開業届の書き方と記入例|令和8年からの提出期限と一緒に出す書類
開業届(正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」)は、新しく事業を始めた個人が、納税地の税務署長に出す1枚の届出書です。令和8年(2026年)1月1日以後に開業した場合、提出期限は「開業した年分の所得税の確定申告期限まで」に変わりました。2025年12月31日までの開業に適用されていた「開業から1か月以内」という期限は、もう新しい開業には当てはまりません。
ただし、期限が延びたからといって開業届を後回しにすると、期限の短い青色申告承認申請書(開業から2か月以内)や、給与を払う場合の届出(開設から1か月以内)を出し忘れるおそれがあります。この記事では、国税庁の様式と記載要領に沿って欄ごとの書き方・記入例・よくある誤りを表にまとめ、一緒に出す書類の期限、税理士事務所が顧問先の開業届を確認するときの観点、AIを使った記入案づくりとチェックの方法までを整理しました。開業するご本人が読んでも、そのまま記入できる内容にしています。
この記事で分かること
- 令和8年1月から変わった開業届の提出期限と、2025年以前に開業した場合との違い
- 開業届を書く前に決めておく5つのこと(開業日・納税地・屋号・所得の種類・青色申告)
- 欄ごとの書き方・よくある誤りの一覧表と、ウェブ制作業で開業する場合の記入例
- 開業届と一緒に出す書類(青色申告・給与・消費税・都道府県)の期限一覧
- e-Tax・郵送・窓口での出し方と、マイナンバー・控えの扱い
- 顧問先から聞き取った内容をもとに、AIで記入案と提出前チェックを作る方法
開業届とは|令和8年から提出期限は「確定申告期限まで」
開業届は、所得税法第229条にもとづく届出です。国税庁の手続案内「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」では、新たに事業を始めたときだけでなく、事業用の事務所・事業所を新設・増設・移転・廃止したとき、事業をやめたときにも同じ様式を使うと案内されています。
提出する人:事業所得・不動産所得・山林所得を生む事業を始めた人
手続の対象者は「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」です。フリーランスのデザイナーや店舗の開業だけでなく、不動産の貸付けを始めた場合も対象に含まれます。会社員の副業がどの所得に当たるかは事業の実態で判断が分かれるため、迷うときは税理士に相談してから届け出るのが確実です。
提出期限:開業した年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の開業)
所得税法第229条は、令和5年度の税制改正で「その事実があった日から1月以内」から「その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」に改められました。改正法の附則で、令和8年1月1日以後に生じた開業等について新しい期限を適用し、それより前に生じたものは従前の例によると定められています。
開業日 | 開業届の提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
2025年12月31日以前 | 開業の日から1か月以内(旧ルール) | 改正前の所得税法第229条 |
2026年1月1日〜12月31日 | 2027年3月15日(月) | 改正後の所得税法第229条(2026年分の確定申告期限) |
2027年1月1日〜12月31日 | 2028年3月15日(水) | 同上(2027年分の確定申告期限) |
提出期限が土日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限になります(国税庁の手続案内にも明記)。「1か月以内」と書かれた古い解説も残っているので、顧問先の情報と食い違ったら開業日を先に確かめてください。
期限が延びても、早めに出したほうがよい理由
