法務×AI

成年後見人の費用はいくら?申立て・鑑定・報酬の内訳と2026年改正

成年後見人の費用は総額いくら?先に結論

成年後見の費用は、申立て時の実費(収入印紙3,400円+郵便切手+診断書・戸籍などの実費)、必要な場合だけの鑑定費用(実施されるのは全体の約3.4%、実施時の約85.8%は10万円以下)、司法書士・弁護士に申立てを頼む場合の依頼費用、そして就任後に続く後見人報酬の4つで決まります。後見人報酬は家庭裁判所の審判で決まり、大阪家庭裁判所が公表する「報酬額のめやす」では基本報酬が月額2万円、管理財産額に応じて月額3万〜6万円です。

費用の種類

いつ・誰が払うか

金額の目安

申立ての実費

申立て時・申立人

印紙3,400円(補助は増える)+切手・書類の実費

鑑定費用

鑑定をする場合のみ・申立人

約85.8%が10万円以下(最高裁統計)

申立ての依頼費用

依頼した場合のみ・依頼者

公的な基準額なし。事務所の見積りで確認

後見人報酬

就任後・本人の財産から

月額2万円〜6万円(大阪家裁のめやす)

この記事で分かることは次の6点です。

  • 申立て時に確実にかかる費用と、裁判所ごとに異なる費用の切り分け
  • 鑑定費用が発生する割合と金額の分布(最高裁の統計)
  • 後見人報酬は毎月いくらか(家庭裁判所の「報酬額のめやす」と付加報酬)
  • 費用はいつまで払うのか、途中でやめられるのか
  • 家族が後見人になった場合の報酬と、後見監督人の費用
  • 払えないときの助成・法テラスと、2026年6月公布の民法改正の影響

費用は「申立て時」と「就任後」の2つに分ける

「全部でいくらですか」と聞かれたら、まず申立て時の費用と就任後の報酬に分けると話が整理されます。申立て時の費用は入口で申立人が納める一度きりの支出、報酬は就任後に本人の財産から出る継続的な支出です。時点も財布も違うため、合算して一つの数字にすると誤解が生まれます。

確定している額と、確定していない額

全国共通で確定しているのは収入印紙で納める手数料だけです。郵便切手は裁判所ごと、鑑定費用は事件ごと、報酬は審判ごとに変わります。説明が崩れるのは、確定していない部分を一つの「相場」で言い切ったときです。目安は目安として、出典とセットで伝えます。

成年後見の申立てにかかる費用の内訳一覧

申立て時の費用を一覧にすると次のとおりです。金額が全国一律なのは印紙代だけで、それ以外は申立先や取得先で確認します。

項目

金額

確認先・注意点

申立手数料(収入印紙)

800円

補助は同意権・代理権付与の申立てごとに各800円

登記手数料(収入印紙)

2,600円

後見・保佐・補助とも同額

連絡用の郵便切手

裁判所ごとに異なる

申立先の家庭裁判所の案内で確認

診断書

医療機関ごとに異なる

家庭裁判所の書式で作成を依頼

戸籍謄本・住民票・登記されていないことの証明書など

発行手数料の実費

市区町村・法務局で取得

鑑定費用

鑑定をする場合のみ

実施は全体の約3.4%(次章)

司法書士・弁護士への依頼費用

事務所ごとに異なる

依頼する場合のみ。見積書で内訳を確認

申立手数料800円・登記手数料2,600円

裁判所の「後見開始」の案内によれば、申立手数料は収入印紙800円分、登記手数料は収入印紙2,600円分です。すでに登記印紙2,600円分を持っている場合は、当分の間それで納付できるとされています。

注意が必要なのは補助です。厚生労働省の「成年後見はやわかり」では、補助開始の審判をするには補助人に同意権または代理権を付与する審判を同時にしなければならず、これらの申立てそれぞれにつき収入印紙800円が必要とされています。補助だけ印紙が増える点は説明時に落としやすいところです。

郵便切手は裁判所ごとに違う

連絡用の郵便切手も必要ですが、裁判所は郵便料が裁判所ごとに異なるとしています。全国一律の金額を答えてはいけない箇所です。金額ではなく「申立先の家庭裁判所の案内で確認する」という手順を渡すのが正確です。

