法人税 別表四 加算・減算 一覧|留保と社外流出の判定をAIで
別表四で手が止まるのは、たいてい「この項目は加算か減算か」「留保か社外流出か」の一点です。科目名の暗記では初見の論点に対応できず、担当者ごとに判定がぶれます。本記事は実務頻出項目を加算・減算と留保・社外流出の2軸で棚卸しした判定一覧表と、条文へ戻る判断フレームです。条文はすべて e-Gov 法令検索の法令データで原文を確認しています。
この記事で分かること
- 判定が「所得を動かすか」「利益積立金額を動かすか」の2軸で決まる仕組み
- 実務頻出27項目の判定一覧表(加算/減算・留保/社外流出・根拠条文)
- 法人税等・未払事業税・交際費・寄附金・還付金など、判定を誤りやすい理由
- AI に判定候補を下書きさせるプロンプト例と、AI に任せてはいけない線引き
別表四の判定は「2つの軸」で決まる
別表四は区分ごとに総額を書き、それを「留保」と「社外流出」に振り分ける構造です。決めるべきことは2つしかありません。
第1軸:所得を増やすか減らすか(加算欄/減算欄)
法人税法22条は、益金・損金を別段の定めがあるものを除き一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するとしています(同条2項〜4項)。第1軸は「別段の定めを当てはめた後、税務の数字がどちらに振れるか」に尽きます。
- 費用に計上したが損金にならない → 加算(交際費等の損金不算入額など)
- 収益に計上したが益金にならない → 減算(受取配当等の益金不算入額など)
- 費用に計上していないが損金になる → 減算(前期加算した未払事業税の認容など)
- 収益に計上していないが益金になる → 加算(売上の計上漏れなど)
第2軸:利益積立金額を動かすか(留保/社外流出)
根拠は法人税法2条18号です。利益積立金額とは「法人の所得の金額で留保している金額として政令で定める金額」で、計算方法は施行令9条が定めます。同条1号は所得の金額等を積み上げたうえで「当該金額のうちに当該法人が留保していない金額がある場合には当該留保していない金額を減算した金額」とし、受取配当等の益金不算入額(同号ロ)や還付金等の益金不算入額(同号ホ)を明示的に足し戻しています。
ここから実務用の基準が導けます。別表五(一)に残高を作るなら留保、作らないなら社外流出です。将来解消するズレは残高管理が要るので留保、社外へ出た金額や、受取配当等の益金不算入のように利益積立金額へ足し戻される調整は残高を作らないので社外流出(※)です。
迷ったら「翌期以降にこの項目を認容する場面があるか」を自問してください。あるなら残高が要る=留保です。判定結果がどの表へ流れ込むかは、別表四と別表五(一)の整合をAIで検証する手順とあわせて読むと掴めます。
実務頻出項目の判定一覧表
中小法人の申告で頻度の高い項目を2軸で整理しました。略記は「法」=法人税法、「令」=同法施行令、「措法」=租税特別措置法、「基通」=法人税基本通達です。
加算項目の判定一覧
項目 | 区分 | 処分 | 根拠 |
|---|---|---|---|
損金経理をした法人税・地方法人税(中間納付分を含む) | 加算 | 留保 | 法38条1項 |
損金経理をした道府県民税・市町村民税 | 加算 | 留保 | 法38条2項2号 |
損金経理をした納税充当金 | 加算 | 留保 | 法22条3項2号・38条 |
損金経理をした附帯税(延滞税・各種加算税・印紙税の過怠税)、地方税の延滞金・加算金 | 加算 | 社外流出 | 法55条4項 |
罰金・科料・過料、独占禁止法等による課徴金・延滞金 | 加算 | 社外流出 | 法55条5項 |
隠蔽仮装行為に要する費用・損失、賄賂に相当する費用 | 加算 | 社外流出 | 法55条1項・6項 |
交際費等の損金不算入額 | 加算 | 社外流出 | 措法61条の4第1項・2項 |
寄附金の損金不算入額 | 加算 | 社外流出 | 法37条1項・2項 |
