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月額変更届の書き方|随時改定の3要件・2等級の判定例と記入例【2026年】

月額変更届(正式名称「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」)は、昇給・降給などで給与が大きく変わった従業員の標準報酬月額を、年1回の定時決定を待たずに改定するための届出です。①固定的賃金が変わり、②変動後3か月の平均で標準報酬月額が2等級以上ずれ、③その3か月とも支払基礎日数が17日以上。この3つがそろったら、変動後の給与を初めて支払った月から数えて4か月目に等級が切り替わり、事業主は「速やかに」届け出ます。

書くこと自体は難しくありません。迷うのは「この人は対象か」の判定です。この記事では、日本年金機構の様式・記入例と健康保険法・厚生年金保険法の条文を確認しながら、2026年度の標準報酬月額表で実際に検算した判定例と、欄ごとの書き方を整理します。

この記事で分かること

  • 随時改定(月変)の3要件と、該当・非該当の早見表
  • 昇給・手当新設・時給変更・残業増だけの場合の判定例(2026年度の等級表で検算済み)
  • 1等級差でも月変になる「上限・下限の特例」
  • 月額変更届の欄別の記入例(①〜⑱)と、提出先・期限・電子申請
  • 改定月と、給与から引く保険料が実際に変わる月
  • 遡及昇給・休職・育休明けなど、間違えやすいケース
  • 3か月判定をAIに検算させるときのプロンプト例

月額変更届とは|随時改定のしくみと定時決定との違い

昇給・降給から4か月目に標準報酬月額を改定する届出

健康保険料と厚生年金保険料は、給与そのものではなく「標準報酬月額」という区切りのよい金額に料率をかけて計算します。標準報酬月額は通常、毎年7月の算定基礎届で決め直します(定時決定)。ただ、年の途中で基本給が上がったのに翌年9月まで古い等級のままでは、実際の給与と保険料がかけ離れてしまいます。そこで設けられているのが随時改定で、そのための届出が月額変更届です。

根拠は健康保険法第43条と厚生年金保険法第23条です。条文は「継続した三月間(各月とも、報酬支払の基礎となつた日数が、十七日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を三で除して得た額」が従前の報酬月額と比べて「著しく高低を生じた場合」に、「その著しく高低を生じた月の翌月から」改定できると定めています。3か月目の翌月なので、変動月から数えて4か月目が改定月です(e-Gov法令検索・健康保険法/同・厚生年金保険法)。

「著しく高低」が具体的に何等級かは条文に書かれていません。実務の基準は日本年金機構の案内にある「2等級以上の差」です(日本年金機構「随時改定(月額変更届)」)。

定時決定(算定基礎届)との関係

随時改定で決まった標準報酬月額は、1〜6月に改定されたものはその年の8月まで、7〜12月に改定されたものは翌年8月まで使います(健康保険法第43条第2項)。そして7月・8月・9月のいずれかの月から随時改定される人は、その年の定時決定の対象から外れます(健康保険法第41条第3項)。7月改定の人は算定基礎届に載せず、8月・9月改定の見込みがある人は申し出て算定基礎届を省略できます。この扱いは算定基礎届の書き方と定時決定の対象外になる人の整理で詳しく説明しています。

比較

定時決定(算定基礎届)

随時改定(月額変更届)

きっかけ

毎年必ず

固定的賃金の変動

対象の月

4月・5月・6月

変動月から3か月

日数基準

17日未満の月は除いて平均

3か月とも17日以上が必要

適用開始

9月

変動月から4か月目

提出期限

7月1日〜7月10日

速やかに

定時決定は「17日未満の月を除いて平均する」のに対し、随時改定は「1か月でも欠けたら対象外」です。同じ17日でも扱いが逆なので、担当者が混同しやすいところです。

随時改定の3要件を早見表で確認

随時改定は次の3つをすべて満たしたときに行われます。1つでも欠ければ月額変更届は出しません。

要件

中身

判定のコツ

①固定的賃金
の変動

基本給・時給単価・固定手当などが変わった

残業代など変動する賃金だけの増減は対象外

②2等級以上
の差

変動月から3か月の報酬平均で出した等級と、従前の等級の差が2以上

平均には残業代も含める。上限・下限は1等級差でも可

③支払基礎日数

3か月とも17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)

月給制は暦日数、日給・時給制は出勤日数

要件1:固定的賃金の変動とは

固定的賃金とは、支給額や支給率があらかじめ決まっている賃金です。日本年金機構は、昇給・降給、日給から月給への変更などの給与体系の変更、日給・時給の単価の変更、歩合率の変更、住宅手当・役付手当などの固定的な手当の追加・額の変更、一時帰休で3か月を超えて休業手当が続いた場合とその解消を例に挙げています。通勤手当の額の変更も、同機構の記入例で月変の理由として扱われています。

