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両立支援等助成金の6コース早見表|支給額・要件・申請期限【2026年度】

両立支援等助成金とは|2026年度に申請できるのは6コース

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護などの両立支援に取り組んだ事業主に支給される、厚生労働省(都道府県労働局雇用環境・均等部(室))所管の雇用関係助成金です。法的な根拠は雇用保険法第62条第1項第6号と、雇用保険法施行規則第115条第1号・第116条にあります。

顧問先から「うちは何かもらえる助成金ありますか」と聞かれたとき、社労士がまず当てにいくのがこの助成金です。理由は単純で、設備投資も新しい採用も要らず、「すでに起きている育休・介護休業」を要件に乗せるだけで受給できる可能性があるからです。ただしコースが6つあり、対象事業主の範囲も申請期限もコースごとに違います。ここを取り違えると、支給申請期間を過ぎてから気づく事故になります。

この記事で分かること

  • 2026年度(令和8年度)時点で申請できる6コースの全体像と、法令上あるのに申請できないコース
  • コース別の支給額・対象事業主・申請期限の早見表
  • 2026年度に消えた制度メニュー・新設された助成メニュー
  • 顧問先がどのコースに当たるかを3分で判定する手順
  • 要件の当てはめ・申請書の下書き・顧問先への案内文にAIを使う具体的なプロンプト

法令上は7コース、実際に申請できるのは6コース

雇用保険法施行規則第116条第1項は、両立支援等助成金として「事業所内保育施設コース助成金、出生時両立支援コース助成金、介護離職防止支援コース助成金、育児休業等支援コース助成金、育休中等業務代替支援コース助成金、柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金及び不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース助成金」の7つを掲げています。

ただし事業所内保育施設コースは平成28年4月から新規計画の認定申請受付を停止しており、厚生労働省の2026年度版手引きでも掲載対象外です。つまり2026年度に新規で狙えるのは残り6コースです。条文だけを読んで顧問先に「7コースあります」と説明すると事実と食い違うので、条文とパンフレットの両方に当たる必要があります。

助成金はコースの改廃が頻繁です。実際、2026年度(令和8年度)には介護離職防止支援コースから制度メニューが2つ削除され、代わりに新しい助成メニューが1つ新設されています(後述)。前年度の資料をそのまま使い回すのが最も危険だと考えてください。

「うちは何かもらえる?」に最初に返す3つの質問

実務で最短ルートを通すなら、顧問先に返す質問は次の3つで足ります。

  1. 直近1年で、育児休業・介護休業を取った(取る予定の)従業員はいますか — いれば出生時両立支援・育児休業等支援・介護離職防止のいずれかが射程に入ります
  2. 資本金と常時雇用する労働者数はいくつですか — 中小企業事業主か特定事業主かで、そもそも申請できるコースが変わります
  3. 育児・介護休業法の規定は就業規則に落ちていますか。一般事業主行動計画は届出済みですか — ここが未整備だと、休業が終わってからでは間に合いません

3つ目が特に重要です。両立支援等助成金の要件の多くは「休業開始日の前日までに」整備されていることを求めます。事後に就業規則を直しても遡って要件を満たすことはできません。顧問先から相談を受けた時点で休業が始まっていたら、まず「何が間に合って、何がもう間に合わないか」を切り分けるのが社労士の仕事になります。

【早見表】6コースの支給額・対象事業主・申請期限

コース別 支給額早見表(2026年度)

金額は厚生労働省「両立支援等助成金 支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)」に基づきます。加算は原則として1事業主1回限りで、加算のみの受給はできません。

コース

主な支給額

対象事業主

支給人数・回数

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

【育休取得】1人目20万円(雇用環境整備措置4つ以上で30万円)、2人目・3人目 各10万円 【取得率の上昇等】60万円

育休取得は中小企業事業主/取得率の上昇等は特定事業主

育休取得は3人目まで/取得率の上昇等は1回限り

介護離職防止支援コース

介護休業40万円(連続15日以上で60万円)/介護両立支援制度20〜40万円/業務代替支援3〜30万円/介護休暇制度有給化支援30万円(10日以上付与で50万円)

