAIに調べさせてはいけません。路線価図はPDF地図であり、年分・正誤表・地区区分の塗り分けまで含めて正確に読むのは人の作業です。
士業AIの税務AIは、国税庁などの公的情報を参照しながら税務の調べ物や下書きを補助するサービスです。評価額の確定を代替するものではありませんが、「渡した数値での検算」「顧問先への説明文の下書き」「必要資料の洗い出し」といった工程を短縮できます。税理士向けの機能は税理士向けの税務AIのページで確認できます。相続税申告の工程全体にAIをどう組み込むかは、相続税申告のAI活用ガイドで工程別に整理しています。
よくある質問
令和8年分の奥行価格補正率表はどこにありますか
国税庁の「評価明細書・調整率表」ページにある「調整率表(平成31年1月分以降用)」を使います。2026年10月時点で令和8年分専用の表は出ておらず、この表が令和8年分の評価にも適用されます。数値は本記事の早見表のとおりです。
路線価図はどこで見られますか
国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で閲覧できるほか、全国の国税局・税務署でも無料でパソコンにより閲覧できます(国税庁 No.4604 質疑応答 Q5)。
相続開始の年の路線価がまだ公開されていません
その年分の路線価図・評価倍率表が公開されてから評価を行います(国税庁 No.4604 質疑応答 Q6)。前年分で済ませず、公開を待って評価します。路線価は毎年7月1日ごろに公開されます。
路線価が固定資産税評価額と違うのはなぜですか
路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に国税庁が定めるもので、市町村が定める固定資産税評価額とは決定主体も水準も異なります。倍率方式では、その固定資産税評価額に評価倍率を乗じて相続税評価額を出します。
借地権割合の計算はどうすればよいですか
借地権は自用地の価額×借地権割合、貸宅地は自用地の価額×(1-借地権割合)です。たとえば自用地4,300万円・記号D(60%)なら、借地権2,580万円、貸宅地1,720万円になります。借地権の取引慣行がないと認められる地域の貸宅地は、借地権割合を20%として計算します(国税庁 No.4613)。
路線価で出した評価額をそのまま申告に使ってよいですか
路線価方式で出せるのは骨格部分です。不整形地補正・セットバック・地積規模の大きな宅地などの減額要素や、小規模宅地等の特例の適用可否によって結論は大きく変わります。特例の要件は小規模宅地の特例のチェックシートと判定手順で確認したうえで、最終的な評価額は税理士に確定してもらってください。
まとめ|路線価の見方は「記号を読む」「表を引く」「補正を拾う」の三段構え
路線価図の見方そのものは難しくありません。数字は千円単位の1平方メートル単価、A〜Gは借地権割合90%〜30%、囲み記号は地区区分。この3つを読み、令和8年分も使う「平成31年1月分以降用」の調整率表から奥行価格補正率を引けば、正面路線価×奥行価格補正率×地積という骨格の計算まで到達できます。借地権・貸宅地・貸家建付地も、自用地の価額に借地権割合を掛けるか、その分を差し引くかの違いです。
実務の差が出るのはその先です。不整形地・間口狭小・セットバック・地積規模の大きな宅地といった減額要素を拾えるか、貸家建付地の賃貸割合を裏付け資料とともに説明できるか、路線価のない道路に接していることに早い段階で気づけるか。どれも路線価図を眺めているだけでは出てきません。読み取りと転記と検算はAIで詰め、判断と減額要素の拾い上げに時間を配分する。それが、この分野でAIを使う一番効率の良い形です。
参考文献
- 国税庁「令和8年分の路線価等について」
- 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
- 国税庁「路線価図の説明」
- 国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」
- 国税庁「評価明細書・調整率表」
- 国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」
- 国税庁「財産評価基本通達 付表1 奥行価格補正率表ほか」
- 国税庁 質疑応答事例「不整形地の奥行距離の求め方」
- 国税庁 財産評価基準書「東京都 借家権割合」(令和8年分)
- 国税庁 タックスアンサー No.4604 路線価方式による宅地の評価
- 国税庁 No.4604 関連質疑応答(セットバック・間口狭小・奥行長大・不整形地・閲覧方法・使用する年分)
- 国税庁 タックスアンサー No.4606 倍率方式による土地の評価
- 国税庁 タックスアンサー No.4607 特定路線価の設定の申出
- 国税庁 タックスアンサー No.4611 借地権の評価
- 国税庁 タックスアンサー No.4613 貸宅地の評価
- 国税庁 タックスアンサー No.4614 貸家建付地の評価
- 国税庁「財産評価基本通達」

