法務×AI

年収の壁・社会保険の適用拡大|106万円の壁撤廃と顧問先案内【2026年】

この記事で分かること(結論ファースト)

「年収の壁」と社会保険の適用拡大は、いま最も顧問先から質問が飛んでくるテーマです。結論から先に置きます。106万円の壁(賃金要件)は令和8(2026)年10月に撤廃される予定で、企業規模要件は令和9(2027)年10月から令和17(2035)年10月にかけて段階的に撤廃されます。一方で130万円の壁(被扶養者認定)は残っており、しかし認定の「やり方」が2026年に変わりました

本記事は2026年8月6日時点で確認できた一次情報に基づいています。制度が動いている領域のため、実際の顧問先案内では必ず最新の公式発表を確認してください。

  • 現行(2026年8月時点)の短時間労働者の加入要件と、「106万円」という数字の正体
  • 賃金要件撤廃の施行日がどこまで確定していて、どこからが「予定」なのか
  • 企業規模要件の引下げスケジュールと、顧問先ごとの「Xデー」の出し方
  • 130万円の壁で2026年に変わった実務(労働契約内容による年間収入判定)
  • 所得税の壁(令和7年度税制改正)との違いと、顧問先が必ず混同するポイント
  • 加入判定シミュレーションと案内文の下ごしらえにAIを使う手順と、AIに任せてはいけない一線

読み終える頃には、どのパート従業員がいつ加入対象になるかを自分で判定でき、顧問先への案内文まで手が動く状態になります。

「壁」を要件の言葉に翻訳する ― 106万円と130万円は別制度

顧問先との会話が噛み合わなくなる原因は、ほぼ例外なく「106万円」と「130万円」と「103万円(現在は160万円)」を同じ土俵で語ってしまうことにあります。実務では、まずこの3つがそれぞれ別の制度の別の判定であることを分解して伝えるのが出発点です。

106万円の壁=短時間労働者本人が勤務先で被用者保険に入る話

前提として、そもそも所定労働時間・所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、短時間労働者の議論を待たず一般の被保険者として加入します。「壁」の話が問題になるのは4分の3未満の方です。そのうえで短時間労働者が被保険者となるには、日本年金機構が示すとおり、(ア)週の所定労働時間が20時間以上、(イ)所定内賃金が月額8.8万円以上、(ウ)学生でないこと、をすべて満たす必要があります(短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構)。加えて、2か月以内の期間を定めて使用される方などは加入対象から除かれるため、実務上は2か月を超える雇用の見込みも要件として扱います。そして勤め先が従業員数51人以上(厚生年金保険の被保険者数で判定)であることが、現行の企業規模要件です。

ここで重要なのは、「106万円」という数字はどこにも条文として存在しないという点です。月額8.8万円を12倍した年収換算の目安が105.6万円になるため、通称として106万円と呼ばれているにすぎません。しかも所定内賃金からは、賞与・残業代などの割増賃金に加えて、通勤手当・家族手当・精皆勤手当も除かれます。「年収が106万円を超えたら加入」と説明すると、顧問先はほぼ確実に判定を間違えます。

130万円の壁=配偶者や親の被扶養者でいられるかの話

130万円の壁は、本人が加入するかどうかではなく、被保険者の被扶養者として認定されるかどうかの基準です。制度も判定主体も別で、認定は健康保険組合、または協会けんぽ管掌の場合は日本年金機構が行います。106万円の壁を越えて自分で加入した人は、そもそも130万円の判定を待たずに扶養から外れます。

103万円(160万円)の壁=所得税の話で、社会保険とは無関係

所得税の壁は税制の話であり、社会保険の加入判定にはまったく影響しません。案内文では「税金の話」と「社会保険の話」を必ず章立てで分けるのが実務のコツです(改正内容は後述)。

106万円の壁(賃金要件)の撤廃 ― どこまで確定し、どこからが予定か

2025年6月13日に成立し、同月20日に公布された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)により、短時間労働者の適用要件のうち賃金要件が撤廃されることが決まりました(年金制度改正法が成立しました|厚生労働省令和7年度年金制度改正法が6月20日に公布されました|厚生労働省)。

施行日の扱いに注意 ― 法律上は「政令で定める日」

ここが顧問先案内で最も慎重を要する部分です。厚生労働省の改正概要では、賃金要件撤廃の施行期日は「公布から3年以内の政令で定める日」と定められています(改正の概要|厚生労働省)。つまり法律の本文に「2026年10月1日」と書いてあるわけではありません。日付は政令で定まる建て付けです。