診断書・戸籍謄本などの実費は別途

厚生労働省の案内どおり、戸籍謄本・登記事項証明書・診断書などの入手費用は別途かかります。発行元により額が変わるため、内訳の項目名を先に示し、金額は実費として後から埋める形が安全です。相続と並行して戸籍を集める場面では、法定相続情報一覧図の申出書の記入例と必要書類の手順を使うと取得の重複を減らせます。

司法書士・弁護士に申立てを頼む場合の費用

申立書の作成や書類収集を専門職に頼む場合は、上の実費とは別に依頼費用がかかります。この費用には裁判所や国が示す基準額がなく、事務所ごとに定められています。ネット上の「相場」は出典をたどれないものが多いため、見積書で次の3点を分けて確認するのが確実です。

  • 報酬部分:申立書・財産目録・収支予定表の作成、裁判所との連絡
  • 実費部分:印紙・切手・戸籍・診断書の取得費
  • 対象外の作業:鑑定費用、就任後の後見事務(申立ての依頼と後見人への就任は別の話)

なお、申立ての依頼先が後見人になるとは限りません。後見人を誰にするかは家庭裁判所が選任します。依頼費用と就任後の報酬は別物として説明します。

鑑定費用は「必ずかかる」わけではない|裁判所統計で見る実態

鑑定を実施したのは全体の約3.4%

裁判所は、鑑定が必要な場合は申立人に費用を負担してもらうことがあると説明しますが、金額は書いていません。頻度は最高裁の統計で分かります。「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」によれば、鑑定を実施したものは全体の約3.4%(前年約3.8%)でした。大半の事件では鑑定は行われていません。

鑑定費用の分布 — 85.8%が10万円以下

同統計では、鑑定費用は5万円以下が約43.7%、全体の約85.8%の事件で10万円以下とされています。厚生労働省も鑑定料は個々の事案によって異なるが、ほとんどの場合10万円以下としており、二つの一次資料が同じ方向を示しています。鑑定期間は1か月以内が52.6%、1か月超2か月以内が36.8%です。

大事なのは、高めのレンジだけを示す説明は統計と整合しない点です。分布を示せば、最大でいくらかではなく、どのあたりに集まっているかを伝えられます。

審理期間は2か月以内が約71.1%

費用の相談では必ず「どのくらい待つのか」も聞かれます。同統計の審理期間は2か月以内が約71.1%、4か月以内が約93.8%です。同年の申立件数は合計43,159件(前年41,841件、対前年比約3.2%増)、終局事件42,674件のうち約95.1%が認容で終局しています。

成年後見人の報酬は毎月いくら?家庭裁判所の「報酬額のめやす」

報酬は家庭裁判所の審判で決まる

民法862条は「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」と定めます(e-Gov法令検索(民法))。報酬は契約で決める料金ではなく、審判で付与されるものです。

東京家庭裁判所後見センターの「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」(令和2年4月)のQ13も同じです。裁判所は後見人として働いた期間、被後見人の財産の額や内容、後見人の行った事務の内容などを考慮して、報酬を付与するのが相当か、相当ならいくらとすべきかを決定します。後見人が審判を経ずに自らの判断で本人の財産から報酬を受け取ることはできません。

大阪家裁の「報酬額のめやす」(令和7年4月)— 基本報酬は月額2万円

家庭裁判所の中には、実務の算定実例を踏まえた「報酬額のめやす」を公表しているところがあります。現在裁判所のサイトで確認できる最新版は、大阪家庭裁判所(堺支部・岸和田支部を含む)の「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和7年4月)です。基本報酬は次のとおりです。

管理財産額(預貯金・有価証券等の流動資産の合計)

成年後見人の基本報酬(月額)

成年後見監督人の基本報酬(月額)

1,000万円以下

2万円

1万円〜2万円

1,000万円超〜5,000万円以下

3万円〜4万円

1万円〜2万円

5,000万円超

5万円〜6万円

2万5,000円〜3万円

継続的な財産管理権が付与された保佐人・補助人も成年後見人と同様、保佐監督人・補助監督人・任意後見監督人も成年後見監督人と同様とされています。横浜家庭裁判所のめやす(平成23年4月1日付)も同じ金額です。一方、以前広く引用されていた東京家庭裁判所のめやすのPDFは、2026年10月時点で従来のURLでは参照できません。引用するときは、どの裁判所の、いつの版かを必ず添えます。