ケース

固定的賃金の変動か

基本給の昇給・降給

該当

時給・日給の単価変更

該当

時給は同じで
契約時間を変更

該当(1日8時間→6.5時間など)

役職手当・住宅手当の
新設・額変更

該当

通勤手当の額の変更

該当(転居・経路変更など)

残業手当の支給単価
(割増率)の変更

該当

残業時間だけが増減

非該当

休職による休職給

非該当

減給制裁

非該当

契約時間の変更、割増率の変更、減給制裁の扱いは、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」に示されています。事例集では、超過勤務手当のような非固定的な手当でも、その手当自体の廃止や新設は賃金体系の変更として随時改定のきっかけになるとされています。「残業代は関係ない」と覚えるのではなく、「時間数の増減は関係ないが、制度の変更は関係する」と覚えるほうが正確です。

要件2:3か月平均で2等級以上の差

比べるのは、変動月以後3か月の報酬の平均額を等級表に当てはめた等級と、今の等級です。平均には変動した固定的賃金だけでなく、残業代などの非固定的賃金も含めた報酬全体を入れます。基本給が2万円上がっても残業が減れば2等級に届かないことがあり、逆に昇給幅が小さくても残業が増えて2等級に届くこともあります。

ただし方向は一致している必要があります。固定的賃金が上がったのに平均が2等級下がった場合、固定的賃金が下がったのに平均が2等級上がった場合は、どちらも随時改定の対象外です。

要件3:3か月とも支払基礎日数17日以上(短時間労働者は11日)

支払基礎日数とは、給与計算の対象になった日数です。月給制・週給制なら暦日数、日給制・時給制なら出勤日数で数えます。月給者が欠勤控除を受けた場合は、就業規則などで定めた日数から欠勤日数を引いた日数になります。特定適用事業所に勤める短時間労働者は11日以上が基準です。3か月のうち1か月でも基準に届かなければ随時改定は行いません。

1等級差でも月変になる「上限・下限の特例」

等級表の一番上と一番下では、2等級の差がそもそも生じない場合があります。そのため、上限・下限にかかる等級変更は1等級差でも随時改定の対象になります。日本年金機構が示している条件は次のとおりです。

ケース

従前

3か月平均

改定後

厚生年金・昇給

31等級 62万円

66.5万円以上

32等級 65万円

厚生年金・降給

32等級 65万円(報酬月額66.5万円以上)

63.5万円未満

31等級 62万円

厚生年金・昇給

1等級 8.8万円(報酬月額8.3万円未満)

9.3万円以上

2等級 9.8万円

健康保険・昇給

49等級 133万円

141.5万円以上

50等級 139万円

健康保険・昇給

1等級 5.8万円(報酬月額5.3万円未満)

6.3万円以上

2等級 6.8万円

上限の側では、平均がちょうど次の等級に入っただけでは足りず、「本来なら2等級上がる水準」まで届いて初めて1等級差の改定になります。役員報酬を見直した顧問先で見落としやすいところです。

該当/非該当の判定例【2026年度の標準報酬月額表で検算】

ここからは数値例で判定します。等級は日本年金機構の保険料額表(令和8年度版)で当てはめています。協会けんぽの健康保険の等級は、この範囲では厚生年金の等級に3を足した番号です。どの例も通勤手当を含めた総支給(税・社会保険料控除前)で計算しています。

報酬月額の範囲

標準報酬月額

厚生年金

健康保険

17.5万〜18.5万円未満

18万円

12等級

15等級

19.5万〜21万円未満

20万円

14等級

17等級

23万〜25万円未満

24万円

16等級

19等級

25万〜27万円未満

26万円

17等級

20等級

27万〜29万円未満

28万円

18等級

21等級

29万〜31万円未満

30万円

19等級

22等級

31万〜33万円未満

32万円

20等級

23等級

33万〜35万円未満

34万円

21等級

24等級

例1:基本給の昇給(該当)

月給制、当月末締め当月払いの会社です。従前の標準報酬月額は26万円(厚生年金17等級)。10月支給分から基本給が3万円上がりました。10月302,000円(31日)、11月298,000円(30日)、12月306,000円(31日)で、総計906,000円、平均302,000円です。302,000円は「29万〜31万円未満」なので30万円(19等級)。17等級から19等級で2等級差=該当。改定月は変動月の10月から数えて4か月目の2027年1月です。

