法人事業概況説明書の書き方|裏面の記載項目と税務調査で見られる欄【2026年】
法人事業概況説明書は、法人税の確定申告書に添付する「事業等の概況に関する書類」です。根拠は法人税法第74条第3項と法人税法施行規則第35条第1項第5号。様式は表裏2面で、表面に1〜11、裏面に12〜20の記載欄が並びます。現行様式は令和6年3月1日以後終了事業年度分で、表面「5 PCの利用状況」の(7)電帳法適用状況と、裏面「20 年末調整関係書類の電子化の状況」が新設されました。
この記事で分かることは次の6点です。
- 表面1〜11・裏面12〜20の各欄に「何を・どの単位で」書くか(記載要領ベース)
- 当期課税売上高・人件費(退職金の扱い)・源泉徴収税額など、迷いやすい欄の記載例
- 「会社事業概況書」(調査課所管法人用)との違いと、自社がどちらを使うか
- 令和6年3月1日以後終了事業年度分での2つの改訂点と、旧様式からの書き換え
- 税務調査で見られる欄と、申告書・決算書・消費税申告書とのどこが突合されるか
- 概況説明書の数値をAIに検算させる手順と、そのまま使えるプロンプト
申告担当が毎期いちばん時間を溶かすのは、欄の意味ではなく「決算書のどの数字を持ってくるか」の判断です。そこを記載要領のレベルで潰していきます。
法人事業概況説明書とは|添付の根拠条文と2つの様式
根拠は法人税法施行規則第35条第1項第5号
法人税法第74条第3項は「第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない」と定めます。これを受けた法人税法施行規則第35条第1項の第5号が次の書類です。
当該内国法人の事業等の概況に関する書類(当該内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む。)
この「事業等の概況に関する書類」の実務上の様式が法人事業概況説明書、カッコ書きの図が出資関係図です。同じ第35条第1項には第1号に貸借対照表・損益計算書、第3号に勘定科目内訳明細書が並びます。概況説明書は決算書や内訳明細書と同じ列に置かれた添付書類であり、任意のアンケートではありません。
なお同条に未添付の場合の効果は規定されていませんが、記載要領は「法人税確定申告書を提出する際には、『法人事業概況説明書』を添付してください」と明記しています。
「会社事業概況書」との違い|調査課所管法人は別様式
概況を書かせる様式は2種類あります。国税局の調査課が所管する法人(調査課所管法人)は「会社事業概況書」(最新は令和7年4月1日以後終了事業年度分)、税務署所管法人は「法人事業概況説明書」です。会社事業概況書の記載要領は冒頭で、どちらも法人税法施行規則第35条第1項第5号の「事業等の概況に関する書類」であり、調査課所管法人の場合にこちらの様式を使うと明記しています。根拠条文は同じで、所管によって様式が分かれているだけです。
項目 | 法人事業概況説明書 | 会社事業概況書 |
|---|---|---|
使う法人 | 税務署所管法人 | 調査課所管法人 |
現行様式 | 令和6年3月1日以後終了事業年度分 | 令和7年4月1日以後終了事業年度分(ほぼ毎年改訂) |
構成 | 表裏2面・1〜20欄 | 「総括表」「子会社等の状況」「ICTの概要」「海外取引等の概要」の4様式(外国法人・通算子法人は追加様式あり) |
主要科目・月別売上 | あり(10欄・18欄) | 様式上の欄なし |
電帳法・年末調整の電子化 | 5(7)・15欄・20欄 | 「ICTの概要」の中で記載 |
記載者の表示 | 欄なし | 各様式に「応答者」(氏名・部課・役職名・電話番号) |
中小法人の申告担当が触るのはほぼ法人事業概況説明書です。検索で「会社事業概況書」の記載例を見つけても、欄の構成がまったく違うので流用はできません。両様式は国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」のページに事業年度区分ごとに並んでいます。事業年度が違えば様式も違うため、過年度の控えを流用するときは版を必ず見てください。
