法務×AI

離職票の書き方|離職証明書の欄別記入例と離職理由の判断【2026年】

結論:事業主が書くのは「離職票」ではなく「離職証明書」

「離職票の書き方」を調べている方の多くは、実際には雇用保険被保険者離職証明書(様式第五号)の書き方を探しています。事業主・社労士がハローワークに提出するのは離職証明書であり、離職票(雇用保険被保険者離職票、様式第六号)はそれを受けてハローワークが交付する書類だからです。ここを取り違えたまま様式を探すと、いつまでも正しい記入例にたどり着きません。

仕組みはシンプルです。離職証明書は3枚1組の複写になっており、1枚目が事業主控、2枚目がハローワーク提出用、そして3枚目がそのまま「雇用保険被保険者離職票-2」になります(厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き【第2編】」27ページ)。つまり、事業主が離職証明書の左側に書いた賃金額と右側に書いた離職理由が、そのまま退職者の手元に渡る離職票-2の中身になります。退職者の基本手当の金額・給付日数・給付制限を左右する書類だと理解しておくと、記入の慎重さが変わります。

この記事で分かること

  • 離職票-1・離職票-2・離職証明書・資格喪失届の関係と、それぞれ誰が書くのか
  • 離職証明書の⑧〜⑭欄の記入ルール(賃金支払対象期間・基礎日数・賃金額・備考)
  • 賃金支払基礎日数11日以上/賃金支払基礎時間数80時間以上の使い分け(雇用保険法14条)
  • ⑦欄の離職理由の選び方、離職理由コード(離職区分コード)の正体、本人が異議を出したときの扱い
  • 提出先・期限(離職日の翌々日から10日以内)と、電子申請・マイナポータル直接送付の実務
  • 賃金締切日のずれ、日給月給、59歳以上など、現場で事故が起きやすい7つの落とし穴
  • AIに任せてよい下ごしらえと、絶対に任せてはいけない判断の線引き(プロンプト例つき)

離職票-1と離職票-2の違い|4つの書類を1枚の地図に整理する

誰が何を書き、誰に渡るのか

離職手続きで登場する書類は4種類あります。役割を混同したままだと、「離職票が届かない」「離職票-1に何を書けばいいのか」といった問い合わせに正確に答えられません。

書類

作成者

役割

最終的な渡し先

雇用保険被保険者資格喪失届

事業主

被保険者でなくなった事実の届出。喪失原因(1/2/3)と離職票交付希望の有無を記入

ハローワーク

雇用保険被保険者離職証明書(様式第五号)

事業主

離職前の賃金と離職理由の証明。3枚複写

ハローワーク(1枚目は事業主控)

雇用保険被保険者離職票-1

ハローワーク

資格喪失確認通知書と一体。被保険者番号・離職年月日の通知と、基本手当の払渡希望金融機関の指定欄

退職者本人

雇用保険被保険者離職票-2

ハローワーク(中身は離職証明書の複写)

賃金額・離職理由・離職区分コードの通知

退職者本人

実務上ここが一番のポイントです。離職票-1は事業主が記入する書類ではありません。ハローワークが被保険者番号などを印字して発行し、退職者本人が振込先金融機関を書き込むための欄が設けられています。顧問先から「離職票-1の書き方を教えてほしい」と聞かれたら、まず「それは会社が書く欄はありません」と答えるのが正解です。

ハローワークから返ってくる書類の組み合わせ

資格喪失届のみを提出した場合は、資格喪失確認通知書(事業主通知用・被保険者通知用)が返ってきます。離職票を同時に発行する場合は、これに加えて資格喪失確認通知書(事業主通知用)・離職票-1・離職票-2が交付されます。被保険者通知用の通知書と離職票-1・-2は、速やかに退職者へ渡してください(同手引き第2編50ページ)。