付加報酬 — 特別な事務があると上乗せされる

基本報酬とは別に、労力を要する事務があった場合は「付加報酬」が加わることがあります。大阪家裁の令和7年4月版は、特に労力を要するものがあった場合に相当額を付加することがあるとしています。横浜家裁の版は、身上監護等に特別困難な事情があった場合は基本報酬額の50%の範囲内で付加するとし、具体例として次を挙げています。

  • 1,000万円の損害賠償請求訴訟で勝訴し管理財産を増やした場合:約80万円〜約150万円
  • 遺産分割調停で約2,000万円相当の遺産を取得させた場合:約55万円〜約100万円
  • 居住用不動産を家庭裁判所の許可を得て3,000万円で任意売却した場合:約40万円〜約70万円

本人が相続人になる遺産分割や、自宅の売却を予定して申し立てる事案では、基本報酬だけで見積もると実際の負担を小さく見誤ります。成年後見人が複数いる場合は、分掌する事務の内容に応じて報酬を按分するとされています。

めやすは「上限」でも「確定額」でもない

めやすはあくまで標準的な額で、実際の金額は審判で個別に決まります。大阪家裁も、報酬額の基準は法律で決まっておらず、裁判官が事務内容と管理財産の内容等を総合考慮して算定するとしています。依頼者に伝えるべきなのは次の3つの考慮要素です。

  • 期間:後見人として働いた期間
  • 財産:本人の財産の額と内容
  • 事務:後見人が実際に行った事務の内容

「月2万円です」で終わらせず、「財産額と事務の内容で裁判所が判断するので、毎年の事務報告の内容が結果に効きます」まで言えると説明の質が変わります。現場で信頼を得ているのはこの伝え方です。

報酬は後払い — 報酬付与の申立てに収入印紙800円

報酬は毎月自動で引き落とされるものではありません。裁判所の「報酬の付与」のとおり、後見人が報酬付与の申立てをし、家庭裁判所が審判をした後に、認められた額を本人の財産から受け取ります。手数料は収入印紙800円分で、郵便料は裁判所ごとに異なります。必要書類は申立書・報酬付与申立事情説明書・後見等事務報告書・財産目録です。「毎月いくら」は月額換算の目安であり、実際の支払いは一定期間分をまとめて後払いする形になります。

成年後見の費用はいつまで払う?途中でやめられるか

現行制度では、本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続く

成年後見は、遺産分割や不動産売却といった申立てのきっかけになった手続が終わっても終了しません。法務省の改正法の概要資料も、現行の後見・保佐は事理弁識能力が回復しない限り利用をやめることができないと課題を整理しています。後見開始の審判の取消しは、原因が消滅したとき(民法10条)に限られます。つまり報酬は原則として本人が亡くなるまで続く前提で家計を見ておく必要があります。

申立ての取下げ・後見人の辞任にも家庭裁判所の許可が要る

「後見人の候補者が選ばれないなら取り下げたい」という相談もありますが、家事事件手続法121条により、後見開始の申立ては審判前でも家庭裁判所の許可を得なければ取り下げられません(e-Gov法令検索(家事事件手続法))。就任後の辞任も、正当な事由があり家庭裁判所の許可を得た場合に限られます(民法844条)。辞任した後見人は遅滞なく新たな後見人の選任を請求しなければならず(民法845条)、後見人が交代しても制度と報酬は続きます。

10年続いた場合の報酬の試算

大阪家裁のめやすの基本報酬だけで単純計算すると、次のようになります。付加報酬や監督人報酬は含みません。

管理財産額

年額(めやす)

10年間(めやす)

1,000万円以下

24万円

240万円

1,000万円超〜5,000万円以下

36万円〜48万円

360万円〜480万円

5,000万円超

60万円〜72万円

600万円〜720万円

この試算を見せると、申立て前に「本当に後見が必要か、別の手段で足りないか」を検討する材料になります。申立てのきっかけが相続なら、相続手続きの期限一覧で期限との兼ね合いも同時に確認します。

