法務×AI

法定相続情報一覧図の作り方と申出書の記入例|必要書類・AI下書き【2026年】

法定相続情報一覧図とは、被相続人と戸籍から判明する相続人の関係を1枚にまとめた図で、法務局(登記所)に申出て登記官の認証を受けた「写し」は、相続登記・預金の払戻し・相続税の申告など各種の相続手続で戸籍一式の代わりに使えます。この仕組みが法定相続情報証明制度です。本記事では、司法書士・相続実務者に向けて、法定相続情報一覧図の作り方を記載例・必要書類・法務局への申出手順まで実務目線で整理し、AIで下書きを時短する手順と検証のコツもあわせて解説します。検索の多い「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の記入例は、法務局の様式の欄の順に表で整理しました。

混同されがちな「相続関係説明図」との違いも冒頭で押さえておきます。両者は名前が似ていますが、様式・作成先・用途がまったく異なります。まずは全体像から確認しましょう。

この記事で分かること

  • 法定相続情報一覧図と法定相続情報証明制度の基本(手数料・保管期間・使える手続)
  • 相続関係説明図との違い(別の書類なので混同しないための整理)
  • 一覧図の記載例(続柄・氏名・生年月日など項目ごとの書き方)
  • 「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の欄ごとの書き方と記入例(様式のWORD・PDFの入手先つき)
  • 申出できる法務局(管轄)の選び方と、郵送で申出するときの注意
  • 申出書・一覧図でよくある記入ミスと、差し戻しを防ぐチェック
  • 2024年以降の関連する変更点(法定相続情報番号・戸籍の広域交付)
  • 申出に必要な書類(戸籍・除籍・住民票の除票など)のチェックリスト
  • AIで一覧図・申出書の下書きを時短するプロンプトと、鵜呑みにしないための検証手順

法定相続情報一覧図とは?法定相続情報証明制度の基本

法定相続情報証明制度は、相続手続をより簡単にするために平成29年5月に創設された制度です。相続人が法務局に必要書類と法定相続情報一覧図を提出して申出をすると、登記官が内容を確認し、認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」を交付します。この写し1枚が、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式が示す相続関係を公的に証明してくれます。

従来は、相続登記・預金の払戻し・相続税の申告といった手続のたびに、分厚い戸籍一式を各窓口へ出し直す必要がありました。制度を使えば、戸籍の束の代わりに一覧図の写しを提出できるため、複数の手続を並行して進めやすくなります。

一覧図の写しでできること

法務局は、一覧図の写しを利用できる手続として「相続登記の申請手続のほか、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続など、様々なもの」を挙げています。実務では、相続登記と金融機関の手続を同時並行で進める場面で特に効果を発揮します。ただし提出先ごとに取扱いが異なる場合があるため、利用可否は提出先の機関に確認するのが安全です。

相続登記そのものの進め方は、別記事「相続登記の申請書をAIで作成する実務」で申請書の書き方まで解説しています。相続税の申告で必要になる書類の全体像は「相続税申告の添付書類チェックリスト」もあわせて確認してください。

手数料は無料。5年間保管され再交付も受けられる

一覧図の写しの交付は無料で、必要な通数を受け取れます。作成した一覧図は法務局に5年間(申出日の翌年から起算)保管され、その間であれば再交付を受けられます。手続の途中で写しが足りなくなっても、当初の申出書に「申出人」として記載した人が再交付を申し出られる点は実務上のメリットです(申出人にならなかった他の相続人は再交付を受けられません)。

相続関係説明図との違い(別の書類なので混同しない)

相談現場で最も多い混同が、「法定相続情報一覧図」と「相続関係説明図」を同じものだと思ってしまうケースです。結論から言うと、両者は別の書類です。相続関係説明図は相続人が自分で作成する私的な図で、主に相続登記の際に戸籍原本の還付を受ける目的や、遺産分割協議での関係整理に使います。公的な認証はありません。一方、法定相続情報一覧図は法務局の登記官が認証した公的な証明書で、戸籍一式の代わりに各種手続で使える点が決定的に違います。

比較項目

法定相続情報一覧図

相続関係説明図

作成・交付

相続人(または資格者代理人)が作成し、法務局に申出て登記官が認証した写しの交付を受ける

相続人が自分で作成する(第三者の認証はない)

