法務×AI

弁護士のChatGPTプロンプト集|業務別に使える例文10選【2026年】

弁護士のChatGPTプロンプトとは、契約書ドラフトや内容証明、条文リサーチといった法律事務の「初動」をChatGPTなどの生成AIに任せるための定型の指示文です。変数を差し替えるだけで、たたき台づくりや論点の洗い出しが数分で終わります。ただしAIは条番号や判例を自信たっぷりに誤る(ハルシネーション)ため、出力は必ず一次情報と弁護士自身のチェックを通す前提で使うのが実務の鉄則です。

この記事は、契約書・内容証明・リサーチ・議事録・書面など弁護士業務を横断して「今日からコピペで使える」完成プロンプトを10個まとめたハブです。各プロンプトには、現場でつまずきやすい「うまくいかない例→直し方」を添えました。個別業務の深掘りは各スポーク記事にゆずり、ここでは業務別に一望できることを重視しています。

この記事で分かること

  • 弁護士が生成AIを使う前に押さえる3つの鉄則(守秘義務・ハルシネーション・非弁)
  • 契約書/内容証明/リサーチ/議事録/書面まで、業務別のコピペ用プロンプト10選
  • 各プロンプトの「うまくいかない例→直し方」(AI要約では得られない実務ノウハウ)
  • 汎用AIの限界と、法務特化AIを検討すべきタイミング

弁護士がChatGPTを使う前に|3つの鉄則

プロンプト集に入る前に、便利さと引き換えに事故を起こさないための前提を3つ整理します。ここを飛ばすと、守秘義務違反や誤った法的判断という取り返しのつかないリスクを負います。プロンプトの精度より先に、この3原則を事務所の運用ルールとして固めてください。

1. 依頼者情報・秘密情報は「入れ方」を管理する

実名・住所・事件番号などの秘匿情報を、そのまま外部AIに貼り付けるのは避けるのが基本です。現場で多いのは、氏名を【依頼者名】【相手方】のように記号へ置き換えて入力し、出力後に手元で実名へ戻す運用です。あわせて、入力データを学習に使わない設定や契約プランかどうかを、利用前に必ず確認してください。

2. 判例・条番号は必ず一次情報で裏取りする

生成AIは、存在しない判例や誤った条文番号を、もっともらしい体裁で出力します。したがってAIが示した根拠はあくまで検索の当たりとして扱い、条文はe-Gov法令検索、判例は裁判所の判例検索など一次情報で必ず現物を確認してください。AIに「断定させない・出典を書かせる」プロンプト設計が、この事故を大きく減らします。

3. AIは下書き補助|弁護士法72条・非弁行為の線引き

生成AIが作るのは、あくまで弁護士がチェック・完成させるための下書きです。報酬を得て法律事務を扱えるのは原則として弁護士に限られる(弁護士法72条の趣旨)ため、AIの出力をそのまま非弁護士が最終成果物として提供するような運用には注意が必要です。適法か否かの個別判断は事案により分かれるので、弁護士法72条の条文はe-Gov法令検索、運用の考え方は日弁連など一次情報で確認してください。

業務別・弁護士のChatGPTプロンプト10選(コピペ可)

ここからは、変数を差し替えるだけで使える完成プロンプトを業務別に紹介します。【 】部分を自分の案件に合わせて埋め、出力は必ず一次情報と弁護士のチェックを通してください。各プロンプトの末尾に、実務でつまずきやすい「うまくいかない例→直し方」を添えています。

1. 契約書ドラフトのたたき台

ゼロから条項を書き起こす前の骨子づくりに使います。契約類型と当事者の立場を具体的に指定するほど精度が上がります。

あなたは企業法務に精通した弁護士です。
以下の条件で【契約類型(例:業務委託基本契約)】のドラフトのたたき台を作成してください。

当事者:委託者【委託者名】/受託者【受託者名】
目的・業務内容:【業務内容を1〜2文で】
重視したい点:【報酬・検収・知的財産権の帰属・秘密保持 など】
出力:条項見出し+条文案の一覧。抜けやすい条項があれば「要検討」として指摘してください。

うまくいかない例 → 直し方:「業務委託契約を作って」とだけ指示すると、当たり障りのない汎用条項が並びます。当事者のどちらの立場で守りたいか(委託者か受託者か)と、重視する論点を明記すると、賠償上限や成果物の権利帰属など立場依存の条項を的確に盛り込めます。条項別のより詳しい作り方は弁護士の契約書ドラフトを生成AIで作る手順を参照してください。

