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成年後見人の費用はいくら?申立て・鑑定・報酬の内訳と2026年改正

成年後見人の費用は「申立て時」と「就任後」で分けて考える

成年後見人の費用は、家庭裁判所への申立て時に支払う手続費用と、就任後に本人の財産から支払われる報酬の二つに分かれます。前者のうち申立手数料800円・登記手数料2,600円は全国共通の確定額です。後者は家庭裁判所の審判で個別に決まり、金額の目安は現在どこにも公表されていません

この記事で分かることは次の5点です。

  • 申立て時に確実にかかる費用と、裁判所ごとに異なる費用の切り分け
  • 鑑定費用が発生する事件の割合と、その金額の分布(最高裁の統計)
  • 後見人の報酬が「決まり方」でしか説明できない理由
  • 費用を誰が負担するのか、負担が難しいときに何があるのか
  • 2026年6月に公布された民法改正が、報酬の考え方にどう効くのか

費用は2種類しかない — 手続費用と報酬

「全部でいくらですか」と聞かれたら、まずこの2分法に落とすと会話が整理されます。手続費用は申立ての入口で申立人が納め、報酬は就任後に本人の財産から出ます。時点も財布も違うため、合算して一つの数字にしないほうが誤解が生まれません。

確定している額と、確定していない額

確定しているのは収入印紙で納める手数料だけで、郵便切手・鑑定費用・報酬はいずれも事件ごと・裁判所ごとに変わります。説明が破綻するのは、確定していない部分に「相場」を当てはめたときです。

申立てにかかる費用の内訳|800円と2,600円は全国共通

申立手数料800円・登記手数料2,600円

裁判所の「後見開始」の案内によれば、申立手数料は収入印紙800円分、登記手数料は収入印紙2,600円分です。すでに登記印紙2,600円分を持っている場合は、当分の間それで納付できるとされています。

注意が必要なのは補助です。厚生労働省の「成年後見はやわかり」では、補助開始の審判をするには補助人に同意権または代理権を付与する審判を同時にしなければならず、これらの申立てそれぞれにつき収入印紙800円が必要とされています。補助だけ印紙が増える点は説明時に落としやすいところです。登記手数料は補助・保佐・後見のいずれも各2,600円です。

郵便切手は裁判所ごとに違う

連絡用の郵便切手も必要ですが、裁判所は「郵便料は裁判所ごとに異なります」としています。全国一律の金額を答えてはいけない箇所です。金額ではなく「申立先の家庭裁判所の案内で確認する」という手順を渡すのが正確です。

診断書・戸籍謄本などの実費は別途

厚生労働省の案内どおり、戸籍謄本・登記事項証明書・診断書などの入手費用は別途かかります。発行元により額が変わるため、内訳の項目名を先に示し、金額は実費として後から埋める形が安全です。

鑑定費用は「必ずかかる」わけではない|裁判所統計で見る実態

鑑定を実施したのは全体の約3.4%

裁判所は「鑑定をしなければならない場合があり、申立人にその費用を負担していただくことがある」と説明しますが、金額は書いていません。頻度は最高裁の統計で分かります。「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」によれば、鑑定を実施したものは全体の約3.4%(前年約3.8%)でした。大半の事件では鑑定は行われていません。

鑑定費用の分布 — 85.8%が10万円以下

同統計では、鑑定費用は5万円以下が約43.7%全体の約85.8%の事件で10万円以下とされています。厚生労働省も「鑑定料は個々の事案によって異なるが、ほとんどの場合10万円以下」としており、二つの一次資料が同じ方向を示しています。鑑定期間は1か月以内が52.6%、1か月超2か月以内が36.8%です。

大事なのは、高めのレンジだけを示す説明は統計と整合しない点です。分布を示せば、最大でいくらかではなく、どのあたりに集まっているかを伝えられます。

審理期間は2か月以内が約71.1%

費用の相談では必ず「どのくらい待つのか」も聞かれます。同統計の審理期間は2か月以内が約71.1%、4か月以内が約93.8%です。同年の申立件数は合計43,159件(前年41,841件、対前年比約3.2%増)、終局事件42,674件のうち約95.1%が認容で終局しています。

後見人の報酬は誰も「相場」を公表していない

報酬は家庭裁判所の審判で決まる

民法862条は「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」と定めます(e-Gov法令検索(民法))。報酬は契約で決める料金ではなく、審判で付与されるものです。

東京家庭裁判所後見センターの「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」(令和2年4月)のQ13も同じです。裁判所は後見人として働いた期間、被後見人の財産の額や内容、後見人の行った事務の内容などを考慮して、報酬を付与するのが相当か、相当ならいくらとすべきかを決定します。後見人が審判を経ずに自らの判断で本人の財産から報酬を受け取ることはできません。