出資関係図:完全支配関係がある他の法人を有する場合は出資関係図も添付します。決算期末時点で最上位の者(法人または個人)を頂点に系統的に記載し、所轄税務署・法人名・納税地・代表者氏名・事業種目・資本金等の額・決算期を一覧で示します。仮決算による中間申告書には添付不要です。
現行様式の2つの改訂点|令和6年3月1日以後終了事業年度分
令和6年1月公表の「法人事業概況説明書」の様式が改訂されますのとおり、改訂点は2つです。
表面:「5 PCの利用状況」に(7)電帳法適用状況が新設
判定は、過少申告加算税の軽減措置の適用要件を満たして優良な電子帳簿の保存等を行っているときが「優良」、電子データ保存だがそれ以外なら「一般」、国税関係書類をスキャナ保存していれば「スキャナ」です。
この改訂で実務が1つ楽になりました。旧様式では優良な電子帳簿に該当する場合、「(5)会計ソフト」欄のソフト名末尾に「(軽減)」と書き足していましたが、(7)欄の「優良」に該当を示せば不要です(改訂時のパンフレットは「○を付す」と案内していますが、現行の記載要領と様式は該当「1」・非該当「2」を記入する方式です)。前期の控えを写すとこれが残ります。保存要件は電子帳簿保存法2026の保存要件チェックで確認してください。
裏面:「20 年末調整関係書類の電子化の状況」が新設
記載要領は「16 税理士の関与状況」の「源泉徴収関係事務」欄に「1」(該当)を記載した場合に記載への協力を求めており、源泉所得税の税理士関与がない場合は省略して差し支えないとしています。16欄と20欄が連動する構造です。
表面(1〜11)の書き方|迷いやすい欄を項目別に
全欄に共通する一般的留意事項
- 有無・該当を問う欄は、該当(有)なら「1」、非該当(無)なら「2」を記入する方式。〇で囲む様式ではない(7欄・(7)電帳法適用状況などは非該当の欄にも「2」を記入)
- 金額は千円単位(千円未満切捨て)。ただし「取引金額」欄は百万円単位、「源泉徴収税額」欄は円単位
- 切捨てでゼロになった欄・記載すべき金額がない欄は空欄のまま(0と書かない)
- マイナスは数字の1つ上の桁の枠内に「△」または「-」。「▲」は使用しない
- 他の書類とホチキス止めせず、申告書に挟み込んで提出する
単位は「取引金額=百万円」「源泉徴収税額=円」の2つだけ別扱い、と覚えると事故が減ります。
1〜4欄:事業内容・支店・海外取引・期末従事員
欄 | 記載内容と注意点 |
|---|---|
1 事業内容 | 営む事業の内容。詳細は裏面「12 事業形態」に書く |
2 支店・子会社の状況 | 国内は支店・営業所・出張所・工場・倉庫等の総数。海外支店等は総数に加え主な所在地国と従業員数(複数国なら多い順に2つ)。海外子会社は総数と出資割合50%以上の数、主な2社の出資割合(小数点以下切捨て) |
3 海外取引状況 | 輸入・輸出の区分ごとに主な相手国名・取引商品名・取引金額(百万円単位)。取引種類は該当「1」・非該当「2」で、輸入・輸出の両方があれば両方「1」。輸出入以外の取引(手数料・ロイヤリティー・役務の提供・証券の売買・金銭の貸借・不動産の売買等)も同じく「1」「2」で記入 |
4 期末従事員等の状況 | (1)常勤役員以下の空欄に職種(工員・事務員・技術者・販売員等)と人数。「計のうち代表者家族数」は同居・別居を問わず、代表者本人は含めない。「計のうちアルバイト数」も別に書く。(2)賃金の定め方は固定給「1」・歩合給「2」・併用「3」、(3)社宅・寮の有無は有「1」・無「2」 |
5〜9欄:PC・販売形態・株主異動・経理の状況
