法務×AI

雇用契約書のひな形|労働条件通知書との違いと記載事項【2026年】

雇用契約書のひな形は、ネットで拾ってそのまま使うと危険です。2024年4月に労働条件の明示ルールが変わり、古い様式のままだと「就業場所・業務の変更の範囲」の欄が丸ごと抜けているためです。この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の違いを条文レベルで整理したうえで、いま必要な記載事項を満たすひな形の骨格、雇用形態別の書き分け、電子交付の要件、そしてAIで下書きするときの具体的な手順までをまとめます。

先に結論だけ言うと、押さえるべきは次の4点です。

  • 雇用契約書そのものに法律上の作成義務はない(労働契約は合意で成立する)。義務があるのは労働基準法15条1項の「労働条件の明示」=労働条件通知書のほう
  • 労働条件通知書は使用者からの一方的な明示、雇用契約書は双方の合意。根拠条文も義務の性質もまったく別物
  • だから実務では、明示義務を満たす通知書と、双方が署名する契約書を1枚にした「労働条件通知書 兼 雇用契約書」が主流
  • ひな形の良し悪しは2024年4月改正の欄があるかどうかで9割決まる

この記事で分かること:

  • 雇用契約書と労働条件通知書の違い(根拠条文・義務・交付方法・署名の4軸)
  • 「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の作り方と、兼用にしてよい場面・分けるべき場面
  • いま必要な記載事項の一覧(絶対的明示事項/相対的明示事項/2024年改正の追加分の改正前後対照表)
  • 正社員・有期・パート/アルバイト・派遣で変わる記載の差分
  • メール・電子契約で交付してよい条件(労基則5条4項)
  • そのまま流用できる条文サンプルと、AIに下書き・点検させるプロンプト

雇用契約書のひな形 無料4種|Word・PDF(労働条件通知書 兼 雇用契約書)

本記事で解説している兼用様式のひな形です。正社員・契約社員(有期)・パート/アルバイトの3区分と、労働条件変更に関する合意書の4種類。いずれも2024年4月改正の「変更の範囲」欄と、2026年10月1日施行の特定事項(説明を求めることができる旨)に対応しています。

雇用契約書と労働条件通知書の違い|根拠条文・義務・署名で比べる

顧問先から「うちは契約書だけでいいですか」「通知書も要るんですか」と聞かれたときに、いちばん短く答えられる整理がこれです。

労働条件通知書

雇用契約書

法的な位置づけ

労働基準法15条1項・労働基準法施行規則5条にもとづく使用者の明示義務

民法623条の雇用契約/労働契約法6条の労働契約を書面化したもの。作成義務の規定はない

性質

会社から労働者への一方的な通知(相手の同意は要件ではない)

会社と労働者の双方の合意(申込みと承諾で成立)

作らないと

労基法120条1号により30万円以下の罰金の対象

罰則はない。ただし条件の食い違いを立証できず紛争化しやすい

署名・押印

不要(交付すれば足りる)

双方が記名押印・署名するのが通例

交付方法

書面交付が原則。労働者が希望した場合のみFAX・電子メール等も可(労基則5条4項)

法令上の取り決めなし(電子契約も可)

タイミング

労働契約の締結に際し(=雇入れ時、有期は更新のつど)

合意の時点。実務上は入社日までに取り交わす

労働条件通知書は労基法15条1項の「一方的な明示義務」

労働基準法15条1項は次のように定めています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(労働基準法15条1項・e-Gov法令検索)

ここで重要なのは「明示しなければならない」であって「合意しなければならない」ではない点です。労働条件通知書は使用者が一方的に果たす義務であり、労働者の署名も同意も、義務の履行それ自体には要りません。逆に、明示を怠れば労基法120条1号により30万円以下の罰金の対象になります。「本人が要らないと言ったから渡していない」は通用しません。

そして「厚生労働省令で定める方法」=労働基準法施行規則5条3項・4項が、書面の交付を原則の方法として定めています。つまり労働条件通知書とは、条文上の呼び名ではなく「労基則5条の書面交付義務を果たすための書面」の通称です。通知書そのものの作成手順と項目別の記載例は労働条件通知書をAIで作成する手順と2024年改正の明示事項・記載例で詳しく扱っています。本記事は雇用契約書との関係整理と、1枚にまとめる兼用様式の作り方に軸足を置きます。

雇用契約書は民法623条・労働契約法6条の「双方の合意」

一方、雇用契約書の背骨にあるのは民法623条です。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。(民法623条・e-Gov法令検索)

労働契約法6条も「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」としています(労働契約法・e-Gov法令検索)。「約する」「合意する」で成立する=口約束でも契約は有効ということです。書面がなくても契約自体は生きています。

それでも契約書を作るのは、同じ労働契約法4条2項が「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする」としているからであり、より実務的には「言った・言わない」を後から潰すためです。実際に労務トラブルの相談で最初に確認されるのは、ほぼ例外なく契約書の記載です。試用期間の長さ、固定残業代の内訳、転勤の可能性──この3つは、書面がないと会社側がまず不利になります。個別の紛争対応でどこまでAIに下書きさせてよいかは労務相談の回答をAIで下書きする手順(残業代・ハラスメント・解雇対応)で整理しています。

「どちらが優先するか」を聞かれたときの答え方

まず押さえるべきは、労基則5条2項が「明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」と定めている点です。通知書に実態と違う条件を書くこと自体が禁止されているので、「通知書は形式で、契約書が実態」という運用はそもそも取れません。さらに労基法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合に労働者が即時に労働契約を解除できるとしています。つまり食い違いは会社側のリスクにしかならず、そもそも食い違わせないことが実務上の答えです。それを構造的に実現するのが次章の兼用様式になります。

「雇用条件通知書」「労働契約書」──名称のゆれを整理する

顧問先とのやり取りでは、同じ書面がいくつもの呼び名で出てきます。法令上の呼称ではないものも多いので、最初に対応関係を揃えておくと話が早くなります。

呼び名

法令上の位置づけ

中身の実態

労働条件通知書

労基則5条3項・4項の「書面の交付」を果たす書面の通称(条文にこの語はない)

明示事項を並べた一方通行の書面

雇用条件通知書

法令上の呼称ではない。労働条件通知書の言い換え

中身は労働条件通知書と同じ。様式名としては「労働条件通知書」に揃えるのが無難

雇用契約書

民法623条の雇用契約を書面化したもの

双方が署名する合意文書

労働契約書

労働契約法6条の労働契約を書面化したもの

雇用契約書とほぼ同義。使用従属関係を前提にする分、労働契約書のほうが正確な言い方

労働条件通知書 兼 雇用契約書

明示義務と合意の両方を1枚で満たす実務上の様式

本記事が推奨する形

就業条件明示書

労働者派遣法34条にもとづく別の書面

派遣元が派遣のつど交付。雇用契約書とは別物

「雇用条件通知書をください」と言われたときに、別の書式を新たに作る必要はありません。労働条件通知書を渡せば足ります。ただし社内文書の名称が揺れていると、あとで「もらっていない」という話になりがちなので、事務所として1つの様式名に統一しておくことをおすすめします。

「雛形」「ひな形」「テンプレート」「サンプル」で中身は変わるのか

書式そのものの呼び方も分かれます。「雇用契約書 雛形」「雇用契約書 ひな形」「雇用契約書 テンプレート」「雇用契約書 サンプル」「労働契約書 ひな形」──指しているものは同じで、法令上の区別はありません。「雛形」は漢字表記、「ひな形」は常用漢字に合わせた表記というだけの違いです。