家族が成年後見人になった場合の費用

親族後見人も報酬付与を申し立てられる

民法862条は後見人一般について定めており、親族かどうかで報酬の扱いは変わりません。家族が後見人になっても、報酬付与の申立てをして審判を受ければ本人の財産から報酬を受け取れます。逆に、申し立てなければ報酬は発生しません。なお横浜家裁のめやすは、専門職が後見人に選任された場合を想定した額であると明記しています。親族後見人に同じ額が付くとは限らない点に注意します。

後見監督人が付くと、監督人の報酬がかかる

家族が後見人になっても費用がゼロになるとは限りません。家庭裁判所は必要があると認めるときは後見監督人を選任でき(民法849条)、専門職が監督人に選任されると監督人の報酬も本人の財産から支払われます。大阪家裁のめやすでは、管理財産額5,000万円以下で月額1万〜2万円、5,000万円超で月額2万5,000円〜3万円です。

実際に選ばれているのは親族以外が約8割

最高裁の統計では、成年後見人等と本人との関係は親族が7,014件・16.4%、親族以外が35,718件・83.6%です。親族を候補者として申し立てても、財産の額や親族間の対立などを踏まえて専門職が選ばれることがあります。家族が後見人になる前提で費用を見積もるときは、専門職が選任された場合の報酬も並べて示しておくのが誠実です。

成年後見の費用は誰が払う?払えないときはどうする?

報酬と事務費用は本人の財産から支払う

民法861条2項は「後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する」と定め、報酬も民法862条により被後見人の財産の中から与えられます。就任後の費用は本人負担が原則で、家族が自分の財布から払うものではありません。

申立費用と本人の費用は別の話

一方、申立て時の印紙・切手・診断書代や鑑定費用は申立人が納めます。「全部本人のお金から出る」と説明すると、ご家族の実際の持ち出しと合わなくなります。時点で切って説明するのが確実です。

払えないとき — 市町村の助成と法テラスの民事法律扶助

本人の財産が少なく報酬を払えない場合に備えて、申立ての経費や後見人等の報酬を助成している市町村があります(国の補助を受けた「成年後見制度利用支援事業」として市町村が実施するものです)。厚生労働省の「成年後見はやわかり」も、法定後見制度の利用に必要な経費を助成している市町村があるとしています。対象者・対象経費・上限額は市町村ごとに異なるため、本人の住所地の窓口で確認します。

また経済力に余裕がない場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助により、申立代理人費用の立替えなどの援助を受けられる場合があります。どちらも要件を満たすかどうかは窓口の判断なので、制度の存在と確認先を伝えるまでが正確な案内です。本人の財産の全体像は、相続財産目録の作り方と記載例の形式で整理しておくと、助成の相談にも報酬の試算にもそのまま使えます。

2026年の民法改正で、報酬と「やめられない」が変わる

令和8年6月17日成立・6月24日公布(法律第45号)

「民法等の一部を改正する法律」は、衆議院の議案審議経過情報によれば衆議院で令和8年5月26日に可決、参議院で令和8年6月17日に可決され、令和8年6月24日に法律第45号として公布されました。法務省の解説ページによれば、後見と保佐を廃止して補助に一元化し、本人に必要な範囲で利用できるようにする内容です。

議案本文の提出理由も、後見及び保佐の制度の廃止並びに補助の制度の適用範囲の拡大、補助の特例の創設、任意後見契約と補助の関係の見直しなどを挙げています。

施行日はまだ決まっていない

成年後見制度の見直し部分は「公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されます(遺言関係の一部は1年以内・3年以内の別枠)。2026年10月時点で、法務省のページには施行日を定める政令の日付は示されておらず、改正法は未施行です。「いつから変わるのか」には期限の枠だけを答え、確定日は政令待ちと伝えるのが正確です。施行までは、この記事で説明した現行制度の費用がそのまま当てはまります。

改正後876条の19に「補助の事務の内容」が入った

条文を並べると差がはっきりします。

比較

現行 民法862条(後見人の報酬)

改正後 民法876条の19(補助人の報酬)