中小企業事業主のみ

各メニュー1事業主5人まで/有給化支援は1回限り

育児休業等支援コース

育休取得時30万円/職場復帰時30万円

中小企業事業主のみ

各2回まで(無期・有期 各1回)

育休中等業務代替支援コース

【手当支給等(育児休業)】業務体制整備経費6万円+業務代替手当の3/4 【新規雇用(育児休業)】9万円〜81万円

手当支給等は全事業主/新規雇用は特定事業主

1事業主1年度あたり3メニュー合計10人まで

柔軟な働き方選択制度等支援コース

【柔軟な働き方選択制度】制度3つ導入+利用20万円、4つ以上25万円 【子の看護等休暇制度有給化支援】30万円

中小企業事業主のみ

1事業主5人まで/有給化支援は1回限り

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療30万円/女性の健康課題対応(月経)30万円/同(更年期)30万円

中小企業事業主のみ

各30万円

申請期限の起算点はコースごとに違う

ここが最も事故が起きるところです。「休業が終わってから2か月」と一律に覚えていると外します。

コース・メニュー

申請期限の起算点

出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)

申請に係る育児休業の終了日の翌日から2か月以内

育児休業等支援コース(育休取得時)

産後休業から連続して育休を取得した場合は産後休業開始日、それ以外は育児休業開始日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内

育児休業等支援コース(職場復帰時)

育児休業終了日の翌日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内

介護離職防止支援コース(介護休業)

介護休業終了日の翌日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内

柔軟な働き方選択制度等支援コース(柔軟な働き方選択制度)

6か月間の制度利用期間の翌日から2か月以内

育児休業等支援コースの育休取得時は、起算点が育休の「開始日」です。1年の育休なら、休業が続いている最中に申請期限が来て終わります。手引きにも「育児休業の終了を待たずに申請期限が終了することもあります」と明記されています。顧問先が「復帰したら申請しましょう」と考えていたら、その時点で失権しています。

また郵送申請の場合、消印日ではなく労働局への到達日で判定されます(期限内必着)。期限ぎりぎりの案件は簡易書留などの配達記録が残る方法で、余裕を持って送る必要があります。

中小企業事業主と特定事業主は範囲が違う

両立支援等助成金では「中小企業事業主」と「特定事業主」という2つの規模区分が使われ、数字が別物です。ここを混同すると、対象外の顧問先に申請準備をさせてしまいます。

業種

中小企業事業主(資本金 または 常時雇用労働者数)

特定事業主(資本金 または 常時雇用労働者数)

小売業(飲食店を含む)

5,000万円以下 または 50人以下

5,000万円以下 または 300人以下

サービス業

5,000万円以下 または 100人以下

5,000万円以下 または 300人以下

卸売業

1億円以下 または 100人以下

1億円以下 または 300人以下

その他の業種

3億円以下 または 300人以下

3億円以下 または 300人以下

「常時雇用する労働者」とは、2か月を超えて使用される者で、かつ週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等である者を指します。資本金等のない事業主は労働者数だけで判定します。業種区分は日本標準産業分類(平成25年10月30日付け総務省告示第405号)によるので、顧問先の自己申告の業種名ではなく分類項目で確認してください。

出生時両立支援コース|男性の育休で最初に当たる1本

相談件数が一番多いのがこのコースです。男性従業員に子が生まれ、数日でも育休を取ったのなら、まずここを見ます。

1人目20万円・2人目10万円・3人目10万円の刻み

支給額は男性労働者の育児休業取得について1人目20万円、2人目・3人目が各10万円です。雇用環境整備の措置を4つ以上実施していれば、1人目が30万円に増額されます。さらに育児休業等に関する情報公表加算が2万円(1〜3人目のいずれか1回限り)付きます。

対象となる育児休業には日数要件があり、人数によって段階的に重くなります。

対象人数

育児休業日数(暦日)

期間中に含むべき所定労働日数

必要な雇用環境整備措置(申出期限2週間前まで/2週間前より長い)