2. 契約書レビュー・不利条項の抽出

相手方から届いた契約書を点検し、自社(依頼者)に不利な条項を洗い出す一次スクリーニング用です。

次の契約書を、『【依頼者の立場(発注者/受注者/貸主/借主 等)】』の視点でレビューしてください。

出力形式:
1. 条項番号・見出し
2. どう不利か(一文で)
3. 想定リスクと修正提案
※該当が無ければ「該当なし」と明記。条文の断定は避け、確認が必要な点は「要確認」と付記してください。

--- 契約書本文 ---
【契約書本文を貼り付け】

うまくいかない例 → 直し方:立場を書かずに「不利な点を教えて」と聞くと一般論になりがちです。依頼者が支払う側か受け取る側かまで明記すると精度が上がります。観点別のレビュー用プロンプトは契約書レビューをAIで効率化するプロンプト集にまとめています。

3. 内容証明(売掛金の督促・請求)

支払遅延に対する請求書面のたたき台です。事実関係と請求内容を箇条書きで与えると、体裁の整った文面が返ります。

売掛金の支払を求める内容証明郵便の文案を作成してください。

差出人:【事務所名・弁護士名】(○○の代理人)
名宛人:【相手方名】
事実:【契約日・取引内容・請求額・支払期日・遅延状況】
求める対応:【支払期限(例:本書面到達後2週間以内)】と振込先の明記
トーン:事実を淡々と、法的措置に触れつつ過度に威圧的にならない表現で。

うまくいかない例 → 直し方:金額や期日をあいまいに渡すと、記載すべき事実が抜けた文面になります。契約日・請求額・支払期日を数字で明示すると、そのまま清書に近い精度になります。督促・解除など類型別の文例は内容証明郵便をAIで作成する文例集で詳しく扱っています。

4. 内容証明(契約解除の通知)

債務不履行を理由とする解除通知の骨子づくりに使います。催告の有無を明示するのがポイントです。

【契約類型】の債務不履行を理由とする契約解除通知の文案を作成してください。

差出人/名宛人:【当事者名】
不履行の内容:【いつ・何が履行されなかったか】
催告:【催告済み/本書面で催告する】のいずれか
求める対応と、応じない場合の措置(解除の意思表示)を明確に記載してください。

うまくいかない例 → 直し方:催告の要否を書かないと、法的に必要な前提が抜けた通知になりがちです。「本書面で相当期間を定めて催告し、応じなければ解除する」のように段取りを指定すると、要件を踏まえた文面になります。ただし解除の可否判断は必ず弁護士が確認してください。

5. 条文リサーチのたたき台

論点に関係しそうな法令・条文の当たりをつける用途です。AIには断定させず、確認先を書かせるのがコツです。

次の論点に関係しそうな日本の法令・条文の候補を挙げてください。

論点:【調べたい論点を1〜2文で】
出力:法令名/条文番号(候補)/関係する理由を一覧に。
制約:条文番号は「要確認」と付記し、断定しないこと。最終確認はe-Gov法令検索で行う前提で回答してください。

うまくいかない例 → 直し方:「根拠条文を教えて」と聞くと、存在しない条番号を断定することがあります。「候補」「要確認」と枠をはめ、必ずe-Gov法令検索で現物を確認してください。判例調査まで含む手順は弁護士の条文リサーチAIとハルシネーション対策で解説しています。

6. 判例の存在チェック・検証

AIや文献が挙げた判例が実在するか、内容が合っているかを検証する用途です。裁判所の判例検索での確認と併用します。

以下の判例について、実在するか判断できる情報を整理してください。

対象:【裁判所・年月日・事件番号・要旨(分かる範囲で)】
出力:一致する可能性が高い/情報が不十分で確認できない、のいずれかを明示し、
確認すべき項目(事件番号・裁判所名など)を列挙。実在を断定しないでください。

うまくいかない例 → 直し方:「この判例を要約して」と聞くと、AIが存在しない判例を“創作”して要約してしまうことがあります。まず存在確認から入り、最終的には裁判所の判例検索など一次情報で必ず現物に当たってください。

7. 相談メモ・議事録の要約

面談の書き起こしや長いメモから、論点・宿題・期日を構造化して抜き出す用途です。

以下の相談メモを、弁護士が後で見返しやすい形に整理してください。

出力:
1. 相談の概要(3行)
2. 法的論点の候補
3. 依頼者の希望・ゴール
4. 今後のタスクと期限(担当が分かれば併記)
※固有名詞は【 】に置き換えたまま処理してください。

