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決算対策チェックリスト|中小企業が期末3ヶ月前から打てる手【2026年】

決算対策で打てる手のほとんどは、期末日を過ぎた瞬間に選択肢から消えます。逆に言えば、期末3ヶ月前に着地利益を予測して逆算すれば打ち手は一気に増えます。本記事は中小企業の決算対策を3段階に分け、国税庁の通達とタックスアンサーで裏の取れる要件だけを並べたチェックリストです。

この記事でわかること

  • 決算対策・決算書チェック・申告書チェックの役割の違い
  • 3段階それぞれで確認すべき項目と根拠通達
  • 決算賞与・棚卸評価損・貸倒損失・有姿除却で要件を外す例
  • 令和8年度改正で少額減価償却資産の基準が変わる点と取得日判定の罠
  • チェックリスト作成をAIに任せてよい範囲と、いけない範囲

決算対策は「決算3ヶ月前」から始まる — まず押さえる3つの前提

前提は3つです。①決算対策は決算書チェック・申告書チェックとは別の作業であること、②期末3ヶ月前から期末後1ヶ月までを逆算で区切ること、③そして最も大事なのが、着地予測がないまま打つ対策は効かないということ。利益の圧縮自体が目的化した対策は、資金の社外流出・借入余力の低下・否認リスクという副作用を招きます。月次の締めが遅い顧問先は月次決算の早期化から着手するほうが近道です。

「決算対策」と「決算書チェック・申告書チェック」は別物

本記事が扱う決算対策は、期末日前に当期の課税所得と納税額に影響する意思決定をする作業です。期末後に試算表と決算書の整合を見るのが決算書チェック(決算書チェックリストの作り方)、その後に別表や税額計算を見るのが申告書チェック(ChatGPT申告書チェック術)です。本記事は決算を迎える前、他の2本は決算後・申告時と役割が分かれます。

期末3ヶ月前/1ヶ月前/期末日/期末後1ヶ月の逆算カレンダー

3月決算法人なら次の時間割です。

時期

主なテーマ

3月決算の目安

期末3ヶ月前

着地利益・納税額の予測、資金繰り

1月

期末1ヶ月前

決算賞与の通知、設備投資、短期前払費用

2月

期末日まで

棚卸評価損、貸倒損失、除却の洗い出し

3月31日

期末後1ヶ月

決算賞与の支払い

4月30日

期末後1ヶ月にも対策が残ります。決算賞与は通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内の支払いが要件です。

【期末3ヶ月前】着地予測と納税資金を固めるチェックリスト

着地利益・納税額の予測を作る手順

月次実績に残り期間の見込みを乗せ、決算整理を加えて税引前利益を出し、別表四の加算・減算を見込んで課税所得に直します。項目は法人税 別表四の加算・減算一覧を横に置くと漏れが減ります。

国税庁No.5759によれば、資本金1億円以下の普通法人等は年800万円以下の所得部分が15%(令和7年4月1日以後開始事業年度で所得が年10億円超の事業年度は17%)、年800万円超の部分が23.2%です。所得800万円を境に限界税率が変わるため、着地がこの前後の顧問先ほど費用対効果の説明が効きます。赤字着地なら青色申告法人の欠損金の繰戻し還付(No.5763)が選択肢です。

納税資金と資金繰りのすり合わせ

予測ができたら納税額と支払時期を資金繰り表に載せます。決算対策の多くは現金支出を伴い「税額は減ったが納税資金が足りない」という事故が起きやすいところです(資金繰り表の作り方とAI活用)。提案書には金額のインパクトだけでなく要件と否認リスクを併記すると、後の説明が楽になります(節税提案書の作り方)。

【期末1ヶ月前】損金にできるものを漏らさないチェックリスト

決算賞与 — 3つの要件を1つでも外すと当期の損金にならない

未払計上した決算賞与を当期の損金にするには、国税庁タックスアンサーNo.5350のとおり次の3つをすべて満たす必要があります。

  1. 支給額を、各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
  2. 通知した金額を、通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全員へ支払っていること
  3. その支給額につき、通知日の属する事業年度において損金経理をしていること

最も外れやすいのは1です。同タックスアンサーは「支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知」は通知に該当しないと明記します。支給日在籍要件が賞与規程にあると未払計上が認められないリスクが高いため、提案前に規程の文言を必ず確認してください。

少額減価償却資産と設備投資 — 「取得日」で基準が変わる

国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」によれば、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産は、少額減価償却資産の特例の取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も3年延長。常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象から除外されます(改正前は500人超が対象外)。合計額は引き続き年300万円が上限です。