公的な証明力

あり(登記官の認証)

なし(私的な図)

主な用途

相続登記・預金払戻し・相続税申告・年金など各種手続で戸籍一式の代わりに使える

相続登記での戸籍原本の還付、遺産分割協議のための関係整理

費用

無料・必要な通数を交付・5年間保管され再交付可

費用は不要だが、都度作成する必要がある

使い分けの目安はシンプルです。複数の窓口で戸籍一式の提出を繰り返す見込みがあるなら、法定相続情報一覧図の写しを取得しておくと効率的です。相続関係説明図の作り方や、戸籍の読解をAIで補助する手順は「相続関係説明図をAIで作成する司法書士向けの手順」で詳しく解説しています。両方を状況に応じて使い分けるのが実務です。

法定相続情報一覧図の記載例(続柄・氏名・生年月日の書き方)

一覧図は、被相続人を中心に相続人をつないだ家系図のような形で作成します。記載する項目と書き方を、記載例とあわせて確認しましょう。

一覧図に記載する項目

対象

記載項目

記載例

被相続人

氏名

法務 太郎

被相続人

最後の住所

○○県○○市○○町○丁目○番○号

被相続人

出生年月日

昭和○年○月○日

被相続人

死亡年月日

令和○年○月○日

相続人

氏名

法務 花子

相続人

出生年月日

昭和○年○月○日

相続人

続柄

妻/長男/長女 など

相続人

住所(記載は任意)

○○県○○市○○町○丁目○番○号

被相続人と相続人を線でつなぎ、続柄を添えた一覧図のイメージは次のとおりです。

          (被相続人)
        法務 太郎
    最後の住所 ○○県○○市…
    出生 昭和○年○月○日
    死亡 令和○年○月○日
             │
   ┌─────────┼─────────┐
 (妻)      (長男)      (長女)
 法務 花子   法務 一郎    法務 桜
 出生 …      出生 …       出生 …
 (住所…)    (住所…)     (住所…)

相続人のパターン別の様式

法務局は、相続人の構成に応じた様式と記載例を公開しています。代表的なパターンは次のとおりです。自分のケースに近い記載例を選ぶと、迷わず作成できます。

  • 配偶者及び子が相続人の場合
  • 子のみが相続人の場合
  • 配偶者及び親(直系尊属)が相続人の場合
  • 配偶者及び兄弟姉妹が相続人の場合(半血の兄弟姉妹を含む)
  • 代襲相続(再代襲を含む)がある場合
  • 嫡出でない子・養子を含む場合
  • 旧民法下の相続(家督相続・遺産相続)の場合

続柄の書き方と住所記載の任意ルール

続柄は、原則として戸籍に記載される続柄(「長男」「長女」など)で記載します。ただし申出人の選択により「子」と記載することも可能です。注意したいのは、法務局が「続柄を『子』と記載した場合は、相続税の申告等、これを利用することができない手続がある」と明記している点です(主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例|法務局)。税理士が相続税の申告に使う予定があるなら、戸籍どおりの続柄(長男・長女など)で作っておくのが無難です。

相続人の住所の記載は任意です。住所を記載しておくと、以後の手続で相続人の住民票の写しの提供を省ける場面があります。ただし住所を記載する場合は、後述のとおり各相続人の住民票の写しが必要になります。また、一覧図の写しの交付を受けた後に住所が変わっても、そのことを理由に申出をやり直すことはできません(同ページの注記)。引っ越しの予定がある相続人がいる場合は、記載するかどうかを先に話し合っておきます。

用紙・作成上の注意

一覧図は、法務局が公開する様式・記載例(EXCEL・WORD・PDF)に沿って作成します。用紙はA4サイズ(記載例ではA4縦)を用い、末尾に作成年月日と作成者の住所・氏名を記載します。用紙の下部には登記官の認証文が付されるため、記載例では下から約5cmの範囲には可能な限り記載しないよう求めています。文字はパソコンで入力するか、黒色インク・黒色ボールペン(こすると消えるものは不可)で楷書で書きます。申出人となる相続人の氏名の横には「(申出人)」と併記し、被相続人の最後の住所は住民票の除票(又は戸籍の附票)で確認して書きます。最後の本籍の記載は任意ですが、住民票の除票等が廃棄されていて取れない場合は、最後の住所に代えて最後の本籍を必ず書きます。パソコンでも手書きでも作成できますが、様式や記載上のルールは改定されることがあるため、着手前に最新の記載例を公式ページで確認してください。