5欄の「PC」にはタブレット端末・オフィスコンピュータ・ワークステーション・メインフレームも含みます。(3)利用形態は自己所有かリースかを問わず記載し、(4)会計ソフトの利用等は、会計ソフト(自社開発を含む)を使っていれば「1」。記帳代行を他社に依頼している場合も「1」です。6〜9欄で判断が割れるのは次の点です。
- 6 販売形態:電子商取引の有無と内容を「1」「2」で記入。「有・売上」が「1」なら(2)販売チャネル(自社HP・他社HP)も記入
- 7 株主又は株式所有異動の有無:株主の異動または株主間の持株数の異動があれば「有」。それが会社法第2条第32号の2の株式交付に伴うものなら「株式交付」欄にも「1」
- 8(1) 管理者:現金出納および預金通帳の管理責任者の氏名と、代表者との関係(親族/他人)
- 8(2) 試算表の作成状況:毎月/おおむね○月ごと/決算時のみ、のどれに当たるか
- 8(3) 源泉徴収対象所得:当期に扱った源泉徴収の対象所得(給与・報酬・料金・利子等・配当・非居住者・退職)ごとに該当「1」・非該当「2」。退職金を払った期は「退職」が「1」になる
- 8(4) 消費税:当期の課税売上高を千円単位で記載し、経理方式は税抜「1」・税込「2」。収益に税抜経理を適用しつつ、固定資産等の取得または経費等の支出のいずれかに税込経理を適用している場合は「税抜」の「1」
- 8(5) 社内監査:経理の社内監査の実施の有無。チェックシート等を使っていれば名称も記載
- 9 役員又は役員報酬額の異動の有無:当期に役員の交代や役員報酬額の改定があれば「1」
8(4)は税抜・税込が混在する顧問先で毎期迷う箇所です。「収益が税抜なら税抜」と押さえれば判定は一瞬です。課税売上高の集計手順は消費税申告の課税区分の仕分けと集計で整理しています。
8(4)「当期課税売上高」の書き方と記載例
法人事業概況説明書の記載要領は「当期の消費税の課税売上高を千円単位で記載」としか書いておらず、定義を置いていません。そこで消費税法上の「課税売上高」と同じ定義で書いておくのが、消費税申告書と突き合わされたときにいちばん説明しやすい方法です。消費税法第9条第2項と消費税法基本通達1-4-2から、ポイントは次の4つです。
- 税抜の金額で書く(税込経理の会社は消費税等を除く)
- 売上の返品・値引・割戻しなど売上げに係る対価の返還等は控除する
- 輸出免税の売上は含める。土地の譲渡・受取利息などの非課税売上と、不課税の取引は含めない
- 売上高勘定に限らない。固定資産(車両など)の売却代金や、雑収入に入った課税取引も含める
記載例(架空の数値)です。売上高(税抜)50,000千円のうち輸出売上5,000千円、売上値引(税抜)500千円、車両の売却代金(税抜)1,200千円、雑収入のうち課税取引(税抜)300千円、受取利息80千円の会社なら、50,000-500+1,200+300=51,000千円と書きます。輸出売上は売上高に含まれたまま、受取利息は非課税なので足しません。損益計算書の売上高(49,500千円)と一致しないのが正常で、ずれの内訳を説明できることが大事です。
なお、当期が免税事業者の場合は、売上に消費税が課されていないため税抜処理をせず、受け取った金額の全額が課税売上高になります(消費税法基本通達1-4-5)。
10欄:主要科目|「申告調整後の額」で書く欄と例外
表面の山場です。記載要領は「基本的には決算額によるが、申告調整(別表四または別表五(一)での加減算)がある場合には、『交際費』を除き、その調整後の額を記載する」と定めます。決算書からの転記ではなく、別表四・別表五(一)を見てから書く欄です。留意点は次のとおり(すべて千円単位)。
- 値引き・割戻し等は控除後の額。退職金は人件費に関する各科目(労務費・役員報酬・従業員給料)に含めない
- 「労務費」欄は福利厚生費等を除く。「交際費」欄は交際費等の支出額の合計額(ここだけ申告調整前)
- 「受取手形」「売掛金」欄は貸倒引当金の控除前の額。受取手形に融通手形は含めない
- 「建物」「機械装置」「車両・船舶」欄は減価償却累計額控除後。「土地」欄には借地権等を含める
