会計×AI

月次決算チェックリスト|締め作業の確認項目一覧とAI検算プロンプト【2026年】

月次決算チェックリストとは|締め作業の抜け漏れを防ぐ確認表

月次決算チェックリストとは、毎月の締め作業で「何を・どの順で・どこまで確認するか」を1枚にまとめた確認表です。現預金から税金まで月次で必ず見る項目を区分ごとに並べ、上から順に潰していきます。担当者が休んでも同じ品質で締められる状態を作るのが目的です。

この記事で分かることは次のとおりです。

  • 月次決算の手順5ステップと日程の目安
  • コピーして使える月次決算チェックリスト(全30項目)
  • 間違いが起きやすい箇所と気づき方
  • 月次と年次の違い
  • 検算・抜け漏れ確認をAIに任せるプロンプト

チェックリストが要る理由

締め作業の抜け漏れは、能力ではなく順番と記憶の問題で起きます。多いのは「先月は届いた請求書が今月は届かず、費用が計上漏れになる」パターンです。項目を固定した表があれば、届いていない事実に気づけます。

1項目に入れる4つの情報

使える表にするには、1行に「区分・確認項目・見るところ・担当」の4つを入れます。大事なのは「見るところ」で、どの資料のどの数字を何と突き合わせるかまで書きます。「残高の妥当性を確認」では人により作業が変わるため、行動の言葉で書き切ります。

月次決算の手順|締めを5つのステップに分けて考える

月次決算のやり方は会社ごとに違いますが、順番はほぼ共通です。集める→入れる→合わせる→整える→見せる、の5段階に分けると、どこで止まっているかが分かります。下表は営業日の目安です。

ステップ

やること

目安(営業日)

1 集める

請求書・領収書・通帳データ・勤怠・在庫表を回収

1〜2日目

2 入れる

仕訳を登録し、未処理の取引をゼロにする

2〜4日目

3 合わせる

残高を外部資料と突合し、差額の理由を説明できる状態に

4〜6日目

4 整える

減価償却・引当・経過勘定など月次の調整を入れる

6〜7日目

5 見せる

試算表を前月・前年同月と比べ、増減の理由を添える

7〜8日目

日程を縮めたい場合は、チェックリストを削るのではなく資料の回収と入力の前倒しから手を付けます。短縮の進め方は月次決算を5営業日に早期化するワークフローで解説しています。

そのまま使える月次決算チェックリスト【全項目一覧】

下の表がこの記事の本体です。区分・確認項目・見るところ・担当・完了の5列で、表計算ソフトに貼り付けて自社用に増減できます。使わない区分は行ごと削除してください。

区分

確認項目

見るところ

担当

完了

現預金

通帳・ネットバンクの月末残高と帳簿の預金残高が1円まで一致しているか

残高証明画面/総勘定元帳

経理担当

現預金

銀行にまだ反映されていない入出金(未達)を一覧にしてあるか

銀行残高調整表

経理担当

現預金

金庫の現金を数え、現金出納帳の残高と合っているか

現金実査メモ/出納帳

経理担当

売上・売掛金

当月に納品・役務提供が終わった案件が全部売上になっているか

受注一覧/納品書控

営業事務

売上・売掛金

翌月納品なのに当月請求した分を、前受金にしているか

請求書控と納品日の対応表

経理担当

売上・売掛金

得意先別の売掛金残高の合計が、総勘定元帳の売掛金と一致しているか

売掛金年齢表/元帳

経理担当

売上・売掛金

入金予定日を過ぎても回収できていない先を営業担当に共有したか

売掛金年齢表(60日超)

経理担当

売上・売掛金

振込手数料や相殺による入金差額を、残高に残していないか

入金明細と請求額の差額

経理担当

仕入・買掛金

当月に受け取った材料・商品が、請求書未着でも仕入計上されているか

入荷記録/検収書

購買担当

仕入・買掛金

仕入先別の買掛金残高の合計が、総勘定元帳の買掛金と一致しているか

仕入先別残高一覧/元帳

経理担当

仕入・買掛金

毎月来るはずの請求書(家賃・通信・外注)が全部届いているか

定期請求書の到着表

経理担当

経費・立替

クレジットカードの当月利用明細が全件仕訳になっているか

カード明細/未払金元帳

経理担当

経費・立替

経費精算が締切までに全員分出ているか(未提出者を名前で確認)

