税務×AI

法人税申告書 別表の書き方|別表四と五(一)の整合をAIで検証【2026年】

法人税申告書の別表は、1枚ずつ正しく書けても「申告書として正しい」とは限りません。実務で本当に難しいのは各別表の記入そのものではなく、別表四・別表五(一)・別表五(二)の3表がずれずに噛み合っているかを確かめるところです。この記事では、その整合の見方と、AIに任せてよい下ごしらえ・税理士本人が確定すべき範囲の線引きを、国税庁の一次情報と条文にあたって整理します。

この記事で分かること

  • 法人税申告書の別表の書式が法令でどう決まっているか(法人税法施行規則34条2項)
  • 別表四・別表五(一)・別表五(二)が「どこで繋がっているか」という連動の地図
  • 検算が合わないときに原因を切り分ける5ステップ
  • 令和8年4月1日以後開始事業年度からの防衛特別法人税で申告実務に何が増えたか
  • AIに任せてよい作業と、税理士本人が確定しなければならない作業の線引き

法人税申告書の別表とは|書式は法令で定められている

「この書式によらなければならない」と規則に書かれている

別表は単なる計算用紙ではありません。法人税法74条1項は、内国法人が各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、確定した決算に基づき所得金額・法人税額などを記載した申告書を提出しなければならないと定めています。そのうえで法人税法施行規則34条2項が、確定申告書とその添付書類の記載事項のうち別表一から別表十八(三)までに定めるものについて「これらの表の書式によらなければならない」と規定しています。

つまり別表は法令が指定した記載様式であり、任意の集計表ではありません(減価償却明細の別表十六(一)〜(六)だけは、同項ただし書きで項目を満たす別書式が認められています)。年度ごとに国税庁が様式を差し替えるため、実務では「使う事業年度の様式を国税庁サイトから取り直す」ことが最初の一手になります。

中核となる3つの別表

数十種類ある別表のうち、ほぼすべての申告で必ず登場し、かつ相互に連動するのが次の3つです。名称は国税庁が公表している令和8年4月1日以後終了事業年度分の一覧に基づきます。

別表

正式名称

役割

別表四

所得の金額の計算に関する明細書

当期純利益に加算・減算を加えて所得金額を出す(税務の損益計算書)

別表五(一)

利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

会計と税務のズレの残高を管理する(税務の貸借対照表)

別表五(二)

租税公課の納付状況等に関する明細書

税金の発生・納付・納税充当金の動きを記録する

別表四には簡易様式も用意されていますが、簡易様式でも別表五(一)・別表五(二)との連動の構造は変わりません。

2026年からの変更点:防衛特別法人税が加わった

令和7年3月31日公布の所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)により防衛特別法人税が創設され、国税庁の手続案内も「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」という名称に変わりました。国税庁とe-Taxの案内によれば、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は防衛特別法人税の納税義務者となり、税額が0であっても確定申告書の提出が必要です。中間申告書の提出は令和9年4月1日以後に開始する事業年度からとされています。

e-Taxの案内では、令和8年4月1日以後開始事業年度分のうち別表一・別表四・別表五関係はリリース済みで、リリース前の別表等はイメージデータ(PDF形式)で提出できるとされています。また納付書で納める場合は税目番号「030」(グループ通算法人は「032」)を記載するなど、納付手続の細部も変わりました。適用開始が事業年度単位である以上、決算月によって「今回から関係あるか」が変わる点は、顧問先案内でも誤りやすいところです。

別表四の書き方|出発点は「確定した決算」の当期純利益

会計の利益から税務の所得へ橋を架ける

法人税法22条1項は、各事業年度の所得の金額を「益金の額から損金の額を控除した金額」と定め、同条4項で益金・損金は原則として一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するとしています。会計と税務は大部分が重なるので、実務ではゼロから所得を計算し直さず、確定決算の当期純利益を起点に差分だけ調整します。この差分調整の作業表が別表四です。

したがって別表四の1行目に入る当期純利益は、決算書の当期純利益と一致していなければなりません。ここが合っていない申告書は、以降のすべての整合が崩れます。

「留保」と「社外流出」の振り分けが後工程を決める

別表四の加算・減算欄は、金額の右側で「留保」と「社外流出」に分かれます。この振り分けは単なる分類ではなく、別表五(一)に何が積み上がるかを決めるスイッチです。

  • 留保:会社の中に金額が残り、将来の事業年度で解消するズレ(未払事業税、賞与引当金、減価償却超過額、貸倒引当金繰入超過額など)。別表五(一)に残高として繰り越される
  • 社外流出:社外に出てしまい将来も戻らないズレ(交際費等の損金不算入額、寄附金の損金不算入額、法人税額から控除される所得税額、受取配当等の益金不算入額など)。別表五(一)には残らない

