労働条件通知書をAIで作成|2024年改正の明示事項と記載例【2026年】
労働条件通知書は、労働基準法15条にもとづき、労働者を雇い入れるときに賃金・労働時間などの労働条件を明示するための法定文書です。2024年4月の改正で明示事項が追加され、様式の見直しが必要になった事務所も多いはずです。この記事では、社労士・事務所スタッフが労働条件通知書をAIで作成・チェックする実務手順を、記載例とそのまま使えるプロンプトつきで解説します。
この記事で分かること:
- 労働条件通知書の法的な位置づけ(労基法15条・労基則5条)と雇用契約書との違い
- 必ず書く「絶対的明示事項」と、定めがある場合に書く「相対的明示事項」の全体像
- 2024年4月改正で追加された4つの明示事項の対象者・明示タイミングと記載例
- AIで下書き・改正漏れチェックを時短するコピペ用プロンプト
- 作成時によくあるミスと、AIに任せてはいけない注意点
労働条件通知書とは|労基法15条が定める明示義務
労働条件通知書とは、使用者が労働者に対して労働条件を書面で知らせるための文書です。労働基準法15条1項は、使用者は労働契約を結ぶ際に、賃金・労働時間その他の労働条件を労働者に明示しなければならないと定めています。この明示義務を果たすための実務上のツールが労働条件通知書です。
労働条件通知書と雇用契約書の違い
両者は混同されがちですが、性格が異なります。労働条件通知書は使用者が労働者へ一方的に「通知」する書面で、労基法15条の明示義務を満たすためのものです。一方、雇用契約書は労使双方が署名・記名押印して合意を証する契約書で、法律上の作成義務はありません。実務では両者を一体化した「労働条件通知書兼雇用契約書」を交付する事務所も多く、これなら明示義務と合意の証拠化を1枚で両立できます。
明示しないと罰則がある
明示義務を怠ると、労働基準法120条1号により30万円以下の罰金の対象になり得ます。また、明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は労基法15条2項にもとづき即時に労働契約を解除できます。「口頭で伝えたから大丈夫」では済まないため、書面での正確な明示が欠かせません。
労働条件通知書に書く明示事項(絶対的・相対的)
明示すべき事項は労働基準法施行規則5条1項に列挙されています。これは「必ず明示する絶対的明示事項」と、「定めがある場合に明示する相対的明示事項」に分かれます。
絶対的明示事項(必ず明示)
- 労働契約の期間に関する事項
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(有期契約の場合)
- 就業の場所・従事すべき業務に関する事項
- 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間・休日・休暇、交替制のルール
- 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
このうち1から6まで(昇給に関する事項を除く)は、原則として書面の交付で明示しなければなりません。ただし労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、SNSのメッセージ機能など、書面として出力できる方法での明示も認められます。メールで送る場合は、労働者本人が希望したことと、印刷して書面化できる形式であることが条件です。
相対的明示事項(定めがある場合に明示)
退職手当、賞与など臨時の賃金、労働者に負担させる食費・作業用品、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職に関する事項は、事務所(会社)に定めがある場合に明示します。これらは口頭でも足りますが、トラブル防止の観点から書面に記載しておくのが実務では安全です。就業規則に定めがある項目は、通知書で該当条文を引用する形でも構いません。就業規則そのものの整備をAIで進める手順は、就業規則・社内規程のドラフトとチェックをAIで行う実務手順で詳しく解説しています。
明示事項チェックリスト(そのまま使えます)
区分 | 項目 | 記載できているか |
|---|---|---|
絶対 | 契約期間(無期/有期の別) | □ |
絶対 | 有期の更新基準・更新上限の有無と内容 | □ |
絶対 | 就業場所(雇入れ直後+変更の範囲) | □ |
絶対 | 従事する業務(雇入れ直後+変更の範囲) | □ |
絶対 | 始業・終業時刻、休憩、休日、時間外労働の有無 | □ |
絶対 | 賃金の計算・支払方法、締切・支払時期、昇給 | □ |
絶対 | 退職・解雇の事由と手続 | □ |
相対 | 退職手当・賞与・各種手当(定めがある場合) | □ |
相対 | 社会保険・雇用保険の加入状況 | □ |
2024年4月改正で追加された4つの明示事項