考慮要素

後見人及び被後見人の資力その他の事情

補助の事務の内容、補助人及び補助開始の審判を受けた者の資力その他の事情

原資

被後見人の財産の中から

補助開始の審判を受けた者の財産の中から

効果

相当な報酬を与えることができる

相当な報酬を与えることができる

法務省の概要資料は、この改正の狙いを「報酬の予測可能性を高めること」と説明し、報酬請求が認容された事案の実績が公表されることを予定としています。施行後は、各家裁のめやすに加えて実績データで説明できるようになる見込みです。

「必要がなくなったら終了できる」— いつまで払うかが変わる

費用面で最も影響が大きいのは終了の仕組みです。改正後は、事理弁識能力が回復していなくても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権で制度利用を終了できるとされています(改正後民法12条)。遺産分割など特定の目的のために使い、終われば終了するという使い方が可能になり、「亡くなるまで報酬を払い続ける」前提が変わります。現在後見・保佐を利用中の人は、経過措置により現行法の内容で継続するか、新制度への移行や審判の取消しを申し立てるかを選べるとされています。

報酬が「何をしたか」へ寄るなら、記録の精度が報酬を左右する

従来も運用上は事務の内容が考慮されてきましたが、条文に書かれる意味は小さくありません。やった仕事を書けていなければ、やっていないのと同じに扱われうるということです。日々の事務を記録し、事務報告と報酬付与申立てで漏れなく示す体制が結果につながります。

司法書士が費用説明と報酬付与申立てをAIで下支えする

費用の説明は、実は司法書士の主要業務です。最高裁の統計では親族以外の成年後見人等の内訳は司法書士が11,966件・33.5%と職種別で最多(弁護士8,903件・24.9%、社会福祉士7,280件・20.4%)です。家族に費用を説明し、事務を記録し、報酬付与を申し立てる側に最も多く立っているのが司法書士だということになります。

以下は、その説明と記録をAIで下支えする使い方です。生成AIは金額を決める道具ではなく、説明と記録を整える道具として使います。司法書士業務全体でのAIの使いどころは司法書士・弁護士のためのAI活用ガイドにまとめています。

依頼者向け「費用説明メモ」を下書きする

あなたは司法書士事務所の事務担当です。ご家族向けの「費用説明メモ」を作ってください。
【本人の状況】(例:80代・認知症・施設入所中)
【申立ての類型】(後見/保佐/補助)
【申立人】(子/兄弟姉妹/市区町村長 など)
【本人の管理財産額の概算】(預貯金・有価証券の合計)
条件:
- 「申立て時の費用」「就任後の報酬」「いつまで続くか」を章立てで分ける
- 下に貼った一次資料の記載だけを使う
- 報酬は貼付した家庭裁判所のめやすの額と版(裁判所名・年月)を併記し、「審判で個別に決まる」と必ず添える
- 郵便切手・鑑定費用の金額は書かず「確認先」を書く
- 専門用語は初出で言い換えを付ける
【貼付する一次資料】(裁判所・厚労省ページ、報酬額のめやすの該当箇所)

うまくいかない例と直し方:条件なしで「成年後見の費用を説明して」と投げると、出典不明の報酬相場や古い版の数字が混ざります。一次資料を貼り「貼ったものの記載だけを使う」「版を併記する」と縛ることで初めて実務に出せます。

後見等事務報告・報酬付与申立ての事務内容を棚卸しする

以下は今期の後見事務のメモです。報酬付与の申立てに添える「行った事務の内容」の形へまとめてください。
【対象期間】
【事務メモ】(日付と行動を箇条書きで貼る)
条件:
- 「財産管理」「身上保護」「関係機関との調整」「臨時・非定型(訴訟・遺産分割・不動産売却など)」に分類
- 各項目に日付と回数を残す。メモに無い事実を補わない
- 付加報酬の対象になりうる事務は、結果(取得額・売却額など)を数字で残す
- 追記が必要な項目は最後に「確認事項」として列挙

うまくいかない例と直し方:まとめさせると文章がなめらかになる代わりに日付と回数が消えます。「日付と回数を残す」「メモに無い事実を補わない」を明示し、足りない部分は確認事項として分離させます。事務の内容は考慮要素そのものなので、丸めないことが要点です。