精算申請一覧

経理担当

経費・立替

電子で受け取った領収書・請求書が電子のまま保存されているか

電子取引データの保存先

経理担当

給与・社会保険

給与明細の総支給額の合計と、帳簿の給与手当が一致しているか

支給控除一覧表/元帳

給与担当

給与・社会保険

預り金(源泉所得税・住民税・社会保険)の残高を説明できるか

預り金元帳/納付書

給与担当

給与・社会保険

源泉所得税を翌月10日(納期の特例なら年2回)までに納付したか

納付書控/納付履歴

経理責任者

給与・社会保険

社会保険料の会社負担分が当月分として計上されているか

保険料納入告知額通知書

給与担当

給与・社会保険

入退社があった月の資格取得・喪失と控除額が合っているか

入退社一覧/給与控除欄

給与担当

在庫

月末の在庫数量が、倉庫の実数または在庫システムと合っているか

在庫表/棚卸表

倉庫担当

在庫

在庫の単価が社内ルール(総平均・移動平均等)どおりで計算されているか

在庫評価明細

経理担当

在庫

粗利率が前月から大きく動いていないか、動いた理由を書けるか

試算表の売上総利益率

経理責任者

固定資産

当月に買った10万円以上の物が固定資産台帳に登録されているか

固定資産台帳/請求書

経理担当

固定資産

減価償却費を月割りで計上したか(年1回まとめ計上にしていないか)

減価償却明細/元帳

経理担当

経過勘定

年払いの保険料・年会費などを、当月分だけ費用にしているか

前払費用の月次配分表

経理担当

経過勘定

翌月払いの外注費・水道光熱費を未払費用として当月に入れているか

未払費用元帳

経理担当

経過勘定

賞与を支給月にまとめず、毎月ならして計上しているか

賞与引当の月次計上額

経理責任者

税金

消費税の課税・非課税・不課税・軽減8%の区分が請求書どおりか

税区分別の集計表

経理担当

税金

仕入税額控除をとる取引に、登録番号のある請求書等が揃っているか

証憑ファイル/登録番号一覧

経理担当

その他

前月と比べて大きく動いた科目に、説明のコメントを付けたか

前月比較試算表

経理責任者

表の使い方

自社の科目に合わせて行を足し引きし、担当欄に実名を入れます。「完了」欄は毎月コピーして日付を入れ、誰がいつ確認したかを残します。効果が出やすいのは、チェックが付かなかった行に理由を書かせる運用です。同じ理由が3か月続けば業務フロー側の問題です。

区分別の見るポイント|間違いが起きやすい箇所

ここからは事故が起きやすい区分を「よくある事故→どう気づくか」で掘り下げます。

現預金|合っているように見えて合っていない

よくあるのは、月末に振り込んだのに相手に届くのが翌営業日で、帳簿だけ減っている状態です。気づき方は、差額を1件ずつ拾い翌月頭の入出金と結び付けて説明できるか見ること。差額を「調整」の1仕訳で埋めてはいけません。

売掛金|入金額のわずかなズレが積もる

先方が差し引いた振込手数料の数百円が残り続け、半年後に得意先別残高が読めなくなる形です。気づき方は、売掛金年齢表で「残高1万円未満のまま60日以上残る行」を抽出すること。金額が小さいほど放置されるので、滞留日数で拾います。

給与・社会保険|預り金が説明できなくなる

源泉所得税の預り金が、納付額とわずかにずれたまま毎月繰り越されるケースです。気づき方は、預り金の月末残高と翌月の納付書の金額を並べること。給与から預かった源泉所得税は原則として翌月10日までに納めるため(納期の特例なら年2回)、残高は翌月納付分と一致するはずです。詳細は国税庁のNo.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例で確認できます。

在庫|数は合っているが金額が合わない

数量は倉庫と一致しているのに単価の取り方が月ごとに違い、粗利率だけ跳ねる事故です。気づき方は売上総利益率を12か月並べて見ること。1〜2ポイントを超えて動いた月は理由を書き残します。

経過勘定・税金|月次だけ見ていると気づけない

年払いの費用を支払月に全額計上すると、その月だけ利益が沈みます。気づき方は、年1回しか発生しない支払(保険料・年会費・システム更新料)の一覧を先に作り、毎月12分の1ずつ落ちているか確認することです。消費税の区分は国税庁の特集 インボイス制度No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項が拠りどころです。科目の判断で迷う場合は勘定科目の判定基準も参照してください。

月次と年次でチェックリストはどう違う?

「年次のチェックリストがあるから月次はいらない」と考えると月次が形だけになります。見る対象も深さも違うため、表は分けて持つのが実務的です。

比べる観点

月次決算チェックリスト

年次決算チェックリスト

主な目的

今月の数字を早く正しく経営に見せる

申告・開示に耐える確定値を作る

深さ

残高が合うか、計上漏れがないか

評価・見積り・注記まで含めた妥当性

棚卸

在庫表やシステム数値で代用

実地棚卸の結果で確定

引当・評価

賞与など見込みで月割り計上

貸倒引当金・減損を根拠資料つきで計上

税金

消費税の区分、源泉の納付

法人税等の計算、税効果、申告書との整合

証憑

当月分が揃っているか

保存期間・保存方法まで確認

頻度

毎月(同じ表を12回回す)

年1回(項目数は月次の2〜3倍)