開業届の期限が延びた一方で、一緒に出すことの多い書類の期限は変わっていません。青色申告承認申請書は開業から2か月以内(1月15日以前の開業はその年の3月15日まで)、給与支払事務所等の開設届出書は開設から1か月以内です。開業届には「青色申告承認申請書の提出の有無」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」を書く欄もあるので、期限の早い書類に合わせてまとめて出すほうが、記載内容もそろい、出し忘れも防げます。
開業届を書く前に決めておく5つのこと
開業届は1枚で、記入そのものに時間はかかりません。顧問先の開業を手伝うときは、次の5点を先に聞き取ると記入がスムーズです。
決めること | なぜ先に決めるか | 確認の仕方 |
|---|---|---|
開業日 | 開業届・青色申告承認申請書・都道府県への申告の期限の起点になる。書類ごとに日付がずれると説明が必要になる | 事業として最初の仕事を受けた日、店舗の営業を始めた日など、本人が説明できる日を1つ決める |
納税地 | 提出先の税務署が決まる。住所地以外を納税地にするかで記入が変わる | 原則は住所地。自宅と別に事務所がある場合は、どちらを納税地にするか確認する |
屋号 | 屋号付きの銀行口座や請求書と表記をそろえる | 未定なら空欄でよい。決めた場合は正式な表記を本人に確認する |
所得の種類 | 事業所得・不動産所得・山林所得のどれかにチェックする | 事業の内容から判断。副業や不動産の貸付けは税理士が判断する |
青色申告にするか | 青色申告承認申請書の期限が開業から2か月以内と短い | 記帳の体制(会計ソフト・記帳代行)を含めて決める |
開業日は法令で「この日」と決まっているわけではなく、事業の実態から判断する事項です。実務では、開業日を書類ごとにばらばらにしないことが一番大切です。開業届・青色申告承認申請書・都道府県への事業開始等申告書・屋号付き口座の開設書類で、同じ日付を使います。
開業届の書き方①|上段(提出先・氏名・納税地)の記入例
ここからは、国税庁の個人事業の開業・廃業等届出書(様式)と記載要領の欄の順に、書き方とよくある誤りをまとめます。最初は届出者の情報を書く上段です。
欄名 | 書き方 | よくある誤り |
|---|---|---|
提出日・提出先 | 提出する日と、納税地を所轄する税務署名を書く | 事務所の所在地の税務署を書いてしまう(提出先は納税地の所轄税務署) |
マイナンバー(個人番号) | 12桁の個人番号を書く | 控えにも番号を写したまま保管する。記載要領では、控えには個人番号を記載しない(複写するなら番号部分が写らないようにする)よう求めている |
氏名・フリガナ・生年月日 | 本人の氏名と生年月日を書く | 屋号を氏名欄に書く(屋号は専用の欄がある) |
職業 | 「ウェブデザイナー」「飲食店経営」など、仕事の内容が分かる言葉で書く | 「自営業」「個人事業主」とだけ書き、何の事業か伝わらない |
屋号・フリガナ | 屋号があれば書く。なければ空欄でよい | 口座名義や名刺と表記(全角・半角、カタカナ・英字)がずれる |
区分(納税地) | 納税地が住所地なら5、居所地なら6、事業所等なら7を書く | 番号を書かずに空欄のまま出す |
納税地・郵便番号・電話番号 | 区分で選んだ場所の住所を書く。電話番号は日中つながる番号 | 住民票の住所と納税地の住所を取り違える |
上記以外の住所地・事業所等 | 納税地を住所地にした場合は、別にある事務所・店舗の所在地を書く | 自宅兼事務所なのに同じ住所を重ねて書く(同じなら空欄でよい) |
開業届の書き方②|届出の区分・事業の概要・給与の欄
中段は「個人事業の開廃業等について次のとおり届けます」の下の欄です。開業時に書く欄は限られます。
欄名 | 書き方 | よくある誤り |
|---|---|---|
届出の区分 | 開業なら「開業」の太枠に「1」を書く。親から事業を引き継いだ場合は、引き継いだ先の住所・氏名も書く | チェック(レ印)を付ける、または「開業」と「事務所・事業所の新設等」の両方に書く |
所得の種類 | 不動産所得・山林所得・事業(農業)所得のうち、該当するものの□にレ印を付ける | 不動産の貸付けなのに事業所得にチェックする(またはその逆) |
開業・廃業等日 | 開業した日を元号で書く | 青色申告承認申請書や都道府県への申告書と違う日付を書く |
事業所等を新増設、移転、廃止した場合 | 開業届だけなら通常は空欄。事務所の移転などを届け出るときに書く | 開業時に自宅住所を書き込んでしまう |
廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 法人成りで個人事業をやめるときに書く。開業時は空欄 | 開業届で記入してしまう |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書と、消費税の課税事業者選択届出書をそれぞれ出すかどうかを「有」「無」で選ぶ | 「有」にしたのに、申請書を出し忘れる |
事業の概要 | 何を、誰に、どのように提供するかを具体的に書く(例:中小企業向けのウェブサイト制作と保守。自宅を作業場所とし、受注はオンライン) | 「サービス業」「IT関連」など、一言で終わらせる |
「事業の概要」は具体的に書く
様式の欄には「できるだけ具体的に記載します」と書かれています。取引先の種類、提供する商品やサービス、店舗の有無まで書いておくと、後で事業内容を説明しやすくなります。
給与等の支払の状況と源泉所得税の欄
家族や従業員に給与を払う予定があるときに書く欄です。記載要領では、届出日現在の給与の支給人員と支払の状況、源泉徴収すべき税額があるかどうかを書くよう求めています。給与を払わない場合は空欄で構いません。
欄名 | 書き方 | よくある誤り |
|---|---|---|
専従者・使用人の従事員数 | 青色事業専従者(家族従業員)と使用人に分けて人数を書く | アルバイトを数え忘れる、事業主本人を数に入れる |
給与の定め方 | 日給・月給などの区分を書く | 金額を書いてしまう(ここは支払い方の区分) |
税額の有無 | 各人の給与額や扶養親族等の状況から、その区分の全員に納付すべき税額がなければ「無」、それ以外は「有」 | 1人でも税額が出る人がいるのに「無」にする |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 | 納期の特例を申請するなら「有」 | 「有」にしたのに申請書を出していない |
給与支払を開始する年月日 | 給与の支払を始める日(すでに払っていればその日) | 開業日をそのまま書き、実際の初回支給日とずれる |
税理士署名 | 税理士が作成した場合に署名する | 事務所で作成したのに署名欄が空いている |
源泉所得税は原則として徴収した月の翌月10日までに納めますが、給与の支給人員が常時10人未満なら、納期の特例の承認を受けて年2回(7月10日と翌年1月20日)にまとめられます。申請書の書き方や納付書の扱いは源泉所得税の納付書の書き方と納期の特例で詳しく解説しています。
開業届の記入例|ウェブ制作業で2027年4月1日に開業する場合
具体例として、会社員を辞めてウェブ制作業を始める人の記入例を示します。自宅を作業場所にし、2027年4月1日に開業、配偶者を青色事業専従者として雇う予定という設定です。
欄名 | 記入例 |
|---|---|
提出先 | ○○税務署長(自宅の住所地を所轄する税務署) |
職業/屋号 | ウェブデザイナー/○○デザイン |
区分 | 5(住所地) |
上記以外の住所地・事業所等 | 空欄(自宅で開業するため) |
届出の区分 | 開業に「1」 |
所得の種類 | 事業(農業)所得にレ印 |
開業・廃業等日 | 令和9年4月1日 |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書:有/課税事業者選択届出書:無 |
事業の概要 | 中小企業・個人店向けのウェブサイトの企画・制作・保守。自宅で作業し、受注と納品はオンラインで行う |
給与等の支払の状況 | 専従者1人、給与の定め方:月給、税額の有無:本人の給与額と扶養の状況から判定 |
源泉所得税の納期の特例 | 有(同時に申請書を提出) |
給与支払を開始する年月日 | 令和9年4月25日(初回の給与支給日) |
この例では、開業届の期限は2028年3月15日(水)ですが、青色申告承認申請書の期限は開業から2か月以内の2027年6月1日(火)です。青色事業専従者給与に関する届出書も同じく開業から2か月以内、給与支払事務所等の開設届出書は開設から1か月以内なので、4月中に全部まとめて出す段取りにしておくと安全です。
開業届と一緒に出す書類と提出期限の一覧