ただし、どの言葉で探すかによってたどり着く書式の性質は変わります。事務所で配る前に、次の違いだけ押さえておいてください。

探し方

たどり着く書式

使うときの注意

雇用契約書 雛形/ひな形
労働契約書 ひな形

第1条・第2条…と条文が並び、末尾に双方の署名欄がある契約書形式

合意の証拠としては強いが、明示事項が条文に埋もれて抜けやすい。労基則5条の項目と必ず突き合わせる

労働条件通知書 テンプレート/様式

厚生労働省モデル様式に代表される一覧表形式

明示事項の抜けは起きにくいが署名欄がない。合意の証拠にするには末尾へ合意条項と署名欄を足す

雇用契約書 サンプル/記入例

数字や社名まで埋まった記入済みの見本

賃金額・所定労働時間はその会社の実態。空欄化してから自社の数字を入れる

◯◯ テンプレート PDF 無料

PDF 版(印刷してそのまま使える)

PDF は編集できない。自社様式に育てるならWord(.docx)版を取る

結局のところ、良し悪しを分けるのは表記ではなく中身です。判断基準は①2024年4月改正の「変更の範囲」欄があるか ②パート・有期に使うなら2026年10月1日以降の特定事項5項目に対応しているか──この2点だけで足ります。どちらも後述します。

労働条件通知書 兼 雇用契約書|1枚にまとめるときの実務

検索で「労働条件通知書兼雇用契約書 雛形」「労働条件通知書兼雇用契約書 テンプレート」と探されるのは、多くの会社がこの形に落ち着いているからです。ここでは兼用様式の中身を分解します。

兼用様式が実務の主流になった理由

通知書と契約書を別々に作ると、記載内容がほぼ重複するのに管理は2倍になります。そこで、通知書の明示事項をすべて盛り込んだうえで末尾に双方の署名欄を付け、1枚で「明示義務の履行」と「合意の証拠」を兼ねさせるのが兼用様式です。中小企業の顧問先ではこの形をおすすめすることが多く、実務上の利点は次の3つです。

  • 明示事項の抜けが起きにくい(通知書の様式をベースにするため)
  • 入社手続きで本人に渡す書類が1枚減る
  • 改正があったとき、直す様式が1つで済む

入社前後に従業員から集める書類と会社が出す届出の全体像は入社手続きチェックリストで時系列に整理しています。入社時に取り交わす誓約書のひな形は誓約書テンプレート(入社・退職・身元保証書)にあります。

兼用様式に必ず入れる要素と、署名欄の扱い

兼用にすると「契約書だから合意すればよい」と考えてしまい、明示義務の側が緩む事故が起きます。次の要素が揃っているかを様式のチェックリストにしてください。

要素

由来

抜けたときの影響

労基則5条1項1号〜4号の事項(昇給を除く)

明示義務(書面交付が必要)

労基法15条1項違反。30万円以下の罰金の対象

就業場所・業務の「変更の範囲」

2024年4月改正(労基則5条1項1号の3)

同上。旧様式流用でいちばん多い漏れ

短時間・有期の特定事項4項目

パート・有期雇用労働法6条1項

同法違反。パート・アルバイトで必須

合意条項(「次のとおり労働契約を締結する」)

民法623条・労働契約法6条

契約書としての性質が弱まり、合意の証拠にならない

双方の記名押印・署名欄と作成通数

実務上の証拠力

本人が内容を認識した証拠が残らない

交付日・契約締結日

「締結に際し」明示したことの証拠

入社後に渡したのか事前かが立証できない

署名欄については、2通作成して各1通を保有する形が基本です。1通しか作らず会社が保管して本人に控えを渡さない運用は、通知書としての「交付」があったと言えなくなるため避けてください。兼用様式では「交付」と「署名回収」が同じ紙の上で起きるので、本人控えを渡した時点を明示の履行日として記録に残しておくと安全です。

兼用にしてよい場面・分けるべき場面

場面

推奨

理由

正社員・パートの通常の雇入れ

兼用でよい

条件が固まっており、1枚で完結する

有期契約の毎回の更新

兼用でよい(更新のつど作り直す)

更新時も「締結に際し」の明示が必要。合意も取れて一石二鳥

内定通知の段階

分ける

条件が未確定のまま署名を取ると、後の変更が困難になる

秘密保持・競業避止など特約が多い

分ける(通知書+別途の雇用契約書)

1枚が長大になり、明示事項が特約に埋もれて確認しづらい

役員・業務委託との兼務がある

分ける

労働契約の範囲を明確に切り出す必要がある

労働条件の一部を後日変更する予定

分ける

変更のたびに合意書を作る前提のほうが履歴を残しやすい

雇用契約書の記載事項一覧|労基則5条の絶対的・相対的明示事項

兼用様式にする以上、雇用契約書の記載事項は労働基準法施行規則5条1項の明示事項がそのまま土台になります(労働基準法施行規則・e-Gov法令検索)。

必ず書面で明示する項目(絶対的明示事項)

労基則5条3項は、書面交付が必要な事項を「1項1号から4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く)」と定めています。具体的には次のとおりです。ひな形にこの欄がなければ、その時点で不合格と考えて構いません。

  1. 労働契約の期間に関する事項(1号)
  2. 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(1号の2)。通算契約期間または更新回数の上限の定めがある場合はその上限を含む
  3. 就業の場所および従事すべき業務に関する事項(1号の3)。就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲を含む
  4. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換(2号)
  5. 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切りと支払の時期(3号。昇給を除く)
  6. 退職に関する事項(4号)。解雇の事由を含む

なお、昇給に関する事項は3号に含まれるため明示義務はありますが、5条3項の括弧書きで書面交付の対象から外れています。とはいえ契約書に書かない理由もないので、ひな形には欄を残しておくのが無難です。

定めがあるときだけ書く項目(相対的明示事項)

労基則5条1項の4号の2から11号までは、会社にその制度がある場合のみ明示が必要です(同項ただし書)。制度がなければ欄ごと削ってよいのですが、「制度がないこと」を明記しておくと後の質問が減ります。

  • 退職手当が適用される労働者の範囲、決定・計算・支払方法、支払時期(4号の2)
  • 臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金額(5号)
  • 労働者に負担させるべき食費・作業用品など(6号)
  • 安全および衛生(7号)
  • 職業訓練(8号)
  • 災害補償および業務外の傷病扶助(9号)
  • 表彰および制裁(10号)
  • 休職(11号)

書面交付が要る項目・要らない項目の一覧表

「明示義務がある」と「書面で渡す義務がある」は別物です。ここを取り違えると、口頭で足りるものまで様式に詰め込んで読みにくくなったり、逆に書面必須の項目を口頭で済ませて違反になったりします。

項目

明示義務

書面交付

根拠

契約期間/更新基準・更新上限

あり

必要

労基則5条1項1号・1号の2、3項

就業場所・業務(変更の範囲を含む)

あり

必要

労基則5条1項1号の3、3項

労働時間・休憩・休日・休暇

あり

必要

労基則5条1項2号、3項

賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期

あり

必要

労基則5条1項3号、3項

退職(解雇の事由を含む)

あり

必要

労基則5条1項4号、3項

昇給に関する事項

あり

不要(口頭可)

労基則5条3項の括弧書きで除外

退職手当・賞与・安全衛生・表彰制裁・休職など

定めがある場合のみあり

不要(口頭可)

労基則5条1項4号の2〜11号

短時間・有期の特定事項4項目

あり

必要(文書の交付等)

パート・有期雇用労働法6条1項、同則2条1項

2024年4月改正の追加事項|改正前後の対照表

2024年4月1日施行の改正で明示事項が追加されました(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。改正前後を並べると、直すべき箇所がはっきりします。

