相続税はいくらからかかる?基礎控除の計算と申告要否の判断【2026年】
「相続税はいくらからかかるのか」の答えは、金額そのものではなく基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかで決まります。遺産の合計がこの金額以下なら、原則として申告も納税も要りません。逆に1円でも超えれば、申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
この記事で分かること。
- 基礎控除額の出し方と、法定相続人の数え方でつまずきやすい3点
- 「遺産の合計」に何を入れて、何を引くのか(生命保険金・債務・葬式費用・生前贈与)
- 超えた場合にいくら払うのか(速算表と計算例)
- 税額がゼロでも申告が必要になるケースと、その見分け方
- 二次相続まで視野に入れたときの「いくらから」の変わり方
数字と根拠はすべて国税庁の公表情報に当たって確認しています。制度は改正されるため、実際の判断は必ず最新の一次情報と専門家の確認を挟んでください。
相続税はいくらからかかる?答えは「基礎控除を超えたら」
基礎控除額の計算式は 3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税は、遺産の総額(正味の遺産額)から基礎控除額を引いた残り、つまり課税遺産総額に対してかかります。基礎控除額の算式は次のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば課税遺産総額はゼロになり、相続税は発生しません(国税庁 No.4152 相続税の計算)。よく「3,600万円から」と言われるのは、法定相続人が1人のときの基礎控除額が3,600万円になるためで、相続人が増えれば水準も上がります。
法定相続人の数え方でつまずく3つの点
「いくらから」の答えは法定相続人の数で動くため、ここを間違えると結論ごと変わります。実務で確認が必要になりやすいのは次の3点です。
- 相続放棄をした人も数に入れる:基礎控除の計算上は、放棄がなかったものとした場合の相続人の数を使います。民法上は「初めから相続人でなかった」扱いでも、この数え方だけは別と覚えてください。
- 養子は人数制限がある:実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか法定相続人の数に含められません。
- 順位を先に確定させる:配偶者は常に相続人で、あとは第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹の順です(国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分)。子が先に亡くなっていれば孫が代襲相続します。
相続人の確定は戸籍をさかのぼって行う作業で、認知した子や前婚の子が後から判明することも珍しくありません。関係を図で押さえたい場合は法定相続情報一覧図の作り方と法務局への申出を先に読むと、数え違いを防ぎやすくなります。
基礎控除額の早見表
法定相続人の数 | 基礎控除額 | 相続人の例 |
|---|---|---|
1人 | 3,600万円 | 配偶者のみ/子1人のみ |
2人 | 4,200万円 | 配偶者+子1人 |
3人 | 4,800万円 | 配偶者+子2人 |
4人 | 5,400万円 | 配偶者+子3人 |
5人 | 6,000万円 | 配偶者+子4人 |
「遺産がいくらか」を正しく出す
基礎控除額と比べる相手は、預金残高の単純合計ではありません。足すもの・引くものを取り違えると、判定が逆になります。
遺産に含めるもの(みなし相続財産と非課税枠)
預貯金・不動産・有価証券・自動車・貴金属などの本来の相続財産に加えて、死亡保険金や死亡退職金といった「みなし相続財産」も課税対象に入ります。ただし受取人が相続人である死亡保険金には非課税枠があります。
死亡保険金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
この枠を超えた部分だけが課税対象です。相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った保険金には、この非課税の適用はありません(国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金)。保険金があるから即課税、と早合点しないことが大切です。
遺産から差し引けるもの(債務と葬式費用)
借入金や未払金など、亡くなった時点で確実に存在した債務は遺産総額から差し引けます。未払いの医療費や、亡くなった後に納めることになった所得税・住民税も対象です。一方、相続人側の事情で生じた延滞税や加算税は差し引けません(国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務)。