改正の用語読み替え表を作る

以下に貼る改正法と現行民法の条文を突き合わせ、事務所内で使う「用語読み替え表」を作ってください。
条件:
- 列は「現行の呼び方/改正後の呼び方/根拠条文/注意点」
- 施行日は未定である旨を表の外に一文で添える
- 条文に書かれていない運用上の推測は書かない
【貼付】現行民法の該当条文/改正法の該当条文

うまくいかない例と直し方:施行日を聞くとAIは何らかの日付を作ることがあります。「施行日は未定と書く」と先に指定するのが最も確実です。プロンプトの組み立て方は司法書士のChatGPTプロンプト集|登記・相続業務で使える実例10選も参考になります。

e-Gov法令データ等の公的情報を参照する法務特化AI のデモです。

AIに絶対にやらせてはいけないこと

  • 出典なしの報酬額の推定:版も裁判所も不明な数字を再生産します。めやすは原典を貼って引用させる。
  • 条文の要約の丸呑み:改正条文は語句一つで意味が変わります。原文と突き合わせる。
  • 本人の個人情報の無加工入力:氏名・住所・口座・病名はマスキングして渡す。

一次資料を渡して、その範囲で書かせる使い方に合うよう設計したのが司法書士AIです。ツールの選び方は司法書士のAIツール比較|登記・相続で失敗しない選び方で比べています。後見終了後は相続手続へ移ることが多く、戸籍の読解と検証は相続関係説明図をAIで作成|司法書士の戸籍読解・検証手順が参考になります。今回の改正は遺言制度も対象で、こちらは自筆証書遺言の書き方と文例で扱っています。

よくある質問|成年後見人の費用

成年後見人の費用は毎月いくらですか

専門職が後見人になった場合、大阪家庭裁判所のめやす(令和7年4月)では基本報酬が月額2万円、管理財産額が1,000万円超5,000万円以下で月額3万〜4万円、5,000万円超で月額5万〜6万円です。実際の額は審判で個別に決まり、一定期間分をまとめて後払いします。

成年後見人の費用はいつまで払うのですか

現行制度では、本人の判断能力が回復して後見開始の審判が取り消されるか、本人が亡くなるまで続きます。申立てのきっかけになった手続が終わっても終了しません。2026年公布の改正法が施行されると、必要がなくなったときに終了できる仕組みが入ります。

成年後見人の費用は誰が払うのですか

負担する人は、費用の種類によって分かれます。就任後の報酬と事務に必要な費用は民法861条2項・862条により本人(被後見人)の財産から支払われ、申立て時の収入印紙・郵便切手・診断書・鑑定費用などは申立人が納めます。

親族が成年後見人になった場合も報酬はもらえますか

親族かどうかで扱いは変わりません。民法862条は後見人一般について、家庭裁判所が相当な報酬を与えることができると定めます。ただし報酬付与の審判を申し立てる必要があり、審判を経ずに本人の財産から受け取ることはできません。後見監督人が選任されると、監督人の報酬も本人の財産からかかります。

本人の財産が少なく報酬を払えない場合はどうなりますか

申立ての経費や後見人等の報酬を助成している市町村があります。対象者や上限額は市町村ごとに異なるため、本人の住所地の窓口で確認します。申立代理人の費用は、法テラスの民事法律扶助で立替えを受けられる場合があります。

鑑定費用は必ずかかりますか

必ずではありません。最高裁の統計では鑑定を実施したものは全体の約3.4%です。実施された場合の費用は5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%で、厚生労働省も「ほとんどの場合10万円以下」としています。

報酬はいつ請求するのですか

一定の職務を行った後です。東京家裁のハンドブックでは、後見等事務報告時、後見人辞任の時、後見終了の時などに報酬付与の審判を申し立てるとされています。申立てには収入印紙800円分が必要です。

2026年の改正で今の後見はどうなりますか

改正法は令和8年6月24日に法律第45号として公布され、後見および保佐を廃止して補助に一元化する内容ですが、施行日は公布から2年6か月を超えない範囲内で政令により定められます。施行までは現行制度がそのまま動いています。施行後も、利用中の後見・保佐は基本的に現行法の内容で継続でき、新制度への移行や取消しを申し立てることもできるとされています。

参考文献

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