源泉所得税の納付書の書き方|欄ごとの記入と納期の特例【2026年】
源泉所得税の納付書は、正式名称を「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」といい、給与・退職手当・税理士等の報酬から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を納めるための用紙です。書き方の要点は3つで、(1)「年度」「税務署名」「整理番号」「納期等の区分」「合計額」を記載漏れなく埋める、(2)所得の種類ごとに用意された区分(俸給・給料等/賞与/退職手当等/税理士等の報酬)へ支払年月日・人員・支給額・税額を振り分ける、(3)納期の特例を受けているかどうかで様式と書き方が変わる、これだけです。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 納付書の各欄に何を書くか(国税庁「納付書の記載のしかた」に沿って欄の名称ベースで整理)
- 納期の特例(7月10日・1月20日納付)を受けている場合の、一般用との書き分け
- 年末調整の不足税額・超過税額、誤納額の充当など迷いやすいケースの処理
- e-Taxでの提出とキャッシュレス納付の関係、税額0円でも提出が要る理由
- 2026年9月24日の納付書の様式変更と、2027年から始まる防衛特別所得税の影響
窓口に持ち込む「納付書」と税務署へ出す「所得税徴収高計算書」は1枚の複写式用紙が兼ねています。納付書を書く行為は、納税と同時に「いくらの給与にいくら源泉徴収したか」を報告する行為でもあり、税額だけでなく人員・支給額まで正確さが求められます。この用紙は居住者に支払う給与・退職手当・税理士等の報酬に使うもので、原稿料や講演料など他の報酬・料金は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」、非居住者分は「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」と、別様式に分かれます。また国税庁の記載要領は冒頭で「納期の特例の適用を受けている場合と受けていない場合とでは様式が異なっていますので注意してください」と明記しています。
納付書の各欄に何を書くか(欄の名称で覚える)
納付書の様式は改訂されることがあります。「上から3行目」「左端の欄」といった位置で覚えず、欄の名称で覚えるのが実務上いちばん安全です。以下、国税庁の記載要領に沿って名称ベースで説明します。
記載漏れが致命的になる5つの欄
国税庁は「年度」「税務署名」「整理番号」「納期等の区分」「合計額」の各欄について、記載漏れのないよう注意を促しています。「年度」は暦年ではなく会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)を2桁で書く欄で、基準は「納付する日」です。1月から3月に納付する場合は前年度の数字になる点に注意してください。なお「税務署番号」欄の記載は不要です。
「納期等の区分」欄には、給与・退職手当・税理士等の報酬を支払った年月を書きます。「計算対象月」ではなく「支払った月」である点が最大の落とし穴で、月末締め翌月払いの顧問先では1か月ずれます。
所得の種類ごとに区分が分かれている
納付書は所得の種類ごとに行が分かれ、それぞれ「支払年月日」「人員」「支給額」「税額」を書きます。
区分 | 書く内容 | 実務での注意 |
|---|---|---|
俸給、給料等 | 俸給・給料・賃金・歳費などの通常の給与 | 同じ月に2回以上支払ったときは「最後の支払年月日」を書く |
賞与(役員賞与を除く) | 法人は役員賞与以外の賞与、個人は必要経費に算入した賞与 | 使用人兼務役員の使用人職務分を含む |
日雇労務者の賃金 | 日額表の丙欄を適用して源泉徴収したもの | 人員は実人員ではなく延べ人員 |
退職手当等 | 退職手当、一時恩給など | 所得税法第31条でみなされる一時金も含む |
税理士等の報酬 | 弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士・司法書士・土地家屋調査士など | 対象士業は記載要領に列挙。列挙外の報酬は別様式 |
役員賞与 | 法人税法第2条第15号の役員に支払った賞与 | 「同上の支払確定年月日」欄もセットで記入 |
「人員」は原則として支給した実人員で、日雇労務者の賃金だけが延べ人員という例外です。
納期の特例を受けている場合の書き方
「納期等の区分」と「支払年月日」は最初と最後を書く
納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者だけが受けられる制度です。承認を受けている場合、「納期等の区分」欄には特例期間の最初と最後の支払年月を書きます。7月から12月分をまとめて翌年1月20日に納めるなら、7月と12月の両方を記載するということです。「支払年月日」項も同様に、その期間内に支払った最初と最後の支払年月日を書きます。1月から6月分なら1月の支給日と6月の支給日、という具合です。