「報酬額のめやす」は今、裁判所のサイトに無い

かつて東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所は「成年後見人等の報酬額のめやす」を公開していました。しかし2026年9月時点で、いずれのPDFも裁判所のサイト上で参照できません。検索結果に残っていてもファイル自体が存在しない状態です。そして現行のハンドブック(令和2年4月版)には報酬額の目安となる金額が一切書かれていません。あるのは考慮要素だけです。

ネット上には金額のレンジが大量に流通していますが、出典を現在の裁判所の公表資料にたどることはできません。出典のない数字を伝えれば、審判額と食い違ったときに説明責任を負うのはこちら側です。

だから依頼者には「金額」ではなく「決まり方」を説明する

説明できるのは次の3点です。ここまでは一次資料に書いてあります。

  • 期間:後見人として働いた期間
  • 財産:本人の財産の額と内容
  • 事務:後見人が実際に行った事務の内容

「お答えできません」で終わらせず、「この3つで裁判所が判断するので、毎年の事務報告の内容が結果に効きます」まで言えると説明の質が変わります。現場で信頼を得ているのはこの伝え方です。

報酬付与の申立てにも収入印紙800円がかかる

裁判所の「報酬の付与」のとおり、報酬付与の申立ての手数料は収入印紙800円分です。東京家裁のハンドブックでは、申立書・収入印紙800円(申立書に貼付)・郵便切手84円・添付書類が必要とされています。

費用は誰が払うのか、払えないときはどうするのか

事務に必要な費用は本人の財産から支弁

民法861条2項は「後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する」と定めます。就任後の事務費用は本人負担が原則です。

申立費用と本人の費用は別の話

一方、申立て時の印紙・切手・診断書代などは申立人が納めます。「全部本人のお金から出る」と説明すると、ご家族の実際の持ち出しと合わなくなります。時点で切って説明するのが確実です。

法テラスの民事法律扶助と、市町村の助成

経済力に余裕がない場合、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助により、申立代理人費用の立替えなどの援助を受けられる場合があります。また、法定後見制度の利用に必要な経費を助成している市町村もあります。どちらも要件や額は窓口ごとに異なるため、制度の存在と確認先を伝えるまでが正確な案内です。

2026年の民法改正で、報酬の考え方が条文から変わる

令和8年6月17日成立・6月24日公布(法律第45号)

「民法等の一部を改正する法律案」は、衆議院の議案審議経過情報によれば衆議院で令和8年5月26日に可決、参議院で令和8年6月17日に可決され、令和8年6月24日に法律第45号として公布されました。

議案本文の提出理由は、成年後見および遺言の制度を国民がより利用しやすいものとする観点から、後見及び保佐の制度の廃止並びに補助の制度の適用範囲の拡大、補助の特例の創設、任意後見契約と補助の関係の見直しなどを行うとするものです。民法の目次も「第五章 後見」が「第五章 未成年後見」に、「第六章 保佐及び補助」が「第六章 補助」に改められます。

施行日はまだ決まっていない

附則第一条は「この法律は、公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」としています(遺言関係の一部は1年以内・3年以内の別枠)。2026年9月時点で施行日を定める政令は出ておらず、改正法は未施行です。「いつから変わるのか」には期限の枠だけを答え、確定日は政令待ちと伝えるのが正確です。

改正後876条の19に「補助の事務の内容」が入った

条文を並べると差がはっきりします。

比較

現行 民法862条(後見人の報酬)

改正後 民法876条の19(補助人の報酬)

考慮要素

後見人及び被後見人の資力その他の事情

補助の事務の内容、補助人及び補助開始の審判を受けた者の資力その他の事情

原資

被後見人の財産の中から

補助開始の審判を受けた者の財産の中から

効果

相当な報酬を与えることができる

相当な報酬を与えることができる

現行862条には無かった「補助の事務の内容」が、改正後は条文上の考慮要素として明記されます。事務費用は改正後876条の18が現行861条2項と同じ構造を維持しています。

報酬が「何をしたか」へ寄るなら、記録の精度が報酬を左右する

従来も運用上は事務の内容が考慮されてきましたが、条文に書かれる意味は小さくありません。やった仕事を書けていなければ、やっていないのと同じに扱われうるということです。日々の事務を記録し、事務報告と報酬付与申立てで漏れなく示す体制が結果につながります。

司法書士が費用説明と報酬付与申立てをAIで下支えする

費用の説明は、実は司法書士の主要業務です。最高裁の統計では成年後見人等と本人との関係は親族が7,014件・16.4%、親族以外が35,718件・83.6%、親族以外の内訳は司法書士が11,966件・33.5%と職種別で最多(弁護士8,903件・24.9%、社会福祉士7,280件・20.4%)です。家族に費用を説明し、事務を記録し、報酬付与を申し立てる側に最も多く立っているのが司法書士だということになります。