では政令はどうなっているか。厚生労働省が実施した「厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案」の意見公募資料には、「令和8年10月1日を、賃金要件の撤廃に係る規定の施行日とするための施行期日を定める政令を別途制定することとしている」と明記され、関係政令の公布日は令和8(2026)年7月上旬(予定)、施行期日は令和8年10月1日と示されています(厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要)|厚生労働省年金局年金課)。

一方で、厚生労働省が令和8年1月に作成したリーフレットも、日本年金機構の解説ページも、本記事執筆時点では「令和8年10月に撤廃予定」という『予定』付きの表記のままです(短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント|厚生労働省)。

実務上の落としどころはこうです。準備は「2026年10月1日から」で確定として動かしてよい。ただし顧問先に配る文書では、公式資料の表記に合わせて『予定』の二文字を残す。制度型の案内文は、公式が断定していないものを事務所が先に断定した瞬間にリスクを抱えます。表記は必ず一次情報に揃えてください。

なぜ「時給1,016円」が撤廃の引き金なのか

誤解されがちですが、法律は施行日を「公布から3年以内の政令で定める日」と定めるにとどめており、最低賃金と自動連動する規定があるわけではありません。最低賃金の上昇は、その日を令和8年10月1日と判断する根拠として厚生労働省が挙げているものです。理由は単純な算数で、時給1,016円以上で週20時間働くと月額賃金が自動的に8.8万円以上になるためです。意見公募資料でも、令和8年4月1日以降は全都道府県で最低賃金が1,016円以上となり、労働時間要件に該当すれば自動的に賃金要件にも該当することが理由として示されています。

この構造を理解しておくと、顧問先への説明が一段わかりやすくなります。「壁がなくなる」のではなく、「最低賃金が上がった結果、週20時間働けば誰でも賃金要件を自動的に満たすようになったので、要件として意味を失った」という順序です。最低賃金改定そのものの顧問先対応は最低賃金の改定対応と顧問先案内の実務で別途整理しています。

撤廃後も残る例外 ― 最低賃金の減額特例

「週20時間なら全員加入」と単純化しすぎるのも危険です。最低賃金法には一定の場合に最低賃金の減額を許可する特例があり、この特例の対象となる短時間労働者のうち月額賃金8.8万円未満の方は、原則として社会保険に加入しないこととされています(申出により任意で加入することは可能)。障害のある方を雇用する顧問先では実際に論点になるため、案内文のテンプレートから漏らさないようにしてください。

事業主負担を軽くする「保険料調整制度」

適用拡大では、労働者の手取り減少が最大の摩擦になります。改正法では、労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する仕組みが設けられ、その施行期日は令和8年10月1日とされています。企業規模要件を満たさない企業が任意で加入する場合、令和8年10月以降にこの制度を利用すると3年間の支援を受けられると案内されています。顧問先の資金計画に直結する情報なので、コスト試算とセットで提示すると提案価値が上がります。

企業規模要件の段階的撤廃 ― 顧問先ごとの「Xデー」を先に出す

改正法では、企業規模要件を令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃すると定められています。厚生労働省のリーフレットに示された段階は次のとおりです。

時期

企業規模要件(厚生年金保険の被保険者数)

現在(2026年8月時点)

従業員51人以上

令和9(2027)年10月から

従業員36人以上

令和11(2029)年10月から

従業員21人以上

令和14(2032)年10月から

従業員11人以上

令和17(2035)年10月から

従業員10人以下(=要件撤廃)

社労士としての付加価値は、この表をそのまま配ることではありません。顧問先名簿に「被保険者数」の列を作り、各社が何年10月に該当するかを先回りして一覧化することです。従業員40人の顧問先には「御社は2027年10月です」と言い切れる状態を作っておくと、問い合わせ対応が提案に変わります。

個人事業所の非適用業種が解消される(令和11年10月1日)

見落とされがちですが、影響が大きいのがこちらです。改正法では、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し、被用者保険の適用事業所とするとされ、施行期日は令和11(2029)年10月1日です。士業事務所・飲食業・理美容業など、これまで適用対象外だった業種の個人事業所が対象になります。

ただし既存事業所は経過措置として当分の間適用しないとされています。つまり2029年10月時点で既にある事業所はすぐには対象にならず、新規開設の事業所から適用される設計です。顧問先が新規開業や法人成りを検討している場合、この経過措置の有無は判断材料になります。

要件を満たさなくても加入できる「任意特定適用事業所」

企業規模要件を満たさない企業でも、従業員の2分の1以上の同意があれば短時間労働者を社会保険に加入させることができます。人材確保の観点から先行して加入したい顧問先には有力な選択肢です。「うちはまだ対象外だから関係ない」と言われたときに、この選択肢を提示できるかどうかで相談の深さが変わります。