離職票の交付は原則「本人の希望」だが、59歳以上は例外

雇用保険法施行規則7条3項により、本人が離職票の交付を希望しない場合は離職証明書を添付しないことができます。ただし、離職の日において59歳以上である被保険者はこの限りではありません。59歳以上は本人の希望にかかわらず離職証明書の添付が必須です。高年齢雇用継続給付の基礎となる賃金額を確定させるためで、ここを落とすと後日ハローワークから補正を求められます。定年再雇用者の離職手続きで最も多い漏れのひとつです。

また、いったん「交付不要」で処理した後に退職者から離職証明書の交付を求められた場合、事業主はこれに応じる必要があります(同手引き第2編24ページ)。「本人が要らないと言ったから作っていない」は通りません。

離職証明書の書き方|欄ごとの記入例と判断ルール

左側(賃金部分)の記入ルール一覧

離職証明書の左側は、基本手当の日額を決める賃金の証明部分です。厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き【第2編】」29〜30ページの記載に沿って、欄ごとのルールを整理します。

項目

記入ルール

記入例のイメージ

被保険者期間算定対象期間

「離職日の翌日」に応当する日で1か月ずつ区切る。応当日がない月はその月の末日。原則、離職日以前2年間(最大24か月)を記入

離職日3/31 →「4/1〜4/30」「3/1〜3/31」…と遡る

⑧の期間における賃金支払基礎日数

賃金支払の基礎となった日数。有給休暇も算入し、半日でも1日として計上。完全月給制なら暦日数(28〜31日)

31/30/22 など

賃金支払対象期間

賃金締切日の翌日から賃金締切日まで。⑧とは区切り方が違う点に注意

締日20日なら「2/21〜3/20」

⑩の基礎日数

⑩の期間の賃金支払基礎日数。算入ルールは⑨と同じ

28/21 など

賃金額(A/B/計)

A欄=月給・週給等で定められた賃金。B欄=日給・時給・出来高。両方ある場合はAB欄に分けて記入し合計を計欄へ

A 280,000/B 0/計 280,000

備考

賃金未払、休業、賃金締切日変更などの参考事項。基礎日数が10日以下の期間の賃金支払基礎時間数もここに書く

「賃金締切日変更(20日→末日)」「休業5日 休業手当30,000円」

賃金に関する特記事項

3か月以内の期間ごとに支払われる賃金(特別の賃金)がある場合に支給日・名称・支給額を記入。該当がなければ斜線

該当なし → 斜線

離職者の氏名の記載

⑦欄以外の記載内容を本人に確認させ、本人に氏名を記載させる。確認が取れないときは理由を記載し事業主氏名を記載

本人自署

⑧と⑩を取り違えないための考え方

初めて書く人が必ずつまずくのが、⑧と⑩の期間の切り方が違う点です。⑧は「離職日の翌日」を起点に暦で1か月ずつ区切る欄で、被保険者期間(受給資格があるか)を判定するために使います。一方⑩は「賃金締切日」で区切る欄で、基本手当の日額のもとになる賃金日額を計算するために使います。目的が違うので、期間もずれるのが正常です。

離職日が3月31日、賃金締切日が毎月20日の会社であれば、⑧は「4/1〜4/30」「3/1〜3/31」…、⑩は「3/21〜3/31(離職月の端数)」「2/21〜3/20」…という形になります。この2列が同じ日付で並んでいる離職証明書は、ほぼ間違いなくどちらかを写し間違えています。

賃金額(⑫欄)で判断が割れる3ケース

  • 変動手当が翌月払いの月給者:超過勤務手当などの変動手当のみ翌月払いの場合、その額は当月に算入します。支払月ではなく対象月に寄せる、という発想です。
  • 通勤手当を数か月分まとめて支給している:該当月数で割り、それぞれの月に按分して算入します。6か月定期代を支給月に全額計上すると、賃金日額が跳ね上がって誤った金額が出ます。
  • 主たる賃金と諸手当で締切日が違う:主たる賃金の賃金締切日で記載し、その他の諸手当は主たる賃金の締切日に合わせて再計算した額を記入します。給与システムの出力をそのまま転記すると合わないのはこのためです。