- 「支払手形」欄には固定資産の購入に係る区分可能なものと融通手形を含めない。「買掛金」欄には原価性を有する未払金等を含める
- 「個人借入金」欄は銀行・信用金庫・信用組合以外からの借入金の合計額(代表者や親族、取引先、ノンバンクからの借入れもここ)。「その他借入金」欄は銀行・信用金庫・信用組合からの借入金
- 「資産の部合計」欄は「負債の部合計」+「純資産の部合計」と一致するよう検算する
業種別の注記もあります。不動産賃貸業の支払地代家賃・リース料、運送業の燃料費、金融業・保険代理業の支払利息割引料は、原価性を有するものを「原材料費(仕入高)」欄へ。金融業・保険代理業の未収利息は「売掛金」欄、未払利息は「買掛金」欄です。
別表四・別表五(一)の加減算の読み方に不安があるなら、法人税申告書 別表の書き方と別表四・五(一)の整合検証を先に通してから10欄に取りかかると手戻りが減ります。
11欄:代表者に対する報酬等の金額
同族会社の場合に千円単位で記載します。書くのは代表者に対する「報酬」「賃借料」「支払利息」「貸付金」「仮払金」と、代表者からの「借入金」「仮受金」。方向が2つに分かれます。会社から代表者への資金の出と、代表者から会社への資金の入が、一枚の紙で並んで見えることになります。
裏面(12〜20)の記載項目|表面より「読まれる」欄が多い
裏面は数字の欄が少なく、自由記述と月次推移が中心です。記載要領の解説が薄いぶん書きぶりが分かれ、差が出る面です。
12 事業形態/13 主な設備等の状況/14 決済日等の状況
12欄は、(1)兼業の状況(従たる事業内容と、売上高に占める兼業種目の割合)、(2)事業内容の特異性(同業種の法人と比較して相違している事項)、(3)売上区分(現金売上と掛売上の割合)の3つ。(2)は「同業と比べてどこが違うか」の自己申告欄で、粗利率が業種平均から離れている顧問先ほど空欄にしない意味があります。
13欄は主な設備等の名称・用途・型・大きさ・台数・面積等を記載します。記載要領は、店舗等なら店舗名・住所・延床面積・テーブル数・収容人員、倉庫等なら住所・延床面積・自社所有か賃貸かを例示し、機械装置の用途は製造(または作業)の工程と関連させて書くよう求めています。申告書の内訳明細書等に記載がある事項は省略可です。
14欄は締切日と決済日の欄で、記載要領に個別の解説はありません。様式上は売上・仕入・外注費が「締切日/決済日」、給料が「締切日/支給日」の4行です。営業時間・定休日は14欄ではなく、17欄の下段にあります。
15 帳簿類の備付状況|優良電子帳簿は名称末尾に「〇」
作成している帳簿類の名称を書く欄です。現行の記載要領では、国税関係帳簿ごとに優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行っている場合は、名称の末尾に「〇」を記載することとされ、記載例も「総勘定元帳〇、仕訳帳〇、固定資産台帳〇、経費帳〇、売掛帳〇、買掛帳〇、受注簿、発注簿…」と〇付き・〇なしが混在する形で示されています。
つまり15欄は表面5(7)の「優良」欄と整合しなければなりません。表面で「優良」に「1」を記入したのに裏面の帳簿名に1つも〇がない、あるいはその逆は自己矛盾です。
16〜17 税理士の関与状況・加入組合等/18 月別の売上高等の状況
16欄は税理士の氏名・事務所所在地・電話番号と、関与状況(申告書の作成・調査立会・税務相談・決算書の作成・伝票の整理・補助簿の記帳・総勘定元帳の記帳・源泉徴収関係事務)ごとの該当「1」・非該当「2」を書きます。複数関与なら主な1名について記載します。「源泉徴収関係事務」の「1」が20欄の記載要否を決めます。17欄は主な加入組合・団体等と役職名等に加え、営業時間(開店・閉店)と定休日。18欄は売上(収入)金額・仕入金額等を12か月分並べる欄で、記載要領の注記が実務上いちばん効きます。