130万円の壁は残っている ― ただし認定の「やり方」が変わった

106万円の話題が大きいせいで見落とされがちですが、被扶養者認定の130万円基準そのものは維持されています。そして2025年から2026年にかけて、認定実務のほうが静かに、しかし大きく変わりました。

労働契約の内容で年間収入を判定する取扱い

従来、被扶養者認定における年間収入は、過去の給与明細や課税証明書などから将来1年間の収入見込みを判定していました。これに対し厚生労働省は、労働契約段階で見込まれる収入によって認定を行う取扱いを通知しています(令和7年10月1日付け保保発1001第3号・年管管発1001第3号)。日本年金機構は令和8年4月1日以降の取扱いとして案内しています(労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて|日本年金機構)。

この取扱いの趣旨は、厚生労働省のQ&A(令和8年3月9日事務連絡・第2版)によれば就業調整対策の観点から被扶養者認定の予見可能性を高めることにあります。実務上のポイントは3つです。

  • 判定材料:労働条件通知書・雇用契約書など労働契約の内容が確認できる書類に記載された時給・労働時間・日数から年間収入見込額を算出する。ここでいう賃金は労働基準法第11条の賃金で、諸手当・賞与も含まれます。106万円判定の「所定内賃金」は通勤手当・家族手当・賞与を除くので、2つの判定で賃金の範囲が違う点は取り違えの多発地帯です。
  • 臨時収入は含めない:労働契約に明確な規定がなく契約段階では見込みにくい時間外労働の賃金等は、年間収入に含めない。契約段階で見込みがなかった以上、認定時点で残業が発生していても契約内容で判定する。
  • 判定できない場合は従来どおり:「シフト制による」など労働時間の記載が不明確な場合、契約期間が1年に満たない場合、「通勤手当有」のように手当額が特定できない場合は、給与明細書・課税(非課税)証明書等で判定する。

添付書類として、労働契約内容がわかる書類に加えて、認定を受ける方本人による「給与収入のみである」旨の申立書が必要とされています(被扶養者異動届の申立書欄に記載すれば別途添付は不要)。給与以外に年金収入や事業収入がある場合は、従来どおり給与明細書・課税証明書等での判定になります。

ここまで整理すると分かるとおり、この改正の実質は「労働条件通知書の書き方が被扶養者認定の結果を左右するようになった」ということです。シフト制で時間数が曖昧な通知書のままでは、この取扱いの恩恵を受けられません。通知書の記載事項そのものの整備は労働条件通知書の明示事項と記載例で扱っています。

19歳以上23歳未満は150万円未満に引上げ

扶養認定を受ける方(被保険者の配偶者を除く)が19歳以上23歳未満である場合、年間収入要件は130万円未満から150万円未満に引き上げられました。適用は扶養認定日が令和7年10月1日以降のものからです(19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります|日本年金機構)。60歳以上の方や障害厚生年金を受けられる程度の障害者の180万円未満という基準は従来どおりです。

年齢は認定日の属する年の12月31日時点で判断される点、また令和7年10月1日より前に遡って認定する場合は従来の130万円基準が適用される点が、現場で間違えやすい箇所です。

一時的な収入変動への事業主証明

繁忙期対応などで一時的に年収が130万円以上となった場合でも、事業主の証明を添付することで、原則として連続2回まで被扶養者のまま継続できる取扱いが令和5年10月から実施されています(「年収の壁」への対応|厚生労働省)。「もう扶養から外れるしかない」と諦めている顧問先に、この選択肢を提示できると相談価値が高まります。

所得税の壁との違い ― 令和7年度税制改正で「103万円」は動いた

顧問先が最も混同するのが税の壁です。令和7年度税制改正により、所得税の基礎控除と給与所得控除が見直され、特定親族特別控除が創設されました。原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます(令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁)。

  • 基礎控除:合計所得金額132万円以下は95万円(改正前48万円)など、合計所得金額に応じた区分に改正。ただし132万円超の区分の上乗せ(88万円・68万円・63万円)は令和9年分以後は58万円に戻る時限的な措置である点に注意。
  • 給与所得控除:最低保障額が55万円から65万円に引上げ。
  • 特定親族特別控除の創設:19歳以上23歳未満で合計所得金額58万円超123万円以下の親族1人につき、その合計所得金額に応じて最高63万円を控除。