項目

2024年3月まで

2024年4月以降

対象

就業の場所・従事すべき業務

雇入れ直後の場所・業務のみ

雇入れ直後に加えて変更の範囲も明示

すべての労働者(更新時も)

更新の基準

更新の有無・判断基準のみ

加えて通算契約期間または更新回数の上限(定めがある場合)

有期契約の締結・更新のつど

無期転換申込機会

明示義務なし

無期転換を申し込めることを、無期転換申込権が発生する更新のつど明示

通算5年超となる有期契約

無期転換後の労働条件

明示義務なし

転換後の就業場所・業務・労働時間・賃金などを明示

同上

3つ目・4つ目の根拠は労基則5条5項・6項で、無期転換申込権(労働契約法18条1項により通算契約期間が5年を超えると発生)が生じる有期労働契約を結ぶときに、通常の明示事項に上乗せして明示することが求められます。

2023年以前に作られたひな形には、少なくとも1つ目の「変更の範囲」の欄がありません。手元の様式に「変更の範囲」という文字列があるかどうかを検索するだけで、改正対応済みかどうかは一瞬で判定できます。

雇用形態別の記載差分|正社員・契約社員・パート/アルバイト・派遣・短期/建設業

ひな形を1つに統一しようとして失敗するのがここです。ベースは共通でよいのですが、雇用形態ごとに「増える欄」と「意味が変わる欄」があるため、差分だけを別紙で管理するのが実務的です。

正社員(無期・フルタイム)の雇用契約書で書くこと

期間の定めがないため、更新基準・更新上限・無期転換の欄は不要です。そのぶん論点が集まるのは次の3つ。

  • 試用期間:長さ・その間の労働条件・本採用しない場合の基準。就業規則と食い違わせないこと
  • 就業場所と業務の変更の範囲:転勤・職種転換の可能性をどこまで書くか(後述)
  • 固定残業代:基本給と分けて、何時間分か・超過分は別途支払う旨まで書く

正社員版は「変更の範囲」を広めに書きがちですが、実態と離れた範囲を書くと後で使えません。転勤がない前提の採用なら、素直に限定して書くほうが結果的に強い契約書になります。

パート・アルバイトの雇用契約書|4項目が上乗せされる

「アルバイト 雇用契約書 ひな形」で探している方がいちばん落としやすいのがここです。短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、パートタイム・有期雇用労働法6条1項により、労基法の明示事項に加えて次の4項目(特定事項)を文書の交付等で明示しなければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律・e-Gov法令検索/同法施行規則2条1項)。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

なお2026年10月1日以降に雇い入れる場合は、ここに5つめの項目が加わります(後述)。「有無」を書けばよいので、制度がなければ「昇給:無」「賞与:無」と書けば足ります。相談窓口だけは部署名または担当者名と連絡先まで書く必要があるので、ひな形に空欄を作っておき、事業所ごとに埋める運用にしてください。

パート・アルバイトの様式でもう一つ実務的に効くのが、所定労働時間・所定労働日数の欄をシフト制の表現に耐える形にしておくことです。「シフトによる」だけで済ませると始業・終業時刻の明示になりません。「原則として週3日、1日5時間(始業10:00・終業16:00、休憩60分)。詳細は毎月○日までに翌月分のシフト表で通知する」のように、原則と決定方法をセットで書きます。所定労働時間の設計は社会保険の加入判定にも直結するため、年収の壁と社会保険の適用拡大(106万円の壁)への顧問先案内とあわせて確認しておくと、契約と保険の説明が食い違いません。

有期契約(契約社員)|更新基準・更新上限・無期転換

有期契約は、上の4項目に加えて次の欄が要ります。

  • 契約期間(始期と終期)
  • 更新の有無と更新の判断基準(労基則5条1項1号の2)
  • 更新上限の有無と内容(通算契約期間または更新回数)
  • 通算5年を超える更新時は無期転換申込みに関する事項と無期転換後の労働条件(労基則5条5項)

見落とされがちなのは、これらの明示が「更新のつど」必要だという点です。労基法15条1項は「労働契約の締結に際し」明示を求めており、有期契約の更新は新たな労働契約の締結にあたるため、初回だけ渡して以後は口頭、という運用は取れません。更新上限を後から新設したり短縮したりする場合には、厚生労働省の示すルールにより、あらかじめその理由を労働者に説明することが求められます。

短期・建設業の雇用契約書|建設労働者雇用改善法7条の文書交付が上乗せされる

工期に合わせて数週間から数か月だけ雇うとき、「短期雇用契約書」のテンプレートを探して行き着くのが建設業の現場です。まず前提として、契約が短くても労基法15条1項の明示義務は一切軽くなりません。1日だけの日雇いでも同じです。そのうえで建設業には、別の法律による文書交付義務が上乗せされます。

事業主は、建設労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該建設労働者に対して、当該事業主の氏名又は名称、その雇入れに係る事業所の名称及び所在地、雇用期間並びに従事すべき業務の内容を明らかにした文書を交付しなければならない。(建設労働者の雇用の改善等に関する法律7条1項・e-Gov法令検索)

厚生労働省は、この3つ(労基法15条・建設労働者雇用改善法7条・パートタイム有期雇用労働法6条)を1枚で兼ねられる「労働条件通知書(建設労働者用;常用、有期雇用型)」と「同(建設労働者用;日雇型)」を公開しています。一般労働者用との差分は次の4点です。

  • 事業場名称・所在地の欄に建設業許可番号、使用者職氏名の下に雇用管理責任者職氏名の記入欄がある(雇用管理責任者の選任は同法5条1項で事業所ごとに義務づけられている)
  • 中小企業退職金共済制度の欄が「建設業退職金共済制度を含む。」と明記されている
  • 寝具貸与(有料・無料)と食費(1日◯円)の欄がある。現場近くの宿舎に入るケースを想定した欄で、ここを空欄のまま渡すと後で費用負担の話が揉める
  • 様式の欄外に「明示された労働条件が事実と相違した場合に契約を解除し14日以内に帰郷するときは必要な旅費を支給する」旨の注記が入っている(労基法15条2項・3項)

短期で反復して雇う場合の落とし穴は、そのつど交付し直す必要があることです。「同じ職人に毎年3か月だけ来てもらう」運用は、毎回が新たな労働契約の締結にあたるため、初回の1枚を使い回すことはできません。通算契約期間が5年を超えれば無期転換申込権も発生するので、短期契約こそ交付履歴を台帳で管理しておく価値があります。労働者名簿とセットで整える手順は労働者名簿のテンプレート|記載事項9項目と保存期間・様式の作り方で扱っています。

派遣労働者|雇用契約は派遣元、就業条件明示は派遣法34条

派遣の場合、労働契約を結ぶのは派遣元です。したがって雇用契約書・労働条件通知書を交付するのも派遣元であり、派遣先が作るものではありません。そのうえで、労働者派遣法34条により派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときにあらかじめ、派遣する旨・就業条件(同法26条1項各号の事項など)・抵触日などを本人に明示する義務を負います(労働者派遣法34条・e-Gov法令検索)。

つまり派遣では「雇用契約書兼労働条件通知書(派遣元と本人)」+「就業条件明示書(派遣ごと)」の2階建てになります。ひな形を兼用1枚にまとめるとしても、就業条件明示書まで一体化するのは避けたほうが無難です。派遣先が変わるたびに前者まで作り直すことになるためです。

2026年10月1日から明示事項がもう1つ増える|パート・有期の「説明を求めることができる旨」

2024年4月改正への対応が終わっている事務所でも、2026年10月1日から、パート・アルバイト・契約社員に渡す様式をもう一度直す必要があります。2026年9月時点で、この点に触れているひな形はまだ多くありません。根拠は次のとおりです。

