法務×AI

定款をAIで作成する方法|会社設立の記載事項とテンプレート活用【2026年】

定款とは?会社設立で最初に作る「会社の根本ルール」

定款(ていかん)は、会社の目的・商号・組織・運営の基本ルールを定めた、会社にとっての「憲法」にあたる書面です。会社法は、株式会社を設立するには発起人が定款を作成し、その全員が署名または記名押印しなければならないと定めています(会社法26条)。定款が固まらなければ、公証役場での認証も設立登記も先に進めません。会社設立の実務は、実質的に「定款づくり」から始まると言っても過言ではありません。

一方で、記載事項が抜けると定款そのものが無効になったり、認証・登記で差し戻されたりと、やり直しのコストが大きいのも定款の特徴です。近年は生成AIを使って定款のたたき台を短時間で作り、士業や公証役場のチェックに回す実務者が増えています。この記事では、定款の記載事項の整理から、AIで下書きする手順・プロンプト例、電子定款で印紙税4万円を節約する仕組み、認証の流れまでを一次情報に基づいて解説します。

この記事でわかること

  • 定款の記載事項3種類(絶対的・相対的・任意的)と、欠けると無効になる項目
  • 定款をAIで下書きする3ステップと、そのままコピペできるプロンプト例
  • 株式会社と合同会社で異なる「定款認証の要否」
  • 電子定款が印紙税4万円不課税になる仕組みと、AI利用時の注意点

読み終える頃には、自社(または顧問先)の状況に合った定款の作り方と、AIで安全に時短できる範囲・任せてはいけない範囲を判断できるようになります。

定款の記載事項3種類|絶対的・相対的・任意的

定款に書く内容は、性質によって「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分かれます。AIに下書きさせる前に、この3分類を押さえておくと、抜け漏れや無効リスクを大きく減らせます。

絶対的記載事項(会社法27条)— 欠けると定款が無効

絶対的記載事項は、株式会社の定款に必ず記載しなければならない事項で、一つでも欠けると定款全体が無効になります。会社法27条が定めるのは次の5項目です。

項目

内容の例

目的

会社が行う事業内容(適法・明確・具体的であること)

商号

会社名。株式会社なら「株式会社」を必ず含める

本店の所在地

最小行政区画(市区町村)まで記載すれば足りる

設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

いわゆる資本金の元になる出資額

発起人の氏名または名称および住所

設立を企画した人(法人も可)の情報

実務では「目的」でつまずくケースが多く見られます。将来行う可能性のある事業まで欲張って並べると、許認可審査で不利になったり金融機関の印象を損ねたりすることがあります。当面行う事業と、近い将来に着手する事業に絞るのが現場での定石です。

相対的記載事項 — 定款に書かないと効力が出ない

相対的記載事項は、定款に書かなくても定款自体は有効ですが、定款に記載しなければその事項の効力が生じないものです。代表例に、株式の譲渡制限、取締役会・監査役の設置、現物出資などの変態設立事項、株主総会の招集手続の特則などがあります。中小企業では「株式の譲渡制限」を設けて株式会社(非公開会社)にするのが一般的で、これを書き忘れると意図しない機関設計になってしまいます。

任意的記載事項 — 書いておくと運用がスムーズ

任意的記載事項は、法令に反しない範囲で自由に定められる事項です。事業年度、定時株主総会の招集時期、公告方法などが典型で、定款に書かなくても別途決められますが、明記しておくと後々の運営がスムーズになります。AIに下書きさせる際は「絶対的記載事項は必須/相対的記載事項は方針を伝えて反映/任意的記載事項は自社の運用に合わせる」という優先順位で指示すると整理しやすくなります。

定款をAIで作成する3ステップ

AIは、記載事項の抜けを洗い出し、条文の言い回しを整え、テンプレートを土台にたたき台を素早く作るのが得意です。ただし最終的な適法性の判断や認証・登記の可否は、士業や公証役場の確認が前提になります。ここでは実務で使える3ステップを紹介します。

ステップ1|会社の基本情報を決めてAIに渡す

まず、商号・目的・本店所在地・出資額・発起人・機関設計(取締役会の有無、株式譲渡制限の有無)・事業年度・公告方法といった基本情報を決めます。ここが曖昧なままAIに丸投げすると、それらしく見えるだけの汎用的な定款が出てきてしまいます。決められない項目は「未定」と明示し、AIに選択肢と判断材料を出させるのがコツです。

