退職届・退職願テンプレート無料6種|書き方と会社側の受理・手続き
退職届は、従業員が「辞めます」と会社に意思表示する書類です。法律上は決まった様式がなく、A4用紙1枚に縦書きで6項目を書けば有効に成立します。むしろ実務で難しいのは、受け取った会社側(総務・経理)がその日から動き出す手続きのほうです。退職届の受理日と退職日は別物で、そこを起点に健康保険・厚生年金の資格喪失届は5日以内、雇用保険の資格喪失届は10日以内と、期限が一斉に走り始めます。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 退職届・退職願・辞表の違いと、どれを出してもらうべきか
- そのまま使える退職届/退職願のテンプレート6種と、項目別の書き方
- 受け取った会社側が当日に確認すべき3点(受理日・退職日・撤回の可否)
- 退職後に会社が出す書類と提出期限の一覧(条文の根拠つき)
- 顧問先の総務から相談されたときに、社労士・事務所スタッフが即答するための整理
退職届・退職願・辞表の違い
3つは似た書類ですが、法律上の意味がまったく違います。呼び方を間違えたまま受け取ると、後から「撤回したい」と言われたときに会社側の対応が変わってしまいます。
書類 | 法的な性質 | 締めの文言 | 撤回のしやすさ |
|---|---|---|---|
退職願 | 合意による退職の「申し入れ(お願い)」 | 〜退職いたしたく、お願い申し上げます | 会社が承諾するまでは撤回の余地がある |
退職届 | 退職の意思の「一方的な通知」 | 〜退職いたします | 会社に届いた後は原則として撤回できない |
辞表 | 役員・公務員が職を辞するときの書面 | 〜辞任いたします | 一般の従業員は使わない |
民法627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています(e-Gov 法令検索・民法)。期間の定めのない正社員であれば、申し入れから2週間で雇用契約は終わります。
ここで実務が誤りやすいのが月給制の扱いです。同条2項は「期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる」と、主語を使用者に限定しています。つまり月給制であっても、従業員側からの退職は2週間で成立すると読むのが条文どおりです。「月給制だから月末1か月前でないと辞められない」という説明は、現行条文とかみ合いません。
一方で就業規則に「退職の1か月前までに申し出ること」と書いてある会社は多く、これは業務引継ぎのための社内ルールとして有効に機能します。実務では「就業規則の期間でお願いしつつ、従業員が2週間で切ってきた場合に契約を止められるわけではない」という二段構えで理解しておくと、現場で説明がぶれません。
退職届テンプレート無料6種(Word・PDF・Excel)
士業AI に無料登録すると、以下の6種を Word・PDF・Excel の3形式で一括ダウンロードできます。会社が様式を用意していない中小企業では、総務が「これを使ってください」と渡せる1枚があるだけで差し戻しが激減します。
No. | テンプレート | 形式 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
1 | 退職届(縦書き・手書き用) | Word / PDF | 最も一般的。印刷して手書きにも対応 |
2 | 退職届(横書き・PC入力用) | Word | 社内様式として配布する場合 |
3 | 退職願(縦書き) | Word / PDF | 合意退職を前提に相談する場合 |
4 | 退職届(会社指定様式・受理欄つき) | Word / Excel | 受理日・退職日・決裁欄を会社側で管理 |
5 | 退職手続きチェックリスト | Excel | 返却物・貸与品・手続期限を1枚で管理 |
6 | 退職届の受理〜手続き進行表 | Excel | 資格喪失届・離職票・源泉徴収票の期限を自動表示 |
No.4〜6 は、本人向けのテンプレート集ではまず見かけない会社側の管理用です。退職届は「受け取って終わり」ではなく、そこから社会保険・雇用保険・税の3方向に手続きが分岐するため、受理欄と期限欄を最初から持たせておくほうが事故が減ります。
退職届の書き方(項目別)
退職届に法定様式はありません。白紙のA4またはB5に、縦書きで次の順に書けば足ります。手書き・PC入力のどちらでも法的な効力は変わりませんが、会社が手書きを求めている場合はそれに従います。
1行目:表題
冒頭中央に「退職届」と書きます。退職願にするか退職届にするかは、前述の性質の違いで選びます。会社と退職日をすり合わせ済みなら「退職届」、これから相談するなら「退職願」が自然です。
2行目:私儀(わたくしぎ)
行の下部に「私儀」または「私事」と書きます。「私事で恐縮ですが」という前置きを一語に縮めた慣用表現で、下寄せにするのは謙譲を表す書式上の作法です。
3〜4行目:本文