1人目

連続5日以上

4日以上

2つ以上 / 3つ以上

2人目

連続10日以上

8日以上

3つ以上 / 4つ以上

3人目

連続14日以上

11日以上

4つ以上 / 5つ(全て)

育児休業は子の出生後8週間以内(出生日当日を含む57日間)に開始している必要があります。産後パパ育休(出生時育児休業)も含みますが、分割取得した場合は上表の日数を連続して取得している回だけが対象になります。5日を4日+3日に割ってしまうと、合計7日でも1人目の要件を満たしません。

雇用環境整備措置は「5項目のうち何個やったか」で判定する

育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置は次の5項目です。

  1. 労働者に対する育児休業に係る研修の実施
  2. 育児休業に関する相談体制の整備
  3. 労働者の育児休業の取得に関する事例の収集および提供
  4. 育児休業に関する制度および取得促進に関する方針の周知
  5. 育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に係る必要な措置

実務で引っかかるのは5番目です。1〜4と違い、対象労働者について実際に措置を行っている必要があり、単に周囲に業務を引き継ぐだけでは措置を講じたことになりません。業務分担の見直しや引継ぎマニュアルの作成、代替要員の採用、他部署からの異動など、提出書類で確認できる形の対応が要ります。

また各措置は育児休業の開始日の前日まで(かつ申請日の概ね3年以内)に実施している必要があり、通常の育児休業だけでなく産後パパ育休に関する内容を盛り込んでいることも条件です。相談体制の整備だけは概ね3年以上前に実施したものも対象になります。

取得率の上昇等は60万円(2026年度に対象が300人以下へ拡大)

もう一つのメニューが「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」です。男性の育休取得率が1事業年度で30ポイント以上上昇し50%を達成した場合(または一定の場合に2年連続70%以上となった場合)に60万円、申請時にプラチナくるみん認定事業主であれば15万円が加算されます。

2026年度の改正で、このメニューの対象が業種にかかわらず常時雇用する労働者300人以下の事業主へ拡大され、取得率の算定に事実婚状態の男性労働者の育児休業も含まれるようになりました。100人規模の顧問先でも射程に入るようになっています。

なお、取得率の上昇等を受給した後に、同じ事業主が男性労働者の育児休業取得の申請を行うことはできません。順番を誤ると取り逃がすので、複数の受給機会が見込める顧問先では順序を設計してから動きます。

育児休業等支援コース|育休取得時30万円+職場復帰時30万円

中小企業事業主のみが対象で、「育休復帰支援プラン」を作って育児休業の取得と職場復帰を支援した場合に、育休取得時30万円・職場復帰時30万円が支給されます。無期雇用労働者と有期雇用労働者で各1回、合計2回まで。情報公表加算2万円がいずれか1回に付きます。

要件の実体は「面談 → プラン → 引継ぎ」の3点セット

育休取得時の要件で押さえるべきは次の点です。

  • 育休復帰支援プランで支援するという方針を明文化して周知していること(プラン本体ではなく実施方針の周知)
  • 育児休業取得予定者と面談し「面談シート」に記録した上でプランを作成すること
  • プランに「業務の整理・引継ぎに関する事項」と「育児休業中の職務や業務内容に関する情報・資料の提供に関する事項」の両方を盛り込むこと
  • プランに基づき業務の引継ぎを実施していること
  • 対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得したこと
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し労働局へ届け出ていること

方針の周知・面談・プラン作成は、対象労働者の休業開始日の前日まで(産前休業から連続する場合は産前休業開始日の前日まで)に済ませる必要があります。「産休に入ります」と報告を受けた時点では、もう間に合っていない可能性があるということです。顧問先には妊娠の報告を受けた段階で連絡をもらう運用にしてもらうのが実務上の正解です。

なお、同一労働者の同一の育児休業について、出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)との併給はできません。男性従業員が3か月以上の育休を取る場合はどちらで申請するかの選択になります。

介護離職防止支援コース|2026年度に介護休暇の有給化が新設

中小企業事業主のみが対象で、「仕事と介護の両立支援プラン」を軸にした4つのメニューがあります。

メニュー

支給額

回数

[1] 介護休業

40万円(連続15日以上の休業の場合60万円)