相続財産の全体像を並行して整理したい場合は、「相続財産目録(遺産目録)の作り方」のひな形も役立ちます。一覧図が相続「人」の証明であるのに対し、目録は相続「財産」の一覧なので、両輪で準備すると手続がスムーズです。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の書き方(記入例)

一覧図を作成したら、あわせて申出書を作成します。正式名称は「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」(別記第1号様式)です。1枚の様式に、被相続人・申出人・代理人・利用目的・通数・不動産の有無・申出先を順に書き込む構成で、欄の数は多くありません。それでも窓口で補正を求められやすいのは、一覧図や本人確認書類との表記のずれと、選択肢のチェック漏れです。

申出書の様式(WORD・PDF)と記入例のダウンロード先

様式と記入例は、法務局の「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」のページで公開されています。2026年10月時点で確認できたファイルは次のとおりです。古い様式を事務所のフォルダから使い回すと欄の構成が違う場合があるため、案件ごとに公式ページから取り直すのが安全です。

記入例では「黒太枠内の事項を記入」するよう案内されています。書き始める前に、記入する範囲を記入例で確かめておきます。

申出書の欄ごとの書き方と記入例

様式の上から順に、何を書くか・記入例・つまずきやすい点を一覧にしました。記入例の氏名・住所は法務局の記載例にならった架空のものです。

欄

書く内容

記入例

注意点

申出年月日

申出をする日

令和○年○月○日

郵送で申出する場合は、登記所に申出書等が届いた日が申出年月日として扱われる

被相続人の表示

氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日

法務 太郎/○県○市○町○番地/昭和○年○月○日/令和○年○月○日

最後の住所は住民票の除票(取れない場合は戸籍の附票)と一覧図の記載に合わせる。申出書の様式に「最後の本籍」欄はない

申出人の表示

住所・氏名・連絡先・被相続人との続柄

○県○市○町○番地/法務 花子/電話番号/(妻)

窓口で受け取る場合、ここに書いた住所・氏名と同じものが載った本人確認書類が必要

代理人の表示

住所(事務所)・氏名・連絡先・申出人との関係

○県○市○町○番地 ○○司法書士事務所/登記 進/電話番号/☑委任による代理人

代理人が申出するときだけ記入。「法定代理人」か「委任による代理人」かにチェック

利用目的

一覧図の写しを使う手続

☑不動産登記 ☑預貯金の払戻し ☑相続税の申告

「その他」欄に書くときは単に「相続手続」とせず、「株式の相続手続」のように具体的な名称を書く

必要な写しの通数・交付方法

通数と、受取方法(窓口/郵送)

3通(☑郵送)

郵送の場合は返信用の封筒と郵便切手が必要。送付先は申出人(又は代理人)欄の住所(事務所)

被相続人名義の不動産の有無

有・無のチェックと、有の場合は不動産所在事項又は不動産番号

☑有 ○県○市○町○番○の土地

複数ある場合は1つ書けばよい。ただし申出先を「不動産の所在地」で選ぶなら、その登記所の管轄内の不動産を書く

申出先登記所の種別

4つの選択肢のどれで申出先を選んだか

☑被相続人の最後の住所地

本籍地(死亡時の本籍)・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地から1つ

宛先

申出先の登記所名

○○地方法務局○○支局 宛

登記所名を具体的に書く。管轄は法務局ホームページの「管轄のご案内」で調べる

表の下の定型文には、交付を受けた写しを「被相続人の死亡に起因する相続手続及び年金等手続においてのみ使用」すること、申出の日から3か月以内に写しと返却書類を受け取らない場合は廃棄して差し支えないことが書かれています。申出後の受取を忘れないよう、事務所の案件管理で期日を立てておくと安心です。

記入例を1枚で見る(配偶者と子2人のケース)