実務で判断を誤りやすいのは、同じ勘定科目でも取引の性質で振り分けが変わるケースです。「引当金だから留保」といった科目名での機械的な処理は、後で検算が合わない典型的な原因になります。

代表的な加算・減算項目

区分

項目

留保/社外流出

加算

損金経理をした法人税・住民税

留保

加算

損金経理をした納税充当金

留保

加算

損金経理をした附帯税(延滞税・加算税等)・罰金等

社外流出

加算

交際費等の損金不算入額

社外流出

加算

減価償却の償却超過額

留保

減算

納税充当金から支出した事業税等の金額

留保

減算

受取配当等の益金不算入額

社外流出

加算

法人税額から控除される所得税額

社外流出

加算・減算の根拠は条文に戻れます。法人税・地方法人税が損金に算入されないのは法人税法38条1項、延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税・印紙税の過怠税および地方税の延滞金・加算金が損金不算入となるのは同法55条4項、罰金・科料・過料や独占禁止法等の課徴金は同条5項です。所得税額控除を受けた所得税等の額が損金に算入されない点は、国税庁タックスアンサーNo.5760でも明示されています。科目の暗記ではなく条文に紐づけて覚えると、初見の論点でも判断の筋道が立ちます。この「調べ方」自体をAIで最新化する手順は、税法改正の調べ方をAIで最新化する記事で詳しく扱っています。

別表五(一)の書き方|別表四の「留保」がここに積み上がる

横の整合(期首+当期増減=期末)

別表五(一)のⅠは、会計と税務のズレの残高表です。各行は「期首現在利益積立金額」+「当期の減」「当期の増」=「差引翌期首現在利益積立金額」という横の計算で閉じます。減価償却超過額のように複数年にわたって解消する項目は、この行を追いかければ何年分の残高が残っているかが一目で分かります。

縦の整合(別表四の留保額との突合)

より重要なのが縦の整合です。別表四で「留保」に振り分けた加算・減算の合計は、別表五(一)Ⅰの当期増減に反映されなければなりません。実務では次の関係で検算します。

期首の利益積立金額の合計 + 別表四の留保所得金額(又は欠損金額) − 当期中に確定した法人税・住民税等の額 = 翌期首(=期末)の利益積立金額の合計

この等式が合わないときは、別表四の留保/社外流出の振り分け誤り、別表五(二)からの転記漏れ、期首残高の繰越ミスのいずれかであることがほとんどです。行番号は事業年度によって様式が改訂されるため、必ず使用する年度の様式で欄名を確認してください。過去の様式の行番号を暗記したまま作業すると、かえって事故が起きます。

繰越利益剰余金との照合

もう一つの定点観測が、別表五(一)Ⅰの「繰越損益金」の期末欄と、決算書(株主資本等変動計算書)の繰越利益剰余金の一致です。法人税法74条3項および施行規則35条1項により、確定申告書には貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書等の添付が必要ですから、添付書類と別表が食い違っていれば外形上すぐ分かります。この照合は、決算書チェックリストの作り方をまとめた記事の考え方をそのまま持ち込めます。

別表五(二)の書き方|納税充当金という「関節」

納税充当金が3表を繋いでいる

別表五(二)は租税公課の期首未納額・当期発生額・納付額・期末未納額を税目ごとに記録する表です。この表の下部にある納税充当金の増減欄が、3つの別表を繋ぐ関節になります。

  • 決算で未払法人税等(納税充当金)を計上した額 → 別表四で加算・留保(損金経理をした納税充当金)
  • 納税充当金を取り崩して事業税等を納付した額 → 別表四で減算・留保(納税充当金から支出した事業税等の金額)
  • 納税充当金の期末残高 → 別表五(一)Ⅰに残高として残る

事業税が納付事業年度の損金となるのに対し、法人税・住民税はそもそも損金にならない。この扱いの差を吸収するために納税充当金という仕組みが置かれている、と理解すると3表の動きが繋がります。「別表五(二)を最後に埋める」という順番で作業している事務所ほど、検算が合わないというのが現場の実感です。租税公課の動きを先に固めてから別表四に返すほうが、手戻りが減ります。