- 複数の売上(収入)がある場合は主なもの2つについて原価とともに記載する
- 「人件費」欄は、その月の俸給・給与および賞与の支給総額(役員に対するものを含む)
- 「源泉徴収税額」欄は、人件費欄の支給総額について納付すべき税額(年末調整の過不足を精算した場合は精算後の税額)を円単位で記載
- 「従事員数」欄は、その月の支給人員(役員を含む)
- 「源泉徴収税額」欄の右の空欄には、掲記以外の主要な科目を書く。表の下には「計」と「前期の実績」の行がある
18欄の人件費・源泉徴収税額|退職金と年末調整の扱い
検索でも質問が多いのがこの2列です。記載要領の文言から、次のように整理できます。
- 退職金は人件費に入れない:人件費欄は「俸給・給与及び賞与の支給総額」と定義されており、退職手当は含まれません(10欄でも退職金は人件費科目から除くとされています)
- 源泉徴収税額は人件費欄の支給総額に対応する税額だけ:退職手当や税理士報酬などから天引きした所得税は、この列には入りません。退職金を支払ったことは表面8(3)の「退職」で示します
- 月は「納付した月」ではなく「支給した月」:その月の支給総額について納付すべき税額を書くので、納期の特例で半年分をまとめて納付していても、月別に分けて書く
- 年末調整は精算後:過不足を精算した月(通常は12月か翌年1月の支給月)は精算後の税額。還付が上回ってマイナスになる場合は「△」を付ける
記載例(架空の数値)です。12月に給与2,400千円・賞与3,000千円を支給し、源泉徴収税額が給与分98,500円・賞与分210,300円、年末調整の還付が45,800円なら、人件費欄は5,400(千円)、源泉徴収税額欄は98,500+210,300-45,800=263,000(円)。同じ月に退職金を払っていても、その支給額と退職所得の源泉税はどちらの欄にも足しません。年計を納付書と突き合わせるときは、納付書(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)のうち給与・賞与の分だけを拾います。書き方は源泉所得税の納付書の書き方と納期の特例、退職金側の計算は退職金の税金の計算方法と源泉徴収で確認できます。
19 当期の営業成績の概要/20 年末調整関係書類の電子化の状況
19欄は、経営状況の変化や経営方針の変更によって特に影響のあった事項を具体的に記載します。同様の内容を記載した別途の書類を作成している場合は、その書類を添付することでこの欄の記載を省略して差し支えありません。
20欄で書くのは、(1)年末調整関係申告書の取扱、(2)その電磁的方法での受付の可否、(3)保険料等の支払を証する書類の電磁的方法での受付の可否、(4)従業員による保険料等の支払を証する書類のマイナポータル連携での取得、(5)年末調整手続でのシステム利用、(6)利用するシステム(国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトウェア・自社製・市販ソフトとその名称)の6項目です。記載要領は「年末調整関係申告書」を扶養控除等申告書(従たる給与に係るものを含む)・特定親族特別控除申告書・配偶者控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書・所得金額調整控除申告書・住宅借入金等特別控除申告書、「保険料等の支払を証する書類」を保険料控除証明書(生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金)・住宅借入金等特別控除証明書・年末残高等証明書と定義しています。
(1)は、源泉徴収を要する給与等の支払がないなど提出を受ける機会がない場合に「無」。(2)(3)は全部または一部が電磁的方法で受付可能なら「可」。(4)はマイナポータル連携で取得しているものがあれば「有」、把握していなければ「未把握」を選べます。特定親族特別控除申告書は、令和7年12月以降の年末調整で特定親族特別控除の適用を受けようとする従業員が提出するもので、記載要領の定義に追加されています(様式の版は令和6年3月1日以後終了事業年度分のまま)。