国税庁のタックスアンサー「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」と「開業する場合」のページに、開業時に検討する届出がまとまっています。全員が出すわけではないので、顧問先の状況に応じて選びます。
書類 | 出す人 | 提出期限 |
|---|---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 開業した全員 | 開業した年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の開業) |
所得税の青色申告承認申請書 | 開業した年から青色申告にしたい人 | 1月15日までの開業はその年の3月15日、1月16日以後の開業は開業日から2か月以内 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 家族への給与を必要経費にしたい青色申告者 | その年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者ができた場合は、その日から2か月以内) |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 従業員や家族に給与を払う人 | 開設の事実があった日から1か月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与の支給人員が常時10人未満で、年2回納付にしたい人 | 随時(原則として提出した日の翌月に支払う給与等から適用) |
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 | 法定の方法以外を選びたい人 | 開業した年分の確定申告期限まで |
消費税課税事業者選択届出書 | 開業時から課税事業者として消費税を申告したい人 | 開業した年の12月31日まで |
適格請求書発行事業者の登録申請書 | 開業時からインボイスを交付したい人 | 開業した日の属する課税期間中に出せば、その課税期間の初日から登録を受けられる |
事業開始等申告書(都道府県) | 個人事業税の対象となる事業を始めた人 | 都道府県ごとに定め(東京都は開始の日から15日以内) |
青色申告承認申請書と同時に出す理由
開業届と同時に出す書類で、最も期限を落としやすいのが青色申告承認申請書です。開業届の期限が「確定申告期限まで」に延びたことで、開業届を出す時期に合わせて申請書も出そうとすると、2か月の期限を過ぎてしまうことがあります。期限を過ぎると、その年分は白色で申告するしかありません。
申請書の欄ごとの書き方、2027年分から変わる青色申告特別控除の要件、みなし承認の仕組みは青色申告承認申請書の書き方と記入例で解説しています。開業届では、この申請書と開業日を必ずそろえてください。
消費税とインボイスは「開業時に決める」
開業届の記載要領には、新たに事業を始めた年から課税事業者を選ぶ場合、課税事業者選択届出書はその年の12月31日までに出すよう書かれています。国税庁の「開業する場合」のページでは、課税事業者選択届出書や適格請求書発行事業者の登録申請書を出した場合、開業後2年間は課税事業者として消費税の申告が必要になると注意書きがあります。経過措置や2割特例の考え方はインボイス制度の2026年最新対応にまとめています。
都道府県への事業開始等申告書を忘れない
個人事業税を課す都道府県には、開業届とは別に申告書を出します。東京都主税局の個人事業税のページでは、都内で個人で事業を始めた場合、開始の日から15日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を所管の都税事務所等に出すよう案内されています。東京都以外の顧問先は、それぞれの都道府県税事務所の案内で期限を確かめてください。
開業届の出し方|e-Tax・郵送・窓口とマイナンバー・控えの扱い
提出先は、納税地を所轄する税務署長です。出し方はe-Tax、郵送、窓口持参の3通りがあります。
e-Taxで出す
国税庁の手続案内では、パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成し、e-Taxで提出する方法が案内されています。初めてe-Taxを使う場合は利用者識別番号の取得が必要です。e-Taxで出す場合は本人確認書類の提示や写しの添付は不要とされています。送信後はメッセージボックスに受信通知が届き、受付日時と受付番号を確認できます。