賃金支払基礎日数11日以上と80時間|どこまで遡って書くのか

根拠条文と数字の関係

被保険者期間の計算方法は雇用保険法14条に定められています。原則は「賃金の支払の基礎となつた日数が十一日以上であるもの」を1か月として計算する、というルールです(同条1項)。そして計算された被保険者期間が12か月(特定受給資格者等は6か月)に満たない場合に限り、「賃金の支払の基礎となつた時間数が八十時間以上であるもの」も1か月に数えるという読替規定が置かれています(同条3項、e-Gov法令検索・雇用保険法)。

ここが実務上の分かれ目です。80時間は「11日以上の月が足りないときの救済ルール」であって、11日と80時間を自由に選べるわけではありません。短時間勤務のパートやシフト制のスタッフでは、11日以上の完全月が12か月に届かないケースが頻発します。

どこまで書けば足りるのか

  • ⑧欄は、⑨欄の日数が11日以上の完全月が12か月(高年齢被保険者は6か月)になるまで記載します。届いた時点で止めてよく、無理に24か月分を埋める必要はありません。
  • 11日以上の完全月が12か月に届かない場合は、⑨欄の日数が10日以下の期間について、その期間の賃金支払基礎時間数を⑬「備考」欄に記入します。
  • ⑩欄は、完全月で⑪欄の基礎日数11日以上が6か月以上あればそれ以前を省略できます。6か月に満たない場合は、同じく10日以下の期間の時間数を⑬欄に記入します。
  • 疾病・傷病等で30日以上賃金の支払を受けられなかった場合は、離職日以前最大4年まで遡って記入できることがあります(事実を確認できる書類が必要なため、事前にハローワークへ確認)。
  • 1枚に書ききれない場合は「続紙」として別葉に記入します。

この「時間数を備考欄に書く」作業が、現場で最も手間がかかるところです。タイムカードから月ごとの実労働時間を拾い直す必要があるため、給与計算のデータが月次で整理されているかどうかで所要時間が10倍変わります。給与計算のチェックをAIで行う検算プロンプトを普段から回して賃金台帳の整合を保っておくと、離職時の作業がそのまま短縮されます。

離職理由(⑦欄)の書き方と「離職理由コード」の正体

事業主が選ぶのは1〜6の区分、コードを付けるのはハローワーク

ここは誤解が非常に多いところなので、はっきり整理します。離職証明書の⑦欄で事業主が行うのは、「1 事業所の倒産等」〜「5 労働者の判断によるもの」(該当がなければ「6 その他」)の中から主たる離職理由を1つ選び、事業主記入欄の□に○を記入することだけです。いわゆる「離職理由コード(離職区分コード)」は、事業主が書き込むものではありません。

厚生労働省の手引きは、⑦欄の分類について「離職理由の判定にあたり、事業主が主張する離職理由を把握するために便宜上分類したもの」であり「特定受給資格者等の判断基準とは異なります」と明記しています。そのうえで「離職理由の最終的な判定はハローワークで行いますので、⑦欄の□の中に○を記入した離職理由と異なる場合があります」としています(同手引き第2編42ページ)。ハローワークが判定した結果が離職区分コードとして離職票-2に記載される、という順序です。

なお、マイナポータルで離職票が本人へ直接送付されたケースでは、離職票に記載されている離職区分コードは個人情報に該当するため、ハローワークから事業所には伝えられません(厚生労働省リーフレット「2025年1月から、希望する離職者のマイナポータルに『離職票』を直接送付するサービスを開始します!」)。コードを前提にした顧問先への説明はできない、という前提で運用してください。

