法人事業概況説明書の書き方|裏面の記載項目と税務調査で見られる欄【2026年】
法人事業概況説明書は、法人税の確定申告書に添付する「事業等の概況に関する書類」です。根拠は法人税法第74条第3項と法人税法施行規則第35条第1項第5号。様式は表裏2面で、表面に1〜11、裏面に12〜20の記載欄が並びます。現行様式は令和6年3月1日以後終了事業年度分で、表面「5 PCの利用状況」の(7)電帳法適用状況と、裏面「20 年末調整関係書類の電子化の状況」が新設されました。
この記事で分かることは次の4点です。
- 表面1〜11・裏面12〜20の各欄に「何を・どの単位で」書くか(記載要領ベース)
- 令和6年3月1日以後終了事業年度分での2つの改訂点と、旧様式からの書き換え
- 税務調査で見られる欄と、申告書・決算書・消費税申告書とのどこが突合されるか
- 概況説明書の数値をAIに検算させる手順と、そのまま使えるプロンプト
申告担当が毎期いちばん時間を溶かすのは、欄の意味ではなく「決算書のどの数字を持ってくるか」の判断です。そこを記載要領のレベルで潰していきます。
法人事業概況説明書とは|添付の根拠条文と2つの様式
根拠は法人税法施行規則第35条第1項第5号
法人税法第74条第3項は「第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない」と定めます。これを受けた法人税法施行規則第35条第1項の第5号が次の書類です。
当該内国法人の事業等の概況に関する書類(当該内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む。)
この「事業等の概況に関する書類」の実務上の様式が法人事業概況説明書、カッコ書きの図が出資関係図です。同じ第35条第1項には第1号に貸借対照表・損益計算書、第3号に勘定科目内訳明細書が並びます。概況説明書は決算書や内訳明細書と同じ列に置かれた添付書類であり、任意のアンケートではありません。
なお同条に未添付の場合の効果は規定されていませんが、記載要領は「法人税確定申告書を提出する際には、『法人事業概況説明書』を添付してください」と明記しています。
「会社事業概況書」との違いと、出資関係図
概況を書かせる様式は2種類あります。国税局の調査課が所管する大規模法人は「会社事業概況書」(最新は令和7年4月1日以後終了事業年度分)、税務署所管法人は「法人事業概況説明書」です。中小法人の申告担当が触るのはほぼ後者。両様式は国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」のページに事業年度区分ごとに並んでいます。事業年度が違えば様式も違うため、過年度の控えを流用するときは版を必ず見てください。
完全支配関係がある他の法人を有する場合は出資関係図も添付します。決算期末時点で最上位の者(法人または個人)を頂点に系統的に記載し、所轄税務署・法人名・納税地・代表者氏名・事業種目・資本金等の額・決算期を一覧で示します。仮決算による中間申告書には添付不要です。
現行様式の2つの改訂点|令和6年3月1日以後終了事業年度分
令和6年1月公表の「法人事業概況説明書」の様式が改訂されますのとおり、改訂点は2つです。
表面:「5 PCの利用状況」に(7)電帳法適用状況が新設
判定は、過少申告加算税の軽減措置の適用要件を満たして優良な電子帳簿の保存等を行っているときが「優良」、電子データ保存だがそれ以外なら「一般」、国税関係書類をスキャナ保存していれば「スキャナ」です。
この改訂で実務が1つ楽になりました。旧様式では優良な電子帳簿に該当する場合、「(5)会計ソフト」欄のソフト名末尾に「(軽減)」と書き足していましたが、(7)欄の「優良」に〇を付ければ不要です。前期の控えを写すとこれが残ります。保存要件は電子帳簿保存法2026の保存要件チェックで確認してください。
裏面:「20 年末調整関係書類の電子化の状況」が新設
記載要領は「16 税理士の関与状況」の「源泉徴収関係事務」欄に〇印がある場合に記載への協力を求めており、源泉所得税の税理士関与がない場合は省略して差し支えないとしています。16欄と20欄が連動する構造です。
表面(1〜11)の書き方|迷いやすい欄を項目別に
全欄に共通する一般的留意事項
- 枠のある数字欄は1枠に1文字を右詰め。桁あふれのときは枠を無視する
- 金額は千円単位(千円未満切捨て)。ただし「取引金額」欄は百万円単位、「源泉徴収税額」欄は円単位
