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退職届・退職願テンプレート無料6種|書き方と会社側の受理・手続き

退職届は、従業員が「辞めます」と会社に意思表示する書類です。法律上は決まった様式がなく、A4用紙1枚に縦書きで6項目を書けば有効に成立します。むしろ実務で難しいのは、受け取った会社側(総務・経理)がその日から動き出す手続きのほうです。退職届の受理日と退職日は別物で、そこを起点に健康保険・厚生年金の資格喪失届は5日以内、雇用保険の資格喪失届は10日以内と、期限が一斉に走り始めます。

この記事で分かることは次のとおりです。

  • 退職届・退職願・辞表の違いと、どれを出してもらうべきか
  • そのまま使える退職届/退職願のテンプレート6種と、項目別の書き方
  • 受け取った会社側が当日に確認すべき3点(受理日・退職日・撤回の可否)
  • 退職後に会社が出す書類と提出期限の一覧(条文の根拠つき)
  • 顧問先の総務から相談されたときに、社労士・事務所スタッフが即答するための整理

退職届・退職願・辞表の違い

3つは似た書類ですが、法律上の意味がまったく違います。呼び方を間違えたまま受け取ると、後から「撤回したい」と言われたときに会社側の対応が変わってしまいます。

書類

法的な性質

締めの文言

撤回のしやすさ

退職願

合意による退職の「申し入れ(お願い)」

〜退職いたしたく、お願い申し上げます

会社が承諾するまでは撤回の余地がある

退職届

退職の意思の「一方的な通知」

〜退職いたします

会社に届いた後は原則として撤回できない

辞表

役員・公務員が職を辞するときの書面

〜辞任いたします

一般の従業員は使わない

民法627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています(e-Gov 法令検索・民法)。期間の定めのない正社員であれば、申し入れから2週間で雇用契約は終わります。

ここで実務が誤りやすいのが月給制の扱いです。同条2項は「期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる」と、主語を使用者に限定しています。つまり月給制であっても、従業員側からの退職は2週間で成立すると読むのが条文どおりです。「月給制だから月末1か月前でないと辞められない」という説明は、現行条文とかみ合いません。

一方で就業規則に「退職の1か月前までに申し出ること」と書いてある会社は多く、これは業務引継ぎのための社内ルールとして有効に機能します。実務では「就業規則の期間でお願いしつつ、従業員が2週間で切ってきた場合に契約を止められるわけではない」という二段構えで理解しておくと、現場で説明がぶれません。

退職届テンプレート無料6種(Word・PDF・Excel)

士業AI に無料登録すると、以下の6種を Word・PDF・Excel の3形式で一括ダウンロードできます。会社が様式を用意していない中小企業では、総務が「これを使ってください」と渡せる1枚があるだけで差し戻しが激減します。

No.

テンプレート

形式

主な用途

1

退職届(縦書き・手書き用)

Word / PDF

最も一般的。印刷して手書きにも対応

2

退職届(横書き・PC入力用)

Word

社内様式として配布する場合

3

退職願(縦書き)

Word / PDF

合意退職を前提に相談する場合

4

退職届(会社指定様式・受理欄つき)

Word / Excel

受理日・退職日・決裁欄を会社側で管理

5

退職手続きチェックリスト

Excel

返却物・貸与品・手続期限を1枚で管理

6

退職届の受理〜手続き進行表

Excel

資格喪失届・離職票・源泉徴収票の期限を自動表示

No.4〜6 は、本人向けのテンプレート集ではまず見かけない会社側の管理用です。退職届は「受け取って終わり」ではなく、そこから社会保険・雇用保険・税の3方向に手続きが分岐するため、受理欄と期限欄を最初から持たせておくほうが事故が減ります。

退職届をWord・PDF・Excelで作る手順

退職届に法定の様式はないため、白紙から作っても構いません。ここではWord・PDF・Excelのどれで作るかを用途から選び、それぞれの作り方を手順で示します。会社から「この形式で出して」と指定がある場合は、その指定が優先します。

形式

向いている場面

注意点

Word

本人が書いて印刷する/会社が社内様式として配る

縦書き設定と日付表記を最初に決めておく

PDF

メールで送る/原本を印刷して郵送する

編集できない形にしてから送る。受理日の記録は別に残す

Excel

会社側が受理日・退職日・手続期限を一覧で管理する

本人が提出する書面としては縦書きにしにくい

Wordで縦書きの退職届を作る

Word の既定は横書きなので、最初に用紙と文字方向を変えます。順番は次のとおりです。

  • 「レイアウト」→「印刷の向き」を縦、「サイズ」をA4(または会社指定のB5)にする
  • 「レイアウト」→「文字列の方向」→縦書きを選ぶ
  • 「レイアウト」→「余白」を上下左右 25〜30mm 程度にそろえる
  • フォントは明朝体(MS 明朝・游明朝など)11〜12pt、表題だけ 14〜16pt にする
  • 表題「退職届」を中央ぞろえ、以降は本文・日付・氏名・宛名の順に改行で組む
  • 氏名の下に押印する場合は、印影1つ分の空白を全角スペースで確保しておく