区分ごとの意味と、持参すべき確認資料

⑦欄の区分

典型例

持参する確認資料

1 事業所の倒産等

倒産手続開始・手形取引停止/事業所の廃止・事業活動停止

倒産手続の申立受理を証する書類、解散決議の議事録(写)など

2 定年

就業規則等で定めた定年による離職

就業規則等

3 労働契約期間満了等

あらかじめ定めた雇用期限の到来/契約期間満了/早期退職優遇制度/移籍出向

労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書、制度資料など

4 事業主からの働きかけ

解雇/重責解雇/希望退職の募集・退職勧奨

解雇予告通知書、退職証明書、就業規則、希望退職募集要綱(写)など

5(1) 職場における事情による退職

賃金低下・賃金遅配・過度な時間外労働/ハラスメント/育介休業に係る不利益取扱い/大規模な人員整理/職種転換への不適応/事業所移転による通勤困難

労働契約書、給与明細、預金通帳、タイムカード(写)、配置転換辞令(写)など

5(2) 労働者の個人的な事情

一身上の都合、転職希望、体調不良、家庭事情の急変

退職願(写)等

6 その他

1〜5のいずれにも該当しない

内容が確認できる資料

定年後の継続雇用で注意が必要なのは、定年後の継続雇用が有期雇用で行われ、その契約期間満了により離職した場合は「2 定年」ではなく「3 労働契約期間満了等」に該当する点です(同手引き第2編42ページ)。ここを「定年」で出してしまう誤りは、定年再雇用が定着した現在でも頻繁に見かけます。

「具体的事情記載欄(事業主用)」を空欄にしない

手引きは、離職に至った原因とその経緯等の具体的事情を「必ず、なるべく詳しく記入してください」と求めています。5(2)の個人的事情による離職の場合も、離職者から把握している範囲で可能な限り記入するよう指示されています。「一身上の都合」の6文字だけで提出すると、ハローワークからの照会が入り、結果として離職票の交付が遅れます。ここを丁寧に書くことが、退職者への交付を早める最短ルートです。

本人が離職理由に異議を申し出たとき

離職証明書の⑯欄は、離職者本人が事業主の記入した離職理由に対して「異議有り・無し」のいずれかを○で囲み、氏名を記載する欄です。これは退職日までに本人に確認させる必要があります。賃金計算が未処理で左側の各欄がまだ空欄の段階でも構いません(同手引き第2編41ページ)。

本人に異議がある場合でも、事業主は自らの認識に基づいて⑦欄を記入したうえで提出します。ハローワークインターネットサービスも、退職者向けに「離職理由に異議がある場合(実際は、事業主からの退職勧奨であるにも関わらず、自己都合退職とされている場合など)は、ハローワークにご相談ください」と案内しており、ハローワークが事実関係を調査のうえ離職理由を判定すると明示しています。事業主側で結論を出す話ではない、と割り切って構いません。

ただし、離職理由の帰結は退職者にとって重大です。会社都合(特定受給資格者)に該当すると、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格が得られ(自己都合は2年間に12か月以上)、所定給付日数も手厚くなる場合があります。加えて、正当な理由のない自己都合退職には給付制限期間が付きます。だからこそ、事実と異なる区分で「穏便に」処理してほしいという依頼には応じないのが実務の原則です。

【要注意】給付制限の期間は公的ページの間でも記載が食い違っている

2026年9月時点で、厚生労働省とハローワークインターネットサービスの記載が一致していない論点があります。

  • 厚生労働省のリーフレット「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」の注1は、「給付制限は、退職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1か月、同年3月31日以前である場合は原則2か月」としています。加えて、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合と、重責解雇の場合は3か月です。
  • 一方、ハローワークインターネットサービスの「雇用保険の具体的な手続き」ページは、「待期期間満了後2か月間(過去5年間に2回以上自己都合で離職している場合3か月間)」という改正前の記載のままになっています。