特定事項が4項目から5項目になる

これまで本記事で「4項目」として説明してきた短時間・有期雇用労働者の特定事項に、「パート・有期雇用労働法14条2項の規定による説明を求めることができる旨」が加わり、相談窓口が5号へ繰り下がります。改正前後を条文の号ごとに並べると次のとおりです。

号

〜2026年9月30日

2026年10月1日〜

1号

昇給の有無

昇給の有無(変更なし)

2号

退職手当の有無

退職手当の有無(変更なし)

3号

賞与の有無

賞与の有無(変更なし)

4号

雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

法14条2項の規定による説明を求めることができる旨(新設)

5号

(なし)

雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(4号から繰下げ)

追加される「説明を求めることができる旨」の中身は、パートタイム・有期雇用労働法14条2項そのものです。同項は、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときに、通常の労働者(正社員)との待遇の相違の内容および理由と、待遇の決定にあたって考慮した事項を説明しなければならないと定めています。さらに同条3項が、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁じています。つまり10月からは、「説明を求める権利があること自体を、雇入れ時に書面で知らせる」のが事業主の義務になる、という改正です。

通知書に足す文言の例|厚生労働省モデル様式の実際の書き方

自社様式を使っている場合、様式を丸ごと差し替えなくても、「その他」欄に2行足せば足ります。ここは自由文で書くところではなく、改訂後のモデル様式では「説明を求められる窓口」が相談窓口とは別に1つ増えているのがポイントです。2026年10月1日以降用の様式(短時間労働者用・一般労働者用とも)の該当箇所は、次のとおりです。

そ の 他
・社会保険の加入状況( 厚生年金 健康保険 その他(    ))
・雇用保険の適用( 有 , 無 )
 …(中略)…
・次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について
 説明を求めることができる。
 部署名      担当者職氏名      (連絡先       )
・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
 部署名      担当者職氏名      (連絡先       )

つまり自社様式に必要なのは、「説明を求めることができる窓口」の部署名・担当者職氏名・連絡先を書く欄をもう1つ作ることです。相談窓口と同じ部署を書いても構いませんが、欄そのものを省略すると明示漏れになります。なお昇給・退職手当・賞与の有無は、モデル様式では独立した【特定事項】欄ではなく「賃金」欄の8〜10番(昇給・賞与・退職金)として並んでいます。自社様式を作るときも、どの欄で明示しているかを説明できる形にしておいてください。

もう一点、見落としやすい差分があります。改訂されたのはパート向けの様式だけではありません。「一般労働者用;常用、有期雇用型」の様式にも同じ2行が追加されています。一般労働者用は有期雇用契約にも使う様式で、有期であれば短時間でなくてもパートタイム・有期雇用労働法の対象になるためです。「うちは正社員と契約社員だけだから関係ない」という判断は誤りになります。

いつから・誰に使うのか

  • 対象:短時間・有期雇用労働者(パート・アルバイト・契約社員など)。期間の定めのないフルタイムの正社員は対象外です
  • タイミング:2026年10月1日以降に雇い入れたとき。有期契約の更新も新たな雇入れとして扱われるため、10月以降の更新分から新様式が要ります
  • すでに在籍している人:改正時点で在籍しているだけでは再交付の義務は生じません。次の更新や雇用形態の変更のタイミングで切り替えるのが実務的です

厚生労働省のモデル様式一覧|2系統が並んでいる(2026年9月時点)

厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)には、現在「令和8年9月30日までは、こちらの様式を使用することができます」と「令和8年10月1日以降は、こちらの様式を使用してください」の2系統が並べて掲載されています。同じページに新旧が並んでいるので、見出しを読まずにダウンロードすると旧様式を掴みます。10月以降に旧様式を配ってしまう事故が、いちばん起きやすい形です。

どの様式を取ればよいかは、雇う相手で決まります。いずれも Word(.docx)と PDF の両方が用意されており、自社様式に育てるなら Word 版を取ってください。

雇う相手

正式な様式名(労働条件通知書)

2026年10月1日以降

正社員・契約社員など

(一般労働者用;常用、有期雇用型)

改訂あり(説明を求められる窓口の欄を追加)

パート・アルバイト

(短時間労働者用;常用、有期雇用型)

改訂あり。日雇型はこの区分には無い

派遣(派遣元が交付)

(派遣労働者用;常用、有期雇用型)/(同;日雇型)

常用・有期雇用型は改訂あり

建設業

(建設労働者用;常用、有期雇用型)/(同;日雇型)

常用・有期雇用型は改訂あり

林業

(林業労働者用;常用、有期雇用型)/(同;日雇型)

常用・有期雇用型は改訂あり

日々雇い入れる人

(一般/派遣/建設/林業労働者用;日雇型)

従前と同じ。10月1日以降も引き続き使用できる

無期転換する人

労働条件通知書(無期転換後の労働条件)

改訂あり(令和8年4月30日付の新様式に差し替え)

日雇型について厚生労働省は、同ページに「日雇型の様式については、令和8年10月1日以降も引き続き使用することができます」と明記しています。日雇型だけは手を入れる必要がありません。逆に見落としやすいのが最後の「労働条件通知書(無期転換後の労働条件)」で、これも10月1日以降用の新様式に差し替わっています。無期転換の申込みを受ける予定がある事業所は、こちらも取り直してください。

なお、2026年に検討されていた労働基準法本体の改正(労働時間規制の見直しなど)は法案提出が見送られており、いま確定して動いているのはこの省令改正のほうです。労基法側の最新状況は労働基準法改正2026は提出見送り|確定した法改正と企業の対応チェックリストで整理しています。

雇用契約書のひな形|そのまま流用できる条文サンプル

厚生労働省は労働条件通知書のモデル様式を主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)で公開しています。兼用様式にする場合は、この様式をベースに末尾へ合意条項と署名欄を足すのが最短です。以下は、その骨格を条文形式にしたサンプルです。

労働条件通知書 兼 雇用契約書

株式会社○○(以下「甲」という。)と △△ △△(以下「乙」という。)は、
次のとおり労働契約を締結する。

第1条(契約期間)
  期間の定めなし / 期間の定めあり( 年 月 日 〜  年 月 日)
  ※期間の定めがある場合
   ・契約の更新の有無: 更新する場合があり得る / 更新しない
   ・更新の判断基準:契約期間満了時の業務量、乙の勤務成績・態度・能力、
     会社の経営状況、従事している業務の進捗状況
   ・更新上限:通算契約期間 年 / 更新回数 回 / 上限なし

第2条(就業の場所)
  雇入れ直後:本社(東京都○○区○○1-1-1)
  変更の範囲:会社の定める全ての事業所

第3条(従事すべき業務の内容)
  雇入れ直後:経理業務
  変更の範囲:会社の定める全ての業務

第4条(就業時間・休憩・休日)
  始業 9:00 終業 18:00 休憩 60分
  所定時間外労働の有無:有 / 無
  休日:土曜、日曜、国民の祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)

第5条(賃金)
  基本給 月額   円
  諸手当 役職手当  円/通勤手当  円
  時間外労働に対する割増賃金率:法定超 25%、法定休日 35%、深夜 25%
  賃金締切日 毎月末日  支払日 翌月 日
  昇給:有(毎年4月)/ 無  賞与:有(年2回)/ 無  退職手当:有 / 無