年次の貸借対照表・損益計算書・注記の整合確認は項目が別物になるため、決算書チェックリストの作り方で扱っています。期末に切る仕訳は決算整理仕訳の一覧と手順を参照してください。帳簿書類の保存期間は国税庁のNo.5930 帳簿書類等の保存期間、電子で受け取った取引データの扱いは電子帳簿保存法関係にまとまっています。

チェックリストをAIに回させる|検算・抜け漏れ確認のプロンプト

チェックリストは作った後が本番です。ここでは表を回すための検算・抜け漏れ確認のプロンプトを4つ紹介します。AIに最終判断はさせず、人が見るべき行を絞る道具として使うのが安全です。【 】は自社の情報に置き換えてください。

1. 残高の突合結果を検算させる

以下の残高を突合し、差額のある科目だけを表で出してください。
【帳簿】普通預金A 4,182,530円/現金 52,310円
【外部資料】通帳A 4,205,530円/金庫実査 52,310円
出力:科目|帳簿|外部資料|差額|考えられる原因(3つまで)
差額0円の科目は出さない。金額を推測で作らない。

うまくいかない例と直し方:差額のない科目まで並べて表が長くなることがあります。「差額0円の科目は出さない」に加えて「差額の大きい順に並べる」を足すと、見るべき行だけが上に来ます。

2. チェックリストの抜け漏れを指摘させる

次のチェックリストに、【業種】として不足している確認項目を足してください。
【業種】受託開発のソフトウェア会社(社員30名・在庫なし・外注費が多い)
【現在のチェックリスト】(自社の項目を貼り付け)
条件:追加分だけを「区分|確認項目|見るところ」の3列で10項目以内。
既存項目の言い換えは出さない。この業種で実際に漏れやすいものに絞る。

うまくいかない例と直し方:「内部統制を整備する」のような抽象論が返ることがあります。「見るところ(どの資料の、どの数字を、何と突き合わせるか)を必ず書く」と足すと、行動の言葉に落ちます。

3. 前月比の異常値を洗い出させる

試算表を前月と比較し、確認が必要な科目を挙げてください。
【顧問先名】株式会社◯◯
【当月】(科目と金額) 【前月】(科目と金額)
抽出条件:増減率20%以上、または増減額50万円以上
出力:科目|前月|当月|増減額|増減率|担当者に聞くべき質問(1つ)
原因は断定しない。判断できない科目は「要確認」とだけ書く。

うまくいかない例と直し方:「季節要因と考えられます」と原因を断定してくることがあります。事実確認はAIにできないため、「原因を断定しない」の一文を必ず入れます。

4. チェック結果を引き継ぎメモにまとめさせる

下のチェック結果を、翌月の担当者向けの引き継ぎメモにしてください。
【対象月】2026年8月 【未完了の項目と理由】(貼り付け)
条件:「翌月やること」を優先度順に5件以内・体言止め。各行に期限
(何営業日目までか)を入れる。入力した数字以外は書かない。

うまくいかない例と直し方:丁寧すぎる長文になりがちです。「5件以内」「体言止め」と量と形を先に決めるのが効きます。幅広い経理業務の例は経理のChatGPTプロンプト集、月次決算に特化した例は月次決算のChatGPTプロンプト集にまとめています。

こうした作業をまとめて任せたい場合は、経理担当者・会計事務所スタッフ向けのAIのページで使い方を確認できます。

ASBJ等の公的情報を参照する会計特化AI のデモです。

士業AIは経理・税務の実務を前提に作られたAIアシスタントです。検算や異常値の抽出など、判断は人が持ったまま作業だけを速くする用途に向いています。

よくある質問

月次決算チェックリストは何項目くらいが適切ですか

30〜40項目が目安です。10項目では抜けが防げず、60項目を超えると形骸化します。本記事の30項目から始め、3か月で一度も引っかからなかった項目を四半期チェックに移すと適正量に収まります。

会計ソフトの自動チェック機能があれば表は不要ですか

不要にはなりません。ソフトが見るのは登録済みデータの整合性で、「そもそも登録されていない取引」は検知できません。請求書未着の仕入や未提出の経費精算など、外部と突き合わせる項目は人の表に残します。

月次決算はいつまでに終わらせるべきですか

法律上の期限はなく、経営判断に間に合うかどうかが基準です。実務では翌月10営業日以内に終える会社が多く、5営業日を目標に置く会社もあります。まず現状日数を測り、2営業日ずつ縮めるのが現実的です。

まとめ

月次決算チェックリストは、締め作業を属人化させないための最小の道具です。5列で作り、「見るところ」を行動の言葉で書き切ることが品質を決めます。本記事の30項目を土台に、自社の科目と担当者名を入れて使ってください。

運用が回り始めたら、チェックが付かなかった理由を毎月記録し、3か月同じ理由が続く項目から業務フローを見直します。検算と異常値の抽出はAIに任せ、判断は人が持つ。この線引きを守れば、締めの速さと正確さは両立できます。

参考文献

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