ステップ2|記載事項をAIに整理・下書きさせる

基本情報を渡し、絶対的記載事項を必須項目として明示したうえで、条文形式の定款ドラフトを作らせます。このとき「会社法27条の絶対的記載事項がすべて含まれているかを最後にチェックリストで確認して」と指示すると、抜け漏れの検出精度が上がります。具体的なプロンプトは次章に用意しました。

ステップ3|士業・公証役場のチェックで仕上げる

AIの出力はあくまで下書きです。株式会社の場合は公証人の認証が必須で、認証時点で絶対的記載事項が定款に記載されている必要があります。目的の適法性、機関設計の整合、変態設立事項の有無などは、行政書士・司法書士・弁護士や公証役場の確認を通して仕上げます。設立後の登記申請まで見据えるなら、株主総会議事録や登記申請書をAIで下書きする司法書士の実務手順もあわせて押さえておくと、設立プロセス全体を効率化できます。

そのまま使える定款ドラフト用プロンプト例

実際にAIに定款のたたき台を作らせるためのプロンプト例です。【 】の部分を自社の情報に置き換えて使ってください。出力はテンプレートの土台とし、必ず専門家・公証役場の確認を経てから確定させます。

株式会社の定款ドラフト用プロンプト

あなたは会社法に詳しい実務家です。以下の条件で株式会社の定款ドラフトを条文形式で作成してください。

# 会社の基本情報
- 商号:【株式会社◯◯】
- 事業目的:【主要事業を3〜5個】
- 本店所在地:【◯◯県◯◯市】(最小行政区画まで)
- 設立時の出資額:【◯◯円】
- 発起人:【氏名・住所】
- 機関設計:取締役会【設置しない】/株式譲渡制限【あり(非公開会社)】
- 事業年度:【毎年◯月◯日〜◯月末日】
- 公告方法:【官報に掲載】

# 指示
1. 会社法27条の絶対的記載事項(目的・商号・本店所在地・出資額
   またはその最低額・発起人の氏名住所)を必ず含める
2. 株式の譲渡制限など相対的記載事項は上記方針を反映する
3. 章・条・項の体裁を整え、条文番号を通し番号で振る
4. 最後に「絶対的記載事項チェックリスト」を表で出し、
   各項目が条文のどこに記載されているかを対応づける
5. 適法性の最終判断は専門家確認が前提である旨を末尾に明記する

合同会社の定款ドラフト用プロンプト

合同会社は公証人の認証が不要なため設立の手続きが軽く、近年選ばれることが増えています。ただし定款自体は必ず作成する必要があり、社員(出資者)や業務執行社員の定めなど株式会社とは記載事項が異なります。株式会社用プロンプトの「機関設計」欄を「社員:【氏名・出資額】/業務執行社員:【氏名】/代表社員:【氏名】」に置き換え、「合同会社の定款として、社員・業務執行社員・代表社員・出資に関する定めを含める」と指示すると、合同会社向けのドラフトが得られます。

うまくいかない例と直し方

うまくいかない例:「株式会社の定款を作って」とだけ指示すると、AIは商号や目的を勝手に仮置きし、実在しそうな条文をそれらしく生成します。条文番号や条数がテンプレートによってばらつき、絶対的記載事項が一部抜けることもあります。

直し方:基本情報を具体的に渡し、「絶対的記載事項の抜けをチェックリストで自己点検させる」「条文の根拠が不確かな箇所は断定せず『要確認』と明示させる」の2点を必ず加えます。AIは条文をもっともらしく創作すること(ハルシネーション)があるため、出力された条番号や手数料・税額などの数値は、必ず一次情報や専門家で裏を取ってください。

電子定款と定款認証|印紙税4万円を節約する仕組み

定款をAIで下書きしたあとに関わってくるのが、印紙税と認証の実務です。ここは会社の種類によって扱いが変わるため、正確に押さえておきましょう。

電子定款が印紙税不課税になる理由

紙で作成した定款の原本には、印紙税法上「4万円」の収入印紙が必要です。一方、PDFで作成し電子署名を施した電子定款は、印紙税法上の課税文書(紙の文書)に該当しないため、印紙税がかかりません。国税庁も、課税対象となる定款は設立時に作成される「原本」に限られるとしています(国税庁「課税される定款の範囲」)。つまり電子定款にすれば、この4万円を丸ごと節約できます。ただし電子署名やオンライン申請の環境が別途必要になるため、自前で行うか専門家に依頼するかはコストを比較して判断します。