そして「人員」項は、特例の場合実人員の合計数を書きます。従業員5人に6か月支払ったなら5ではなく30です。5のまま出す誤りは毎年7月10日と1月20日の直前に必ずどこかで起きます。給与計算のチェックをAIで行う検算の手順と組み合わせると精度が上がります。
特例はいつから使えるのか(適用開始の勘違い)
特例は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を給与支払事務所等の所轄税務署へ提出して受けます。国税庁は、提出月の翌月末日までに承認・却下の通知がなければその翌月末日に承認があったものとされ、申請の翌々月の納付分から適用されるとしています。
つまり申請した月に支払った給与の源泉税は、原則どおり翌月10日までに一般用の納付書で納めます。「申請月からすぐ半年払いにできる」と誤解した顧問先が納付を止めることがあります。案内時は、最初の1回だけ毎月納付が残る旨を必ず添えてください。案内文の型は顧問先メールをAIで時短作成する記事が流用できます。
年末調整・誤納額など、摘要欄が必要になるケース
年末調整による不足税額・超過税額
納付書には「年末調整による不足税額」欄と「年末調整による超過税額」欄が独立して用意されています。年末調整の結果、不足額を徴収したときは前者に、超過額を還付したときは後者に、その月に実際に徴収・還付した金額を書きます。納期の特例の場合は、年末調整を行った月分(通常は12月分)を含む7月から12月分の納付書で精算します。
注意点として、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を提出して還付を受ける分は超過税額欄に含められません。二重控除は納付不足になります。年末調整そのものの手順は年末調整の申告書の書き方をまとめた記事、その年の改正論点は年末調整の変更点を整理した記事を参照してください。顧問先への依頼文は年末調整の案内文テンプレートが使えます。
摘要欄に一言書くことで処理が通る場面
摘要欄は自由記入欄ではなく、国税庁が記載内容を定めている欄です。登場頻度が高いのは次の3つです。
- 誤納額の充当:「誤納額充当届出書」を提出して充当する場合、給与等の「税額」項には源泉徴収した税額から充当額を差し引いた残額を書き、摘要欄に「誤納充当金額○○円」と記載します
- 租税条約適用分:租税条約により所得税が免除される者についての徴収高計算書は別に作成し、摘要欄に「租税条約適用分」と記載します
- 1年経過賞与分:支払確定後1年を経過した日に未払となっている役員賞与を納付する場合、納付書を別に作成し摘要欄に「1年経過賞与分」と記載します
また、司法書士・土地家屋調査士・海事代理士の業務に関する報酬・料金は、摘要欄に「司」と表示し、その人員・支給額・税額を記載します。源泉徴収税額の計算方法が他の士業と異なることが背景にあると考えられます。
提出と納付の方法(納付書を書かない選択肢)
税額0円でも提出が必要
国税庁は「納付する税額がない場合でも、税額が0円の所得税徴収高計算書を提出する必要があります」と明示しています。休眠中の顧問先や全員が税額0円になった月も提出は必要です。なお税額0円の写しには収受日付印が押されないため、提出年月日は自分で記録・管理してほしいとも案内されています。事務所で提出台帳を持つのが安全です。
キャッシュレス納付(ダイレクト納付・インターネットバンキング・クレジットカード納付・スマホアプリ納付)を使うには、事前にe-Taxで徴収高計算書データを作成・送信する必要があります。税額0円のデータも送信できます。国税庁は納付書を使わない手段で納付した方への事前送付を取りやめていますが、源泉所得税の徴収高計算書は引き続き送付していると案内しています。
納付書で納めるなら「税務署で用意した用紙」を使う
紙で納める場合、国税庁は「必ず税務署で用意した所定の納付書」を使うよう求めています。納付書のコピーや会計ソフトで市販用紙に印刷したものは、機械処理での読み取りが正しく行えず納付事実の確認に時間を要する可能性があるとされています。用紙が足りなければ最寄りの税務署に問い合わせてください。
士業AIは、税理士・会計士・司法書士などの実務に特化したAIチャットサービスです。国税庁の公的情報を参照しながら回答する税務AIを備え、「納期の特例の場合の人員はどう数えるか」といった確認を根拠付きで調べられます。
納期限に遅れたときと、2026年9月の様式変更
延滞税と不納付加算税
納付期限が土曜日・日曜日・祝日などの休日に当たる場合は、その休日明けの日が期限です。それを過ぎると延滞税や不納付加算税を負担することがあります。延滞税の割合は、2026年(令和8年)1月1日から12月31日までの期間について、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。割合は毎年見直されるため、事務所のマニュアルに固定で書き込むのは避けてください。