給与収入のみの方であれば、給与所得控除65万円と基礎控除95万円を合わせた160万円までは所得税が生じない計算になります。これが「103万円の壁が160万円になった」と報じられている中身です。

ここで社労士が押さえるべきは、税の壁が160万円に動いても、社会保険の壁は連動しないという一点です。「税金がかからないなら社会保険も大丈夫」と考えている顧問先の担当者は珍しくありません。案内文では次の対応表を添えると誤解が激減します。

通称

制度

判定するもの

2026年8月時点の状況

103万円→160万円の壁

所得税

本人に所得税がかかるか

令和7年度税制改正で控除額を見直し済み

106万円の壁

健康保険・厚生年金保険

本人が勤務先で加入するか

賃金要件を令和8年10月に撤廃予定

130万円の壁

健康保険(被扶養者)

家族の被扶養者でいられるか

基準は維持。認定の運用が変更

なお、令和8年10月1日には、短時間・有期雇用労働者に対して雇入れ時に「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」を労働条件として明示することが省令改正により追加され、あわせて同一労働同一賃金ガイドライン等の告示も改正されます(2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります|厚生労働省 Webマガジン非正規雇用(有期・パート・派遣労働)|厚生労働省)。同じ日に複数の改正が重なるため、顧問先向けの説明会は「2026年10月に何が変わるか」で束ねるのが効率的です。

顧問先案内をAIで下ごしらえする ― 判定シミュレーションと案内文

ここからは実務の時短パートです。AI(ChatGPTのような生成AI=文章を作ったり整理したりできるAI)は、制度の期日を調べさせる用途にはまったく向きませんが、こちらが確定情報を渡したうえで、判定を整理させたり文章に整えたりする用途では非常に強いです。この線引きが、社労士がAIを安全に使うための唯一かつ最大のルールです。

加入判定シミュレーションの下書きを作らせる

顧問先から届くのは、たいてい「うちのパートさん、結局どうなるんですか」という粒度の質問です。個別判定の観点出しをAIに整理させると、確認漏れが減ります。

あなたは社会保険手続きに詳しい社労士のアシスタントです。
下記の【確定情報】だけを根拠に、パート従業員の社会保険加入判定を
表形式で整理してください。【確定情報】にない期日や数値は
「要確認」と書き、絶対に推測で補わないでください。

【確定情報】
- 現行の短時間労働者の加入要件:週の所定労働時間20時間以上/
  所定内賃金 月額8.8万円以上/2か月を超える雇用の見込み/学生でない/
  従業員51人以上の企業
- 賃金要件は令和8(2026)年10月1日に撤廃予定
  (法律上の施行日は「公布から3年以内の政令で定める日」。
   厚労省・日本年金機構の公表資料はいずれも「撤廃予定」表記)
- 企業規模要件:2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、
  2032年10月から11人以上、2035年10月から10人以下

【顧問先の状況】
- 会社名:【顧問先名】
- 厚生年金保険の被保険者数:【人数】人
- 対象者:【従業員名】週の所定労働時間【時間】時間/
  所定内賃金 月額【金額】円/雇用期間【期間】/学生【該当・非該当】

【出力】
1. 現時点で加入対象か(該当する要件・しない要件を明示)
2. 2026年10月以降はどうなるか
3. 企業規模要件の引下げにより、この会社が該当する年月
4. 判定にあたって追加で確認すべき事項

うまくいかない例と直し方:「106万円の壁について教えて」とだけ聞くと、学習データの時点が古いAIは撤廃前の制度を現行として答えたり、施行日を断定して答えたりします。直し方は、期日と数値を必ず【確定情報】として自分で与え、「ないものは要確認と書け」と明示すること。これだけでハルシネーション(AIが事実でないことをもっともらしく述べる現象)の大半は防げます。

顧問先向けの案内文に整える

判定が固まったら、総務担当者が社内で使える文章に落とします。

下記の【確定情報】をもとに、顧問先の総務担当者から
パート従業員へ配布する案内文を作成してください。
制度用語は初出で1行の補足を入れ、税金の話と社会保険の話は
必ず見出しを分けてください。断定を避けるべき事項には
「現時点の予定です」と明記してください。

【確定情報】(判定シミュレーションの結果を貼り付け)
【前提】配布時期:【年月】/対象:週20時間以上勤務のパート従業員
【トーン】不安をあおらず、手取りへの影響と手続きの流れを淡々と説明する
【分量】A4で1枚程度

うまくいかない例と直し方:トーン指定なしで作らせると「大きな負担増となります」といった煽り表現が混ざり、従業員の動揺を招きます。直し方は、トーンと分量と読み手を必ず指定すること。案内文の型そのものは社労士のChatGPTプロンプト集に業務別でまとめています。