縦書きにすると数字は漢数字のほうが読みやすくなります。「令和8年10月31日」ではなく「令和八年十月三十一日」と書くのが一般的です。横書きで作る場合は算用数字のままで構いません。どちらでも法的な効力は変わりません。

PDFにして提出する場合

Word で作った退職届は「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPS ドキュメントの作成」で PDF にできます。PDF にする目的は受け取った側が中身を書き換えられないようにすることなので、Word ファイルのまま送るより実務上は安全です。

ただし PDF で送っただけでは「いつ会社に到達したか」が書面からは分かりません。会社側は受信日時をメールごと保存し、受理簿に受理日を記録しておきます。原本の押印が必要な運用であれば、PDF を先に送り、後日に押印済みの書面を郵送または持参してもらう二段構えにします。

Excelで会社側が受理と期限を管理する

Excel が向くのは、本人が出す退職届そのものではなく会社側の管理表です。1行1人で、氏名・所属・受理日・退職日・最終出社日・有休残日数・貸与品の返却・健康保険証の回収・資格喪失届の提出日・離職証明書の提出日・源泉徴収票の交付日を列に並べます。退職日を入力したら資格喪失届の期限(5日以内)と雇用保険の期限(10日以内)が自動で出るようにしておくと、担当者が変わっても抜けません。

退職に連動して動く台帳は他にもあります。賃金台帳のテンプレートと労働者名簿のテンプレートは、退職日を入れた時点で更新が必要になる書類です。

手書きとパソコン作成のどちらを選ぶか

法律上はどちらでも有効です。手書きを求める会社があるのは、筆跡が本人確認の材料になるという実務上の理由からで、法令に根拠があるわけではありません。会社が様式や作成方法を指定していれば従い、指定がなければパソコン作成で差し支えありません。

会社側の立場では、手書きを必須にする運用は避けたほうが無難です。体調不良や遠方からの郵送など、手書きが負担になる場面で提出が遅れ、かえって退職日の確定が後ろ倒しになります。押印と署名を求めるだけで本人性の確認としては足ります。

用紙・筆記具・封筒のサイズ

  • 用紙:白無地のA4またはB5。罫線入りの便箋でも構いませんが、コピー用紙で問題ありません
  • 筆記具:黒のボールペンまたは万年筆。消えるボールペン(フリクション等)と鉛筆は、加筆訂正ができてしまうため避けます
  • 封筒:A4なら長形3号、B5なら長形4号の白無地二重封筒。郵便番号枠のないものを選びます
  • 折り方:三つ折り。書き出しが封筒の右上にくる向きで入れます

そのほかの労務書式は無料の書式テンプレート一覧にまとめています。

退職届の書き方(項目別)

退職届に法定様式はありません。白紙のA4またはB5に、縦書きで次の順に書けば足ります。手書き・PC入力のどちらでも法的な効力は変わりませんが、会社が手書きを求めている場合はそれに従います。

1行目:表題

冒頭中央に「退職届」と書きます。退職願にするか退職届にするかは、前述の性質の違いで選びます。会社と退職日をすり合わせ済みなら「退職届」、これから相談するなら「退職願」が自然です。

2行目:私儀(わたくしぎ)

行の下部に「私儀」または「私事」と書きます。「私事で恐縮ですが」という前置きを一語に縮めた慣用表現で、下寄せにするのは謙譲を表す書式上の作法です。

3〜4行目:本文

「この度、一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたします」と書きます。退職理由は自己都合であれば一律に「一身上の都合」で構いません。会社都合や契約期間満了の場合は事実に即した書き方に変えます。ここで書いた理由が後の離職票の離職理由と食い違うと、ハローワークでの確認に時間がかかります。

5行目:日付

本文に書く「令和○年○月○日をもって」は退職日、文末に入れる日付は書類の提出日です。この2つは別物で、混同したまま提出されると受理日の起算が狂います。会社側は受け取った時点で必ず両方を確認します。

6行目:所属・氏名・押印

所属部署と氏名を書き、氏名の下に押印します。2020年以降、行政手続では押印廃止が進みましたが、退職届は社内文書のため会社の運用次第です。押印がなくても意思表示としては有効ですが、本人確認の観点から押印を求める会社が多数派です。