第6条(退職・解雇)
  定年:満 歳  自己都合退職の手続:退職する30日以上前に届け出ること
  解雇の事由および手続:就業規則第○条に定めるところによる

第7条(その他)
  本契約に定めのない事項は、就業規則および関係法令の定めるところによる。
  社会保険の加入状況:厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険
  雇用管理の改善等に関する相談窓口:総務部(担当:○○、内線  )

本契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

   年  月  日
  甲 所在地           商号         代表者       印
  乙 住所            氏名                   印

正社員(無期)で使う場合は第1条の有期部分を削り、パート・アルバイトで使う場合は第5条に「昇給の有無」「賞与の有無」「退職手当の有無」を明記したうえで第7条の相談窓口を必ず埋めます。有期契約で使う場合は第1条をそのまま残し、無期転換申込権が発生する更新のタイミングで「無期転換申込みに関する事項」と「転換後の労働条件」の条項を追加してください。

労働条件通知書の記入例|様式の欄ごとに何を書くか

条文サンプルを手に入れても、実際に手が止まるのは「この欄に何をどう書くか」です。ここでは厚生労働省のモデル様式(一般労働者用)の欄の並びに沿って、記入例と、そこでつまずく理由をセットで並べます。記入例はいずれも架空の会社の例なので、自社の実態に置き換えて使ってください。

様式の欄

記入例

つまずきどころ

契約期間

期間の定めなし

試用期間があっても「期間の定めあり」ではない。試用期間は別欄か「その他」に書く

就業の場所

(雇入れ直後)本社 経理部/(変更の範囲)本社および東京都内の全事業所

2024年4月から2段書きが必須。1段しかない様式は旧版

従事すべき業務の内容

(雇入れ直後)経理事務/(変更の範囲)会社の定める事務系業務全般

職種限定採用なら「経理事務に限る」と書く。広く書けば安全という話ではない

始業・終業の時刻

始業 9時00分/終業 18時00分(休憩 12時00分〜13時00分)

変形労働時間制・シフト制は制度名と勤務パターンまで書く

所定時間外労働の有無

有(36協定の範囲内)

「有」と書くなら36協定の締結・届出が前提

休日

土曜、日曜、国民の祝日、12月29日〜1月3日(法定休日は日曜)

法定休日がどれかを書いておくと割増率の計算で揉めない

休暇

年次有給休暇:6か月継続勤務後10日/その他:慶弔休暇(就業規則第○条)

年休は法定どおりでも記載が要る

賃金

下のH3で詳述

いちばん分量が要る欄。1行で済ませない

退職に関する事項

定年制 有(65歳)/自己都合退職の手続 退職日の30日前までに届出/解雇の事由および手続 就業規則第○条による

「解雇の事由を含む」が条文上の要件。就業規則を引くなら条番号まで書く

その他

社会保険の加入状況(厚生年金・健康保険)/雇用保険の適用 有/相談窓口 総務部○○(内線○○)

相談窓口は部署名だけでなく担当者と連絡先まで

契約期間・更新の基準の欄の記入例

有期契約の場合は、期間・更新の有無・判断基準・上限の4点をこの欄に収めます。

契約期間:期間の定めあり(2026年11月1日 〜 2027年10月31日)

・契約の更新の有無
   更新する場合があり得る
・契約の更新は次により判断する
   ① 契約期間満了時の業務量
   ② 勤務成績、態度
   ③ 能力
   ④ 会社の経営状況
   ⑤ 従事している業務の進捗状況
・通算契約期間または更新回数の上限
   通算契約期間の上限 5年(更新回数の上限 4回)
・無期転換申込みに関する事項(通算5年を超える更新のときに記載)
   本契約期間中に、期間の定めのない労働契約への転換を申し込むことができます。
   転換後の労働条件:本契約と同一(契約期間を除く)

「更新の有無」を空欄にしたまま渡してしまう例が非常に多い欄です。更新の予定がないなら「更新しない」と書くこと自体が明示になります。なお、更新上限を後から新設したり短くしたりするときは、あらかじめその理由を本人に説明することが求められます。

賃金の欄の記入例|「月給25万円」の1行では足りない

「労働条件通知書の賃金はどう書けばよいか」は、記入例のなかで最も質問が多い欄です。労基則5条1項3号が求めているのは「決定・計算・支払の方法」「締切り・支払の時期」「昇給」なので、金額を書くだけでは足りません。

基本賃金:月給 250,000円
諸手当:役職手当 20,000円(主任以上に支給)
    通勤手当 実費(上限 月30,000円)
固定残業手当:45,000円(時間外労働 20時間分に相当)
       20時間を超える時間外労働分は別途支給する
所定時間外、休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金率
  所定時間外 法定超 25%/1か月60時間超 50%/所定超 -%
  休日    法定休日 35%/法定外休日 25%
  深夜    25%
賃金締切日:毎月 末日  賃金支払日:翌月 25日
賃金の支払方法:本人名義の金融機関口座へ振込(本人の同意による)
労使協定に基づく賃金支払時の控除:有(社宅使用料、財形貯蓄)
昇給:有(毎年4月、会社の業績および本人の評価による)
賞与:有(年2回、6月・12月。会社の業績により支給しないことがある)
退職手当:無

ここで押さえるべき根拠は3つです。割増率の下限は労働基準法37条で、時間外は2割5分以上、1か月60時間を超えた部分は5割以上、深夜は2割5分以上と定められています(法定休日労働の3割5分は同条1項の政令による)。支払方法については同法24条1項が通貨払い・直接払い・全額払いを、2項が毎月1回以上・一定期日払いを求めており、社宅費などを天引きするなら労使協定が必要です。そして固定残業代は、①金額、②何時間分か、③超過分は別途支払う旨、の3点が揃って初めて意味を持ちます。

金額を決めたあとは、時間単価が地域の最低賃金を下回っていないかの検算が要ります。手当の入れ方ひとつで判定が変わるため、最低賃金の改定対応と顧問先案内の実務の考え方で突き合わせておくと安全です。締切日・支払日を決めたあとの実務は給与計算のチェックをAIで行う検算・社会保険料確認プロンプト集が使えます。

シフト制・週の労働日数が一定しない場合の記入例

パート・アルバイトで最も多い相談がこれです。「シフトによる」の一言では始業・終業時刻の明示になりません。原則を書いたうえで、決定方法と通知時期を添えるのが正解です。

始業・終業の時刻等
 (1) 次の勤務時間帯のうち、シフトにより指定する。
    Aシフト 始業  9:00 終業 14:00(休憩 なし)
    Bシフト 始業 14:00 終業 20:00(休憩 30分)
 (2) 1か月の所定労働日数は原則12日とし、具体的な勤務日および
    シフトは、前月20日までに翌月分のシフト表により通知する。
 (3) 上記(2)の通知後にシフトを変更する場合は、
    あらかじめ本人と協議のうえ決定する。

所定労働時間と所定労働日数は、社会保険の加入判定にもそのまま効いてきます。契約書の設計段階で保険の扱いまで見ておくと、入社後の説明が食い違いません。

日雇いの記入例|日雇型様式はどこが違うか

建設・林業・倉庫などで日々雇い入れる場合、厚生労働省は「日雇型」のモデル様式を別に用意しています(一般労働者用・派遣労働者用・建設労働者用・林業労働者用の各日雇型)。常用型との違いは主に次の3点です。