- 切捨てでゼロになった欄・記載すべき金額がない欄は空欄のまま(0と書かない)
- マイナスは数字の1つ上の桁の枠内に「△」または「-」。「▲」は使用しない
- 他の書類とホチキス止めせず、申告書に挟み込んで提出する
単位は「取引金額=百万円」「源泉徴収税額=円」の2つだけ別扱い、と覚えると事故が減ります。
1〜4欄:事業内容・支店・海外取引・期末従事員
欄 | 記載内容と注意点 |
|---|---|
1 事業内容 | 営む事業の内容。詳細は裏面「12 事業形態」に書く |
2 支店・子会社の状況 | 国内は支店・営業所・出張所・工場・倉庫等の総数。海外支店等は総数に加え主な所在地国と従業員数(複数国なら多い順に2つ)。海外子会社は総数と出資割合50%以上の数、主な2社の出資割合(小数点以下切捨て) |
3 海外取引状況 | 輸入・輸出の区分ごとに主な相手国名・取引商品名・取引金額(百万円単位)。両方あれば両方に〇。輸出入以外は手数料・不動産等の売買・金銭の貸借・役務の提供・ロイヤリティー等に〇 |
4 期末従事員等の状況 | 常勤役員以下の空欄に職種と人数。「計のうち代表者家族数」は同居・別居を問わず、代表者本人は含めない |
5〜9欄:PC・販売形態・株主異動・経理の状況
5欄の「PC」にはタブレット端末・オフィスコンピュータ・ワークステーション・メインフレームも含みます。(3)利用形態は自己所有かリースかを問わず記載し、(4)会計ソフトの利用等はクラウドによる利用を含めて「有」。6〜9欄で判断が割れるのは次の点です。
- 6 販売形態:電子商取引の有無と内容に〇。「有・売上」なら(2)販売チャネルの区分にも〇
- 7 株主又は株式所有異動の有無:株主の異動または株主間の持株数の異動があれば「有」。それが会社法第2条第32号の2の株式交付に伴うものなら「株式交付」にも〇
- 8(1) 管理者:現金出納および預金通帳の管理責任者の氏名と、代表者との関係(親族/他人)
- 8(4) 消費税:当期の課税売上高を千円単位で記載し経理方式に〇。収益に税抜経理を適用しつつ、固定資産等の取得または経費等の支出のいずれかに税込経理を適用している場合は「税抜」に〇
- 8(5) 社内監査:経理の社内監査の実施の有無に〇。チェックシート等を使っていれば名称も記載
8(4)は税抜・税込が混在する顧問先で毎期迷う箇所です。「収益が税抜なら税抜」と押さえれば判定は一瞬です。課税売上高の集計手順は消費税申告の課税区分の仕分けと集計で整理しています。
10欄:主要科目|「申告調整後の額」で書く欄と例外
表面の山場です。記載要領は「基本的には決算額によるが、申告調整(別表四または別表五(一)での加減算)がある場合には、『交際費』を除き、その調整後の額を記載する」と定めます。決算書からの転記ではなく、別表四・別表五(一)を見てから書く欄です。留意点は次のとおり(すべて千円単位)。
- 値引き・割戻し等は控除後の額。退職金は人件費に関する各科目に含めない
- 「労務費」欄は福利厚生費等を除く。「交際費」欄は交際費等の支出額の合計額(ここだけ申告調整前)
- 「受取手形」「売掛金」欄は貸倒引当金の控除前の額。受取手形に融通手形は含めない
- 「建物」「機械装置」「車両・船舶」欄は減価償却累計額控除後。「土地」欄には借地権等を含める
- 「支払手形」欄には固定資産の購入に係る区分可能なものと融通手形を含めない。「買掛金」欄には原価性を有する未払金等を含める
- 「個人借入金」欄は銀行・信用金庫・信用組合以外からの借入金の合計額。「その他借入金」欄はそれ以外
- 「資産の部合計」欄は「負債の部合計」+「純資産の部合計」と一致するよう検算する
業種別の注記もあります。不動産賃貸業の支払地代家賃・リース料、運送業の燃料費、金融業・保険代理業の支払利息割引料は、原価性を有するものを「原材料費(仕入高)」欄へ。金融業・保険代理業の未収利息は「売掛金」欄、未払利息は「買掛金」欄です。
別表四・別表五(一)の加減算の読み方に不安があるなら、法人税申告書 別表の書き方と別表四・五(一)の整合検証を先に通してから10欄に取りかかると手戻りが減ります。
11欄:代表者に対する報酬等の金額
同族会社の場合に千円単位で記載します。書くのは代表者に対する「報酬」「賃借料」「支払利息」「貸付金」「仮払金」と、代表者からの「借入金」「仮受金」。方向が2つに分かれます。会社から代表者への資金の出と、代表者から会社への資金の入が、一枚の紙で並んで見えることになります。