不納付加算税は国税通則法第67条に定めがあり、納税の告知に係る税額等に10%を乗じた金額が原則です。告知を予知せずに自主的に納付した場合は5%となり、さらに、法定納期限までに納付する意思があったと認められる政令の要件に該当し、かつ法定納期限から1か月を経過する日までに納付されたときは適用されません。1日でも遅れたら即アウトではない一方、要件は政令で細かく定められているため、遅延が判明した時点で所轄署に相談する前提で動くのが安全です。制度の最新状態を調べる手順は税法改正の調べ方をAIで最新化する記事にまとめています。
2026年9月24日の様式変更と、2027年からの防衛特別所得税
国税庁は、税務署の窓口で配付する納付書について2026年(令和8年)9月24日に様式変更を予定していると公表しています。主な変更点は次のとおりです。
- 納税者の識別に使う「整理番号(8桁)」を「お問い合わせ番号(13桁)」に変更(窓口配付分は印字済みのため納税者の記載は不要)
- 「納期等の区分」欄等に元号の記載欄を追加
- 「徴収義務者」欄に郵便番号およびフリガナの記載欄を追加
- 窓口配付分はA4三つ折りサイズ程度の複写式から、A4サイズの単票式へ(年末調整時期に送付される分は引き続き複写式の予定)
- 現行様式(整理番号欄がある複写式)は令和10年9月頃まで使用できる予定。単票式は複写式ではないため記載事項を各片に3回書く必要があり、国税庁は印字ツールの掲載を予定
変更後の様式の「納期等の区分」欄には「源泉所得税、復興特別所得税及び防衛特別所得税」と記載されますが、国税庁は令和8年12月以前に生じた所得の源泉徴収税額には防衛特別所得税を含まないため、それまでは「源泉所得税及び復興特別所得税」と読み替えるよう案内しています。防衛特別所得税は令和8年度税制改正で創設され、源泉徴収すべき所得税額の1%相当額を併せて徴収するもので、令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得から適用されます。同時に復興特別所得税は2.1%から1.1%へ引き下げられるため、合計税率2.1%に変更はなく、源泉徴収税額の計算方法は変わりません。納付も1枚の納付書で行います。
なお新様式について国税庁が公開しているのは現時点でイメージ画像と変更点の概要であり、欄ごとの記載要領が新様式向けに改訂されているかまでは確認できませんでした。9月以降に新様式を受け取ったら、記載要領の更新有無を確認してから運用に落とし込んでください。
納付書まわりの作業をAIに任せるときの線引き
任せてよい作業と、任せてはいけない作業
生成AI(文章や回答を自動で作るAI)は、納付書まわりの「調べる」「まとめる」「案内文を書く」で確実に時短になります。一方、期限・税率・様式といった時点で変わる情報をAIの記憶だけで答えさせるのは危険です。様式は2026年9月に、税率構成は2027年1月に変わります。学習時点が古いAIは、これらを知らないまま自信を持って答えます。
作業 | AIに任せる | 人が確定させる |
|---|---|---|
納期の特例の説明文を顧問先向けに書く | ◯ ドラフト作成 | 期限日と適用開始月の確認 |
摘要欄の記載例を思い出す | ◯ 候補の列挙 | 国税庁の記載要領との突合 |
人員・支給額の集計チェック | ◯ 検算・不整合の指摘 | 給与データとの一致確認 |
延滞税・加算税の金額算定 | △ 考え方の整理まで | 年別の割合と日数の確定 |
新様式の欄構成の断定 | × | 国税庁の公表資料で現物確認 |
顧問先データを貼る前に確認すること
検算をAIに頼むとき、給与データをそのまま貼ってよいかは事務所として先に決めておく論点です。氏名や個人番号を外し、金額と件数だけを渡す運用にすれば実務上ほぼ支障はありません。判断の枠組みは顧問先データをAIに入力してよいかを税理士法38条から整理した記事、プロンプトの型は税理士のChatGPTプロンプト集、事務所全体の使いどころは税理士のためのAI活用完全ガイドを参照してください。
納付書は毎月10日、あるいは7月10日と1月20日に必ず来る定型業務です。記載要領のどこを見れば答えが出るかを一度整理しておけば、担当者が代わっても品質が落ちません。繁忙期の負荷配分は税理士の繁忙期をAIで効率化する記事、社会保険料まわりの改正論点は年収の壁・社会保険の適用拡大の記事もあわせてご覧ください。
参考文献
- 国税庁「納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)」
- 国税庁 タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
- 国税庁「所得税徴収高計算書(納付書)の記載のしかた/様式変更等」
- 国税庁「源泉所得税の納税手続」
- 国税庁「納付書の事前送付に関するお知らせ」
- 国税庁 タックスアンサー No.2675 年末調整の過不足額の精算
- 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)」
- e-Gov法令検索「国税通則法」(第67条 不納付加算税)