  • 契約期間の欄:「日々雇入れ」と書き、更新の基準・更新上限・無期転換の欄は使わない(労基則5条1項1号の2は「更新する場合があるもの」に限られるため)
  • 賃金の欄:月給ではなく日額(および時間外の割増率)を書く。当日払いなら支払方法もその旨を書く
  • 交付のタイミング:日々の雇入れが1件ごとの労働契約の締結にあたるため、就業のつど明示が必要。実務では同一条件で継続する期間について1通を交付し、条件が変わったつど出し直す運用にします
契約期間:日々雇入れ(2026年11月4日)
就業の場所:(雇入れ直後)○○建設現場(東京都○○区○○)
      (変更の範囲)当社が指定する現場
従事すべき業務:(雇入れ直後)土木作業の補助
        (変更の範囲)当社が請け負う建設現場での作業全般
始業 8:00 終業 17:00 休憩 12:00〜13:00
賃金:日額 15,000円 支払方法:就業当日、現金で直接支払う
時間外・深夜の割増賃金率:時間外 25%/深夜 25%/休日 35%

日々雇い入れる労働者も期間の定めのある労働契約なので、短時間・有期雇用労働者にあたる場合はパート・有期雇用労働法6条1項の特定事項も必要になります。前述のとおり2026年10月からこの特定事項が5項目に増えるため、日雇型様式を使っている事業所は、追加される1項目を自社で補えているかを確認してください。

労働条件通知書・雇用契約書の電子交付|労基則5条4項の要件

「労働条件通知書は電子契約でもよいのか」は毎年必ず聞かれる論点です。結論は条件付きで可ですが、その条件が細かいので分けて説明します。

電子交付が認められる3つの条件

労基則5条4項は、明示すべき事項について書面の交付を原則としつつ、次の方法を認めています。

  1. 労働者本人が希望した場合であること(会社の判断で一律に電子化はできない)
  2. 方法がファクシミリを利用してする送信、または電子メールその他の受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信であること
  3. 電子メール等の場合、労働者がその記録を出力することにより書面を作成することができるものに限られること

2つ目の「受信をする者を特定して」がポイントで、社内掲示板や誰でも見られるWebページへの掲載は該当しません。3つ目は「PDFを添付する」「本文に記載してテキストで保存できる」形なら満たします。パート・アルバイトの特定事項4項目についても、同法施行規則2条3項がほぼ同じ条件を置いています。

電子契約サービスで締結するときの注意点

電子契約サービスで「労働条件通知書 兼 雇用契約書」を締結する場合、契約書としての電子署名は民事上とくに制限がありません。問題になるのは通知書側の要件です。実務上の詰めどころは次の3点です。

  • 本人の希望の記録:入社手続きのフォームに「書面での交付を希望する/電子での交付を希望する」の選択欄を設け、選択の記録を残す
  • ダウンロード可能性:閲覧のみで保存・印刷ができないビューアは、3つ目の条件を満たさない可能性がある。PDFのダウンロードを許可する設定にする
  • 到達の確認:メール等での明示は本人の端末で受信した時点で到達とみなされる建て付けなので、送信ログと本人の受領確認を残す

電子交付でよくある3つの誤解

  • 「電子契約サービスを使えば書面交付は不要」:不要になるのは本人が希望した場合だけです。希望の確認ステップを飛ばすと、電子で渡しても明示義務を果たしたことになりません
  • 「社内システムに掲示すれば足りる」:受信者を特定した送信ではないため足りません
  • 「本人が希望すれば口頭でもよい」:口頭は認められていません。認められるのはFAXと電子メール等だけです

雇用契約書の書き方でつまずく3つの論点

就業場所・業務の「変更の範囲」をどこまで広く書くか

「会社の定める全ての事業所」「会社の定める全ての業務」と書けば形式的には足ります。ただし、実際には転勤がない前提で採用したのに範囲だけ広く書いておくと、後から本人と揉めます。限定するなら限定すると書くのが結局いちばん安全です。「東京都内の事業所に限る」「営業職に限る」といった書き方も当然可能です。

賃金は手当まで分解して書く

「月給25万円」の一行だけで済ませているひな形をよく見かけますが、固定残業代を含む場合は基本給と固定残業代を分け、何時間分かと、超過分は別途支払う旨まで書かないと、固定残業代として認められないリスクがあります。基本給・各種手当・固定残業代(時間数)を別の行に分けるのが原則です。

就業規則との関係を1条だけ入れておく

契約書にすべてを書き切ることはできません。だからこそ「本契約に定めのない事項は就業規則の定めるところによる」の1条が効きます。逆に言えば就業規則が古いままだと契約書だけ直しても穴が残るということです。規程側の点検については就業規則・社内規程のドラフトとチェックをAIで行う手順も併せて確認してください。時間外労働の記載を有にするなら、36協定届(様式第9号)の書き方と提出前チェックの届出が前提になる点も忘れずに。

労働条件が途中で変わったとき|変更の合意書と通知書の再交付

「昇給したとき」「転勤したとき」「シフトを増やしたとき」に通知書を出し直すのか、という質問は毎月のように出ます。検索でも「雇用契約書 変更 ひな形」「労働条件通知書 変更があった場合」で探されている論点です。結論から整理します。

再交付の法的義務があるのは「新たに契約を締結するとき」

労基法15条1項が明示を求めているのは「労働契約の締結に際し」です。したがって次のように分かれます。

場面

明示・再交付

根拠・理由

有期契約の更新

必要

更新は新たな労働契約の締結にあたる

正社員からパートへなど雇用区分の変更

必要

契約を結び直す形になる。パート・有期なら特定事項も要る

契約期間中の昇給・手当の改定

法律上の再交付義務はない

締結時ではないため。ただし変更の合意と記録は必要

契約期間中の配置転換・就業場所の変更

同上

あらかじめ明示した「変更の範囲」の内側かどうかがまず論点になる

就業規則の変更による全社的な条件変更

周知が必要

労働契約法10条は「変更後の就業規則を周知させ」を要件としている

ここで効いてくるのが、入社時に書いた「変更の範囲」です。範囲内の異動なら契約どおりの運用ですが、範囲外に動かすなら契約の変更が必要になります。2024年4月改正の「変更の範囲」は、この場面で初めて実務的な意味を持ちます。

一方的に不利益変更はできない(労働契約法8条・9条・10条)

法的な再交付義務がないことと、会社が勝手に変えてよいことはまったく別です。労働契約法の建て付けは次の3段構えになっています。

  • 8条:労働者と使用者は、その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができる(原則は合意)
  • 9条:使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより労働者の不利益に労働条件を変更することはできない(ただし10条の場合を除く)
  • 10条:変更後の就業規則を周知させ、かつ変更が合理的(不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らす)であるときは、就業規則によって変更できる

つまり、個別の合意を取るか、就業規則の変更で周知と合理性を積み上げるかの二択です。賃下げや手当廃止のように不利益の度合いが大きいものほど、個別の書面合意を取っておくほうが確実になります。

労働条件変更に関する合意書のひな形

変更のたびに通知書を一式作り直すのは重いので、変わった項目だけを書いた1枚の合意書を積み上げる運用が実務的です。原契約を特定し、変更前後を並べ、発効日を書く。この3つが入っていれば足ります。

労働条件変更に関する合意書

株式会社○○(以下「甲」という。)と △△ △△(以下「乙」という。)は、
甲乙間で 年 月 日に締結した労働契約(労働条件通知書 兼 雇用契約書)の
労働条件を、次のとおり変更することに合意した。

1. 変更する事項
 (1) 就業の場所
   変更前:本社(東京都○○区○○1-1-1)
   変更後:○○支店(大阪市○区○○2-2-2)
 (2) 基本給
   変更前:月額 250,000円
   変更後:月額 265,000円
 (3) 役職手当
   変更前:なし
   変更後:月額 20,000円(主任として支給)