以下は、その説明と記録をAIで下支えする使い方です。生成AIは金額を決める道具ではなく、説明と記録を整える道具として使います。

依頼者向け「費用説明メモ」を下書きする

あなたは司法書士事務所の事務担当です。ご家族向けの「費用説明メモ」を作ってください。
【本人の状況】(例:80代・認知症・施設入所中)
【申立ての類型】(後見/保佐/補助)
【申立人】(子/兄弟姉妹/市区町村長 など)
条件:
- 「申立て時の費用」と「就任後の報酬」を章立てで分ける
- 下に貼った一次資料の記載だけを使う
- 郵便切手・鑑定費用・報酬の金額は書かず「確認先」を書く
- 専門用語は初出で言い換えを付ける
【貼付する一次資料】(裁判所・厚労省ページの該当箇所)

うまくいかない例と直し方:条件なしで「成年後見の費用を説明して」と投げると、学習データ由来の報酬相場が混ざります。一次資料を貼り「貼ったものの記載だけを使う」と縛ることで初めて実務に出せます。

後見等事務報告・報酬付与申立ての事務内容を棚卸しする

以下は今期の後見事務のメモです。報酬付与の申立てに添える「行った事務の内容」の形へまとめてください。
【対象期間】
【事務メモ】(日付と行動を箇条書きで貼る)
条件:
- 「財産管理」「身上保護」「関係機関との調整」「臨時・非定型」に分類
- 各項目に日付と回数を残す。メモに無い事実を補わない
- 追記が必要な項目は最後に「確認事項」として列挙

うまくいかない例と直し方:まとめさせると文章がなめらかになる代わりに日付と回数が消えます。「日付と回数を残す」「メモに無い事実を補わない」を明示し、足りない部分は確認事項として分離させます。事務の内容は考慮要素そのものなので、丸めないことが要点です。

改正の用語読み替え表を作る

以下に貼る改正法と現行民法の条文を突き合わせ、事務所内で使う「用語読み替え表」を作ってください。
条件:
- 列は「現行の呼び方/改正後の呼び方/根拠条文/注意点」
- 施行日は未定である旨を表の外に一文で添える
- 条文に書かれていない運用上の推測は書かない
【貼付】現行民法の該当条文/改正法の該当条文

うまくいかない例と直し方:施行日を聞くとAIは何らかの日付を作ることがあります。「施行日は未定と書く」と先に指定するのが最も確実です。プロンプトの組み立て方は司法書士のChatGPTプロンプト集|登記・相続業務で使える実例10選も参考になります。

e-Gov法令データ等の公的情報を参照する法務特化AI のデモです。

AIに絶対にやらせてはいけないこと

  • 報酬額の推定:出典が現存しない数字を再生産します。金額は出させない。
  • 条文の要約の丸呑み:改正条文は語句一つで意味が変わります。原文と突き合わせる。
  • 本人の個人情報の無加工入力:氏名・住所・口座・病名はマスキングして渡す。

士業AIは、この「一次資料を渡して、その範囲で書かせる」使い方に合うよう設計しています(法務向けのページ)。後見終了後は相続手続へ移ることが多く、戸籍の読解と検証は相続関係説明図をAIで作成|司法書士の戸籍読解・検証手順が参考になります。今回の改正は遺言制度も対象で、こちらは自筆証書遺言の書き方|無効を避ける文例とAI下書き術で扱っています。

よくある質問|成年後見人の費用

成年後見人の費用は誰が払うのですか

負担する人は、費用の種類によって分かれます。就任後の事務に必要な費用は民法861条2項により本人(被後見人)の財産から支弁され、申立て時の収入印紙・郵便切手・診断書などは申立人が納めます。

親族が成年後見人になった場合も報酬はもらえますか

親族かどうかで扱いは変わりません。民法862条は後見人一般について、家庭裁判所が相当な報酬を与えることができると定めます。ただし報酬付与の審判を申し立てる必要があり、審判を経ずに本人の財産から受け取ることはできません。

鑑定費用は必ずかかりますか

必ずではありません。最高裁の統計では鑑定を実施したものは全体の約3.4%です。実施された場合の費用は5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%で、厚生労働省も「ほとんどの場合10万円以下」としています。

報酬はいつ請求するのですか

一定の職務を行った後です。東京家裁のハンドブックでは、後見等事務報告時、後見人辞任の時、後見終了の時などに報酬付与の審判を申し立てるとされています。申立てには収入印紙800円分が必要です。

2026年の改正で今の後見はどうなりますか

改正法は令和8年6月24日に法律第45号として公布され、後見および保佐を廃止して補助に一元化する内容ですが、施行日は公布から2年6か月を超えない範囲内で政令により定められます。その政令はまだ出ておらず、現時点では現行制度がそのまま動いています

参考文献

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