役員給与の損金不算入額(支給済みのもの) | 加算 | 社外流出 | 法34条1項 |
法人税額から控除される所得税額 | 加算 | 社外流出 | 法40条 |
法人税額から控除される外国税額 | 加算 | 社外流出 | 法41条 |
減価償却の償却超過額 | 加算 | 留保 | 法31条1項 |
繰延資産の償却超過額 | 加算 | 留保 | 法32条1項 |
一括償却資産の損金算入限度超過額 | 加算 | 留保 | 令133条の2第1項 |
貸倒引当金の繰入限度超過額 | 加算 | 留保 | 法52条1項・2項 |
賞与引当金・退職給付引当金の繰入額 | 加算 | 留保 | 法22条3項2号(債務確定基準) |
資産の評価換えによる評価損の否認 | 加算 | 留保 | 法33条1項 |
未払計上した寄附金 | 加算 | 留保 | 令78条 |
減算項目の判定一覧
項目 | 区分 | 処分 | 根拠 |
|---|---|---|---|
納税充当金から支出した事業税等の金額 | 減算 | 留保 | 基通9-5-1(1)・9-5-2 |
減価償却超過額の当期認容額 | 減算 | 留保 | 法31条1項 |
貸倒引当金繰入限度超過額の当期認容額 | 減算 | 留保 | 法52条 |
資産の評価換えによる評価益の益金不算入 | 減算 | 留保 | 法25条1項 |
前期に加算した未払寄附金の当期支払分 | 減算 | 留保 | 令78条 |
受取配当等の益金不算入額 | 減算 | 社外流出 | 法23条1項・令9条1号ロ |
外国子会社から受ける配当等の益金不算入額 | 減算 | 社外流出 | 法23条の2第1項・令9条1号ハ |
法人税・住民税等の還付金額(益金不算入) | 減算 | 社外流出 | 法26条1項・令9条1号ホ |
欠損金の当期控除額 | 減算 | 社外流出 | 法57条1項 |
この表は暗記用ではなく照合用です。根拠欄が埋まらない項目は判定が固まっていない証拠だと考えてください。条文の版が古びていないかの確認方法は税法改正の調べ方をAIで最新化する手順にまとめています。
間違えやすい項目|なぜ判定を誤るのか
法人税・住民税は「社外流出」ではなく「留保」
国や自治体に納めるのだから社外へ出ている、と直感で考えるのが誤りの原因です。実際は加算・留保。納付前の税額が未納法人税等として、納税充当金が残高として別表五(一)で管理されるためです。
未払事業税は当期の損金にならない
事業税は損金になる税目ですが、損金になる時期がずれます。法人税基本通達9-5-1(1)は、申告納税方式による租税について「納税申告書に記載された税額については当該納税申告書が提出された日の属する事業年度」の損金とすると定めます。決算で計上した当期分の事業税は、申告書を提出する翌期の損金です(通達9-5-2は直前年度分について、期末までに申告等がなくても損金算入できる特例を置く)。
実務では納税充当金を経由するため、当期は「損金経理をした納税充当金」で加算・留保、翌期は「納税充当金から支出した事業税等の金額」で減算・留保という対称の動きになります。片側だけ入れて検算が狂う事故が多い箇所です。
交際費は「加算しすぎ」が起きやすい
租税特別措置法61条の4第6項2号と同法施行令37条の5第1項により、飲食費のうち参加者1人当たり1万円以下のものはそもそも交際費等に該当しません(専ら自社の役員・従業員等への接待等のためのものを除く)。国税庁タックスアンサーNo.5265によれば、令和6年3月31日以前に支出された飲食費の基準額は5,000円以下です。適用には年月日・参加者の氏名や人数等を記載した書類の保存が要件(同条8項)である点も見落とされがちです。
損金不算入額の計算も、期末資本金1億円以下等の法人は「接待飲食費の50%超の部分」と「800万円の定額控除限度額超の部分」のいずれかを選べ、期末資本金100億円超の法人は全額が損金不算入です。規模を見ずに一律800万円で計算すると誤ります。
寄附金だけが「支出ベース」で判定される