2. 変更の発効日
   年 月 日から

3. その他
 本合意書に定めのない事項は、変更前の労働契約および就業規則の
 定めるところによる。

本合意の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

   年  月  日
  甲 所在地         商号       代表者       印
  乙 住所          氏名                 印

作成のコツは3つです。第一に、変更しない条件は書かない(書くと「その他は変わっていない」の解釈が難しくなります)。第二に、発効日を必ず入れる(遡って適用するのか将来分なのかで、賃金の清算が変わります)。第三に、不利益変更にあたる場合は、変更の理由と代償措置を別紙かメールで説明し、その記録を残しておくことです。合意書の署名だけがあって説明の記録がない状態は、後から「押さざるを得なかった」と言われたときに弱くなります。

実際の労働条件が雇用契約書と違うとき|労基法15条2項・3項の効果

「入ってみたら契約書と話が違う」という相談は、顧問先からも労働者側からも来ます。この場面の条文上の効果は、意外に知られていません。

労働者は即時に契約を解除できる(15条2項)、帰郷旅費は会社負担(15条3項)

労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができると定めています。民法上の2週間前予告(627条1項)を待つ必要がありません。さらに同条3項は、この解除をした労働者が就業のために住居を変更していた場合、契約解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者が必要な旅費を負担しなければならないとしています。この3項違反は、労基法120条1号により30万円以下の罰金の対象です。

あわせて、労基則5条2項は「明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」と規定しています。実態と違う条件を書くこと自体が禁止されているということです。

「違う」と言われたときに切り分ける3つの型

型

よくある例

初動

①書面と実態が違う

9時〜18時と書いたのに実際は8時始業/固定残業代の時間数を超えて常態化

実態を止めるか、合意のうえ書面を直すか。差額賃金の清算が要る場合がある

②通知書と契約書が違う

別々に作った2通の賃金額が食い違う

どちらが合意内容かを事実で確定し、兼用様式に一本化する

③募集条件と契約条件が違う

求人票は月給28万円、契約書は月給24万円

求人票は契約そのものではないが、変更したなら職業安定法5条の3第3項により変更内容の明示が必要

実務上いちばん多いのは①です。会社側に悪意がなく、運用が少しずつずれていった結果であることがほとんどなので、責める前に書面・実態・給与計算の3点を並べて差分を取るところから始めます。差分が出たら、直すのは実態か書面かを決め、決めた側を記録に残す。この順番を守るだけで、紛争化する前に収まる案件はかなりあります。

なお、契約書と実態の突き合わせは人手でやると必ず見落ちます。契約書・就業規則・実際の勤怠や給与明細を並べて差分だけを機械的に拾わせるのは、次章のプロンプトが向いている作業です。

雇用契約書のひな形をAIで下書き・点検する手順

ここからは、実際に手を動かす部分の話です。雇用契約書の作成は「決まった項目を、会社ごとの条件で埋めていく」作業なので、AIの下書きがよく効きます。一方で、任せてはいけない部分もはっきりしています。

AIに任せてよい作業・任せてはいけない作業

任せてよい

任せてはいけない

ヒアリング内容を条文の形に整える

法令の条番号・施行日・上限日数の断定

既存の様式と明示事項リストの突合(抜け探し)

その会社に固定残業代が適法かの判断

正社員版から有期版・パート版への書き換え

個別の紛争リスクの最終評価

就業規則と契約書の食い違い箇所の洗い出し

どちらに合わせて直すかの最終決定

顧問先向けの説明文・案内メールの作成

就業規則との整合の最終確認

要するに、AIは「型に流し込む」「差分を見つける」作業に使い、「これで合っているか」の判断は人が持つという切り分けです。条文の数字はAIが自信満々に間違えるところなので、必ずe-Gov法令検索や厚生労働省の資料で裏を取ってください。

プロンプト1|ひな形の下書き(コピペ可)

あなたは労務実務に詳しいアシスタントです。
以下の条件で「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の条文案を作成してください。

# 会社情報
・会社名:【顧問先名】
・事業所:【本社所在地】、【支店があれば記載】
・就業規則:あり(第○条に解雇事由の定めあり)

# 労働者
・雇用区分:【正社員/契約社員/パート】
・契約期間:【期間の定めなし/YYYY年MM月DD日〜YYYY年MM月DD日】
・就業場所(雇入れ直後):【 】/変更の範囲:【 】
・業務(雇入れ直後):【 】/変更の範囲:【 】
・所定労働時間:【9:00〜18:00、休憩60分】
・休日:【 】
・賃金:基本給【 】円、手当【 】、固定残業代【有/無・時間数】
・昇給【有/無】、賞与【有/無】、退職手当【有/無】
・相談窓口:【部署・担当者・連絡先】

# 出力ルール
1. 第1条から順に条文形式で出力する
2. 情報が不足している項目は勝手に補わず「【要確認】」と明記する
3. 就業場所と業務は「雇入れ直後」と「変更の範囲」を必ず分けて書く
4. 有期契約の場合は更新の判断基準と更新上限の条項を必ず含める
5. 法令の条番号や日付は出力しない(こちらで別途確認する)

5番目のルールが地味に重要です。条番号を書かせないと決めておくと、それらしい嘘の条文番号が混ざるのを構造的に防げます。

うまくいかない例:「雇用契約書のひな形を作って」とだけ指示する。返ってくるのは、どこにでもある一般的な様式です。2024年改正の「変更の範囲」が入っていないことも多く、結局ゼロから直すことになります。
直し方:上のように会社の条件を先に列挙し、不足は「【要確認】」と書かせる。AIに埋めさせず、埋まっていない場所を可視化させるのがコツです。

プロンプト2|ひな形の不足項目を洗い出す(コピペ可)

次の雇用契約書の案文を読み、下のチェックリストの各項目について
「記載あり/記載なし/判断できない」を表で出してください。
条文の引用は不要で、案文に書かれているかどうかだけを判定してください。
「記載なし」の項目は、最後にまとめて箇条書きで再掲してください。

# チェックリスト
1. 契約期間
2. 有期の場合:更新の有無と更新の判断基準
3. 有期の場合:通算契約期間または更新回数の上限
4. 就業の場所(雇入れ直後)
5. 就業の場所(変更の範囲)
6. 従事すべき業務(雇入れ直後)
7. 従事すべき業務(変更の範囲)
8. 始業・終業時刻
9. 所定労働時間を超える労働の有無
10. 休憩時間・休日・休暇
11. 賃金の決定、計算および支払の方法
12. 賃金の締切日および支払日
13. 昇給に関する事項
14. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
15. パート・有期の場合:昇給の有無
16. パート・有期の場合:退職手当の有無
17. パート・有期の場合:賞与の有無
18. パート・有期の場合:雇用管理の改善等に係る相談窓口

# 案文
【ここに契約書案を貼り付け】

うまくいかない例:「法的に問題ないか判定して」と聞いてしまう。判断を丸投げしているので、根拠のない「問題ありません」が返ってきます。
直し方:「書いてあるか/書いていないか」だけを聞く形に落とすと、精度も検証可能性も一気に上がります。

プロンプト3|2024年改正の明示事項が漏れていないか点検(コピペ可)

次の様式が、2024年4月施行の労働条件明示ルールに対応しているかを点検してください。
判定は「該当欄あり/該当欄なし/対象外」の3択で、表にしてください。
法令の解釈や適法性の評価はしないでください。欄の有無だけを見てください。

# 点検項目
A. 就業の場所について「雇入れ直後」と「変更の範囲」が別々に書ける欄があるか
B. 従事すべき業務について「雇入れ直後」と「変更の範囲」が別々に書ける欄があるか
C. 有期契約の更新について「通算契約期間の上限」または「更新回数の上限」を書く欄があるか
D. 無期転換を申し込める旨を記載する欄があるか(通算5年超の更新時に使用)
E. 無期転換後の労働条件(就業場所・業務・労働時間・賃金)を記載する欄があるか