配偶者の花子さんが申出人となり、司法書士が委任を受けて郵送で申出するケースを、様式の欄の順に書き起こすと次のようになります。実際の書面では、該当する選択肢の☐にチェックを入れます。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
申出年月日 令和○年○月○日
【被相続人の表示】
 氏名   法務 太郎
 最後の住所 ○県○市○町○番地
 生年月日 昭和○年○月○日  死亡年月日 令和○年○月○日
【申出人の表示】
 住所 ○県○市○町○番地  氏名 法務 花子
 連絡先 ○○○-○○○-○○○○  被相続人との続柄(妻)
【代理人の表示】
 住所(事務所)○県○市○町○番地 ○○司法書士事務所
 氏名 登記 進  連絡先 ○○○-○○○-○○○○
 申出人との関係 ☑委任による代理人
【利用目的】☑不動産登記 ☑預貯金の払戻し ☑相続税の申告
【必要な写しの通数・交付方法】3通(☑郵送)
【被相続人名義の不動産の有無】☑有
 ○県○市○町○番○の土地
【申出先登記所の種別】☑被相続人名義の不動産の所在地
○○地方法務局○○支局 宛

この例では申出先を「不動産の所在地」で選んでいるため、不動産欄にはその登記所の管轄内にある土地を書いています。写しの通数は、相続登記・金融機関・相続税申告など同時に出す先の数を数えて決めます。後から足りなくなっても再交付は受けられますが、再交付の申出は当初の申出をした登記所で受け付けると案内されています。

委任状と代理人になれる人の範囲

委任による代理人が申出をする場合は、委任状を添付します。法務局は委任状の様式と記載例も公開しており、記載例では「法定相続情報一覧図を作成すること」「申出をすること(交付通数)」「写しと返却される添付書面を受領すること」とそれらに必要な一切の権限を委任する形になっています(委任状の様式・記載例|法務局)。

委任による代理人になれるのは、申出人の親族か、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士の資格者に限られます。知人や、資格者でない事務所の担当者個人を代理人にすることはできません。登記や相続業務の委任状全般の書き分けは「委任状の書き方(登記・相続・許認可の類型別記載例)」で整理しています。

申出をする法務局(管轄)の選び方

申出は、どこの法務局でもできるわけではなく、次のいずれかを管轄する法務局(登記所)に対して行います。都合のよい窓口を選べる点は実務上ありがたいポイントです。

  • 被相続人の本籍地(死亡時の本籍)
  • 被相続人の最後の住所地
  • 申出人の住所地
  • 被相続人名義の不動産の所在地

申出や一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却を含む)は、窓口へ出向くほか、郵送によることも可能です。郵送の場合は返信用封筒と切手を同封します。郵送で申出すると、申出年月日は登記所に書類が届いた日として扱われます。窓口で受け取る場合は、申出書の「申出人の表示」欄と同じ住所・氏名が載った公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票の写し等)を持参します。

申出に必要な書類(戸籍・除籍・住民票の除票など)

申出には、相続関係を裏づける書類一式が必要です。戸籍の収集がボトルネックになりやすいため、早めに着手しましょう。

必ず用意する書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本(相続関係を確定するための連続した戸籍)
  • 被相続人の住民票の除票(最後の住所を確認するため)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄抄本(被相続人の死亡後も相続人が生存していることの確認。被相続人が死亡した日以後の証明日のものが必要)
  • 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証の表裏両面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写しなど。コピーには原本と相違ない旨を記載し、申出人(又は代理人)が記名する)

必要となる場合がある書類

  • 一覧図に相続人の住所を記載する場合は、各相続人の住民票の写し
  • 委任による代理人が申出をする場合は、委任状
  • 委任による代理人が親族の場合は、申出人と代理人が親族関係にあることが分かる戸籍謄本
  • 委任による代理人が資格者代理人の場合は、資格者代理人であることが確認できる身分証明書の写しなど(各資格者の団体が定めるもの)

添付書類の一覧表(取得先と返却の有無)

法務局の「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」と「よくあるご質問」をもとに、取得先と返却の有無を1枚にまとめました。番号は公式の一覧に合わせています。