顧問先に説明するときは、退職日が令和7年4月1日以降かどうかで区切って伝え、確定的な期間は管轄ハローワークに確認してもらうのが安全です。この事例が示すのは、期限や日数のような数字こそ、AIにも既存記事にも答えさせてはいけないということです。公的機関のページですら改正への追随にタイムラグがあるため、最終確認は必ず一次資料と窓口で行ってください。

提出先・期限と電子申請|離職日の翌々日から10日以内

期限の数え方

雇用保険法施行規則7条1項は、事業主は「当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に」資格喪失届を提出しなければならないと定めています。被保険者でなくなった日は離職日の翌日なので、実務的には離職日の翌々日から10日以内がハローワークへの提出期限です。厚生労働省のリーフレットも「離職手続きの提出期限は、離職日の翌々日から10日以内」と明記しています。提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。

離職票を交付する場合の提出書類と持参物は次のとおりです。

  • 提出書類:雇用保険被保険者資格喪失届+雇用保険被保険者離職証明書(3枚1組)。マイナンバーの記載が必要です。
  • 持参するもの:労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、辞令および他の社会保険の届出(控)、離職理由の確認できる書類(就業規則、役員会議事録など)。

手引きは、届出が遅れたり怠ったりすると離職者への離職票交付が遅れ、「離職者本人が雇用保険を受給するに当たり、極めて不利益な状況が生じる」と警告しています。10日以内は行政上の努力目標ではなく、退職者の生活に直結する期限です。健康保険・厚生年金の資格喪失手続きと並行して動かす必要があるため、社会保険の手続き全体をAIで効率化する届出事務の進め方とセットで運用フローを組んでおくと漏れが減ります。

電子申請とマイナポータル直接送付

e-Gov電子申請では、【手続検索】から「雇用保険 資格喪失」で検索し、離職票の交付を希望する場合は「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」、希望しない場合は「(離職票交付なし)」を選択します。複数人を一括で届け出る場合は「雇用保険被保険者資格喪失届(連記式)」です。

電子申請の場合、離職者本人による記載内容の確認は、電子署名を付与するか、離職証明書の記載内容を確認したことを証明する書類(確認書)を添付する形で行います(同手引き第2編27ページ)。⑮欄の本人確認が取れない場合は、電子申請では疎明書を添付します。

さらに2025年1月20日から、希望する離職者にはマイナポータルを通じて離職票等を直接送付するサービスが始まっています。対象となる条件は、①届け出たマイナンバーが被保険者番号と適切に紐付いていること、②離職者本人がマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定を行っていること、③事業主が電子申請で離職手続きを行っていること、の3つすべてを満たす場合です。条件を満たさなければ従来どおり事業所経由での送付になります。

実務で効くのは、マイナンバーの登録には時間がかかるため、資格喪失届提出の2週間程度前までに登録状況を確認しておくという点です。退職が決まった時点で本人に案内しておけば、離職票の郵送事務そのものをなくせます。

実務の落とし穴7選|差し戻しの原因はだいたい決まっている

1. 賃金締切日と離職日がずれている

離職日が締切日の途中にある場合、⑩欄の最上段は「賃金締切日の翌日〜離職日」という端数期間になります。この端数期間を丸ごと落としてしまう、あるいは1か月分として扱ってしまうミスが最も多いパターンです。端数期間は端数のまま記入し、⑪欄にはその期間の基礎日数を書きます。

2. 賃金締切日を変更した期間がある

締切日の変更は⑬「備考」欄に記入すべき参考事項として手引きに明示されています。変更月は期間の長さが不揃いになるため、備考に変更の事実を書かないと、ハローワーク側で計算が合わず照会が入ります。

3. 日給月給者の欠勤控除を反映し忘れる

完全月給制であれば⑨欄・⑪欄は暦日数(28〜31日)ですが、「1か月中、日曜・休日を除いた期間に対する給与」であればその期間の日数になります。日給月給者で欠勤があり賃金が減額された場合は、手引きの記入例(5)に専用のパターンが用意されているほど間違いやすい領域です。迷ったら「その日は賃金支払の基礎になったか」を1日ずつ判定するのが確実です。有給休暇は算入し、半日勤務でも1日として数えます。