葬式費用も債務ではありませんが、遺産総額から控除できます。通夜・葬儀・火葬・埋葬・納骨の費用、読経料などが該当します。ここで間違えやすいのが、香典返しの費用・墓石や墓地の購入代金・初七日などの法事費用は控除できない点です(国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用)。領収書のない読経料などはメモで記録を残しておくと、後の集計が楽になります。
足し引きの対象を一覧にする作業そのものが負担なら、相続財産目録(遺産目録)の作り方とひな形の手順に沿って先に台帳を作ってしまうほうが早いです。
生前贈与の加算は3年か7年か(2026年時点の答え)
亡くなる前の贈与のうち一定期間内のものは、相続税の課税価格に加算されます。「加算期間が7年に延長された」という説明を目にしますが、これは段階的な移行の途中で、被相続人の相続開始日によって期間が違います。国税庁は次の表を示しています(国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。
被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 |
|---|---|
〜令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
令和13年1月1日〜 | 相続開始前7年以内 |
つまり2026年(令和8年)中に開始した相続なら、加算されるのは今も相続開始前3年以内の贈与です。加算対象期間内であれば、年110万円の基礎控除以下の贈与や、亡くなった年の贈与も加算します。「毎年110万円ずつ渡していたから関係ない」という理解は、この点で危険です。
超えたらいくら払う?税率と計算例
相続税の速算表と計算の3ステップ
相続税は、各人が実際に取得した財産に直接税率を掛けるのではありません。課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して税額を出し、それを合計してから、実際の取得割合で割り振ります(国税庁 No.4155 相続税の税率)。
- 課税価格の合計額 − 基礎控除額 = 課税遺産総額
- 課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人分に速算表を当てて合計する(=相続税の総額)
- 相続税の総額を、実際の取得割合で各人に割り振り、各種の税額控除を差し引く
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | — |
1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算例:遺産1億円・相続人が配偶者と子2人
課税価格の合計額が1億円、相続人が配偶者と子2人のケースで追ってみます。
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 課税遺産総額 = 1億円 − 4,800万円 = 5,200万円
- 法定相続分で按分:配偶者2,600万円、子1,300万円ずつ
- 配偶者分の税額 = 2,600万円 × 15% − 50万円 = 340万円
- 子1人分の税額 = 1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円(2人で290万円)
- 相続税の総額 = 340万円 + 290万円 = 630万円
配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1を取得したとすると、割り振り後は配偶者315万円・子157万5,000円ずつです。ここで配偶者の税額軽減を使えば配偶者の負担はゼロになり、実際に納めるのは子2人分の315万円になります。遺産の分け方によって総額の負担が変わるのが相続税の特徴です。
期限も同時に押さえてください。申告と納税はいずれも、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205 相続税の申告と納税)。相続放棄の3か月、準確定申告の4か月など他の期限とも連動するため、相続手続きの期限一覧と起算点の落とし穴で全体像を先に把握しておくと動きやすくなります。
相続税がかからない場合・申告が不要な場合
申告も納税も不要になる条件
取得した財産の価額の合計額が基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。これが「相続税がかからない場合」の基本形です。税務署から通知が来るわけではないので、自分で判定して記録を残しておくことになります。
税額ゼロでも申告が必要になる代表例
ここが最大の落とし穴です。特例を使った結果として税額がゼロになるケースは、申告をして初めてその特例が使えます。国税庁は、申告要否の判定に用いる財産の価額の合計額について、小規模宅地等の特例や特定計画山林の特例を適用しない場合の課税価格の合計額であると明記しています(No.4205)。