1事業主5人まで

[2] 介護両立支援制度

制度1つ導入+利用 20万円(合計60日以上の利用で30万円)/2つ以上導入+利用 25万円(同40万円)

1事業主5人まで

[3] 業務代替支援

新規雇用20万円(連続15日以上の休業で30万円)/手当支給等(介護休業)5万円(同10万円)/手当支給等(短時間勤務)3万円

1事業主5人まで

[4] 介護休暇制度有給化支援

30万円(10日以上の有給休暇を付与する場合50万円)

1事業主1回限り

これに環境整備加算10万円([1][2][3]対象・1回限り)と、制度利用者が有期雇用労働者の場合の有期雇用労働者加算10万円([1][2]対象・1回限り)が乗ります。介護休業は連続5日以上が要件で、育児と違って短期でも届きます。

2026年度に消えた制度・増えた助成

2026年度(令和8年度)の改正で、このコースには次の変更が入っています。

  • 介護両立支援制度のメニューから「所定外労働の制限制度」と「深夜業の制限制度」が削除されました。前年度の資料で「所定外労働の制限を入れれば取れます」と案内していた顧問先には訂正が必要です
  • 介護休暇制度の有給化が独立した助成メニューとして新設され、有給の介護休暇制度を導入して利用等の要件を満たした事業主に1回限り30万円(10日以上の付与で50万円)が支給されます
  • 介護休業・制度利用者が有期雇用労働者の場合の10万円加算が設けられました

介護両立支援制度として残っているのは、時差出勤制度、介護のための短時間勤務制度、介護のための在宅勤務制度、介護のためのフレックスタイム制度、介護サービス費用補助制度などです。制度設計の提案をする際は、削除されたメニューを外した上で組み立ててください。

残る3コース|業務代替・柔軟な働き方・不妊治療

育休中等業務代替支援コース(唯一、全事業主が使えるメニューあり)

育児休業取得者や育児短時間勤務利用者の業務を代替した周囲の労働者に手当を支給した場合、または代替要員を新規雇用した場合に支給されます。手当支給等の2メニューは中小企業に限らず全事業主が対象である点が、他コースと大きく違います。

  • 手当支給等(育児休業):業務体制整備経費6万円(育児休業期間1か月未満の場合は2万円、労務コンサルを外部専門事業者に委託した場合は20万円)+業務代替手当の総額の3/4(プラチナくるみん認定事業主は4/5)。助成上限は月10万円、代替期間24か月分まで
  • 手当支給等(短時間勤務):業務体制整備経費3万円(外部委託の場合20万円)+業務代替手当の総額の3/4。助成上限は月3万円、子が3歳になるまでが対象
  • 新規雇用(育児休業):代替期間に応じて7日以上14日未満9万円/14日以上1か月未満13.5万円/1か月以上3か月未満27万円/3か月以上6か月未満45万円/6か月以上1年未満67.5万円/1年以上81万円(プラチナくるみん認定事業主は順に11万円・16.5万円・33万円・55万円・82.5万円・99万円)。対象は特定事業主

支給人数は1事業主1年度につき3メニュー合計で10人まで、初回の対象者が出てから5年間です。2026年度の改正で、手当支給等の対象事業主から従業員数要件が撤廃され、新規雇用は常時雇用する労働者300人以下の事業主へ拡大、業務代替手当の助成対象期間が2年間に延長されました。

柔軟な働き方選択制度等支援コース

中小企業事業主が、育児期の柔軟な働き方を可能とする制度を3つ以上導入し、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき労働者が制度を利用した場合に、制度3つで20万円、4つ以上で25万円(1事業主5人まで)。子の看護等休暇制度を法を上回る水準で有給化し労働者が利用した場合は30万円(1回限り)です。

2026年度の改正で、障害児や医療的ケア児を養育する労働者が制度を利用できる期間を18歳の年度末まで延長した場合の障害児等要配慮支援加算20万円が新設され、子の看護等休暇の有給化については対象労働者が実際に利用したことが支給要件に加わりました。制度を入れただけでは足りません。