書類

要否

取得先

注意点

返却

①被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本

必ず

被相続人の本籍地の市区町村

兄弟姉妹が相続人になる場合などは、親などの戸除籍謄本も追加で必要になることがある

返却される

②被相続人の住民票の除票

必ず

最後の住所地の市区町村

廃棄されて取れない場合は、被相続人の戸籍の附票で代える

返却される

③相続人全員の戸籍謄抄本

必ず

各相続人の本籍地の市区町村

被相続人の死亡日以後の証明日のもの

返却される

④申出人の本人確認書類

必ず

―

運転免許証の表裏両面のコピー等。原本と相違ない旨と記名

返却されない

⑤各相続人の住民票の写し

一覧図に住所を書く場合

各相続人の住所地の市区町村

印鑑証明書や戸籍の附票でも代用できる

返却される

⑥委任状など

委任による代理人が申出する場合

―

親族が代理するなら親族関係の分かる戸籍謄本、資格者なら資格者団体所定の身分証明書の写し等

原則返却されない(コピーを併せて出せば原本は返却)

同じ申出人が同じ登記所に同時に2件以上の申出をする場合、各申出に共通する書類は1通の提出で足りるとされています。手数料は無料ですが、戸籍謄本の取得手数料と郵送料は別にかかります。本人確認書類として住民票の写しを出し、原本を手元に残したいときは、原本とコピー(原本と相違ない旨を記載し記名したもの)を一緒に提出します。

戸籍の束から連続性を追う作業は、相続実務のなかでも神経を使う工程です。取り寄せた戸籍・除籍の内容を素早く整理する下準備には、後述するAIの下書き支援が役立ちます。

資格者代理人が申出を代理できる

申出は相続人本人だけでなく、法定代理人のほか、委任による代理人(民法上の親族、または資格者代理人)が行えます。資格者代理人になれるのは、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士です。司法書士・行政書士が相続業務の一環として申出を代理するのは、この制度の典型的な活用場面です。

申出書・一覧図でよくある記入ミスと差し戻しを防ぐチェック

法務局は、必要書類が不足していたり一覧図に誤りがあったりして、登記官が補正を求めても直されない場合は、預かった書類一切を申出人に返戻するとしています。返戻に応じない場合は、申出日から3か月を過ぎると書類が廃棄されます(法定相続情報証明制度の具体的な手続について|法務局)。補正のやり取りは郵送だと日数がかかるため、提出前に潰しておきたいミスを公式の記入例・注意書きから拾いました。

申出書・一覧図・添付書類で多いミス

よくあるミス

なぜ問題か

防ぎ方

利用目的の「その他」に「相続手続」とだけ書く

具体的な手続名が求められている

「株式の相続手続」のように手続の名称を書く

申出先を「不動産の所在地」で選んだのに、不動産欄に管轄外の物件を書いた

記入例で、管轄内の不動産を書くよう求めている

不動産欄の物件と申出先の登記所の管轄を突き合わせる

窓口受取で、本人確認書類の住所が申出書と違う

受取人の確認ができない

申出人欄は本人確認書類の表記どおりに書く。転居直後は特に確認

郵送申出で返信用封筒・切手を入れ忘れる

写しと戸籍の返送ができない

送付先は申出人(又は代理人)欄の住所になる点も含め、封入前に確認

続柄を「子」で作り、相続税の申告に使えなかった

「子」表記では使えない手続があると法務局が注意している

相続税申告に使う案件は戸籍どおりの続柄で作る

相続放棄した人を一覧図から外した

一覧図は戸籍に基づく法定相続人を示すもので、放棄や遺産分割の結果は反映しない

放棄者も記載する(推定相続人から廃除された人は記載しない)

相続人の戸籍が被相続人の死亡日より前の証明日

死亡後も生存していることを確認できない

死亡日以後の証明日のものを取り直す

一覧図の下から約5cmに記載が入っている

認証文を付す範囲

レイアウトを詰めるか、複数枚の様式を使う

数次相続があるときの注意

申出書の様式は「被相続人の表示」が1人分なので、父の相続の後に母も亡くなったような数次相続では、被相続人ごとに一覧図と申出書を作ります。同じ申出人が同じ登記所に同時に申出すれば、共通する戸籍などは1通で足ります。