# 出力
1. A〜Eの判定表
2. 「該当欄なし」だったものについて、様式のどの位置に欄を足すべきかの提案
3. 追加する欄の見出し文言案

# 様式
【ここに現行の様式を貼り付け】

うまくいかない例:「2024年の法改正に対応させて」と丸ごと投げる。AIが改正内容を記憶から補おうとして、施行日や項目数を取り違えたまま様式を書き換えてきます。
直し方:上のように点検項目をこちらから与え、AIには「その欄があるか」だけを判定させる。改正内容の正しさは人が担保し、探索作業だけをAIに任せる形にします。

プロンプト4|就業規則と契約書の矛盾を突き合わせる(コピペ可)

下に「就業規則の抜粋」と「雇用契約書の案文」を貼ります。
両者の記載が食い違っている箇所を、次の形式の表で洗い出してください。
どちらが正しいかの判断はしないでください。食い違いの指摘だけをしてください。

| 論点 | 就業規則の記載 | 契約書の記載 | 食い違いの種類 |

# 食い違いの種類の分類
・矛盾(数値や条件が明確に異なる)
・不足(一方にしか記載がない)
・参照切れ(契約書が就業規則の条番号を指しているが、その条が存在しない/内容が違う)

# 重点的に見る論点
所定労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外労働の扱い、
割増賃金率、賃金締切日・支払日、試用期間、退職の申出期限、
解雇事由、定年、休職、固定残業代の有無と時間数

# 就業規則の抜粋
【ここに貼り付け】

# 雇用契約書の案文
【ここに貼り付け】

うまくいかない例:就業規則を全文まるごと貼って「矛盾を探して」と頼む。分量が多すぎて重要な条項が読み飛ばされ、「特に矛盾はありません」と返ってきます。
直し方:上の「重点的に見る論点」のように観点を先に絞り、就業規則も該当章だけを貼る。範囲を狭めるほど検出率が上がります。参照切れの検出は人手だと見落としやすいので、AIに任せる価値がいちばん大きい項目です。

汎用なんでもAI/メール返信AIで日常業務を効率化するデモです。

汎用のAIでもここまではできますが、明示事項の一覧や様式の前提を毎回プロンプトに書き込むのは手間です。士業AIは法令・公的資料を参照しながら士業の実務文書を下書きすることに特化しており、社労士事務所や事務所スタッフの使い方は事務所スタッフ向けの活用ページにまとめています。労務の問い合わせ対応まで含めた使い方は労務の問い合わせ回答テンプレート集とAI活用も参考になります。

よくある質問

雇用契約書と労働条件通知書は両方必要ですか?

法律上必要なのは労働条件通知書(労基法15条1項の明示)だけです。雇用契約書は義務ではありませんが、合意の証拠として作る意味があります。実務では「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の1枚にまとめる運用が最も管理しやすいです。

労働条件通知書と雇用契約書の内容が違ったらどちらが優先しますか?

そもそも食い違わせてはいけない、というのが法令の建て付けです。労基則5条2項は明示した労働条件を事実と異なるものとしてはならないと定めており、労基法15条2項は明示された条件が事実と相違する場合に労働者が即時に労働契約を解除できるとしています。食い違いが生じている時点で会社側のリスクなので、兼用様式にして食い違いようのない形にするのが根本的な解決です。

雇用契約書を作らないと罰則がありますか?

雇用契約書そのものに罰則はありません。ただし労働条件の明示を怠った場合は、労基法120条1号により30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法・e-Gov法令検索)。兼用様式にしている会社は、契約書を作らない=明示もしていない状態になりがちなので注意してください。

アルバイトにも雇用契約書は必要ですか?

雇用形態による例外はありません。むしろパート・アルバイト・有期契約の方が、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口という4項目が上乗せされるぶん、記載事項は多くなります。

契約を更新するたびに交付し直す必要がありますか?

必要です。労基法15条1項は「労働契約の締結に際し」の明示を求めており、有期契約の更新は新たな労働契約の締結にあたります。とくに更新上限や、通算5年を超える更新での無期転換申込みに関する事項は、更新のタイミングでしか明示できません。

2023年以前のひな形をそのまま使い続けても大丈夫ですか?

おすすめしません。2024年4月以降に締結・更新する労働契約では「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要なため、旧様式のままだと明示義務を満たさない状態になります。まずは手元の様式に「変更の範囲」の欄があるかを確認してください。

電子データや電子契約サービスで交付してもよいですか?

労働者本人が希望した場合に限り、FAXまたは電子メール等(受信者を特定して情報を伝達する電気通信で、本人が記録を出力して書面を作成できるもの)での送信が認められています(労基則5条4項)。会社側の判断だけで一律に電子化することはできず、社内掲示板への掲載も要件を満たしません。

雇用契約書に押印(印鑑)は必要ですか?

法令上は必要ありません。労働条件通知書は交付すれば足り、署名も押印も義務ではありません。雇用契約書についても、契約は合意で成立するため押印がなくても有効です。それでも実務で記名押印や署名を取るのは、本人が内容を確認したことの証拠を残すためです。押印を省くなら、署名(自署)か、電子契約サービスの電子署名・タイムスタンプなど、本人性を示す別の手段を用意してください。

2026年10月からパート・アルバイトの様式はどう変わりますか?

短時間・有期雇用労働者に明示する特定事項が4項目から5項目になり、「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が加わります(令和8年厚生労働省令第87号、2026年10月1日施行/パート・有期雇用労働法施行規則2条1項4号)。厚生労働省のモデル様式も改訂済みで、2026年10月1日以降に雇い入れる短時間・有期雇用労働者から新様式が必要です。

労働条件が変わったら通知書を出し直す必要がありますか?

有期契約の更新や雇用区分の変更のように新たに契約を締結する場面では必要です。契約期間中の昇給や手当改定については、労基法15条1項が「締結に際し」の明示を求めている建て付けなので再交付の法的義務はありませんが、変更には原則として本人の合意が要ります(労働契約法8条)。変更した項目だけを書いた「労働条件変更に関する合意書」を1枚残しておく運用が確実です。

「雇用条件通知書」を求められましたが別の書式が要りますか?

不要です。「雇用条件通知書」は法令上の呼称ではなく、労働条件通知書の言い換えとして使われている名称です。労働条件通知書(または労働条件通知書 兼 雇用契約書)を交付すれば足ります。

まとめ|ひな形は「改正対応済みか」で選ぶ

雇用契約書のひな形は世の中にいくらでもありますが、選ぶ基準は結局のところ次の4つに集約されます。

  • 「就業場所・業務の変更の範囲」の欄があるか(2024年4月改正対応)
  • 有期契約なら更新の判断基準と更新上限、無期転換に関する欄があるか
  • パート・有期なら昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口の欄があるか
  • 明示義務(通知書)と合意(契約書)の両方の要素が1枚に揃っているか

この4点さえ通れば、あとは会社ごとの条件を埋めていく作業です。その埋める作業と、埋め忘れを探す作業、そして就業規則との食い違いを見つける作業こそAIが得意な領域なので、ヒアリング内容を渡して条文の形にしてもらい、人は「合っているか」の判断に集中する。この分担にすると、1件あたりの作成時間はかなり短くなります。

関連記事:労働者名簿テンプレート4種(Excel・Word・PDF)では、記載事項の解説といっしょに、登録不要で使えるひな形を無料で配布しています。

参考文献

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