定款認証の流れ(株式会社の場合)

株式会社は、作成した定款について公証人の認証を受けなければなりません。一方、合同会社・合名会社・合資会社(持分会社)は定款認証が不要です。日本公証人連合会は、株式会社について「設立後の紛争予防・不正防止等の必要性が特に高い」ため認証を必須とし、持分会社は認証を要しないと説明しています(日本公証人連合会「定款認証」)。

株式会社の認証手数料は、現行では資本金の額に応じて段階的に定められています(例:100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円)。ただし手数料や取扱いは改定されることがあるため、実際の金額と必要書類は、必ず管轄の公証役場または日本公証人連合会の最新情報で確認してください。認証後は、法務局への設立登記へと進みます(法務局「商業・法人登記の申請書様式」)。

会社の種類による違いの早見表

項目

株式会社

合同会社

定款の作成

必要

必要

公証人の認証

必要

不要

紙の定款の印紙税

4万円

4万円

電子定款の印紙税

不課税

不課税

※上記は一般的な整理です。個別の事情や最新の取扱いは、公証役場・法務局・専門家に必ずご確認ください。

士業AIなら法令を踏まえた定款下書きができる

汎用の生成AIでも定款のたたき台は作れますが、条文の根拠が曖昧だったり、古い制度を前提にした回答が混ざったりすることがあります。士業の実務で使うなら、法令や公的情報を参照しながら根拠を示せるツールが安心です。

「士業AI」は、司法書士・弁護士・行政書士などの実務に向けて、契約書レビュー・登記書類のドラフト・条文リサーチといった法務文書の下書きを支援する日本語特化のAIサービスです。定款のように記載事項が法定されている書面でも、絶対的記載事項の抜けチェックや条文体裁の整形をたたき台レベルで素早くこなし、実務者が本来注力すべき「適法性の判断」に時間を回せるようにします。

汎用なんでもAI/メール返信AIで日常業務を効率化するデモです。

会社設立の前後には、許認可申請や設立後の議事録づくりなど関連文書も多く発生します。行政書士の許認可申請書をAIで作成する実務手順や、会社法の要件を踏まえた取締役会議事録の作成術とあわせて使えば、設立から運営初期までの書類業務を一気通貫で効率化できます。

よくある質問(FAQ)

定款はAIだけで完成させて提出してよいですか?

おすすめしません。AIの出力はあくまで下書きです。株式会社では公証人の認証が必須で、認証時点で絶対的記載事項が正しく記載されている必要があります。適法性の最終判断や認証・登記の可否は、行政書士・司法書士・弁護士や公証役場の確認を前提にしてください。

合同会社なら認証がいらないので定款は簡単に作れますか?

認証は不要ですが、定款の作成自体は必要です。社員・業務執行社員・代表社員・出資に関する定めなど、株式会社とは記載事項が異なるため、合同会社向けの構成でドラフトを作る必要があります。

電子定款にすれば必ず安く済みますか?

印紙税4万円は不課税になりますが、電子署名やオンライン申請の環境が必要です。自分で用意するか専門家に依頼するかで総額が変わるため、印紙税の節約分と手間・依頼費用を比較して判断してください。

AIが作った定款の条文が正しいか不安です。どう確認すればよいですか?

会社法27条の絶対的記載事項がそろっているかをチェックリストで確認し、条番号や手数料・税額などの数値は一次情報(e-Gov法令検索・国税庁・日本公証人連合会・法務局)で裏を取ってください。最終確認は専門家に依頼するのが確実です。

定款づくりは、記載事項の整理と条文の体裁というAIが得意な作業と、適法性の判断という人が担うべき作業がはっきり分かれています。たたき台の作成をAIに任せて時間を生み出し、専門的な判断に集中する——この分担が、会社設立業務の質とスピードを両立させる近道です。まずは無料で、定款の下書きにAIがどこまで使えるかを試してみてください。

参考文献

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