税率と税額の確認も別表五(二)の隣で起きる

納付額の妥当性を確かめるには税率の確認が要ります。国税庁タックスアンサーNo.5759によれば、普通法人の法人税率は23.2%、資本金1億円以下の中小法人等の年800万円以下の部分は15%です。ただし令和7年4月1日以後に開始する事業年度については、所得金額が年10億円を超える事業年度の年800万円以下の部分に適用される税率は17%とされ、適用除外事業者は19%です。地方法人税は地方法人税法10条1項により課税標準法人税額の10.3%です。

税率は「いつから開始する事業年度か」で分岐します。この分岐こそ、AIに一言で答えさせてはいけない代表例です。

検算が合わないときの切り分け5ステップ

整合が取れない申告書を前にして闇雲に見直すと時間だけが溶けます。原因の出やすい順に上流から潰すのが定石です。

  1. 入口を疑う:別表四の当期純利益が決算書の当期純利益と一致しているか。ここがずれていれば以降は全部ずれる
  2. 出口を疑う:別表五(一)Ⅰの繰越損益金の期末欄が、株主資本等変動計算書の繰越利益剰余金と一致しているか
  3. 振り分けを疑う:別表四の加算・減算のうち、留保/社外流出の欄が空欄または逆になっている行がないか。ズレ額が特定の1項目とぴったり一致するなら、ほぼこれ
  4. 転記を疑う:別表五(二)の納税充当金の増減と、別表四の「損金経理をした納税充当金」「納税充当金から支出した事業税等の金額」が対応しているか
  5. 繰越を疑う:前期の申告書の「差引翌期首現在利益積立金額」が、当期の「期首現在利益積立金額」にそのまま入っているか。前期に修正申告や更正があった場合は特に注意

ズレ額そのものがヒントになります。ズレが特定項目の金額と一致すれば振り分け誤り、法人税等の年税額と一致すれば納税充当金まわり、端数なら転記ミスや前期繰越の可能性が高い、といった当たりの付け方は、経験を言語化しておくと事務所内で共有できます。

AIに任せてよい範囲と、税理士本人が確定すべき範囲

任せてよいのは「下ごしらえ」まで

ここまで見たとおり、別表作成の負荷の大半は論点の洗い出しと突合にあります。この部分はAIとの相性が良い領域です。

  • 試算表・総勘定元帳を見ながら、加算・減算の候補になりそうな科目を列挙させる
  • 各候補について、留保か社外流出かの仮判定と、その根拠条文の当たりを出させる
  • 検算が合わないときに、考えられる原因を上流から順に並べ替えて仮説リストを作らせる
  • 顧問先への説明文(なぜ会計上の利益と税額が一致しないか)の下書きを作らせる
  • 前期比較で、前期にあった調整項目が当期に落ちていないかを一覧化させる

絶対に任せてはいけないこと

一方で、AIに申告書そのものを作らせて提出する運用は推奨しません。以下は税理士本人が確定させるべき領域です。

  • 数値の確定と様式への転記:別表は法人税法施行規則34条2項で書式が定められた法定様式であり、生成物をそのまま転記する前提の作業ではない
  • 税率・期限・適用開始事業年度の断定:中小法人の軽減税率も防衛特別法人税も「どの事業年度から」で結論が変わる。AIの回答は必ず国税庁の当該年度の資料で裏を取る
  • 申告書への署名、および税理士法33条の2の書面添付:これは税理士本人の判断と責任に属するもので、代替は効かない

この線引きは申告書チェックの場面でも同じで、税理士のChatGPT申告書チェック術で扱ったプロンプト運用や、書面添付制度の記載例とAI活用で整理した「AIは下書き、判断は本人」という原則と一貫しています。顧問先データを入力する前提条件については、顧問先データはAIに貼ってよいかを税理士法38条から整理した記事を先に確認してください。

そのまま使えるプロンプト例

加算・減算候補の洗い出しに使う型です。数値そのものではなく論点を出させるのがコツです。

あなたは日本の法人税実務に詳しいアシスタントです。
以下の試算表の勘定科目一覧から、法人税申告書別表四で
加算・減算の調整が必要になる可能性がある項目を洗い出してください。

【前提】
- 法人区分:【資本金1,000万円の普通法人】
- 事業年度:【2026年4月1日〜2027年3月31日】

【出力形式】
| 科目 | 加算/減算 | 留保/社外流出(仮) | 根拠条文の当たり | 確認すべき事実 |

【条件】
- 金額は計算しないでください。論点の洗い出しに徹してください
- 断定せず、判断が分かれる場合は「確認すべき事実」に何を見れば決まるかを書いてください
- 税率・期限は回答に含めないでください