裏面(12〜20)の記載項目|表面より「読まれる」欄が多い
裏面は数字の欄が少なく、自由記述と月次推移が中心です。記載要領の解説が薄いぶん書きぶりが分かれ、差が出る面です。
12 事業形態/13 主な設備等の状況/14 決済日等の状況
12欄は、(1)兼業の状況(従たる事業内容と、売上高に占める兼業種目の割合)、(2)事業内容の特異性(同業種の法人と比較して相違している事項)、(3)売上区分(現金売上と掛売上の割合)の3つ。(2)は「同業と比べてどこが違うか」の自己申告欄で、粗利率が業種平均から離れている顧問先ほど空欄にしない意味があります。
13欄は主な設備等の名称・用途・型・大きさ・台数・面積等を記載します。記載要領は、店舗等なら店舗名・住所・延床面積・テーブル数・収容人員、倉庫等なら住所・延床面積・自社所有か賃貸かを例示し、機械装置の用途は製造(または作業)の工程と関連させて書くよう求めています。申告書の内訳明細書等に記載がある事項は省略可です。
14欄は締切日・決済日等と営業時間の欄で、記載要領に個別の解説はありません。売上・仕入・外注費・給料といった区分ごとに締切日と決済日を書く構造です。
15 帳簿類の備付状況|優良電子帳簿は名称末尾に「〇」
作成している帳簿類の名称を書く欄です。現行の記載要領では、国税関係帳簿ごとに優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行っている場合は、名称の末尾に「〇」を記載することとされ、記載例も「総勘定元帳〇、仕訳帳〇、固定資産台帳〇、経費帳〇、売掛帳〇、買掛帳〇、受注簿、発注簿…」と〇付き・〇なしが混在する形で示されています。
つまり15欄は表面5(7)の「優良」の〇と整合しなければなりません。表面で「優良」に〇を付けたのに裏面の帳簿名に1つも〇がない、あるいはその逆は自己矛盾です。
16〜17 税理士の関与状況・加入組合等/18 月別の売上高等の状況
16欄は関与状況の該当項目に〇を付け、複数関与なら主な1名について記載します。区分に「源泉徴収関係事務」が含まれ、ここの〇が20欄の記載要否を決めます。17欄は主な加入組合・団体等と役職名等。18欄は売上(収入)金額・仕入金額等を12か月分並べる欄で、記載要領の注記が実務上いちばん効きます。
- 複数の売上(収入)がある場合は主なもの2つについて原価とともに記載する
- 「人件費」欄は、その月の俸給・給与および賞与の支給総額(役員に対するものを含む)
- 「源泉徴収税額」欄は、人件費欄の支給総額について納付すべき税額(年末調整の過不足を精算した場合は精算後の税額)を円単位で記載
- 「従事員数」欄は、その月の支給人員(役員を含む)
19 当期の営業成績の概要/20 年末調整関係書類の電子化の状況
19欄は、経営状況の変化や経営方針の変更によって特に影響のあった事項を具体的に記載します。同様の内容を記載した別途の書類を作成している場合は、その書類を添付することでこの欄の記載を省略して差し支えありません。
20欄で書くのは、(1)年末調整関係申告書の取扱、(2)その電磁的方法での受付の可否、(3)保険料等の支払を証する書類の電磁的方法での受付の可否、(5)年末調整手続でのシステム利用、(6)利用するシステムです。記載要領は「年末調整関係申告書」を扶養控除等申告書(従たる給与に係るものを含む)・配偶者控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書・所得金額調整控除申告書・住宅借入金等特別控除申告書、「保険料等の支払を証する書類」を保険料控除証明書(生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金)・住宅借入金等特別控除証明書・年末残高等証明書と定義しています。
(1)は、源泉徴収を要する給与等の支払がないなど提出を受ける機会がない場合に「無」。(2)(3)は全部または一部が電磁的方法で受付可能なら「可」です。
税務調査で見られる欄と、申告書・決算書との突合ポイント
概況説明書が「調査先の選定」に効く理由
国税庁が令和7年12月に公表した令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要は、冒頭でこう述べています。
令和6事務年度においては、AIも活用しながら、あらゆる機会を通じて収集した資料情報等や申告書の分析・検討を行うことにより、調査必要度の高い法人を的確に抽出し、実地調査を実施しました。