一覧図に載った相続人にさらに相続が生じている場合、その後の相続関係は一覧図だけでは証明できません。法務局も、法定相続情報番号で添付を省略できるのは一覧図に記載された情報に限られ、相続人にさらに相続が発生している場合などは別途書面が必要になることがあると注意しています。数次相続の遺産分割協議書の書き方は「数次相続の遺産分割協議書の書き方」で解説しています。

提出前の最終チェックリスト

  • 申出書の被相続人欄(氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日)が、一覧図・住民票の除票と一字一句同じか
  • 申出人欄の住所・氏名が、本人確認書類と同じ表記か
  • 代理人欄の「法定代理人/委任による代理人」にチェックし、委任状を添付したか
  • 利用目的・交付方法・不動産の有無・申出先登記所の種別、それぞれにチェックが入っているか
  • 写しの通数が、提出先の数と合っているか
  • 一覧図の「(申出人)」の併記、作成日・作成者の住所氏名、「以下余白」があるか
  • 郵送なら返信用封筒・切手、窓口受取なら本人確認書類の原本を用意したか

2024年以降の変更点(法定相続情報番号・戸籍の広域交付)

制度そのものの手数料や様式の骨格は変わっていませんが、2024年に周辺の取扱いが2つ変わりました。一覧図を作る前後の段取りに関わるので押さえておきます。

相続登記では法定相続情報番号で写しの添付を省略できる

法定相続情報番号は、一覧図の写しの右肩に記載される番号です。令和6年4月1日以降、不動産登記の申請書の添付情報欄に「登記原因証明情報(法定相続情報番号(○○○○-○○-○○○○○))」と記載すれば、一覧図の写しの添付を省略できるようになりました(法定相続情報番号の提供による添付省略について|法務局)。一覧図に相続人の住所を記載していれば、住所を証する書面の添付も省略できます。

ただし番号を使えるのは不動産登記の申請等の手続だけで、金融機関や税務署など法務局以外の手続では使えません。保管の申出から5年以上たつと番号を使えない場合がある点にも注意します。同じ時期に相続登記の申請が義務化され、不動産を相続で取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に申請しなければならなくなりました。申請書の作り方は「相続登記の申請書をAIで作成する実務」を参照してください。

戸籍の広域交付で、戸籍集めの窓口がまとまる

令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました(広域交付)。本籍地が全国に散らばっていても、1か所の窓口でまとめて請求できます(戸籍法の一部を改正する法律について|法務省)。

一方で、請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属に限られ、郵送や代理人による請求はできません。コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍も対象外です。資格者が依頼を受けて代わりに請求する使い方はできないため、相続人本人に広域交付で集めてもらうか、従来どおり各本籍地へ請求するかを案件ごとに切り分けます。兄弟姉妹の戸籍は、本人・配偶者・直系の範囲から外れる点にも注意します。

作成から交付までの手順

ここまでの内容を、実際の流れに沿ってまとめます。

  1. 戸籍・除籍の収集:被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄抄本を集める
  2. 相続人の確定:戸籍を読み込み、法定相続人を漏れなく特定する(ここは専門家の確認が重要)
  3. 一覧図の作成:様式・記載例に沿って、被相続人と相続人の関係・続柄・生年月日などを記載する
  4. 申出書の作成:「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入する
  5. 法務局へ申出:管轄の法務局へ、書類一式・一覧図・申出書を窓口または郵送で提出する
  6. 写しの交付:登記官が確認・認証し、一覧図の写しが無料で交付される。戸籍原本は返却される

AIで法定相続情報一覧図の下書きを時短する手順

一覧図や申出書の作成そのものは定型作業ですが、戸籍の読み込みと項目の書き起こしには時間がかかります。ここで生成AIを「下書き(ドラフト)作成の補助」として使うと、初期作業を大きく短縮できます。ポイントは、AIに最終判断をさせないことです。相続人の最終確認は、必ず戸籍原本に当たって専門家が行います。