7行目:宛名

宛名は会社の代表者です。「株式会社○○ 代表取締役社長 ○○ ○○ 殿」と、自分の氏名より上の位置に書きます。直属の上司宛てにしてしまうと、届出先として正しくないため差し戻しになります。

封筒の書き方

白無地の二重封筒(郵便番号枠なし)を使い、表面中央に「退職届」、裏面左下に所属部署と氏名を書きます。三つ折りにして、書き出しが封筒の右上にくる向きで入れます。郵送する場合は、この封筒をひとまわり大きい封筒に入れて送ります。

顧問先の総務から「この書き方で合っていますか」と写真が送られてくることは珍しくありません。士業AI の法務AI に条文と社内規程を読ませて確認すれば、その場で根拠つきの回答を返せます。

e-Gov法令データ等の公的情報を参照する法務特化AI のデモです。

退職届の全文例14種(そのままコピーして使えます)

縦書きの退職届を行の順番どおりにテキストで起こしたものです。【 】の中だけ書き換えれば、そのまま使えます。縦書きで清書するときは算用数字を漢数字に直してください。会社側が社内様式として配る場合も、この文面をそのまま流用できます。

1. 一身上の都合による退職(標準・これが基本形)

           退職届

私儀

 このたび、一身上の都合により、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

自己都合の退職であれば、理由は「一身上の都合」だけで足ります。転職先の社名や退職の動機を書く必要はなく、書けば書くほど後の離職理由の判断を複雑にします。

2. 横書き・パソコン入力用(社内様式として配る場合)

退職届

                 2026年9月30日

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】殿

             所属:【営業部】
             氏名:【山田 太郎】 ㊞

 私儀、このたび一身上の都合により、2026年10月31日をもって
退職いたします。

以上

横書きにすると押印欄や受理欄を右上に置きやすく、社内の決裁と相性がよくなります。縦書きでなければ無効ということはありません。

3. 会社都合による退職(退職勧奨・希望退職に応じる場合)

           退職届

私儀

 このたび、貴社の退職勧奨に応じ、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

ここを「一身上の都合」と書いてしまうと、離職証明書の離職理由と食い違います。退職勧奨・希望退職・部門閉鎖など会社側の事情による退職は、その事実を書面に残しておくことが、後の失業給付の給付制限をめぐる争いを防ぎます。会社側は退職届の文言と離職証明書の離職理由を必ず突き合わせてから提出します。

4. 契約期間満了による退職(有期契約を更新せずに終える)

           退職届

私儀

 このたび、労働契約期間満了に伴い、
令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【製造部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

契約期間の満了で終わる場合、そもそも退職届は必須ではありません。契約が期間の到来で終わるだけだからです。それでも書面を残すのは、更新の意思がなかったことを双方で確認しておくためです。会社側が更新しない場合の予告や、更新の期待が生じていたかどうかの判断は別の論点なので、退職届の有無だけで整理しないでください。

5. 定年退職

           退職届

私儀

 このたび、就業規則第【〇〇】条に基づき、
定年により令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【総務部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

定年退職も、退職届がなければ効力が生じないというものではありません。ただし継続雇用を希望するかどうかの意思確認と一体で書面を取る会社が多く、その場合は「定年後の継続雇用を希望する/希望しない」の欄を同じ用紙に設けておくと二度手間になりません。

6. 試用期間中の退職

           退職届

私儀

 このたび、一身上の都合により、
来る令和八年十月十五日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

試用期間中でも労働契約は成立しているため、文面は通常の退職届と変わりません。期間の定めのない契約であれば、民法627条1項により申し入れから2週間で終了します。「試用期間中だから即日で辞められる」「試用期間中は退職届が要らない」という説明は誤りです。

7. パート・アルバイトの退職

           退職届

私儀

 このたび、一身上の都合により、
令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【〇〇店 ホールスタッフ】
         【山田 花子】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

パート・アルバイトでも書き方は正社員と同じです。宛名は店長ではなく会社の代表者にします。シフト制の場合は、退職日と最終シフトの日が別であることを口頭でも確認しておくと、最終月の給与計算で揉めません。

8. 病気・療養のための退職

           退職届

私儀

 このたび、一身上の都合により、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【管理部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

病気を理由に辞める場合も、退職届には「一身上の都合」と書いて構いません。ただし会社側は事情を把握しておく必要があります。傷病手当金は退職後も一定の要件で継続して受けられ、離職理由の判断にも影響するためです。書面を「一身上の都合」で受け取りつつ、面談記録に実際の事情を残すのが実務的な整理です。