落とし穴は判定単位です。同資料では「取得等をする日で、取得価額基準及び対象法人について判定」とされ、事業年度単位ではありません。令和8年3月31日までに取得した資産は30万円未満基準・従業員500人超が対象外、令和8年4月1日以後に取得した資産は40万円未満基準・従業員400人超が対象外です。3月決算法人なら事業年度の切れ目と一致しますが、たとえば9月決算法人や12月決算法人は同一事業年度内に2つの基準が混在します。決算期が3月でない顧問先ほど注意が要るので、固定資産台帳を取得日で並べ替えて仕分けてください。

設備投資の制度も同方向で、中小企業経営強化税制は工具・器具備品の取得価額要件が40万円以上に、中小企業投資促進税制も財務省「令和8年度税制改正の大綱」で工具の要件を40万円以上とする旨が示されました。

短期前払費用・消耗品

家賃や保険料を年払いにする短期前払費用は法人税基本通達2-2-14が根拠で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用を、支払日の属する事業年度の損金に継続して算入している場合に認められます。当期だけ適用して翌期にやめるやり方は継続適用を外すため否認リスクが高くなります。借入金を預金等に運用する場合の支払利子のように収益と対応させる必要があるものには適用がありません。

消耗品は期末に大量発注しただけでは足りず、期末時点で未検収・未使用のものを損金にするのは典型的な否認パターンです。交際費も、1人あたり10,000円以下の飲食費を交際費等から除くには所定の書類の保存が要件です。

【期末日まで】資産に埋もれた含み損を洗い出すチェックリスト

棚卸資産の評価損 — 認められる事実/認められない事実

評価損は支出を伴わない手段ですが、要件は厳格です。法人税基本通達9-1-4〜9-1-6を対比すると線引きが見えます。

認められる事実

認められない事実

季節商品の売れ残りで、今後通常の価額で販売できないことが既往の実績等に照らし明らかなこと(9-1-4)

単なる物価変動による時価の低下(9-1-6)

著しく異なる新製品の発売により、今後通常の方法により販売できないようになったこと(9-1-4)

過剰生産による時価の低下(9-1-6)

破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法で販売できないこと(9-1-5)

建値の変更等による時価の低下(9-1-6)

9-1-4の陳腐化は「その価額が今後回復しないと認められる状態」が前提です。値下げ販売の実績や滞留期間のわかる在庫データなど、回復しないことを裏づける記録を期末までに揃えます。

貸倒損失 — 3つの類型と証拠

法人税基本通達9-6-1〜9-6-3は貸倒損失を3類型に分けます。

  • 法律上の貸倒れ(9-6-1):更生計画認可・再生計画認可・特別清算の協定認可の決定等による切捨額。債務超過が相当期間続き弁済を受けられない場合の書面による債務免除額も対象。損金経理は不要です。
  • 事実上の貸倒れ(9-6-2):資産状況、支払能力等からみて全額が回収できないことが明らかになった場合に損金経理できます。一部だけの貸倒れは不可。担保物は処分後、保証債務は履行後でなければ対象にできません。
  • 形式上の貸倒れ(9-6-3):対象は売掛債権のみで貸付金等は含みません。取引停止時以後1年以上経過(担保物がある場合を除く)等の場合に、備忘価額を控除した残額を損金経理。

9-6-3の取引の停止は継続的な取引先の資産状況等の悪化による停止をいい、たまたま取引した債務者への売掛債権には適用がありません。単に1年放置しただけの債権は落とせません。

固定資産の除却・有姿除却

現物を廃棄していなくても除却損を計上できるのが有姿除却です。法人税基本通達7-7-2は、解撤・破砕等をしていなくても帳簿価額から処分見込価額を控除した額を除却損にできる対象として、使用を廃止し今後事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産などを挙げます。自社利用ソフトウェアも同様です。

要は「使用を廃止した事実」を証明できるかです。現場写真、設備廃止の稟議書、撤去の記録を期末までに集めます。記録がないと税務調査で真っ先に論点になります(税務調査の想定問答をAIで準備)。

制度を使う対策と、やってはいけない対策の線引き

経営セーフティ共済のような「繰り延べ型」は出口まで設計する

中小機構の経営セーフティ共済は掛金月額5,000円〜20万円を自由に選べ、法人は掛金を損金に算入できます。解約時は掛金を12か月以上納めていれば総額の8割以上、40か月以上で全額が戻ります(12か月未満は掛け捨て)。

ただしこれは節税ではなく繰り延べです。解約手当金は受け取った期の益金になるため、設備投資・役員退職金・赤字が見込まれる期など出口とセットで設計しないと課税の先送りで終わります。さらに令和6年10月1日以降に解約して再加入する場合、解約の日から2年を経過する日までに支出する掛金は損金・必要経費に算入できません。