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

中小企業事業主が、不妊治療・月経(PMSを含む)・更年期のそれぞれについて両立支援制度を就業規則等に規定し、両立支援担当者を選任した上で、対象労働者が制度利用開始日から1年以内に合計5日(回)以上利用した場合に、各30万円が支給されます。制度の利用対象者には雇用保険被保険者以外も含める必要があります。

このコースは「休業が発生していない顧問先」でも狙えるのが特徴です。育休も介護休業も出ていない小規模事業所で「何かないですか」と聞かれたとき、規程整備から提案できる数少ない選択肢になります。

顧問先のコース判定フロー

ここまでの要件を、相談を受けたその場で当てはめるための順序にしておきます。

  1. 規模を確定する:業種(日本標準産業分類)・資本金・常時雇用労働者数から、中小企業事業主か/特定事業主か/どちらでもないかを判定する。どちらでもない場合でも、育休中等業務代替支援コースの手当支給等2メニューは残る
  2. 発生している事象を拾う:男性の育休(出生後8週間以内開始・連続5日以上)/3か月以上の育休/連続5日以上の介護休業/育児短時間勤務/代替要員の新規雇用/代替者への手当支給
  3. 「前日まで要件」の生死を判定する:就業規則の規定、一般事業主行動計画の届出、方針の周知、面談とプラン作成が、休業開始日の前日までに済んでいるか。済んでいなければそのコースは今回見送り、次の対象者に向けて整備する
  4. 申請期限を逆算してカレンダーに置く:コースごとに起算点が違うため、必ず起算点から数えて期限日を確定し、顧問先と共有する
  5. 併給制限と順序を確認する:同一労働者の同一育休について出生時両立支援コースと育児休業等支援コースは併給不可。取得率上昇等を先に受給すると育休取得の申請ができなくなる

3番目で「今回は間に合わない」と分かったケースこそ、顧問先にとって価値のある報告になります。今回は取れないが、規程と行動計画を今のうちに整えれば次の対象者で確実に取れる、という提案に転換できるからです。就業規則側の整備は就業規則・社内規程のドラフトとチェックをAIで進める手順と合わせて進めると早く回ります。

育児・介護休業法改正への対応と規程見直しは、この助成金の前提条件そのものです。法改正対応が終わっていない顧問先は、助成金以前に規程が要件を満たしていないので、そちらを先に片づけてください。

AIの使いどころ|要件の当てはめ・申請書の下書き・顧問先への案内文

この助成金は、判断そのものより「6コース×複数メニュー×前日まで要件×申請期限」の組み合わせを漏れなく当てにいく作業に時間を取られます。ここがAIの得意分野です。逆に、金額や期限そのものをAIに答えさせるのは危険です。コース改廃が毎年あるため、学習データが古いと自信満々に前年度の金額を返してきます。

正しい使い方は「厚生労働省の2026年度版手引きを自分で貼り付け、その中だけで判定させる」です。以下のプロンプトはすべてこの前提で作っています。

プロンプト1|顧問先がどのコースに当たるかの一次判定

あなたは助成金実務に詳しい社会保険労務士です。
以下の【資料】は厚生労働省「両立支援等助成金 支給申請の手引き(2026年度版)」からの抜粋です。
判定は必ず【資料】の記載だけを根拠とし、【資料】に書かれていないことは
「資料に記載なし」と明記してください。あなたの記憶で金額や期限を補わないでください。

【顧問先の情報】
・業種(日本標準産業分類):【例:サービス業・中分類83 医療業】
・資本金:【例:1,000万円】
・常時雇用する労働者数:【例:42人】
・発生している事象:【例:男性従業員1名が2026年7月10日出生の子について
  7月15日から7月24日まで育児休業を取得。分割取得なし】
・就業規則の育児休業規定:【例:2025年4月改定済。産後パパ育休の規定あり】
・一般事業主行動計画:【例:未届出】
・過去の両立支援等助成金の受給歴:【例:なし】