9. 家族の介護・育児のための退職

           退職届

私儀

 このたび、家族の介護に専念するため、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【経理部】
         【山田 花子】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

介護や育児が理由の場合は、退職の前に介護休業・育児休業や短時間勤務で続けられないかを会社側から一度提示しておきます。退職届を受け取る前の面談で選択肢を示した記録があるかどうかで、後の評価が変わります。

10. 結婚・配偶者の転勤に伴う退職

           退職届

私儀

 このたび、配偶者の転勤に伴い、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 花子】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

「一身上の都合」でも構いませんが、配偶者の転勤に伴う転居は離職理由の判断に関わることがあります。会社側は退職届の文言をそのまま離職証明書に転記するのではなく、事実関係を確認したうえで区分を選びます。

11. 医療機関・介護施設に勤務する場合(看護師・介護職など)

           退職届

私儀

 このたび、一身上の都合により、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたします。

         令和八年九月三十日

         【〇〇病棟 看護師】
         【山田 花子】 ㊞

医療法人【〇〇会】
理事長 【〇〇 〇〇】 殿

病院・クリニック・介護施設では宛名が「理事長」「院長」「施設長」のいずれになるかが分かれます。正解は法人の代表者です。医療法人なら理事長、個人開業のクリニックなら開設者である院長が宛先になります。所属は病棟名・部署名まで書くと、シフトと引継ぎの確認が早く進みます。

12. 役員の辞任届(いわゆる辞表)

           辞任届

 私は、このたび一身上の都合により、
貴社の取締役を辞任いたします。

         令和八年九月三十日

         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
取締役会 御中

役員は雇用契約ではなく委任の関係なので、退職届ではなく辞任届を出します。労働者としての退職とは手続きがまったく異なり、辞任の効力が生じた後に2週間以内の変更登記が必要になります。従業員兼務役員の場合は、従業員としての退職届と役員としての辞任届の両方が必要になることがあるため、就任の形態を確認してから書面を用意します。

13. 会社指定様式(受理欄つき・会社側で管理する場合)

退職届(社内様式)

受理日:【  年  月  日】 受理者:【     】
決裁:部門長【   】/人事【   】/代表【   】

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】殿

       提出日:【  年  月  日】
       所 属:【         】
       氏 名:【       】 ㊞

 私儀、このたび【一身上の都合】により、
【  年  月  日】をもって退職いたします。

【会社記入欄】
 最終出社日:【  年  月  日】
 有給休暇残日数:【  】日 うち消化【  】日
 貸与品返却:健康保険証/社員証/PC/鍵/制服/その他
 資格喪失届(健保・厚年)提出日:【  年  月  日】
 雇用保険資格喪失届・離職証明書提出日:【  年  月  日】
 源泉徴収票交付日:【  年  月  日】

以上

会社側が用意するならこの形が最も事故が少なくなります。受理日と退職日を別の欄にしている点が要点で、この2つを1つの日付欄で兼ねてしまうと、社会保険・雇用保険の期限の起算を取り違えます。

14. 引継ぎ事項を添える場合(退職届とは別紙にする)

業務引継ぎ書

               【  年  月  日】
所属:【営業部】 氏名:【山田 太郎】

1. 担当顧客と引継ぎ先
 【〇〇株式会社】 → 引継ぎ先:【    】 完了予定:【 / 】
 【△△株式会社】 → 引継ぎ先:【    】 完了予定:【 / 】

2. 進行中の案件と期限
 【        】 期限:【 / 】 状況:【    】

3. 保有データ・アカウント
 共有フォルダ:【   】/メール転送設定:【   】
 外部サービスのID:【   】(管理者へ移管済み:□)

4. 貸与品の返却
 PC/社員証/鍵/制服/健康保険証/名刺 返却日:【 / 】

5. 未消化の有給休暇
 残【  】日 消化予定:【 / 】〜【 / 】

以上

引継ぎの内容を退職届の本文に書き込む必要はありません。退職届は意思表示の書面、引継ぎ書は業務の書面と切り分けるほうが、後から引継ぎの範囲を追記・修正しやすくなります。会社側はこの別紙を受理の際にセットで配ると、最終出社日の確定が早まります。

退職願の書き方と、退職届との使い分け

退職願は「退職させていただけませんか」と会社にお願いする書面です。退職届と書式はほぼ同じで、違いは表題と本文の締め方、そして会社が承諾するまでは効力が確定しないという点にあります。

本文の締め方だけが決定的に違う

退職届が「一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたします」と言い切るのに対し、退職願は「一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」と願い出る形にします。表題を「退職願」、締めを「お願い申し上げます」に揃える。この2点だけ押さえれば書式として成立します。