税務調査で見られる欄と、申告書・決算書との突合ポイント
概況説明書が「調査先の選定」に効く理由
国税庁が令和7年12月に公表した令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要は、冒頭でこう述べています。
令和6事務年度においては、AIも活用しながら、あらゆる機会を通じて収集した資料情報等や申告書の分析・検討を行うことにより、調査必要度の高い法人を的確に抽出し、実地調査を実施しました。
同資料によれば、実地調査件数は5万4千件(対前年比92.6%)、申告漏れ所得金額は8,198億円、追徴税額(法人税・消費税)は3,407億円で直近10年の最高値、調査1件当たりの追徴税額は6,342千円(同115.4%)。件数は減っているのに1件当たりの追徴税額は増えている──選定の精度が上がっていると読めます。
「申告書の分析・検討」の材料には当然、添付書類も含まれます。概況説明書は、決算書に載らない情報(月別推移、代表者との資金のやりとり、経理体制、帳簿の種類、使用ソフト)を構造化された形で差し出す書類です。分析にかけやすい形で自ら提出している、という前提で書くべきものです。
効いてくるのは「単独の数字」ではなく「他の書類との差」
概況説明書の欄 | 突合先 | ずれたときに説明が要ること |
|---|---|---|
10 主要科目の各科目 | 決算書・別表四の加減算 | 申告調整後の額か(交際費だけは支出額合計) |
18 月別の売上・原価・人件費・源泉徴収税額の年計 | 損益計算書の各科目(人件費は役員報酬を含み退職金を除く)/納付書のうち給与・賞与分の税額 | 12か月合計が年間数値と一致するか。人件費は役員分を含む総額か、源泉徴収税額は年末調整の過不足精算後か |
8(4) 当期課税売上高 | 消費税及び地方消費税の確定申告書 | 税抜か、返還等控除後か、輸出免税を含めたか |
11 代表者に対する報酬等 | 勘定科目内訳明細書(役員報酬・貸付金・借入金) | 会社→代表者と代表者→会社の方向が正しいか |
5(7) 電帳法適用状況「優良」 | 15 帳簿類の備付状況の名称末尾「〇」 | 表裏で優良電子帳簿の申告が一致しているか |
16「源泉徴収関係事務」の「1」 | 20 年末調整関係書類の電子化の状況 | 「1」なのに20欄が空欄でないか |
特に11欄は、代表者と法人の資金の行き来が1か所に集約される唯一の欄です。貸付金・仮払金が期をまたいで残れば、認定利息や役員給与の論点につながります。調査対応の準備は税務調査に備える申告前セルフチェック手順にまとめています。
月別推移(18欄)の見られ方
18欄は12か月分の売上・原価・人件費・源泉徴収税額・従事員数が1枚に並び、年間数値では見えない次のことが読めます。
- 特定の月だけ売上が突出していないか(期末月の押し込み計上)
- 売上と原価の比率、人件費と従事員数の比率が月によって大きく振れていないか(在庫の期ずれ、原価の計上漏れ)
- 人件費に対する源泉徴収税額の比率が不自然でないか(納付漏れ、乙欄適用者)
数字が振れること自体は問題ではありません。振れた理由が19欄に書いてあるかどうかです。18欄と19欄はセットで書くということになります。
なお18欄の人件費は、社会保険の報酬とは範囲も対象月も異なります。4月から6月の報酬で標準報酬月額を決め直す手続きは算定基礎届の書き方と欄ごとの記入例にまとめているので、顧問先の給与担当から質問が出たときはそちらを案内してください。
AIに検算させる手順|そのまま使えるプロンプト
前提:数値の確定は人、差額探しはAI