同資料によれば、実地調査件数は5万4千件(対前年比92.6%)、申告漏れ所得金額は8,198億円、追徴税額(法人税・消費税)は3,407億円で直近10年の最高値、調査1件当たりの追徴税額は6,342千円(同115.4%)。件数は減っているのに1件当たりの追徴税額は増えている──選定の精度が上がっていると読めます。
「申告書の分析・検討」の材料には当然、添付書類も含まれます。概況説明書は、決算書に載らない情報(月別推移、代表者との資金のやりとり、経理体制、帳簿の種類、使用ソフト)を構造化された形で差し出す書類です。分析にかけやすい形で自ら提出している、という前提で書くべきものです。
効いてくるのは「単独の数字」ではなく「他の書類との差」
概況説明書の欄 | 突合先 | ずれたときに説明が要ること |
|---|---|---|
10 主要科目の各科目 | 決算書・別表四の加減算 | 申告調整後の額か(交際費だけは支出額合計) |
18 月別の売上・原価・人件費・源泉徴収税額の年計 | 損益計算書の各科目(人件費は役員報酬を含む)/源泉所得税の納付書の合計 | 12か月合計が年間数値と一致するか。人件費は役員分を含む総額か、源泉徴収税額は年末調整の過不足精算後か |
8(4) 当期課税売上高 | 消費税及び地方消費税の確定申告書 | 課税売上高の定義ずれがないか |
11 代表者に対する報酬等 | 勘定科目内訳明細書(役員報酬・貸付金・借入金) | 会社→代表者と代表者→会社の方向が正しいか |
5(7) 電帳法適用状況「優良」 | 15 帳簿類の備付状況の末尾「〇」 | 表裏で優良電子帳簿の申告が一致しているか |
16「源泉徴収関係事務」の〇 | 20 年末調整関係書類の電子化の状況 | 〇があるのに20欄が空欄でないか |
特に11欄は、代表者と法人の資金の行き来が1か所に集約される唯一の欄です。貸付金・仮払金が期をまたいで残れば、認定利息や役員給与の論点につながります。調査対応の準備は税務調査に備える申告前セルフチェック手順にまとめています。
月別推移(18欄)の見られ方
18欄は12か月分の売上・原価・人件費・源泉徴収税額・従事員数が1枚に並び、年間数値では見えない次のことが読めます。
- 特定の月だけ売上が突出していないか(期末月の押し込み計上)
- 売上と原価の比率、人件費と従事員数の比率が月によって大きく振れていないか(在庫の期ずれ、原価の計上漏れ)
- 人件費に対する源泉徴収税額の比率が不自然でないか(納付漏れ、乙欄適用者)
数字が振れること自体は問題ではありません。振れた理由が19欄に書いてあるかどうかです。18欄と19欄はセットで書くということになります。
AIに検算させる手順|そのまま使えるプロンプト
前提:数値の確定は人、差額探しはAI
概況説明書の検算は「決められた場所同士を突き合わせて差額を出す」作業で、判断がほとんど入りません。だからAIに向いています。逆に、申告調整をどう入れるかは判断そのもので、AIに決めさせてはいけません。AIは差額を見つける係、税理士は差額の意味を決める係です。12(2)事業内容の特異性のような文章欄も、AIには論点の洗い出しまでさせ、文章は担当者が事実に合わせて書いてください。
顧問先の数値を貼る前に、利用しているAIの学習設定・保存方針は確認してください。税理士法第38条の守秘義務との関係は顧問先データはAIに貼ってよいかの判断基準で整理しています。
プロンプト1:10欄「主要科目」と決算書の突合
あなたは法人税申告の実務担当です。次のA〜Cを突き合わせ、差額のある科目だけを表で出してください。
【A:法人事業概況説明書 10 主要科目(千円単位)】
(売上高・売上原価・原材料費(仕入高)・労務費・外注費・役員報酬・交際費・地代家賃・受取手形・売掛金・棚卸資産・建物・機械装置・車両船舶・土地・支払手形・買掛金・個人借入金・その他借入金・資産/負債/純資産の部合計)
【B:貸借対照表・損益計算書の該当科目】(貼り付け)
【C:別表四・別表五(一)の加減算項目】(貼り付け)
判定ルール:
1. 原則はCの申告調整を反映した「調整後の額」とAを比較する。ただし「交際費」はA側が支出額の合計額なので調整前で比較する。
2. 受取手形・売掛金は貸倒引当金の控除前、建物・機械装置・車両船舶は減価償却累計額控除後で比較する。土地に借地権等が含まれているかも確認する。
3. 「資産の部合計」=「負債の部合計」+「純資産の部合計」が成立するか検算する。