どちらを出してもらうべきか

会社側から見ると、退職日がまだ確定していない段階では退職願、確定した後は退職届という整理が最も揉めません。引継ぎの都合で退職日を1か月ずらしたい、有休消化の日程を詰めたいといった調整が残っているのに退職届を先に受け取ると、日付を直すたびに書類を出し直すことになります。逆に、話し合いが終わっているのに退職願のままにしておくと、承諾の時期をめぐって「まだ撤回できたはずだ」という主張を招きます。

会社が様式を用意している場合

就業規則に「所定の様式により届け出る」と書いてある会社では、その様式が優先します。ただし所定様式を使わなかったことを理由に退職の意思表示そのものが無効になるわけではありません。様式はあくまで社内の事務処理のためのもので、民法627条1項による解約の申入れは、様式にかかわらず会社に到達した時点で効力を持ちます。

退職願の全文例(退職日を先に決めている場合)

           退職願

私儀

 このたび、一身上の都合により、
来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたしたく、
ここにお願い申し上げます。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

退職願の全文例(退職日をこれから相談する場合)

           退職願

私儀

 このたび、一身上の都合により、
令和八年十月末日をめどに
退職いたしたく、
ここにお願い申し上げます。
 退職日につきましては、
業務の引継ぎを考慮のうえ
ご相談させていただければ幸いです。

         令和八年九月三十日

         【営業部】
         【山田 太郎】 ㊞

株式会社【〇〇】
代表取締役社長 【〇〇 〇〇】 殿

退職日を「めど」と書いておけば、引継ぎの都合で1〜2週間ずらす調整が書面の出し直しなしにできます。会社側は、日付が確定した時点で退職届を出し直してもらうか、面談記録に確定日と承諾者を残すかのどちらかを選びます。

退職願を出した後で退職届に切り替えるとき

退職日が固まったら、退職願を回収して退職届を出し直すのが最もきれいです。回収せずに退職届だけ追加で受け取ると、どちらが有効な意思表示なのか、承諾がいつ成立したのかが後から読めなくなります。回収した退職願は破棄せず、退職届と一緒に保存しておきます。退職届・退職願はいずれも労働基準法109条の「労働関係に関する重要な書類」として保存義務の対象です。

退職届の出し方とタイミング

誰に、いつ渡すか

書面の宛名は代表者ですが、実際に手渡す相手は直属の上司というのが通常の運用です。上司が受け取り、部門長・人事を経て代表者まで上がります。いきなり人事や代表者に直接出すと、上司が把握していない状態で引継ぎの調整が始まり、現場が混乱します。

時期は、就業規則に「1か月前まで」と定めがあればそれに合わせます。民法627条1項の2週間は、就業規則の定めがあっても従業員側からの申し入れであれば2週間で契約が終わるという下限を示したものです。会社側が「就業規則で1か月と決まっているから2週間では辞められない」と説明するのは、条文とかみ合いません。実務では、就業規則の期間でお願いしつつ、2週間で切られた場合に契約を止められるわけではない、という二段構えで運用します。

郵送するときの送り方と送付状

体調不良や遠方などで手渡しできない場合は郵送します。三つ折りにした退職届を白無地の封筒に入れ、それをひとまわり大きい封筒に入れて送ります。送付状を必ず1枚添えます。何を・何通・誰から送ったのかが送付状に書いてあるだけで、受け取った総務が受理簿に記録する手間が減ります。書き方は送付状のテンプレートと例文にまとめています。

到達日を残したい場合は、特定記録郵便やレターパックなど配達記録の残る方法を使います。退職の意思表示は会社に到達した時点で効力を持つため、いつ届いたかが後から確認できる形にしておくと、2週間の起算日でもめません。

メール・PDFで送るときの本文例

メール本文だけで意思表示は成立しますが、後から到達日と本人性を示せるように、PDFを添付して本文でも退職日を明記しておきます。

件名:退職のお願い(営業部 山田太郎)

【〇〇部長】

お世話になっております。営業部の山田太郎です。

このたび一身上の都合により、
2026年10月31日をもって退職いたしたく、
退職届を添付のPDFにてお送りいたします。

原本は【本日/〇月〇日】に郵送(特定記録)いたしますので、
到着までお時間をいただけますと幸いです。

引継ぎにつきましては、
担当顧客と進行中の案件を一覧にまとめております。
ご都合のよいお時間に一度お打ち合わせをお願いできますでしょうか。

お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

--
株式会社〇〇 営業部
山田 太郎
TEL:000-0000-0000

会社が受け取ってくれないときの手順

受け取りを拒まれても、退職の意思表示が会社に到達していれば効力は生じます。順番としては、①直属の上司に手渡す、②人事部に郵送する、③それでも受け取られなければ内容証明郵便で送る、という段階を踏みます。内容証明は「いつ・誰が・どんな内容の書面を送ったか」を郵便局が証明する仕組みで、到達の証拠としてはもっとも強い部類です。