2024年4月から、労働条件明示のルールが改正され、新たに4つの事項の明示が必要になりました。既存様式のまま使い続けると明示漏れになるため、社労士としては顧問先への案内と様式差し替えが必須の論点です。対象者と明示のタイミングを正確に押さえましょう。
(1) 就業場所・業務の「変更の範囲」(全ての労働者が対象)
すべての労働契約の締結時と、有期労働契約の更新時ごとに、雇入れ直後の就業場所・業務に加えて、将来の配置転換などで変わり得る変更の範囲を明示します。たとえば就業場所なら「(雇入れ直後)本社/(変更の範囲)会社が定める事業所」、業務なら「(雇入れ直後)経理/(変更の範囲)会社が定める業務」といった記載になります。変更の範囲を無限定に「会社の定める全ての業務」とすると配転の自由度は上がりますが、限定合意を求める応募者との認識齟齬を生むため、実務では顧問先の運用に合わせた表現の調整が必要です。
(2) 更新上限の有無と内容(有期契約労働者が対象)
有期労働契約の締結時と更新時ごとに、通算契約期間または更新回数の上限の有無と、その内容を明示します。たとえば「更新上限:通算5年まで」「更新回数:3回まで」などです。すでに契約している労働者について上限を新しく設けたり短くしたりする場合は、その理由をあらかじめ説明することが必要です。
(3)(4) 無期転換の申込機会と転換後の労働条件(無期転換申込権が発生する有期契約労働者が対象)
有期労働契約が通算5年を超えると無期転換申込権が発生します。この申込権が発生する更新のタイミングごとに、「無期転換を申し込むことができる旨(申込機会)」と「無期転換した後の労働条件」を明示します。転換後の労働条件については、正社員などとのバランスを考慮した事項の説明が努力義務とされています。時間外労働のルールを通知書に反映する際は、36協定の締結・届出とも整合させる必要があります。届出様式の書き方は36協定届(様式第9号)の記載例と提出前チェックにまとめています。
労働条件通知書の書き方と記載例
厚生労働省は「モデル労働条件通知書」を公開しており、正社員用・有期契約労働者用・短時間労働者用などの様式が主要様式ダウンロードコーナーから入手できます。ゼロから作るより、モデル様式を土台に事務所のフォーマットへ落とし込むのが確実です。改正で追加された項目を含む記載例を挙げます。
【就業の場所】
(雇入れ直後)本社総務部
(変更の範囲)会社の定める事業所(在宅勤務を含む)【従事すべき業務の内容】
(雇入れ直後)給与計算・社会保険手続の補助
(変更の範囲)会社の定める事務【契約期間】期間の定めあり(2026年8月1日〜2027年7月31日)
更新の有無:更新する場合があり得る/更新上限:通算4年(更新3回)まで
賃金欄では基本給・諸手当・割増賃金率・締切日・支払日・支払方法(口座振込の同意含む)まで具体的に書きます。「時給1,100円、通勤手当は実費上限月1万円、時間外は法定どおり2割5分増、末日締め翌月25日払い、指定口座へ振込」のように、金額と条件を数字で明示するのが実務の基本です。
労働条件通知書をAIで作成・チェックする実務手順
労働条件通知書は項目が多く、顧問先ごとに就業場所・業務・賃金・更新条件が変わります。ここが定型でありながら手間のかかる部分で、AIによる下書きとチェックが最も効く領域です。生成AI(文章を作れるAIツール)に条件を渡して初稿を作り、社労士が法令適合と顧問先実態の観点で仕上げる分業が現実的です。
AIに任せられること・任せてはいけないこと
AIが得意なのは、箇条書きで渡した雇用条件を通知書の文面に整える下書き作業、既存様式に改正4項目が反映されているかの形式チェック、複数パターン(正社員・パート・有期)の文面のたたき台づくりです。逆に、変更の範囲をどこまで広げるか、更新上限を何年にするかといった労務ポリシーの判断や、最終的な法令適合の確認は社労士が担うべき領域です。AIは条文の解釈を誤ることがあるため、出力は必ず一次情報と突き合わせて検証します。
実際にどのような操作感で使えるのか、士業AIのデモで確認できます。
下書き用プロンプト(コピペ可)
あなたは労働条件通知書の作成に精通した社労士アシスタントです。
以下の条件から、労働基準法15条・労基則5条に沿った労働条件通知書の
ドラフトを作成してください。2024年4月改正で必要になった
「就業場所・業務の変更の範囲」「有期の更新上限」「無期転換の申込機会・
転換後の労働条件」を、対象になる場合のみ漏れなく反映してください。
# 雇用条件
- 雇用区分:【有期/無期】
- 契約期間:【2026/08/01〜2027/07/31 など】
- 就業場所(雇入れ直後 / 変更の範囲):【 】
- 業務内容(雇入れ直後 / 変更の範囲):【 】
- 労働時間・休憩・休日:【 】
- 賃金(基本給・手当・割増率・締日・支払日・支払方法):【 】
- 更新の有無と更新上限:【 】