- 小規模宅地等の特例:居住用宅地なら330㎡まで80%、事業用宅地なら400㎡まで80%、貸付事業用なら200㎡まで50%を減額できます(国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例)。この減額前の金額で基礎控除を超えるなら、税額がゼロでも申告が必要です。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円か法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただしこれは申告して適用を受ける制度で、申告期限までに分割されていない財産は対象外です(国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減)。期限内に分割が間に合わないときは「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておく必要があります。
つまり「相続税はかからない」と「申告は不要」は別の話です。土地があって特例を前提にゼロになる家庭ほど、判断を誤ると無申告になりかねません。必要書類の抜け漏れが心配なら相続税申告の添付書類チェックリストで先に確認しておくと安全です。
数字で見る:課税割合10.4%と「税額ゼロ申告」約4万人
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年分の被相続人数(死亡者数)は1,605,378人、そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は166,730人で、課税割合は10.4%でした。前年の9.9%から0.5ポイント上昇しています。
注目したいのは、この166,730人とは別に、相続税額のない申告書に係る被相続人が39,755人いることです(同資料の外書)。特例や税額控除を使って納税額はゼロになったけれども、申告そのものは行った人がこれだけいるという意味です。「かからない=出さなくていい」ではないことが、統計にもはっきり表れています。
二次相続まで見ると「いくらから」は変わる
一次相続で配偶者に寄せすぎると、二次相続で増えることがある
「相続税 いくらから」を考えるとき、一次相続(たとえば父の相続)だけを見て最適化すると、二次相続(続く母の相続)で負担が跳ね上がることがあります。理由は単純で、二次相続では配偶者がいない分だけ法定相続人が1人減り、基礎控除額が600万円下がるうえ、配偶者の税額軽減も使えないからです。
先ほどの例で言えば、配偶者と子2人の一次相続では基礎控除4,800万円ですが、その後の二次相続で相続人が子2人だけになると基礎控除は4,200万円です。さらに、一次相続で配偶者が取得した財産は、そのまま二次相続の課税対象に積み上がります。配偶者の税額軽減で目先の税額をゼロにしても、合計では不利になる場合があるということです。
ただし、どの分け方が有利かは財産の内訳・配偶者自身の資産・小規模宅地等の特例の使い方・二次相続までの期間で変わります。10年以内に続けて相続が起きた場合の相次相続控除のような調整もあり、一律に「配偶者の取り分を減らせば得」とは言い切れません。金額が大きい家庭ほど、分割案を複数作って試算してから遺産分割協議に臨むのが現実的です。分割内容の書き方は遺産分割協議書の書き方と記載例にまとめています。
判断に迷ったときの進め方
まずは国税庁の判定ツール、そのうえで専門家に相談する
国税庁は相続税の申告要否判定コーナーを公開していて、財産の金額などを入力するとおおよその申告要否を判定できます。まずここで当たりを付け、次の条件に1つでも当てはまるなら税理士に相談する、という順番が無駄がありません。
- 不動産があり、小規模宅地等の特例を前提にすると基礎控除以下になりそう
- 非上場株式や事業用資産がある
- 相続人の数や範囲がはっきりしない(前婚の子・養子・代襲相続など)
- 亡くなる前3年以内にまとまった贈与がある
- 二次相続まで含めて分け方を決めたい
近年は生成AIに相続税を質問する人も増えました。制度の全体像をつかんだり、集めた資料を一覧に整理したりする用途では十分に役立ちます。一方で、基礎控除額・税率・期限・特例の要件といった数字そのものをAIの回答だけで確定させるのは避けてください。学習時点の古い制度を答えることがあり、加算対象期間のような移行期のルールは特に間違えやすい領域です。数字は必ず国税庁の該当ページで裏取りする、という運用が安全です。
士業AIは、税務・会計・法務それぞれの実務文書に合わせてチューニングしたAIを提供しています。税務AIは申告書のチェックや資料整理の下ごしらえ、法務AIは相続関係の書類ドラフトといった具合に、用途ごとに使い分けられるのが特徴です。無料登録はメールアドレスだけででき、クレジットカードは不要です。税理士業務での具体的な使いどころは税理士向けの士業AI紹介ページにまとめています。相続税申告の業務フローにAIをどう組み込むかは相続税申告のAI活用と検証手順もあわせてご覧ください。