会社側から見れば、受け取りを拒む対応に実務上の利益はありません。拒んでも2週間の経過で契約は終わり、その間に未払賃金や離職理由の争点が増えるだけです。受理日を記録して粛々と手続きに入るのが定石です。

会社側:退職届を受け取った日に確認する3点

ここからが、本人向けのテンプレート記事には載っていない領域です。受け取った側の最初の30分で決まることが3つあります。

受理日と退職日を分けて記録する

受理日は会社が退職届を受け取った日、退職日は雇用契約が終了する日です。社会保険の資格喪失日は退職日の翌日、雇用保険の資格喪失届の起算も「被保険者でなくなった事実があった日の翌日」です。受理日で起算すると期限をまるごと取り違えるため、受理欄のある様式で両方を必ず残します。

撤回を認めるかどうかを決める

「退職願」であれば、会社が承諾の意思表示をするまでは撤回の申し出が出てくる余地があります。一方「退職届」は一方的な解約の通知なので、会社に到達した後の撤回は原則として会社の同意が必要です。実務では、人事権のある決裁者が承諾した日を記録に残しておくかどうかで、後の争いの見通しが大きく変わります。判断が割れる事案では、自己流で回答せず社労士・弁護士に確認する線を引いておくのが安全です。

有給休暇の残日数と最終出社日を確定する

退職日と最終出社日がずれるのが通常です。残っている年次有給休暇を消化する場合、最終出社日の翌日から退職日までが有休期間になります。ここが確定しないと給与計算も社会保険料の控除月数も決まりません。年5日の取得義務の管理まで含めた運用は、年次有給休暇管理簿のテンプレートと年5日チェックの実務で整理しています。

会社側:退職後に出す書類と提出期限の一覧

退職日が決まったら、次の期限が同時に走ります。いずれも条文に根拠のある期限です。

手続き

期限

提出先

根拠

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届

事実発生から5日以内

年金事務所・事務センター

健康保険法施行規則29条1項/厚生年金保険法施行規則22条1項

雇用保険 被保険者資格喪失届

事実のあった日の翌日から起算して10日以内

ハローワーク

雇用保険法施行規則7条1項

雇用保険 被保険者離職証明書

資格喪失届と同時

ハローワーク

雇用保険法施行規則7条1項・3項

源泉徴収票の交付

退職の日以後1か月以内

本人(税務署への提出は所得税法施行規則93条の基準に該当する場合)

所得税法226条1項・2項

賃金・金品の返還

権利者の請求から7日以内

本人

労働基準法23条1項

退職時証明書の交付

請求があれば遅滞なく

本人

労働基準法22条1項

離職証明書は「省略できる場合」がある

雇用保険法施行規則7条3項は、本人が離職票の交付を希望しないときは離職証明書を添えないことができると定めています。ただし離職の日において59歳以上の被保険者は例外で、本人の希望にかかわらず離職証明書が必要です。高年齢雇用継続給付の判定に使うためで、ここを落とすと後から慌てて作り直すことになります。厚生労働省の雇用保険の手続き一覧表でも、提出期限と添付書類が同じ整理で示されています。

離職理由の欄が最大の詰まりどころ

離職証明書で会社が記入する離職理由は、本人の失業給付の給付制限や所定給付日数に直結します。退職届に書かれた「一身上の都合」をそのまま自己都合として処理してよいのか、実質的には退職勧奨だったのではないか、という判断が必要になる場面があります。欄ごとの記入例と離職理由の選び方は、離職票の書き方と離職理由の判断を解説した記事にまとめています。退職届を受け取った総務が次に開くべきなのは、まずこの1本です。

退職証明書と離職票を混同しない

労働基準法22条1項の退職時証明書は会社が本人の請求に応じて交付する私的な証明書で、ハローワークが交付する離職票とは別物です。同条3項は「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」と定めており、頼まれてもいない解雇理由などを書き足すことは禁じられています。書式は在職証明書・退職証明書のテンプレートを使うと早く、転職先や保育園の提出期限にも間に合います。

なお退職届そのものは、労働関係に関する重要な書類として労働基準法109条の保存義務の対象になります。同条は5年間と定めていますが、附則143条1項により当分の間は3年間とされています(e-Gov 法令検索・労働基準法)。