出力は項目見出しつきの通知書形式で。判断に迷う箇所は
「要確認」と明記し、勝手に断定しないでください。うまくいかない例と直し方: 条件を「フルタイムのパート」のように曖昧に渡すと、AIが所定労働時間や社会保険加入の要否を推測で埋めてしまいます。所定労働時間(例:週30時間)と週の勤務日数まで数字で渡すと、推測が減り精度が上がります。最後の「判断に迷う箇所は要確認と明記」の一文が、ハルシネーション(もっともらしい誤り)を減らす歯止めになります。
改正漏れチェック用プロンプト(コピペ可)
次の労働条件通知書の本文を、2024年4月の労働条件明示ルール改正の
観点でチェックしてください。以下の4点について、記載の有無と
過不足を一項目ずつ指摘してください。該当しない契約類型の項目は
「対象外」と明記してください。
(1) 就業場所・業務の「変更の範囲」(全労働者)
(2) 有期契約の更新上限の有無と内容
(3) 無期転換を申し込むことができる旨
(4) 無期転換後の労働条件
【ここに通知書本文を貼り付け】うまくいかない例と直し方: 「問題ありませんか?」とだけ聞くと「概ね問題ありません」で終わりがちです。上記のように4項目を列挙し「一項目ずつ指摘」と指示すると、抜けを具体的に洗い出せます。無期転換の項目は有期契約でなければ対象外になるため、契約類型をプロンプト冒頭で伝えておくと誤指摘を防げます。
労務書類の作成・チェックをAIで時短したい社労士の方は、まず得意な領域から試してみてください。
作成時によくあるミスと注意点
実務で多いミスを挙げます。第一に、旧様式の使い回しによる改正4項目の明示漏れです。2024年3月以前のテンプレートをそのまま使っている事務所は要注意です。第二に、「変更の範囲」の書き忘れ、または無限定な記載による将来の配転トラブル。第三に、有期契約者への更新上限の記載漏れです。
AI活用の注意点として、生成AIは労働条件通知書の体裁を素早く整えられる一方、最新の法令改正を正確に反映しているとは限りません。学習データの時点によっては旧ルールで出力することもあります。したがって、AIの出力は必ず厚生労働省のモデル様式・リーフレットと突き合わせ、社労士が最終確認する運用が前提です。顧問先の機密情報(氏名・賃金額など)を外部AIに入力する際は、情報の取り扱いに配慮し、事務所の運用ルールに従ってください。メリットだけでなく、この検証工程を省けない点を理解したうえで使うことが、AI活用を安全に定着させるコツです。
よくある質問(FAQ)
労働条件通知書はメールで交付してよいですか?
労働者が希望した場合に限り、電子メールやFAX、SNSのメッセージ機能などで明示できます。ただし、労働者本人が受信を希望していること、そして印刷して書面化できる形式であることが条件です。労働者の希望がない場合は、原則どおり書面で交付します。
パート・アルバイトにも労働条件通知書は必要ですか?
必要です。労基法15条の明示義務は雇用形態を問いません。さらに短時間・有期雇用労働者には、パートタイム・有期雇用労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口についても文書での明示が求められます。短時間労働者用のモデル様式を使うと漏れを防げます。
労働条件通知書と雇用契約書は両方必要ですか?
法律上の義務は労働条件通知書(明示義務)です。雇用契約書の作成義務はありませんが、合意の証拠を残す目的で、両者を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を用いる事務所が増えています。トラブル予防の観点からは、労使双方が署名する兼用様式が有効です。
2024年改正に対応していない旧様式を使い続けるとどうなりますか?
改正で追加された明示事項を記載していない場合、明示義務違反として労基法120条1号の30万円以下の罰金の対象になり得ます。また、変更の範囲や更新上限の認識齟齬は後日の労使トラブルの火種になります。2024年4月以降に締結・更新する契約は、新様式で対応する必要があります。
まとめ|改正対応の通知書づくりをAIで確実に、そして速く
労働条件通知書は、労基法15条・労基則5条にもとづく明示義務を果たす法定文書であり、2024年4月改正で就業場所・業務の変更の範囲、更新上限、無期転換の申込機会と転換後の労働条件という4項目が加わりました。項目が多く定型的なこの書類は、AIでの下書きと改正漏れチェックが最も効く領域です。AIで初稿とチェックを高速化し、社労士が法令適合と顧問先実態を最終確認する分業なら、品質を落とさず作成時間を圧縮できます。
士業AIは、就業規則の下書き、労務相談への返信案、各種申請書類の文案づくりまで、社労士事務所の書き仕事を幅広くサポートする日本語特化のAIです。クレジットカード不要・メール登録のみで、数分で試せます。まずは手元の労働条件通知書のチェックから始めてみてください。