【出力形式】
1. 規模区分の判定(中小企業事業主/特定事業主/いずれにも該当せず)と根拠の該当行
2. 該当可能性のあるコース・メニューを可能性が高い順に列挙し、それぞれ
   (a) 満たしている要件 (b) 満たしていない/未確認の要件 (c) 支給見込額
3. 「休業開始日の前日まで」に満たす必要がある要件のうち、
   すでに期限を過ぎてしまっているものを明示
4. 追加でヒアリングすべき事項を箇条書きで

【資料】
(ここに手引きの該当ページを貼り付け)

うまくいかない例と直し方:資料を貼らずに「両立支援等助成金で40人規模の会社が取れるものを教えて」と聞くと、廃止済みの「所定外労働の制限制度」や前年度の金額が混じった回答が返ってきます。直し方は上のとおり、資料を貼る+「資料に記載のないことは記載なしと書け」と明示するの2点です。この一文があるだけで、根拠のない断定がはっきり減ります。

プロンプト2|提出書類の棚卸しと不足チェック

以下の【資料】(厚生労働省 両立支援等助成金 支給申請の手引き 2026年度版の
「申請に必要な書類」該当ページ)に基づき、
【申請するコース・メニュー】について提出書類チェックリストを作成してください。

【申請するコース・メニュー】:【例:出生時両立支援コース・男性労働者の育児休業取得(1人目)】
【顧問先から受領済みの資料】:
- 就業規則(育児・介護休業規程含む)
- 育児休業申出書、育児休業取扱通知書
- 出勤簿(2026年7月分)
- 賃金台帳(2026年7月分)
【顧問先から未受領の資料】:不明

【出力形式】表形式で
| 書類名 | 様式の有無 | 原本/写し | 受領済み・未受領 | 顧問先への依頼文(1行) |
最後に「この申請で最も不備が出やすい書類」を3つ、理由つきで挙げてください。

【資料】
(ここに該当ページを貼り付け)

うまくいかない例と直し方:「必要書類を教えて」だけだと一般論のリストが出てきて、顧問先に投げる依頼文まで書かせられません。受領済み/未受領を自分で先に埋めて渡すと、AIは差分だけを埋める作業に集中でき、そのまま顧問先へ転送できる依頼文が出てきます。

プロンプト3|顧問先への案内文

顧問先の【会社名】の人事担当者【担当者名】さま宛に、
両立支援等助成金の受給可能性についてお知らせするメール文面を作成してください。

【前提】
・判定結果:【例:出生時両立支援コース(1人目)に該当する可能性が高い】
・見込額:【例:20万円。雇用環境整備の措置を4つ以上実施していれば30万円】
・申請期限:【例:2026年9月24日(育児休業終了日の翌日から2か月以内)】
・こちらで必要な対応:【例:一般事業主行動計画の策定・届出(申請日までに必要)】
・顧問先にお願いしたい資料:【例:研修実施要領、相談窓口の周知資料】

【条件】
・件名を含めて全体で400字以内
・冒頭2行で「いくらの可能性があり、いつまでに何をする必要があるか」が分かること
・確実に受給できると断定せず、「支給要件の確認が必要」である旨を明記
・依頼事項は箇条書きで、期日を添える
・専門用語には短い言い換えを括弧書きで添える

うまくいかない例と直し方:条件を付けずに書かせると、制度説明が長く前置きの丁寧な、担当者が読み飛ばすメールになります。「冒頭2行で金額と期限が分かること」「400字以内」という2つの制約が効きます。助成金の案内は読まれて動いてもらうことが目的なので、正確さより先に「期限が目に入ること」を優先します。

コース判定以外の労務相談も同じ型で回せます。類型別の文面は社労士のChatGPTプロンプト集(労務・社会保険の実例10選)にまとめてあるので、案内文のテンプレートを増やしたい場合はそちらを使ってください。助成金申請全般の要件確認・申請書ドラフトの流れは助成金申請をAIで効率化する実務手順で、キャリアアップ助成金など他制度も含めて整理しています。