4. 千円未満切捨てによる1千円以内の差は「丸め」として区別する。
出力:科目|A|B(調整後)|差額|想定原因|確認すべき資料 の表のみ。差額ゼロの科目は出さない。
プロンプト2:18欄の年計と損益計算書・納付書の突合
次の月別データの年計を計算し、年間数値と突き合わせてください。
【法人事業概況説明書 18 月別の売上高等の状況】
月|売上(収入)金額|原価|人件費|源泉徴収税額|従事員数
(12か月分を貼り付け。金額は千円単位、源泉徴収税額は円単位)
【比較対象】損益計算書の売上高/売上原価/人件費系科目の合計(役員報酬を含む)、源泉所得税の納付書の年間合計(年末調整精算後)
確認事項:
1. 各項目の12か月合計と年間数値の差額を出す。
2. 人件費が役員分を含む総額かを確認し、含まれていない可能性があれば指摘する。
3. 源泉徴収税額は円単位、その他は千円単位である前提で、単位取り違えによる桁ずれを検出する。
4. 売上に対する原価率、人件費に対する源泉徴収税額の比率を月別に算出し、年間平均から±20%以上乖離した月と、従事員数が前月比2割以上増減した月を列挙する。
出力:①差額サマリの表 ②要確認月のリスト
同じ形で「11欄と勘定科目内訳明細書(役員報酬・貸付金・借入金・仮払金)の金額と方向の突合」「8(4)当期課税売上高と消費税申告書の課税売上高の差額の要因分解」「後述のチェックリストをそのまま判定ルールにした記載漏れ・内部矛盾の検出」も作れます。突合先を貼る欄と判定ルールを差し替えるだけです。
うまくいかない例と、その直し方
- 「概況説明書をチェックして」とだけ投げると、AIは様式を再現できないため一般論が返る。突合先(決算書・別表・納付書)を同じプロンプトに貼ると初めて差額が出る
- 差額の原因までAIに断定させない。「想定原因」「要確認資料」の列を持たせると判断材料だけが返る
汎用AIで足りない部分をどう埋めるか
これらは汎用のAIチャットでも動きますが、様式の版が毎期変わる書類では「どの年度を前提に答えているか」が曖昧になりがちです。
士業AIの税理士向け税務AIは、国税庁などの公的情報を参照しながら申告書チェックや書類の下ごしらえを補助するツールです。概況説明書のように「様式は毎期変わるが作業は同じ」書類ほど、検算手順をプロンプトとして固定しておく効果が出ます。
提出前チェックリスト
- 様式が当期の事業年度に対応した版か(現行=令和6年3月1日以後終了事業年度分)
- 金額は千円単位(「取引金額」は百万円、「源泉徴収税額」は円)。マイナスは「△」か「-」。記載すべき金額がない欄は空欄にしたか
- 10欄が申告調整後の額か(交際費は支出額の合計額のまま)。「資産の部合計」=「負債の部合計」+「純資産の部合計」か
- 5(5)会計ソフト名に旧様式の「(軽減)」が残っていないか。5(7)の〇と15欄の帳簿名末尾の「〇」が整合するか
- 16欄「源泉徴収関係事務」に〇があるなら20欄を記載したか
- 18欄の12か月合計が損益計算書・納付書と合うか。振れた月は19欄で説明したか
- 完全支配関係がある法人がある場合、出資関係図を添付したか(提出時はホチキス止めせず申告書に挟み込む)
よくある質問
電子申告(e-Tax)でも概況説明書は必要ですか
必要です。法人税法施行規則第35条第1項第5号の添付書類であることは提出方法で変わりません。申告ソフト側の様式設定が当期の事業年度に合っているかだけ確認してください。
19欄「当期の営業成績の概要」は必ず書かなければいけませんか
記載要領は、同様の内容を記載した別途の書類を作成している場合には、その書類を添付することで記載を省略して差し支えないとしています。ただし18欄で数値が大きく動いた期は、理由を残しておく実務上のメリットがあります。
まとめ
法人事業概況説明書は表面1〜11・裏面12〜20の2面構成で、現行様式は令和6年3月1日以後終了事業年度分です。実務で効くのは各欄を単独で埋めることではなく、他の書類との整合を取ること。10欄は申告調整後の額、資産の部合計は負債+純資産で検算、18欄の年計は損益計算書と納付書に合わせる、表面5(7)と裏面15欄の「優良」表示を揃える、16欄の源泉徴収関係事務と20欄を連動させる──この5つで矛盾のない書類になります。突合には判断が入らないので、プロンプトを固定してAIに差額を出させ、税理士は差額の意味だけを判断する。この分担にすると、概況説明書は「最後に慌てて埋める紙」から「検算の締めくくり」に変わります。