会社側:雇用形態別に見る「いつ辞められるか」

退職届を受け取ったとき、会社側が最初に確認するのは契約に期間の定めがあるかどうかです。ここで根拠条文が変わります。

区分

いつ退職できるか

根拠

期間の定めのない契約(正社員・無期パート)

申し入れから2週間で終了

民法627条1項

有期契約(契約期間の途中)

原則は期間満了まで。やむを得ない事由があれば直ちに解除できる

民法628条

有期契約(1年を超える契約で、初日から1年経過後)

申し出ればいつでも退職できる

労働基準法137条

試用期間中

契約に期間の定めがなければ2週間で終了

民法627条1項

有期契約は「期間の途中」かどうかで分かれる

民法628条は「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」と定めています。契約期間の途中で辞めたいという申し出は、この「やむを得ない事由」に当たるかどうかの判断になります。

もっとも、労働基準法137条が「期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者は……当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる」と定めているため、1年を超える有期契約であれば、1年経過後は申し出るだけで退職できます。期間途中だからといって一律に引き止められるわけではありません。

パート・アルバイトを「人手が足りないから」と引き止められるか

できません。期間の定めがなければ民法627条1項がそのまま適用され、2週間の経過で契約は終わります。シフトが埋まらないという事情は、退職の効力とは無関係です。会社側が取れる現実的な手は、退職日までの引継ぎを具体的に詰めることと、募集を前倒しすることの2つだけです。

就業規則には何を書いておくか(労働基準法89条3号)

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出を義務づけ、その3号で「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を絶対的必要記載事項としています。退職まわりで書いておくべきなのは次の点です。

  • 退職の申し出の時期(「退職しようとする日の30日前までに書面で届け出る」など)と、その提出先
  • 所定の様式があるかどうか(あれば様式名を明記する)
  • 定年の年齢と、定年後の継続雇用の取扱い
  • 休職期間が満了しても復職できない場合の退職の扱い
  • 貸与品の返却と、引継ぎを完了する義務

厚生労働省のモデル就業規則に条文例と解説が載っており、そのまま自社の規定のたたき台に使えます。なお、就業規則で申し出の時期を定めても、それが民法627条1項の2週間を延ばす効力を持つわけではありません。社内の引継ぎのためのルールとして機能させる、という理解にとどめます。

退職届でよくある差し戻しの原因と直し方

総務が書き直しをお願いすることになる典型は、次の7つにほぼ収まります。受理の前にこの表で確認すれば、1往復で済みます。

症状

何が問題か

直し方

宛名が直属の上司になっている

届出先として正しくない

会社の代表者あてに書き直す

日付が1つしかない

退職日と提出日の区別がつかない

本文に退職日、文末に提出日を書く

退職日が土日祝や月初になっている

社会保険料の負担月数が本人の想定とずれる

月末退職か月途中退職かを本人に確認する

表題が「退職願」なのに締めが「退職いたします」

申し入れなのか通知なのかが読めない

表題と締めの文言をそろえる

退職理由が「一身上の都合」なのに実態は退職勧奨

離職証明書の離職理由と食い違う

事実に合わせて書き直すか、面談記録を残す

消えるボールペン・鉛筆で書かれている

後から加筆・消去ができてしまう

黒のボールペンか万年筆で書き直す

修正テープ・二重線で日付が直してある

どちらが本人の意思か争いになる

新しい用紙に書き直してもらう

とくに退職日を月末にするか月末の前日にするかは、本人の手取りに直接影響します。社会保険の資格喪失日は退職日の翌日で、保険料は資格を喪失した月の分は発生しません。10月31日退職なら喪失日は11月1日なので10月分まで保険料がかかり、10月30日退職なら喪失日が10月31日になり10月分は発生しません。ただし退職月の国民健康保険・国民年金の負担が代わりに生じるため、「月末の前日で辞めたほうが得」と単純に案内するのは危険です。会社側は事実関係だけを伝え、有利不利の判断は本人に委ねます。手続きの流れは社会保険手続きの実務で整理しています。

よくある質問(会社側の目線で)

退職届をメールやPDFで受け取ってもよいですか

法律上、退職の意思表示に書面は要求されていないため、メールでも意思表示としては成立します。ただし「本人が出したものか」「いつ会社に到達したか」を後から証明できる形にしておく必要があります。実務では、メール受信後に受理日を記録し、正式な書面を後追いで提出してもらう運用が安全です。

「明日辞めます」と言われたらどうなりますか

民法627条1項により、期間の定めのない雇用では申し入れから2週間で契約は終了します。したがって即日退職を会社が認める義務はなく、2週間は在籍が続くのが原則です。ただし双方が合意すれば即日での退職も可能で、その場合は合意した日付で退職届を出し直してもらいます。