実態を伴わない決算対策が否認される典型パターン

通達要件から逆算すると、危ないパターンは共通します。

  • 支給日在籍要件があるのに決算賞与を未払計上する
  • 期末時点で未検収・未使用の消耗品を損金にする
  • 単なる時価下落を理由に棚卸資産の評価損を計上する
  • 一部しか回収不能でない債権を貸倒損失に計上する
  • 使用を廃止した事実の記録がないまま有姿除却を計上する
  • 短期前払費用を当期だけ適用し、翌期は通常処理に戻す

いずれも否認リスクが高い類型で、共通するのは事実と記録が要件に追いついていない点です。決算対策は支出を作る作業ではなく、すでに起きている経済的事実を要件に沿って拾い上げる作業だと考えると判断がぶれません。役員給与の期中改定や決算期変更も別途の要件確認が必要です。

このチェックリストをAIで回す手順と、AIに任せてはいけない部分

顧問先ごとのチェックリストをAIに作らせるプロンプト例

確認すべき項目は顧問先の状況で変わります。生成AI(指示を出すと文章を作らせられるAI)に候補を出させると初動が速まります。

あなたは日本の法人税実務に詳しい税理士のアシスタントです。
以下の顧問先について、決算期末までに検討すべき決算対策の候補を洗い出してください。

顧問先名: 【顧問先名】
決算期: 【決算期】(例: 3月31日)
現在の時点: 【今日の日付】
業種: 【業種】
資本金: 【資本金】/従業員数: 【従業員数】
着地見込み: 売上【金額】/税引前利益【金額】
すでに検討済みの対策: 【あれば記載】

出力条件:
1. 「期末3ヶ月前 / 期末1ヶ月前 / 期末日まで / 期末後1ヶ月」の4段階に分類する
2. 各項目に「なぜこの顧問先に該当しそうか」を1行で添える
3. 金額基準・適用期限は書かず、「要確認」とだけ記載する
4. 実態を伴わない対策は候補に含めない

うまくいかない例と直し方:「決算対策を教えて」とだけ聞くと一般論が返り、顧問先に当てはまりません。業種・資本金・従業員数・着地見込みを具体的に与え、出力条件3で金額基準を書かせないのがコツです。次は候補を要件へ落とし込みます。

先ほど出した対策候補について、表形式で整理してください。

対象: 【対策名を列挙】

表の列:
| 対策 | 適用の可否を分ける要件 | 根拠となる法令・通達の番号 | 期末までに必要な行動 | 残すべき証拠書類 | 否認されやすい点 |

出力条件:
1. 根拠が特定できない項目は「根拠未確認」と明記し、推測で条番号を書かない
2. 金額基準・適用期限は「一次ソースで要確認」と記載する
3. 証拠書類は、誰がいつ作成するものかまで具体的に書く

型は税理士のChatGPTプロンプト集にまとめています。顧問先の実名や決算数値を入力してよいかは、規約と守秘義務の整理が前提です(顧問先データはAIに貼ってよいか)。

金額基準・適用期限だけは必ず一次ソースで確認する

金額基準と適用期限はAIに答えさせてはいけません。学習データが古いからだけでなく、一次ソース同士が食い違うことがあるからです。

実例があります。少額減価償却資産の特例について、国税庁タックスアンサーNo.5408は、2026年8月時点で確認した限りでは「30万円未満」「従業員数500人以下」「令和8年3月31日まで」と改正前のままでした。同じ国税庁の改正の概要には40万円未満・400人超除外とあります。

AIがタックスアンサーだけを参照すれば、古い基準で自信ありげに答えます。参照した資料と更新日まで確認する習慣が要ります(税法改正の調べ方をAIで最新化する方法)。

士業AIで「公的情報を参照させる」という選び方

国税庁等の公的情報を参照する税務特化AI のデモです。

士業AIは税務・会計・法務・業務効率化を扱う士業向けAIサービスです。税務AIは申告書チェック、節税アドバイスの下書き、税法調査の補助に特化し、国税庁等の公的情報を参照して回答を作れる点が特徴です。根拠を確認しながら進められるため、古い資料だけで答える状態に気づけます。無料で始められます(クレジットカード不要・メール登録のみ、税理士のためのAI活用完全ガイド)。

決算対策の要諦は、期末3ヶ月前に着地を予測し、1ヶ月前に決算賞与と設備投資の実行時期を決め、期末日までに含み損を要件どおり拾い上げることです。AIは叩き台づくりと要件・証拠の整理で時間を節約してくれますが、金額基準と適用期限の確認、実態に照らした判断は税理士の仕事として残ります。

出典

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