費用の損金算入は原則として債務確定基準(法22条3項2号)ですが、寄附金は例外です。施行令78条は、寄附金の支出は所得の金額の計算については「その支払がされるまでの間、なかつたものとする」と定めます。未払計上した寄附金は当期の寄附金の額に含まれず加算・留保となり、支払った事業年度で減算・留保になります。損金不算入額は社外流出、未払部分は留保と、同じ勘定科目から2種類の調整が出るため混線します。
還付金には益金不算入にならないものがある
法人税法26条1項が益金不算入としているのは、法38条1項・2項で損金不算入とされた法人税・地方法人税・住民税や、法55条4項の附帯税などもともと損金にならなかった税金の還付です。損金に算入されていた事業税の還付金は益金に算入され、減算は不要。還付加算金も同項の列挙にないため益金です。「還付にまつわるものは全部減算」と処理すると所得を過少に計算します。
減価償却超過額の認容は「残高の範囲内」でしか使えない
法人税法31条1項は、損金経理額のうち償却限度額に達するまでの金額を損金算入すると定めています。当期の償却額が限度額に届かなくても、その不足額を無条件に減算できるわけではありません。減算できるのは過年度に加算した償却超過額の残高の範囲内です。入力前に必ず別表五(一)の残高を確認してください。整合を機械的に点検する枠組みは決算書チェックリストの作り方が使えます。
役員給与は「支給済みか未払か」で処分が変わる
法人税法34条1項で損金不算入となった役員給与は、すでに支払われている以上は社外流出です。一方、期末に未払計上したまま支給していない役員賞与を否認する場合は会社に資金が残るため留保になります。項目名ではなく資金が社外へ出たかで判断してください。
AIに判定を下書きさせるプロンプト例
2軸と根拠を、そのまま AI への指示に落とし込みます。答えを出させるのではなく、候補と根拠と確認事項を出させるのがポイントです。
プロンプト1:試算表から調整候補を洗い出す
あなたは法人税申告の補助担当です。以下の決算数値をもとに、
別表四で調整が必要になりそうな項目の「候補」を列挙してください。
【期末資本金】【1,000万円】/【中小法人等に該当】【はい】
【事業年度】【2026年4月1日〜2027年3月31日】
【試算表の抜粋】【勘定科目と金額を貼る】
出力(表):
| 勘定科目 | 調整候補 | 加算/減算 | 留保/社外流出 | 根拠と考えられる条文 | 確認が必要な事項 |
制約:
- 断定せず「候補」として出し、確度が低いものはその旨を明記する
- 根拠条文が特定できない項目は「不明」と書き、推測で条文番号を書かない
- 金額計算はせず、判定の枠組みと確認事項の洗い出しに徹するプロンプト2:1項目を2軸で判定させる
次の取引について、別表四での取扱いを2つの軸に分けて説明してください。
【取引の内容】【期末に未払計上した役員賞与3,000,000円。事前確定届出給与の届出なし】
【会社の状況】【期末資本金1,000万円・同族会社・3月決算】
出力:
1. 第1軸(加算か減算か)とその理由
2. 第2軸(留保か社外流出か)。別表五(一)に残高が立つかで説明する
3. 根拠となる条文・通達の候補(条文番号と条見出し)
4. この判定が変わりうる前提条件
5. 税理士が事実確認すべき点
制約:確認できない条文は引用せず「原文の確認が必要」と明記すること。うまくいかない例 → 直し方
- 「別表四の加算項目を教えて」だけ投げる → 一般論の羅列で自社の試算表に紐づかない。直し方:資本金・事業年度・勘定科目と金額を添え、出力を表形式に固定する。
- 条文番号を断定させる → もっともらしい誤りが混じる。直し方:「確認できないものは不明と書く」を制約に入れ、返答は e-Gov 法令検索で原文確認する。
- 金額計算まで任せる → 定額控除限度額や償却限度額の計算で誤りが入る。直し方:役割を判定の枠組みの提示に限定する。