【勘定科目一覧】
(ここに貼り付け)

うまくいかない例と直し方:「別表四を作成して」と丸ごと依頼すると、それらしい数値入りの表が返ってきますが、根拠のない金額が混ざります。「金額は計算しない」「論点だけ出す」と明示的に禁止することで、検証可能な出力に変わります。

検算が合わないときは、次の型が使えます。

法人税申告書の別表四・別表五(一)の検算が
【120,000】円合いません。原因の候補を、確認すべき順に並べてください。

【状況】
- 別表四の当期純利益と決算書の当期純利益:【一致している】
- 差額の金額と一致する調整項目:【心当たりなし】
- 前期に修正申告や更正:【なし】

【出力】
1. 疑う箇所 2. その理由 3. 私が実際に見るべき帳票と欄名
※ 結論を断定せず、切り分けの順番として提示してください

汎用AIでもここまでは十分に機能します。そのうえで、国税庁などの公的情報を参照しながら税務特化で応答するAIを使えば、根拠条文の当たりの精度が上がり、確認作業の往復が減ります。士業AIの税務AIは、申告書チェック・税法調査の補助・節税アドバイスの下ごしらえを日本語の実務文書前提でチューニングしており、無料登録のみで試せます。

国税庁等の公的情報を参照する税務特化AI のデモです。

よくある質問

法人税申告書の別表は全部提出する必要がありますか

すべてを提出するわけではなく、その法人・その事業年度に関係する別表を提出します。ただし別表一・別表二・別表四・別表五(一)・別表五(二)は多くの法人で共通して必要になります。どの別表が必要かは適用を受ける制度によって変わるため、国税庁が公表する事業年度ごとの別表一覧で確認してください。

申告期限を延ばすことはできますか

法人税法74条1項の原則は事業年度終了の日の翌日から2月以内です。同法75条の2は、定款等の定めや特別の事情により2月以内に定時総会が招集されない常況にあると認められる場合、税務署長への申請により提出期限を1月間延長できると定めています。さらに会計監査人を置き、定款等により3月以内に定時総会が招集されない常況にある場合などは、4月を超えない範囲で税務署長が指定する月数まで延長し得ます。申請は当該事業年度終了の日までに行う必要がある点に注意してください。なお延長は申告期限の話であり納付期限とは別です。

別表四の簡易様式と通常の様式はどう使い分けますか

国税庁は別表四について通常の様式と簡易様式を公表しています。簡易様式でも当期純利益から所得金額に至る構造や、留保・社外流出の考え方は変わりません。どちらを使う場合でも、別表五(一)・別表五(二)との整合を確認する手順は同じです。

防衛特別法人税は中小企業にも関係しますか

e-Taxおよび国税庁の案内では、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり、税額が0であっても申告書の提出が必要とされています。税額が生じるかどうかは基準法人税額と基礎控除額の関係によりますが、申告義務の有無と税額の有無は別です。適用開始は事業年度単位なので、自社・顧問先の決算月ごとに初回該当時期を確認してください。

まとめ

法人税申告書の別表は、1枚ずつの書き方よりも別表四の留保が別表五(一)へ、別表五(二)の納税充当金が別表四へという連動を押さえることで一気に見通しが良くなります。検算が合わないときは、入口(当期純利益)→出口(繰越損益金)→振り分け→転記→前期繰越の順に上流から潰すのが最短です。

AIは、この作業のうち論点の洗い出し・仮説出し・説明文の下書きを引き受けてくれますが、数値の確定と様式への記載、そして署名は税理士本人の仕事です。税率や適用開始事業年度のように年度で結論が変わる論点は、必ず国税庁の当該年度の資料で裏を取ってください。

申告期の全体的な工数配分は税理士の繁忙期をAIで効率化する記事、提出前のセルフチェックは申告前セルフチェック手順の記事が参考になります。他の税目については、消費税申告をAIで効率化する記事相続税申告のAI活用ガイド準確定申告のやり方と期限をまとめた記事個人事業主の確定申告×AI活用術もあわせてご覧ください。

参考文献

※ 条文(法人税法22条・38条・55条・74条・75条の2、法人税法施行規則34条・35条、地方法人税法10条)は e-Gov 法令検索の法令データにより本文を確認しています。制度は改正されるため、実務判断の際は必ず適用事業年度の最新条文と国税庁の公表資料をご確認ください。

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