4. 休業手当を支払った月を普通に処理してしまう

各期間で休業手当が支払われたことがある場合は、⑬欄に「休業」と表示のうえ、休業日数と支払った休業手当の額を記載します。賃金額に紛れ込ませたままにすると、賃金日額が過大に算定されます。

5. 転籍(移籍出向)と在籍出向を混同する

資格喪失届の喪失原因は、在籍出向(出向先で被保険者となる場合)や出向元への復帰であれば「1(離職以外の理由)」、移籍出向であれば「2(3以外の離職)」です。移籍出向は⑦欄では「3 労働契約期間満了等」の(4)移籍出向に該当します。在籍のまま出向するのか、雇用関係が終了するのかで扱いが正反対になります。

6. 65歳未満の定年退職で継続雇用制度がない場合

資格喪失届の喪失原因は、65歳未満の定年退職で継続雇用制度がない場合「3(事業主の都合による離職)」、60歳以上の定年退職で継続雇用制度がある場合は「2」です。継続雇用制度の有無で喪失原因が変わる点は見落とされがちです。

7. ⑭欄に斜線を引き忘れる

賞与など3か月以内の期間ごとに支払われる賃金がない場合、⑭欄には斜線を引きます。空欄のまま提出すると「記入漏れか、該当なしか」が判別できず、確認の連絡が入ります。細かいようですが、差し戻し1件で数日のロスになるため、提出前チェックリストに入れておく価値があります。

離職証明書の作成にAIをどう使うか|下ごしらえは任せ、判断は任せない

任せてよい作業/任せてはいけない判断

離職証明書は「賃金台帳という一次データを、決められたルールで様式に並べ替える」作業と、「事実を法令上の区分に当てはめる」判断が混ざった書類です。AIが効くのは前者だけです。

工程

AIの適性

理由

賃金台帳からの期間区切り・転記の下ごしらえ

◎ 任せてよい

暦の計算と表の組み替えは機械的で、人間より速く正確

⑨⑪欄の基礎日数の計算過程の検算

○ 補助として有効

人が出した数字との突合に使う。AI単独の数字は採用しない

⑬備考欄に書くべき事項の洗い出し

○ 補助として有効

締切日変更・休業・賃金未払などのチェックリスト化に向く

離職理由の区分の当たりをつける

△ 下書きまで

最終判定はハローワーク。事業主の主張を整理する下書きに留める

離職理由の最終決定・具体的事情の断定

✕ 任せない

事実認定であり、誤れば退職者の給付と会社の信用に直結する

給付制限期間・所定給付日数の回答

✕ 任せない

公的ページ間ですら記載が食い違う。必ず一次資料と窓口で確認

マイナンバー・賃金明細を含む生データの投入

✕ 任せない

個人情報。学習に使われない環境か、マスキング前提でしか扱わない

そのまま使えるプロンプト3本

いずれも氏名・マイナンバー・生年月日を外し、日付と金額と日数だけを渡すことを前提にしています。個人が特定できる情報は投入しないでください。

プロンプト1|⑧欄・⑩欄の期間を機械的に作る

あなたは雇用保険の届出実務に詳しいアシスタントです。
以下の条件で、雇用保険被保険者離職証明書の
「⑧被保険者期間算定対象期間」と「⑩賃金支払対象期間」の各行を、
上から順に表形式で作成してください。

- 離職日:【2026-03-31】
- 賃金締切日:毎月【20日】
- 被保険者資格取得日:【2023-04-01】

作成ルール:
1. ⑧欄は「離職日の翌日」に応当する日を起点に1か月ずつ遡る。
   応当日がない月はその月の末日とする。
2. ⑩欄は「賃金締切日の翌日から賃金締切日まで」で区切る。
   最上段は賃金締切日の翌日から離職日までの端数期間とする。
3. 24か月分まで作成し、⑧と⑩を別列で並べる。
4. 期間の長さ(日数)も併記する。
5. 計算の前提として置いた仮定があれば、表の下に箇条書きで明示する。