- 顧問先の実データを外部サービスへそのまま貼る → 守秘義務の観点で問題になりうる。直し方:固有名詞を伏せるか、業務利用が明示された環境を使う。線引きは顧問先データをAIに入力してよいかの判断基準で整理しています。
業務別に型を増やすなら税理士のChatGPTプロンプト集、申告書全体のチェック観点は申告書チェックのプロンプト集が対応しています。
AIに任せてよい範囲と、税理士が確定すべき範囲
正直に書きます。別表四の判定はAI に最終判断をさせてよい領域ではありません。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務であり、申告内容の責任は署名する税理士が負います。AI の役割は判断の前段にある作業の圧縮に限られます。
任せてよいのは、調整候補の洗い出し、判定理由の言語化、根拠条文の当たりをつけること、担当者間で判定がぶれていないかの整合チェックといった下ごしらえです。逆に、適用条文の最終確定、事実認定(その支出は交際費か会議費か)、金額の確定、署名は渡してはいけません。
特に危険なのが条文番号と数値基準です。交際費の飲食費基準が5,000円から1万円へ変わった例のように、学習データの時点によっては古い基準を自信ありげに提示してきます。AI が出した条文番号と数値は必ず e-Gov 法令検索と国税庁の資料で突き合わせる。この工程を省かないことが、AI を実務に載せる条件です。
士業AI の税務AI は、国税庁など公的情報を参照しながら税務実務の下書きを支援するツールで、本記事で扱った下ごしらえの短縮に向いています。挙動は次のデモで確認できます。
関連して、申告期の作業量を組み替えるなら繁忙期のタスク再配分、月次で調整項目の芽を潰すなら巡回監査の効率化、申告後の備えは申告前セルフチェックの手順、判定根拠を書面で示すなら書面添付制度の記載例、似た構造の論点として消費税の課税区分の仕分けがあります。
よくある質問
留保と社外流出をいつも間違えます
「別表五(一)に残高が立つか」の一問に置き換えてください。翌期以降に認容する場面があるなら留保、ないなら社外流出です。法人税法2条18号と施行令9条の利益積立金額の計算に反映されるか、が正式な判断軸になります。
還付加算金も減算するのでしょうか
減算しません。法人税法26条1項が益金不算入とするのは法38条や法55条4項で損金不算入とされた税金等の還付であり、還付加算金は列挙に含まれないため益金に算入されます。
一覧表を暗記すれば実務は回りますか
回りません。様式も条文も事業年度ごとに変わるため、一覧表は照合用として使い、初見の論点は必ず条文に戻ってください。①会計と税務のどちらにズレているか、②別表五(一)に残高を作るか。この2軸に分解すれば暗記なしで筋道が立ちます。法人税・住民税は留保、未払事業税は翌期の損金、還付加算金は益金、寄附金だけが支出ベース。この4点だけでも検算が合わない原因の多くは潰せます。士業AI は無料で試せます。
参考文献
- e-Gov 法令検索「法人税法」(2条18号・22条・26条・31条〜34条・37条・38条・55条ほか)
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(9条・78条・133条の2)
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(61条の4)
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法施行令」(37条の5)
- 国税庁「法人税基本通達 第5節 租税公課(9-5-1・9-5-2)」
- 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」
※ 条文はすべて e-Gov 法令検索の法令データで原文を確認しています。税制は毎年改正され、適用時期は事業年度単位で異なります。実務判断の際は必ず適用事業年度の条文と国税庁の公表資料をご確認ください。