AIに任せてはいけないこと

ここは正直に書いておきます。次の3つは、AIの出力をそのまま使ってはいけません。

  • 支給額と申請期限の数値:必ず当年度の手引きまたは支給要領の原本で突合する。手引きは毎年度更新され、厚生労働省の解説ページにも旧年度の記述が残っていることがあります
  • 「支給されます」という断定:両立支援等助成金には共通の不支給要件(雇用保険適用事業所であること、審査への協力、労働関係法令違反がないことなど)があり、コース要件を満たしていても不支給になる場合があります
  • 提出書類の最終確認:様式は年度で改訂されます。厚生労働省の当該コースのページから最新様式をダウンロードして使ってください

要件の当てはめや書類の棚卸しといった「情報を整理する工程」はAIで大きく縮みますが、数値と期限の裏取りは人がやる。この線引きを事務所のルールとして決めておくと、AIを入れても品質が落ちません。

汎用なんでもAI/メール返信AIで日常業務を効率化するデモです。

士業AIは、労務・法務の業務文書を前提にチューニングした日本語特化のAIチャットサービスです。就業規則や助成金の要領といった長い資料を読ませた上で判定させる使い方に向いており、クレジットカード不要・メール登録のみで利用を開始できます。事務所スタッフ向けの機能は士業事務所スタッフ向けの活用ページにまとめています。

よくあるつまずきと、事前に潰す方法

つまずき

何が起きるか

事前に潰す方法

一般事業主行動計画が未届出

出生時両立支援コース・育児休業等支援コースが申請できない

顧問先の規模にかかわらず、策定・届出・公表・周知を先に済ませる(プラチナくるみん認定事業主は策定・届出不要)

育休を分割取得した

合計日数が足りていても、連続日数要件を満たさず不該当

相談を受けた時点で「連続5日(10日/14日)を1回作れるか」を確認する

雇用環境整備の5番目を「引継ぎ」で済ませた

措置を講じたと認められない

業務リストの見直し状況が分かる資料や、効率化のために作成した業務マニュアルを残す

育休取得時の申請期限を復帰後だと思っていた

休業中に申請期限が終了する

起算点は育休開始日(産後休業から連続なら産後休業開始日)。開始日の時点で期限をカレンダーに入れる

前年度の資料で制度設計を提案した

廃止済みメニュー(所定外労働の制限制度など)で申請してしまう

毎年4月に当年度の手引きを差し替える。年度をまたぐ案件は開始時点と申請時点の両方の年度を確認する

郵送を期限当日に投函した

消印内でも到達日が期限後なら受理されない

期限内必着。配達記録の残る方法で数日前に発送、または電子申請を使う

両立支援等助成金は2023年(令和5年)6月26日から電子申請の対象になっており、コースごとに雇用関係助成金ポータルから申請できます。郵送到達日のリスクを避けたい案件は電子申請に寄せるのが確実です。

まとめ|コース判定は「規模・事象・前日まで要件・期限」の4点で決まる

  • 2026年度に申請できるのは6コース。法令上は事業所内保育施設コースを含む7コースだが、同コースは平成28年4月から新規計画の認定申請受付を停止している
  • 中小企業事業主と特定事業主は範囲が別物。小売業なら50人以下と300人以下で、対象コースが変わる
  • 申請期限の起算点はコースごとに違う。育児休業等支援コースの育休取得時は育休開始日起算で、復帰を待つと失権する
  • 2026年度は介護離職防止支援コースで所定外労働・深夜業の制限制度が削除され、介護休暇制度有給化支援が新設された。前年度資料の使い回しは事故のもと
  • AIは要件の当てはめ・書類の棚卸し・案内文の下書きで効く。ただし当年度の手引きを資料として渡し、数値と期限は人が原本で突合する

顧問先から「うちは何かもらえる助成金ありますか」と聞かれたとき、その場で規模区分と発生事象を確認し、前日まで要件の生死を判定して、期限を逆算する。この4ステップを型にしておけば、6コースある助成金でも迷わず答えられます。整理と下書きの部分をAIに任せて、判断と裏取りに時間を使ってください。

参考文献

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