退職届を受理しないという対応はできますか

退職届が一方的な解約の通知である以上、会社が「受け取らない」と言っても2週間の経過で契約は終了します。受け取りを拒む対応は、後に未払賃金や離職理由の争いを招きやすく、実務上の利益がありません。受理日を記録して粛々と手続きに入るのが定石です。

退職金の源泉徴収はいつまでに処理しますか

所得税法226条2項により、退職手当等の源泉徴収票は退職の日以後1か月以内に交付します。退職所得の受給に関する申告書の提出有無で税額計算が大きく変わるため、受理の段階で申告書もセットで渡しておくと差し戻しが減ります。計算方法は退職金の税金の計算方法と控除額の早見表を参照してください。

退職届は手書きでないといけませんか

法律上の決まりはありません。パソコンで作成し印刷したものでも有効です。会社が就業規則や所定様式で手書きを求めている場合はそれに従いますが、手書きを必須にする運用は提出の遅れを招きやすく、会社側にとってもメリットは大きくありません。署名と押印があれば本人性の確認としては足ります。

会社に所定のフォーマットがない場合はどうしますか

白紙のA4に本記事の例文どおり書けば足ります。逆に会社側の立場では、様式を1枚用意しておくだけで受理日・退職日・決裁の記録がそろい、差し戻しが激減します。様式を作るなら、本人記入欄と会社記入欄を分け、受理日と退職日を別の欄にするのが要点です。

退職届に書いた退職日を後から変更できますか

双方が合意すれば変更できます。方法は、元の退職届を回収し、新しい日付で出し直してもらうのが確実です。日付だけを二重線で訂正して訂正印を押す運用もありますが、後から「どちらが本人の意思だったのか」を争われる余地が残ります。回収した書面は破棄せず保存します。

退職代行から連絡が来たらどう対応しますか

まず、本人の退職の意思が確認できるかを整理します。退職届や委任状が本人名義で届いているなら、意思表示としては到達しているものとして扱い、受理日を記録して手続きに入ります。そのうえで、退職日・有休の消化・貸与品の返却・私物の送付といった事務連絡の窓口をどこにするかを書面で確認します。退職金や未払賃金の金額交渉が絡む場合は、相手方が弁護士か、弁護士でない事業者かで対応できる範囲が変わるため、自社で判断せず社労士・弁護士に確認する線を引いておくのが安全です。

懲戒処分を検討している最中に退職届が出てきたら

退職の意思表示が到達していれば、2週間の経過または合意した退職日で契約は終わります。契約が終わった後に懲戒解雇をすることはできません。したがって、懲戒処分をするなら退職の効力が生じる前に手続きを終える必要があります。時間的に間に合わないことも多く、退職金の不支給・減額規定の適用や損害賠償の検討に切り替える判断になります。いずれも就業規則の定めと事実認定が前提なので、自己流で結論を出さず専門家に確認してください。

退職届はいつまで保管すればよいですか

労働基準法109条は「労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」を5年間保存しなければならないと定めています。ただし同法143条1項により、当分の間は3年間とされています。退職届はこの「労働関係に関する重要な書類」に当たるため、少なくとも退職日から3年間は保存します。実務では、離職理由をめぐる照会が数年後に来ることもあるため、5年で運用しておくほうが安全です。

AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない範囲

退職届の文案づくりや、社内規程に照らした記載漏れのチェックは、AIが得意な領域です。一方で期限と法令の数値を生成AIに直接答えさせるのは危険です。「健康保険・厚生年金の資格喪失届は5日以内」「雇用保険の資格喪失届は10日以内」といった数値は条文や省庁のページで一次確認すべきもので、汎用AIは古い制度のまま自信ありげに答えることがあります。

士業AI は、e-Gov 法令データなどの公的情報を参照しながら回答する業務特化型AIです。条文の原文にあたったうえで「この会社の就業規則ではどう運用するか」まで一緒に詰められるため、顧問先の総務からの問い合わせに根拠つきで即答できます。退職まわりの様式は労務書式テンプレートのまとめにも揃えてあり、入社時の雇用契約書のひな形と合わせて一式で管理できます。社労士・事務所スタッフ向けの活用方法は事務所スタッフ向けのページにまとめています。

退職は、本人にとっては人生の節目で、会社にとっては期限が一斉に走り出す業務です。テンプレートで形を整えたうえで、受理日・退職日・撤回の可否という3点を記録に残す。この習慣があるだけで、後から争いになる確率は目に見えて下がります。

参考文献

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