郵送・窓口で出す
書面で作成し、税務署に持参または送付することもできます。書面でマイナンバーを記載して出すときは、その都度、本人確認書類(番号確認と身元確認)の提示または写しの添付が必要です。写しを添付するときは、国税庁が用意している本人確認書類(写)添付台紙を使えます。税理士などの代理人が書面で出す場合の本人確認は、国税庁の番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願いから案内されているFAQで確認できます。
窓口の受付時間にも注意が要ります。国税庁の手続案内によると、令和8年10月1日から全ての税務署で総合窓口の受付時間が原則として午前9時から午後3時までになりました。
控えには収受日付印が押されない
国税庁は令和7年1月から申告書等の控えに収受日付印を押さないこととしました。書面で出すときは正本だけを提出し、控えは自分でコピーを取って、提出日と提出方法を記録します。当分の間は、希望すれば窓口で日付と税務署名を書いたリーフレットを受け取れ、郵送の場合も切手を貼った返信用封筒を同封すれば同じリーフレットが返送されます。
金融機関によっては、屋号付きの口座を開くときなどに開業届の控えの提示を求められることがあります。e-Taxなら受信通知を、書面ならコピーと提出日のメモを残しておくよう、顧問先に伝えておきます。控えのコピーにはマイナンバーを写さないようにしてください。
税理士事務所が顧問先の開業届をチェックする観点
開業届は本人が書いても難しい書類ではありません。事務所が関わる価値は、開業届の記載内容と、ほかの届出や今後の申告の前提を一致させるところにあります。提出前には次の点を確認します。
確認する点 | 見落とすと起きること |
|---|---|
開業日が、青色申告承認申請書・事業開始等申告書・口座開設書類と同じか | 各書類の期限の起点がずれ、青色申告の期限を誤る |
開業日が2025年以前か2026年以後か | 旧ルール(1か月以内)と新ルール(確定申告期限まで)を取り違える |
「提出の有無」で「有」にした書類を、本当に出したか | 青色申告承認申請書や納期の特例の申請書が出ていない |
家族に給与を払う予定があるか | 青色事業専従者給与に関する届出書・給与支払事務所等の開設届出書が漏れる |
所得の種類(事業所得か不動産所得か) | 申告の区分や記帳の方法の前提が変わる |
消費税・インボイスの方針 | 取引先からの登録番号の照会に答えられない、または不要な課税事業者選択をしてしまう |
控えの残し方とマイナンバーのマスキング | 提出日を証明できない、番号入りの控えが社外に出回る |
聞き取りシートを1枚にまとめる
顧問先の開業は、最初の面談で必要な情報を聞き切れるかどうかで手間が変わります。開業日、納税地、屋号、事業の概要、家族への給与の予定、従業員の予定、売上の見込み、インボイスの要否、記帳の方法の9項目を1枚の聞き取りシートにしておくと、開業届とそれに伴う書類を一度に作れます。開業後の記帳と最初の確定申告の流れは個人事業主の確定申告×AI活用術で紹介しています。
節税の相談は開業届とは分けて受ける
開業の面談では節税の相談も出てきがちですが、届出の段取りを先に固め、節税策は別に時間を取って整理するほうが確実です。個人事業主が使える節税策の効果額と要件は個人事業主の節税10選で一覧にしています。
AIの使いどころ|聞き取りメモから記入案と提出前チェックを作る
開業届の手間は、書類を書くことより、顧問先からの聞き取り内容を各書類に転記し、期限と記載のずれを確かめることにあります。この転記と照合は生成AIで下書きを作ると早くなります。ただし、期限の判断や所得区分の判断はAIに任せず、税理士が根拠を確認します。顧問先の情報をAIに入れる前には、氏名・マイナンバー・住所を伏せ字にしてください。判断の目安は顧問先データはAIに貼ってよいかで整理しています。
プロンプト1:聞き取りメモから開業届の記入案を作る
あなたは税理士事務所の担当者です。次の聞き取りメモをもとに、
「個人事業の開業・廃業等届出書」の記入案を表で作ってください。
条件:
・列は「欄名/記入案/確認が必要な点」の3列