※日数の判定や賃金額は含めず、期間の区切りのみを出力してください。

うまくいかない例と直し方:「離職証明書の⑧欄を作って」とだけ投げると、賃金締切日で区切った期間を⑧欄として返してくることがあります。⑧は離職日の翌日起点、⑩は締切日起点という区切りの違いをプロンプトに明記するのが必須です。出てきた表は必ず先頭行と末尾行を手で検算してください。

プロンプト2|賃金台帳と離職証明書の突合チェック

次の2つのデータを突合し、不一致・記入漏れの疑いがある箇所だけを
指摘してください。問題がない行は出力不要です。

【A:賃金台帳の抜粋(氏名・個人情報は削除済み)】
(期間 / 基礎日数 / 基本給 / 諸手当 / 通勤手当 / 支給合計 を貼り付け)

【B:離職証明書に記入予定の値】
(⑩期間 / ⑪基礎日数 / ⑫A欄 / ⑫B欄 / ⑫計 を貼り付け)

チェック観点:
1. AとBで期間の区切りがずれていないか
2. ⑫計=A欄+B欄になっているか
3. 通勤手当を複数月分まとめて支給している月がないか
   (ある場合は該当月数で按分すべき旨を指摘)
4. 変動手当が翌月払いの場合、対象月に算入されているか
5. 基礎日数が10日以下の期間があるか
   (ある場合は⑬備考欄に賃金支払基礎時間数の記入が必要な旨を指摘)
6. 休業手当・賃金未払・賃金締切日変更を示唆する数値の動きがないか

出力形式:|行|疑いのある点|確認すべき資料|の表

うまくいかない例と直し方:「おかしいところを教えて」と広く聞くと、当たり障りのない一般論が返ってきます。チェック観点を番号付きで列挙し、「問題がない行は出力不要」と指定することで、実際に見るべき行だけが残ります。

プロンプト3|⑦欄の区分の当たりをつけ、確認資料を洗い出す

以下の退職の経緯について、雇用保険被保険者離職証明書⑦欄の
区分(1〜6)のうち、事業主として主張しうる候補を
可能性の高い順に3つまで挙げてください。

【経緯】
(例:定年後に1年更新の再雇用契約を締結。今回、更新せず
契約期間満了により退職。本人は更新を希望していた。)

各候補について、次を整理してください。
1. 該当しうる区分と、その理由(事実のどの部分が根拠か)
2. ハローワークに持参すべき確認資料
3. 「具体的事情記載欄(事業主用)」に書くべき事実の要素
   (評価や推測ではなく、日付・回数・文書名などの事実に限る)
4. この区分で提出した場合に、離職者から異議が出る可能性がある論点

制約:
- 最終的な離職理由の判定はハローワークが行う前提で、
  断定的な結論は書かないこと。
- 特定受給資格者に該当するか否かの判断は行わないこと。

うまくいかない例と直し方:「この人は会社都合ですか」と聞くと、AIは自信ありげに断定してきます。これが最も危険な使い方です。「候補を挙げさせる」「断定を禁止する」「判定主体はハローワークだと前提に置く」の3点を制約に入れることで、下書きの道具として安全に使えます。実際の⑦欄の選択と具体的事情の記載は、必ず有資格者が事実に基づいて決定してください。

プロンプトの型を事務所の資産にする

離職証明書だけでなく、資格取得届・算定基礎届・36協定など、社労士の様式業務はどれも「一次データの転記+要件の当てはめ」という同じ構造をしています。案件ごとに書き捨てるのではなく、型として蓄積しておくと効きます。社労士のChatGPTプロンプト集(労務・社会保険で使える実例10選)に業務別の型をまとめているので、離職証明書の3本と合わせて事務所の標準にしてみてください。入社時の書類まで含めて整えるなら、労働条件通知書をAIで作成する方法と2024年改正の明示事項雇用契約書のひな形と記載事項も同じ考え方で運用できます。