「この度、一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたします」と書きます。退職理由は自己都合であれば一律に「一身上の都合」で構いません。会社都合や契約期間満了の場合は事実に即した書き方に変えます。ここで書いた理由が後の離職票の離職理由と食い違うと、ハローワークでの確認に時間がかかります。
5行目:日付
本文に書く「令和○年○月○日をもって」は退職日、文末に入れる日付は書類の提出日です。この2つは別物で、混同したまま提出されると受理日の起算が狂います。会社側は受け取った時点で必ず両方を確認します。
6行目:所属・氏名・押印
所属部署と氏名を書き、氏名の下に押印します。2020年以降、行政手続では押印廃止が進みましたが、退職届は社内文書のため会社の運用次第です。押印がなくても意思表示としては有効ですが、本人確認の観点から押印を求める会社が多数派です。
7行目:宛名
宛名は会社の代表者です。「株式会社○○ 代表取締役社長 ○○ ○○ 殿」と、自分の氏名より上の位置に書きます。直属の上司宛てにしてしまうと、届出先として正しくないため差し戻しになります。
封筒の書き方
白無地の二重封筒(郵便番号枠なし)を使い、表面中央に「退職届」、裏面左下に所属部署と氏名を書きます。三つ折りにして、書き出しが封筒の右上にくる向きで入れます。郵送する場合は、この封筒をひとまわり大きい封筒に入れて送ります。
顧問先の総務から「この書き方で合っていますか」と写真が送られてくることは珍しくありません。士業AI の法務AI に条文と社内規程を読ませて確認すれば、その場で根拠つきの回答を返せます。
退職願の書き方と、退職届との使い分け
退職願は「退職させていただけませんか」と会社にお願いする書面です。退職届と書式はほぼ同じで、違いは表題と本文の締め方、そして会社が承諾するまでは効力が確定しないという点にあります。
本文の締め方だけが決定的に違う
退職届が「一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたします」と言い切るのに対し、退職願は「一身上の都合により、来る令和8年10月31日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」と願い出る形にします。表題を「退職願」、締めを「お願い申し上げます」に揃える。この2点だけ押さえれば書式として成立します。
どちらを出してもらうべきか
会社側から見ると、退職日がまだ確定していない段階では退職願、確定した後は退職届という整理が最も揉めません。引継ぎの都合で退職日を1か月ずらしたい、有休消化の日程を詰めたいといった調整が残っているのに退職届を先に受け取ると、日付を直すたびに書類を出し直すことになります。逆に、話し合いが終わっているのに退職願のままにしておくと、承諾の時期をめぐって「まだ撤回できたはずだ」という主張を招きます。
会社が様式を用意している場合
就業規則に「所定の様式により届け出る」と書いてある会社では、その様式が優先します。ただし所定様式を使わなかったことを理由に退職の意思表示そのものが無効になるわけではありません。様式はあくまで社内の事務処理のためのもので、民法627条1項による解約の申入れは、様式にかかわらず会社に到達した時点で効力を持ちます。
会社側:退職届を受け取った日に確認する3点
ここからが、本人向けのテンプレート記事には載っていない領域です。受け取った側の最初の30分で決まることが3つあります。
受理日と退職日を分けて記録する
受理日は会社が退職届を受け取った日、退職日は雇用契約が終了する日です。社会保険の資格喪失日は退職日の翌日、雇用保険の資格喪失届の起算も「被保険者でなくなった事実があった日の翌日」です。受理日で起算すると期限をまるごと取り違えるため、受理欄のある様式で両方を必ず残します。
撤回を認めるかどうかを決める
「退職願」であれば、会社が承諾の意思表示をするまでは撤回の申し出が出てくる余地があります。一方「退職届」は一方的な解約の通知なので、会社に到達した後の撤回は原則として会社の同意が必要です。実務では、人事権のある決裁者が承諾した日を記録に残しておくかどうかで、後の争いの見通しが大きく変わります。判断が割れる事案では、自己流で回答せず社労士・弁護士に確認する線を引いておくのが安全です。
有給休暇の残日数と最終出社日を確定する
退職日と最終出社日がずれるのが通常です。残っている年次有給休暇を消化する場合、最終出社日の翌日から退職日までが有休期間になります。ここが確定しないと給与計算も社会保険料の控除月数も決まりません。年5日の取得義務の管理まで含めた運用は、年次有給休暇管理簿のテンプレートと年5日チェックの実務で整理しています。
会社側:退職後に出す書類と提出期限の一覧
退職日が決まったら、次の期限が同時に走ります。いずれも条文に根拠のある期限です。
手続き | 期限 | 提出先 | 根拠 |
|---|---|---|---|
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 | 事実発生から5日以内 | 年金事務所・事務センター | 健康保険法施行規則29条1項/厚生年金保険法施行規則22条1項 |