・欄は様式の順(提出先、職業、屋号、区分、届出の区分、所得の種類、
開業・廃業等日、開業・廃業に伴う届出書の提出の有無、事業の概要、
給与等の支払の状況、源泉所得税の納期の特例、給与支払を開始する年月日)
・メモに書かれていない事項は推測せず「要確認」と書く
・事業の概要は、何を・誰に・どう提供するかが分かる1〜2文にする
・提出期限は計算しないこと(期限は事務所で確認する)
聞き取りメモ:
【顧問先A】、職業【職業】、屋号【屋号】、開業日【開業日】、
自宅で開業/事務所あり【どちらか】、家族への給与【有無と金額】、
従業員【人数】、インボイス登録の希望【有無】うまくいかない例は、「開業届を書いて」とだけ頼むことです。AIは空いた欄を推測で埋め、架空の屋号や開業日を書くことがあります。メモにない事項は「要確認」と書かせる一文を入れると、聞き取り漏れがそのまま次の確認事項の一覧になります。
プロンプト2:提出前チェックリストと照合させる
次の「記入済みの開業届の内容」と「同時に出す書類の一覧」を、
下のチェック項目と照合してください。
チェック項目:
1. 開業日が全ての書類で同じか
2. 「青色申告承認申請書の提出の有無」が「有」なら、一覧に申請書があるか
3. 給与等の支払の状況に専従者がいるなら、青色事業専従者給与に関する
届出書が一覧にあるか
4. 給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書が一覧にあるか
5. 「源泉所得税の納期の特例」が「有」なら、申請書が一覧にあるか
6. 事業の概要が具体的か(何を・誰に・どう提供するか)
出力:
・項目ごとに「OK/要確認/不一致」と理由を1行で
・期限の日付は出力しない(事務所で国税庁の案内を見て確認する)
記入済みの開業届の内容:【貼り付け】
同時に出す書類の一覧:【貼り付け】このプロンプトで「期限の日付は出力しない」と書いているのは、開業届の期限が令和8年1月に変わったばかりで、AIが学習した古い情報(1か月以内)を答える可能性があるためです。期限は国税庁の手続案内と条文で確認し、AIには記載の整合だけを見させるのが安全です。
汎用のAIでも、表とチェック項目を渡せばここまでの下書きは作れます。士業AIは国税庁などの公的な情報を参照しながら答える設計なので、制度の確認を伴う下書きや、顧問先への案内文づくりにも使えます。税理士業務での使い方は税理士向けの士業AIの紹介ページと税理士のChatGPTプロンプト集で紹介しています。
開業届のよくある質問
2025年12月に開業して、まだ開業届を出していません。期限はいつですか?
2025年12月31日以前の開業には改正前のルールが適用され、期限は開業の日から1か月以内です。すでに期限を過ぎていても届出の義務はなくならないため、できるだけ早く提出してください。
開業届を出さないと青色申告はできませんか?
青色申告の承認を受けるには、青色申告承認申請書を期限内に出す必要があります。開業届は別の届出ですが、申請書の「開業日」と開業届の「開業・廃業等日」をそろえるためにも、同時に出すのが実務の基本です。
開業届の控えはどう残せばよいですか?
e-Taxで出した場合はメッセージボックスの受信通知を保存します。書面で出す場合は、提出前にコピーを取り、提出日と提出方法をメモしておきます。令和7年1月からは控えに収受日付印が押されないため、必要なら窓口で日付と税務署名を書いたリーフレットを受け取ります。
まとめ|開業届は期限の早い書類に合わせて出す
開業届は、令和8年1月1日以後の開業なら、開業した年分の確定申告期限までに出せば足ります。一方で、青色申告承認申請書(開業から2か月以内)、青色事業専従者給与に関する届出書(同じく2か月以内)、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)、都道府県への事業開始等申告書(東京都は15日以内)の期限は短いままです。開業日を1つに決め、期限の早い書類に合わせてまとめて出すのが、出し忘れを防ぐ一番の方法です。
この記事の欄ごとの表と提出前チェックの観点を、事務所の聞き取りシートやチェックリストに組み込めば、顧問先の開業のたびに使い回せます。士業AIは無料で試せるので、聞き取りメモからの記入案づくりや、顧問先への案内文の下書きから使ってみてください。