AIに絶対にやらせてはいけないこと

制度・時事テーマでAIを使ううえでの一線を、最後に明確にしておきます。

  • 施行日・金額・要件をAIに答えさせない:本記事の執筆過程でも、賃金要件の撤廃日は法律上「政令で定める日」であり、意見公募資料では令和8年10月1日とする方針が示される一方、厚生労働省のリーフレットも日本年金機構も「撤廃予定」という表記のままでした。この「予定」の一語を残すかどうかは、資料ごとの温度差を読んだ人間にしか判断できません。
  • 一次情報のURLをAIに作らせない:もっともらしい厚生労働省のURLを生成することがありますが、存在しないページであることが珍しくありません。リンクは必ず自分でアクセスして確認します。
  • 最終判断を委ねない:出力はあくまで下書きです。届出そのものの手順・様式・期限は社会保険の届出事務とミス防止の実務で整理しているとおり、社労士自身が一次情報で確認して確定させてください。

逆に言えば、確定情報を人間が与えたあとの「整理・翻訳・文章化」は、AIに任せて構いません。そしてここが、社労士事務所で最も時間を吸われている工程でもあります。

汎用なんでもAI/メール返信AIで日常業務を効率化するデモです。

士業AI は、こうした事務所の書き仕事を想定して設計した日本語特化のAIサービスです。顧問先向け案内文の作成やメール返信の下書きはもちろん、給与計算の検算観点の洗い出しや労務相談への一次回答ドラフトまで、汎用なんでもAI・メール返信AI がまとめてカバーします。クレジットカード不要・メール登録のみで数分から試せるので、まずは今回の適用拡大の案内文を1本作らせてみるのが分かりやすい入り口です。給与計算まわりの検算は給与計算のチェックと社会保険料確認のプロンプト集、相談対応は労務相談の回答ドラフト作成もあわせてご覧ください。社労士業務での具体的な使いどころは社労士・事務所スタッフ向けの活用イメージにまとめています。

よくある質問

2026年10月に賃金要件が撤廃されると、週20時間未満のパートも加入するのですか

いいえ。撤廃されるのは月額8.8万円以上という賃金要件であり、週の所定労働時間20時間以上という要件は残ります。したがって「106万円の壁」は実質的に「週20時間の壁」に置き換わる、と説明すると顧問先に伝わりやすくなります。

従業員50人以下の顧問先は、当面何もしなくてよいのですか

企業規模要件により当面は対象外ですが、2027年10月から36人以上へ引き下げられます。被保険者数が30人台の顧問先は、いま準備を始める段階です。また従業員の2分の1以上の同意による任意加入という選択肢もあります。

130万円の壁もいずれ撤廃されるのですか

本記事執筆時点(2026年8月6日)で確認できた公式資料の範囲では、130万円の被扶養者認定基準そのものの撤廃時期は示されていません。106万円の壁の撤廃と混同して「扶養の壁もなくなる」と案内しないよう注意してください。

顧問先から「手取りが減る」と反発されたときは

厚生年金保険への加入は将来の年金額の増加につながること、健康保険の傷病手当金・出産手当金の対象になることを、数値とあわせて示すのが基本です。加えて、労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する保険料調整制度(令和8年10月1日施行)を、事業主側の選択肢として提示できます。

まとめ ― 「予定」を正しく預かるのが社労士の仕事

年収の壁と社会保険の適用拡大は、確定した部分と未確定の部分が混在したまま報道が先行している領域です。だからこそ、どこまでが法律で決まっていて、どこからが政令待ちの「予定」なのかを切り分けて預かれることが、社労士の提供価値そのものになります。

今日から着手できるのは3つです。第一に、顧問先名簿に厚生年金保険の被保険者数の列を作り、各社の該当年月を先回りして一覧化すること。第二に、週20時間前後で働くパート従業員をリストアップし、2026年10月時点の判定を先に出しておくこと。第三に、労働条件通知書の記載が曖昧な顧問先を洗い出し、被扶養者認定の予見可能性を高める方向で整備を提案すること。この3つはいずれもAIが最も得意とする下ごしらえです。制度の期日は自分で確認し、そこから先の手を動かす部分を任せる ― この分担ができた事務所から、改正対応が「負担」ではなく「提案の機会」に変わっていきます。

参考文献(一次情報)

本記事は2026年8月6日時点で公開されている一次情報に基づいて作成しています。制度改正の施行日・要件は変更される可能性があるため、顧問先へのご案内にあたっては必ず最新の公式発表をご確認ください。

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