士業AIは、司法書士・弁護士など法務の実務を想定した法務特化AIを提供しています(司法書士・弁護士・行政書士向けの士業AI)。相続税の申告を担う税理士事務所向けには税理士向けの税務AIもあります。条文リサーチや書類ドラフトの前段作業を短縮する使い方のイメージは、次のデモで確認できます。

e-Gov法令データ等の公的情報を参照する法務特化AI のデモです。

そのまま使えるプロンプト例

以下は、続柄整理・一覧図ドラフト・申出書ドラフト・必要書類チェック・転記チェック・選択欄の漏れチェックの6場面で使えるプロンプトです。【 】は自分の案件に置き換えて使ってください。なお、実在する個人情報や戸籍の原本画像を安易に外部AIへ入力しないよう、守秘義務と情報管理のルールに従って運用してください(この点は後述します)。

1. 相続人・続柄の整理

あなたは相続実務に詳しいアシスタントです。以下の家族関係のメモから、
法定相続情報一覧図に載せる相続人と続柄の候補を一覧化してください。
被相続人:【氏名・出生・死亡・最後の住所】
判明している親族:【配偶者・子・親・兄弟姉妹などの情報を箇条書き】
出力:相続人の候補/続柄/確認が必要な点(要戸籍確認の箇所を明記)

うまくいかない例と直し方:情報が少ないとAIが相続人を「断定」しがちです。「不明点は断定せず『要確認』として列挙する」と指示を足すと、確認すべき戸籍が可視化され、実務の抜け漏れ防止に使えます。

2. 一覧図のテキスト下書き

次の情報から、法定相続情報一覧図のテキスト下書きを作成してください。
被相続人:【氏名/最後の住所/出生/死亡】
相続人:【氏名/続柄/出生/(任意で住所)】を人数分
条件:被相続人を中心に、相続人を続柄付きでつなぐ構成にする。
    住所は任意項目として扱い、記載する/しないを選べるようにする。

うまくいかない例と直し方:AIが独自の様式で整形してしまうことがあります。「体裁は問わず項目と関係の抜けだけを確認したい」と目的を伝え、最終的な体裁は法務局の様式・記載例に合わせて自分で整えるのが安全です。

3. 申出書の記載内容の下書き

「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に記載する項目を、
以下の情報から下書きしてください。不足している項目は質問で返してください。
被相続人:【 】/申出人:【住所・氏名・続柄・連絡先】
利用目的:【相続登記/預貯金払戻し/相続税申告 など】
交付通数:【 】/返却方法:【窓口/郵送】

うまくいかない例と直し方:AIが管轄の法務局まで断定することがあります。管轄は「被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産所在地のいずれか」から自分で選ぶ前提にし、AIには候補の整理だけを任せます。

4. 必要書類のチェックリスト化

今回の相続の状況に合わせて、法定相続情報一覧図の申出に必要な書類の
チェックリストを作成してください。
状況:【相続人の構成/一覧図に住所を記載するか/代理人の有無と種別】
出力:必ず用意する書類/必要となる場合がある書類/取得先の目安

うまくいかない例と直し方:制度改定でAIの知識が古い場合があります。作成したチェックリストは必ず法務局の公式ページの最新情報と突き合わせ、AIの出力を「叩き台」として扱ってください。

5. 申出書と一覧図の転記チェック

次の2つのテキストを突き合わせ、表記が一致しない箇所を一覧にしてください。
修正案は出さず、「どこが・どう違うか」だけを表で示してください。
A:申出書の記載(被相続人欄・申出人欄・代理人欄)
【申出書の記載を貼り付け】
B:法定相続情報一覧図の記載
【一覧図の記載を貼り付け】
確認する項目:氏名の字体、住所の番地表記(丁目・番地・号)、生年月日・死亡年月日、
続柄、(申出人)の併記の有無

うまくいかない例と直し方:AIが「髙」と「高」、「1丁目」と「一丁目」のような違いを同じものとして扱うことがあります。「異体字・漢数字と算用数字の違いも不一致として挙げる」と明記すると、拾い漏れが減ります。最終的には住民票の除票や戸籍の表記に人が合わせます。

6. 申出書の選択欄の漏れチェック

以下は「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の下書きです。
次の欄について、未記入・選択漏れ・矛盾がないか確認し、指摘を箇条書きで返してください。
・代理人欄(代理人がいる場合の「法定代理人/委任による代理人」)
・利用目的(「その他」の場合は具体的な手続名か)
・必要な写しの通数・交付方法
・被相続人名義の不動産の有無と、申出先登記所の種別の整合
【下書きを貼り付け】