汎用AIで足りない部分をどう埋めるか

ここまでのプロンプトは汎用のAIチャットでも動きます。一方で、離職証明書のような様式業務で汎用AIが弱いのは、「根拠が公的資料のどこに書いてあるか」を毎回自分で確かめないと安心して使えない点です。この記事で挙げた11日/80時間の使い分けも、給付制限の1か月/2か月も、出典に当たって初めて確定できました。

士業AIは、士業の業務文書と法令引用に合わせてチューニングした業務特化型のAIチャットです。とはいえ、どんなAIを選ぶにせよ判断基準は同じです。①入力データが学習に使われない運用になっているか、②回答の根拠を確認できるか、③最終判断を人が握れる作りになっているか——この3点で選べば、大きく外しません。社労士・事務所スタッフ向けの機能と料金は士業AIの事務スタッフ向けプランにまとめています。

よくある質問

離職票はいつ届きますか

事業主がハローワークへ提出する期限は離職日の翌々日から10日以内です。その後ハローワークの審査を経て離職票-1・離職票-2が交付され、原則として事業主経由で退職者へ渡されます。条件を満たし本人が希望する場合は、マイナポータルへ直接送付されます。事業主の届出が遅れれば、そのぶん退職者の受給手続きが遅れます。

退職者が離職票は不要と言っています。作らなくてよいですか

本人が交付を希望しない場合は離職証明書を添付しないことができます。ただし離職の日において59歳以上の場合は、本人の希望にかかわらず必ず交付が必要です。また、後日退職者から離職証明書の交付を求められた場合は、事業主はこれに応じる必要があります。転職先が決まっていても気が変わることはあるため、実務では作成しておくほうが安全です。

離職理由について本人と見解が食い違っています

事業主は自らの認識に基づいて⑦欄を記入し、⑯欄で本人に「異議有り」を選ばせたうえで提出します。離職理由の最終的な判定はハローワークが行います。退職者側はハローワークに相談でき、ハローワークが事実関係を調査のうえ判定します。事業主・社労士が本人の要望に合わせて事実と異なる区分で提出することは避けてください。

賃金支払基礎日数の「11日」と「80時間」はどちらを使いますか

原則は11日以上です。80時間は、11日以上の月で数えた被保険者期間が12か月(特定受給資格者等は6か月)に満たない場合に限って適用される救済ルールです(雇用保険法14条3項)。離職証明書では、基礎日数が10日以下の期間について賃金支払基礎時間数を⑬備考欄に記入します。

有給休暇を取った日は基礎日数に入りますか

入ります。手引きは「有給休暇も算入し、半日でも1日として計算します」と明記しています。半日勤務や時間単位の勤務があった日も1日として数え、詳細は備考欄に記載します。

まとめ

離職票の書き方でつまずく原因は、ほとんどが「事業主が書くのは離職証明書である」という前提のずれと、⑧欄と⑩欄という2つの期間の使い分けにあります。そのうえで、賃金支払基礎日数11日と時間数80時間の関係、離職理由は事業主が主張しハローワークが判定するという役割分担、離職日の翌々日から10日以内という期限——この4点を押さえれば、差し戻しの大半は防げます。

AIは、賃金台帳からの期間の切り出しや突合チェックといった下ごしらえを確実に速くします。一方で、離職理由の最終判断や給付制限の日数は、公的機関のページ同士でも記載が食い違うことがある領域です。「機械にやらせる部分」と「人が責任を持つ部分」を先に線引きしてから使うことが、様式業務でAIを安全に使う唯一の方法です。まずは今回のプロンプト3本を、直近の1件で試してみてください。

参考文献

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