雇用保険 被保険者資格喪失届 | 事実のあった日の翌日から起算して10日以内 | ハローワーク | 雇用保険法施行規則7条1項 |
雇用保険 被保険者離職証明書 | 資格喪失届と同時 | ハローワーク | 雇用保険法施行規則7条1項・3項 |
源泉徴収票の交付 | 退職の日以後1か月以内 | 本人(税務署への提出は所得税法施行規則93条の基準に該当する場合) | 所得税法226条1項・2項 |
賃金・金品の返還 | 権利者の請求から7日以内 | 本人 | 労働基準法23条1項 |
退職時証明書の交付 | 請求があれば遅滞なく | 本人 | 労働基準法22条1項 |
離職証明書は「省略できる場合」がある
雇用保険法施行規則7条3項は、本人が離職票の交付を希望しないときは離職証明書を添えないことができると定めています。ただし離職の日において59歳以上の被保険者は例外で、本人の希望にかかわらず離職証明書が必要です。高年齢雇用継続給付の判定に使うためで、ここを落とすと後から慌てて作り直すことになります。厚生労働省の雇用保険の手続き一覧表でも、提出期限と添付書類が同じ整理で示されています。
離職理由の欄が最大の詰まりどころ
離職証明書で会社が記入する離職理由は、本人の失業給付の給付制限や所定給付日数に直結します。退職届に書かれた「一身上の都合」をそのまま自己都合として処理してよいのか、実質的には退職勧奨だったのではないか、という判断が必要になる場面があります。欄ごとの記入例と離職理由の選び方は、離職票の書き方と離職理由の判断を解説した記事にまとめています。退職届を受け取った総務が次に開くべきなのは、まずこの1本です。
退職証明書と離職票を混同しない
労働基準法22条1項の退職時証明書は会社が本人の請求に応じて交付する私的な証明書で、ハローワークが交付する離職票とは別物です。同条3項は「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」と定めており、頼まれてもいない解雇理由などを書き足すことは禁じられています。書式は在職証明書・退職証明書のテンプレートを使うと早く、転職先や保育園の提出期限にも間に合います。
なお退職届そのものは、労働関係に関する重要な書類として労働基準法109条の保存義務の対象になります。同条は5年間と定めていますが、附則143条1項により当分の間は3年間とされています(e-Gov 法令検索・労働基準法)。
よくある質問(会社側の目線で)
退職届をメールやPDFで受け取ってもよいですか
法律上、退職の意思表示に書面は要求されていないため、メールでも意思表示としては成立します。ただし「本人が出したものか」「いつ会社に到達したか」を後から証明できる形にしておく必要があります。実務では、メール受信後に受理日を記録し、正式な書面を後追いで提出してもらう運用が安全です。
「明日辞めます」と言われたらどうなりますか
民法627条1項により、期間の定めのない雇用では申し入れから2週間で契約は終了します。したがって即日退職を会社が認める義務はなく、2週間は在籍が続くのが原則です。ただし双方が合意すれば即日での退職も可能で、その場合は合意した日付で退職届を出し直してもらいます。
退職届を受理しないという対応はできますか
退職届が一方的な解約の通知である以上、会社が「受け取らない」と言っても2週間の経過で契約は終了します。受け取りを拒む対応は、後に未払賃金や離職理由の争いを招きやすく、実務上の利益がありません。受理日を記録して粛々と手続きに入るのが定石です。
退職金の源泉徴収はいつまでに処理しますか
所得税法226条2項により、退職手当等の源泉徴収票は退職の日以後1か月以内に交付します。退職所得の受給に関する申告書の提出有無で税額計算が大きく変わるため、受理の段階で申告書もセットで渡しておくと差し戻しが減ります。計算方法は退職金の税金の計算方法と控除額の早見表を参照してください。
AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない範囲
退職届の文案づくりや、社内規程に照らした記載漏れのチェックは、AIが得意な領域です。一方で期限と法令の数値を生成AIに直接答えさせるのは危険です。「健康保険・厚生年金の資格喪失届は5日以内」「雇用保険の資格喪失届は10日以内」といった数値は条文や省庁のページで一次確認すべきもので、汎用AIは古い制度のまま自信ありげに答えることがあります。
士業AI は、e-Gov 法令データなどの公的情報を参照しながら回答する業務特化型AIです。条文の原文にあたったうえで「この会社の就業規則ではどう運用するか」まで一緒に詰められるため、顧問先の総務からの問い合わせに根拠つきで即答できます。退職まわりの様式は労務書式テンプレートのまとめにも揃えてあり、入社時の雇用契約書のひな形と合わせて一式で管理できます。社労士・事務所スタッフ向けの活用方法は事務所スタッフ向けのページにまとめています。
退職は、本人にとっては人生の節目で、会社にとっては期限が一斉に走り出す業務です。テンプレートで形を整えたうえで、受理日・退職日・撤回の可否という3点を記録に残す。この習慣があるだけで、後から争いになる確率は目に見えて下がります。