概況説明書の検算は「決められた場所同士を突き合わせて差額を出す」作業で、判断がほとんど入りません。だからAIに向いています。逆に、申告調整をどう入れるかは判断そのもので、AIに決めさせてはいけません。AIは差額を見つける係、税理士は差額の意味を決める係です。12(2)事業内容の特異性のような文章欄も、AIには論点の洗い出しまでさせ、文章は担当者が事実に合わせて書いてください。
顧問先の数値を貼る前に、利用しているAIの学習設定・保存方針は確認してください。税理士法第38条の守秘義務との関係は顧問先データはAIに貼ってよいかの判断基準で整理しています。
プロンプト1:10欄「主要科目」と決算書の突合
あなたは法人税申告の実務担当です。次のA〜Cを突き合わせ、差額のある科目だけを表で出してください。
【A:法人事業概況説明書 10 主要科目(千円単位)】
(売上高・売上原価・原材料費(仕入高)・労務費・外注費・役員報酬・交際費・地代家賃・受取手形・売掛金・棚卸資産・建物・機械装置・車両船舶・土地・支払手形・買掛金・個人借入金・その他借入金・資産/負債/純資産の部合計)
【B:貸借対照表・損益計算書の該当科目】(貼り付け)
【C:別表四・別表五(一)の加減算項目】(貼り付け)
判定ルール:
1. 原則はCの申告調整を反映した「調整後の額」とAを比較する。ただし「交際費」はA側が支出額の合計額なので調整前で比較する。
2. 受取手形・売掛金は貸倒引当金の控除前、建物・機械装置・車両船舶は減価償却累計額控除後で比較する。土地に借地権等が含まれているかも確認する。
3. 「資産の部合計」=「負債の部合計」+「純資産の部合計」が成立するか検算する。
4. 千円未満切捨てによる1千円以内の差は「丸め」として区別する。
出力:科目|A|B(調整後)|差額|想定原因|確認すべき資料 の表のみ。差額ゼロの科目は出さない。
プロンプト2:18欄の年計と損益計算書・納付書の突合
次の月別データの年計を計算し、年間数値と突き合わせてください。
【法人事業概況説明書 18 月別の売上高等の状況】
月|売上(収入)金額|仕入金額|外注費|人件費|源泉徴収税額|従事員数
(12か月分を貼り付け。金額は千円単位、源泉徴収税額は円単位)
【比較対象】損益計算書の売上高/売上原価/人件費系科目の合計(役員報酬を含む)、納付書(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)のうち給与・賞与分の税額の年間合計(年末調整精算後。退職手当等・報酬等の税額は除く)
確認事項:
1. 各項目の12か月合計と年間数値の差額を出す。
2. 人件費が役員分を含み退職金を含まない総額かを確認し、ずれの可能性があれば指摘する。
3. 源泉徴収税額は円単位、その他は千円単位である前提で、単位取り違えによる桁ずれを検出する。
4. 売上に対する原価率、人件費に対する源泉徴収税額の比率を月別に算出し、年間平均から±20%以上乖離した月と、従事員数が前月比2割以上増減した月を列挙する。
出力:①差額サマリの表 ②要確認月のリスト
同じ形で「11欄と勘定科目内訳明細書(役員報酬・貸付金・借入金・仮払金)の金額と方向の突合」「8(4)当期課税売上高と消費税申告書の課税売上高の差額の要因分解」「後述のチェックリストをそのまま判定ルールにした記載漏れ・内部矛盾の検出」も作れます。突合先を貼る欄と判定ルールを差し替えるだけです。
うまくいかない例と、その直し方
- 「概況説明書をチェックして」とだけ投げると、AIは様式を再現できないため一般論が返る。突合先(決算書・別表・納付書)を同じプロンプトに貼ると初めて差額が出る
- 差額の原因までAIに断定させない。「想定原因」「要確認資料」の列を持たせると判断材料だけが返る
汎用AIで足りない部分をどう埋めるか
これらは汎用のAIチャットでも動きますが、様式の版が毎期変わる書類では「どの年度を前提に答えているか」が曖昧になりがちです。