--- メモ ---
【相談メモを貼り付け】

うまくいかない例 → 直し方:「要約して」だけだと重要な期日やタスクが埋もれます。出力項目を指定し、特に「タスクと期限」を独立させると、そのまま進行管理に使えます。固有名詞を記号のまま処理させれば、守秘義務にも配慮しやすくなります。

8. 訴状・準備書面の構成たたき台

書面の全体構成と主張の骨組みを組み立てる用途です。文章の清書ではなく「構成のたたき台」に限定するのがコツです。

次の事案について、【訴状/準備書面】の構成案を作成してください。

事案の概要:【当事者・請求の趣旨・主要な事実】
出力:見出しレベルの構成(請求の趣旨/請求の原因/主張の柱/想定される反論と再反論)。
各項目に「何を書くべきか」のメモを添え、事実は与えた範囲のみ使用してください。

うまくいかない例 → 直し方:いきなり「訴状を書いて」と頼むと、事実を勝手に補完した“それらしい”文章が出て危険です。まず構成だけを出させ、事実の当てはめと法的評価は弁護士が担う、と役割を分けると安全に使えます。

9. 顧問先向けのやさしい説明文

専門的な結論を、法務に詳しくない顧問先へ平易に伝える文面づくりに使います。

以下の内容を、法律に詳しくない【顧問先の担当者】向けに、
専門用語を避けたやさしい説明文にしてください。

伝えたい結論:【結論を1〜2文で】
背景・理由:【必要な範囲で】
トーン:丁寧だが平易。専門用語を使う場合はカッコで一言補足を付ける。

うまくいかない例 → 直し方:元の結論を渡さず「分かりやすくして」と頼むと、内容が薄まったり不正確になったりします。結論と理由を先に確定してから“翻訳”させると、正確さを保ったまま平易にできます。

10. 相手方・交渉メールの文面

交渉の一次案として、目的とトーンを指定してメール文面を作らせる用途です。

次の交渉について、相手方【相手方名】に送るメール文案を作成してください。

こちらの目的:【何を得たいか】
譲れる点/譲れない点:【箇条書き】
トーン:友好的だが要求は明確に。次のアクション(返信期限や面談提案)で締めてください。

うまくいかない例 → 直し方:「交渉メールを書いて」だけだと、当たり障りのない文面になりがちです。譲れる点・譲れない点を分けて渡すと、着地点を意識した戦略的な文面になります。送信前の内容確認は必ず弁護士が行ってください。

プロンプトの精度を上げる4つのコツ

同じ業務でも、指示の書き方ひとつで出力の質は大きく変わります。上のプロンプトを自分の案件に合わせて調整するときは、次の4点を意識してください。

コツ

やること

効果

役割を与える

「あなたは企業法務に精通した弁護士です」等

回答の視点と専門性が安定する

立場を明示

依頼者が発注者/受注者どちらかを書く

立場依存の論点を的確に拾う

出力形式を指定

番号付き・表・見出しなど型を指定

そのまま清書・検証に使える

断定を禁じる

「条番号は要確認と付記」等の制約

ハルシネーションを抑制できる

汎用AIの限界と、法務特化AIという選択肢

ここまでのプロンプトで、ChatGPTなどの汎用AIでも法律事務の初動をかなり速くできることが分かります。一方で汎用AIには、依頼者情報の取り扱いを自分で管理しなければならない、毎回プロンプトを整える手間がある、条文・判例の裏取りを人手で行う必要がある、といった限界も残ります。

こうした「入力の手間」と「情報管理」を業務側に寄せたのが、士業向けに設計された特化型AIです。士業AIでは、契約書レビューや条文リサーチなど法務でよく使う作業を業務単位のテンプレートとして用意し、他社を比べる必要なく業務適合の観点から使い始められます。汎用AIでここまでできるなら、専門特化ならさらに楽になる——という順序で検討するのが現実的です。まずは無料で、自分の業務でどこまで通用するかを試してみてください。

まとめ

弁護士のChatGPT活用は、契約書・内容証明・リサーチ・書面といった業務の「初動」を速くすることに大きな価値があります。本記事の10個のプロンプトは、変数を差し替えるだけでそのまま使えます。ただし、依頼者情報の入れ方を管理し、判例・条番号は一次情報で必ず裏取りし、AIの出力は弁護士がチェックして完成させる——この3点を守ることが、便利さを事故なく使いこなす前提です。まずは1つ、手元の案件でプロンプトを試すところから始めてください。

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