うまくいかない例と直し方:管轄の当否までAIに判定させると、存在しない登記所名を答えることがあります。管轄は法務局の「管轄のご案内」で人が確認し、AIには「不動産の所在地を選んだのに不動産欄が空欄」のような欄どうしの矛盾だけを見させます。

個人情報の扱い:戸籍や申出書には、氏名・本籍・生年月日など機微な情報が並びます。外部のAIに貼り付ける前に、氏名は「A」「B」、住所は市区町村まで、日付は「昭和X年」のように置き換え、構造と表記ゆれの確認だけをさせるのが基本です。原文のまま扱う必要がある場合は、入力が学習に使われない設定の業務用環境を使い、事務所の情報管理ルールと守秘義務に反しないかを先に確認してください。

AIの下書きを鵜呑みにしないための検証手順

AIは下書きを速くしてくれますが、相続関係の確定を任せてはいけません。次の手順で必ず人が検証します。

  • 戸籍原本との突合:相続人・続柄・生年月日は、取り寄せた戸籍・除籍の原本で1件ずつ確認する。AIの要約だけで確定しない
  • 連続性の確認:被相続人の出生から死亡までの戸籍がつながっているか(転籍・改製の抜けがないか)を専門家が確認する
  • 最新の制度・様式の確認:手数料・必要書類・様式は改定され得るため、公式ページの最新情報に当たる
  • 守秘義務と情報管理:個人情報や戸籍の内容を外部AIへ入力する際は、事務所の情報管理ポリシー・守秘義務に反しないか確認する。学習に利用されない設定や、業務用に管理されたAI環境を使うのが望ましい

AIはあくまで下書きと初期リサーチの補助にとどめ、最終判断は専門家が担う——この線引きが、相続業務でAIを安全に使う前提です。

よくある質問(FAQ)

法定相続情報一覧図は自分で作成できますか?

はい。相続人本人が作成して申出をすることができます。手続を代理してもらう場合は、親族のほか、司法書士・行政書士・弁護士などの資格者代理人に依頼できます。

交付に費用はかかりますか?

一覧図の写しの交付は無料で、必要な通数を受け取れます。作成した一覧図は5年間法務局に保管され、その間は再交付を受けられます。

相続関係説明図があれば法定相続情報一覧図は不要ですか?

両者は別の書類です。相続関係説明図は相続人が自分で作る私的な図で、公的な証明力はありません。法定相続情報一覧図の写しは登記官が認証した公的な書類で、複数の窓口で戸籍一式の代わりに使える点が異なります。手続の数が多い相続では一覧図の取得が効率的です。

一覧図に相続人の住所は必ず書く必要がありますか?

住所の記載は任意です。記載しておくと、以後の手続で住民票の写しの提供を省ける場面があります。ただし住所を記載する場合は、各相続人の住民票の写しが申出時に必要になります。

申出書に被相続人の本籍は書きますか?

申出書の様式の被相続人欄は、氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日の4項目で、本籍の欄はありません。本籍は一覧図のほうに任意で記載でき、住民票の除票等が廃棄されて取れない場合は、最後の住所に代えて最後の本籍を必ず記載します。

相続放棄をした相続人も一覧図に載せますか?

載せます。法定相続情報一覧図は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするもので、相続放棄や遺産分割協議の結果、実際には相続分を持たない人も記載されます。推定相続人から廃除された人は記載されません。

AIだけで一覧図の作成を完結できますか?

いいえ。AIは戸籍の整理や一覧図・申出書の下書きを速くする補助にとどめるべきです。相続人の確定は戸籍原本に基づいて専門家が確認し、申出は本人または資格者代理人が行います。

戸籍の読解から一覧図・申出書の下書きまで、法務特化AIで初期作業を短縮しつつ、最終確認はご自身で。まずは無料で試して、相続業務のどこを時短できるか確かめてみてください。

参考文献

FREE TRIAL

士業AIで業務を効率化しませんか?

税務・会計・法務の専門業務を AI がアシスト。 まずは無料でお試しいただけます。

無料で試す

クレジットカード不要・数分で開始