士業AIの税理士向け税務AIは、国税庁などの公的情報を参照しながら申告書チェックや書類の下ごしらえを補助するツールです。概況説明書のように「様式は毎期変わるが作業は同じ」書類ほど、検算手順をプロンプトとして固定しておく効果が出ます。
提出前チェックリスト
- 様式が当期の事業年度に対応した版か(現行=令和6年3月1日以後終了事業年度分)
- 金額は千円単位(「取引金額」は百万円、「源泉徴収税額」は円)。マイナスは「△」か「-」。記載すべき金額がない欄は空欄にしたか
- 10欄が申告調整後の額か(交際費は支出額の合計額のまま)。「資産の部合計」=「負債の部合計」+「純資産の部合計」か
- 5(5)会計ソフト名に旧様式の「(軽減)」が残っていないか。5(7)「優良」の「1」と15欄の帳簿名末尾の「〇」が整合するか
- 8(4)当期課税売上高が税抜・返還等控除後・輸出免税込みで、消費税申告書と説明のつく数字か
- 18欄の人件費に退職金を入れていないか。源泉徴収税額が給与・賞与分のみ・支給月ベース・年末調整精算後か
- 16欄「源泉徴収関係事務」が「1」なら20欄((4)マイナポータル連携を含む)を記載したか
- 18欄の12か月合計が損益計算書・納付書と合うか。振れた月は19欄で説明したか
- 完全支配関係がある法人がある場合、出資関係図を添付したか(提出時はホチキス止めせず申告書に挟み込む)
よくある質問
電子申告(e-Tax)でも概況説明書は必要ですか
必要です。法人税法施行規則第35条第1項第5号の添付書類であることは提出方法で変わりません。申告ソフト側の様式設定が当期の事業年度に合っているかだけ確認してください。
19欄「当期の営業成績の概要」は必ず書かなければいけませんか
記載要領は、同様の内容を記載した別途の書類を作成している場合には、その書類を添付することで記載を省略して差し支えないとしています。ただし18欄で数値が大きく動いた期は、理由を残しておく実務上のメリットがあります。
会社事業概況書と法人事業概況説明書はどちらを使えばよいですか
調査課所管法人は会社事業概況書、それ以外の税務署所管法人は法人事業概況説明書です。根拠はどちらも法人税法施行規則第35条第1項第5号で、所管によって様式が分かれています。欄の構成がまったく違うため、記載例を相互に流用することはできません。
まとめ
法人事業概況説明書は表面1〜11・裏面12〜20の2面構成で、現行様式は令和6年3月1日以後終了事業年度分です。実務で効くのは各欄を単独で埋めることではなく、他の書類との整合を取ること。10欄は申告調整後の額、資産の部合計は負債+純資産で検算、18欄の年計は損益計算書と納付書に合わせる、表面5(7)と裏面15欄の「優良」表示を揃える、16欄の源泉徴収関係事務と20欄を連動させる──この5つで矛盾のない書類になります。突合には判断が入らないので、プロンプトを固定してAIに差額を出させ、税理士は差額の意味だけを判断する。この分担にすると、概況説明書は「最後に慌てて埋める紙」から「検算の締めくくり」に変わります。
参考文献
- 国税庁「法人事業概況説明書(令和6年3月1日以後終了事業年度分)」様式・記載要領(PDF)
- 国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」
- 国税庁「会社事業概況書の記載要領」(令和7年4月1日以後終了事業年度分・PDF)
- 国税庁「消費税法基本通達 第4節 小規模事業者に係る納税義務の免除」
- e-Gov法令検索「消費税法」(昭和63年法律第108号)
- 国税庁「『法人事業概況説明書』の様式が改訂されます。」(令和6年1月・PDF)
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月・PDF)
- e-Gov法令検索「法人税法施行規則」(昭和40年大蔵省令第12号)
- e-Gov法令検索「法人税法」(昭和40年法律第34号)