例2:昇給したが1等級差(非該当)

従前30万円(19等級)の人が、4月支給分から1万円昇給しました。4月318,000円、5月312,000円、6月320,000円で平均316,666円、等級は32万円(20等級)です。差は1等級なので月額変更届は出しません。4〜6月の報酬は、その年の算定基礎届で9月の定時決定に反映されます。

例3:役職手当の新設(該当)

従前24万円(16等級)の人に、1月支給分から役職手当2万円が新設されました。1月271,000円、2月268,000円、3月274,000円で平均271,000円、28万円(18等級)です。2等級差=該当で、改定月は4月です。2月は暦日数が28日ですが、月給制なので17日以上の要件は満たしています。

例4:時給の引上げ(該当/1か月欠けると非該当)

1日8時間・月20日前後働く時給制の一般被保険者です。時給1,100円で従前の標準報酬月額は18万円(12等級)。最低賃金の改定に合わせて、10月支給分から時給を1,250円に上げました。10月は出勤20日で200,000円、11月は19日で190,000円、12月は21日で210,000円。平均200,000円で20万円(14等級)となり、2等級差=該当です。

ところが11月の出勤が16日だった場合は、金額に関係なく要件3を満たさないため非該当です。時給者は出勤日数で数えるので、シフトの少ない月が1か月入るだけで月変から外れます。最低賃金の改定時期に時給者の単価をまとめて見直す流れは、最低賃金の改定対応と顧問先の給与見直しの実務でも扱っています。

例5:残業が増えただけ(非該当)

従前28万円(18等級)。繁忙期で残業が増え、3か月の平均は338,333円(34万円・21等級)になりました。3等級上がっていますが、固定的賃金が変わっていないので非該当です。高い報酬が4〜6月に重なれば定時決定に反映されますし、毎年決まった時期に繁忙になる業種なら年間平均による算定も検討します。

例6:昇給したのに平均が下がった(非該当)

従前34万円(21等級)。4月に基本給が5,000円上がりましたが、残業が大きく減って平均は301,000円(30万円・19等級)になりました。2等級下がっていますが、固定的賃金は上がっています。上がった変動で下方向の改定はしないので非該当です。

月額変更届の書き方|欄別の記入例

様式は日本年金機構の月額変更届の様式・記入例のページからダウンロードできます。健康保険(協会けんぽ)と厚生年金は1枚の用紙に併記します。以下は例1(10月昇給・2027年1月改定)の書き方です。年月の欄は和暦の数字で書く様式なので、カッコで西暦を補っています。

欄

書き方

例1での記入

①被保険者整理番号

資格取得時に払い出された番号

12

②氏名

被保険者の氏名

(氏名)

③生年月日

元号を数字にして記入(5=昭和、7=平成)

7-080415

④改定年月

変動後の給与を初めて支払った月から4か月目

9年1月(2027年1月)

⑤従前の
標準報酬月額

健保・厚年それぞれ千円単位

健260 厚260

⑥従前改定月

今の等級が適用され始めた年月

8年9月(2026年9月)

⑦昇(降)給

変動後の給与を支払った月と、昇給・降給の別

10月 1.昇給

⑧遡及支払額

差額を後からまとめて払った月と金額

(なし)

⑨給与支給月

実際に給与を支払った月(計算対象月ではない)

10月・11月・12月

⑩給与計算の
基礎日数

月給制は暦日数、時給・日給制は出勤日数

31日・30日・31日

⑪通貨

金銭で払った報酬(残業代・通勤手当を含む)

302,000・298,000・306,000

⑫現物

食事・住宅など現物給与の価額

0

⑬合計

⑪+⑫

⑪と同じ

⑭総計

3か月分の⑬の合計

906,000

⑮平均額

⑭÷3(1円未満切捨て)

302,000

⑯修正平均額

遡及支払額などを除いた平均

(なし)

⑰個人番号

70歳以上被用者の場合のみ記入

(記入不要)

⑱備考

該当する番号に○、理由を記入

4.昇給・降給の理由(基本給の変更)

⑨〜⑯ 報酬欄で間違えやすい点

⑨は給与の対象期間ではなく、実際に支払った月です。日本年金機構の記入例にも欄外に注記があります。末締め翌月払いの会社で「10月分の給与」を11月に払うなら、⑨は11月と書きます。変動月を数え間違えると、④の改定年月まで1か月ずれます。

⑪には残業代・通勤手当も含めた総支給を書きます。定期券を6か月分まとめて支給している場合は、1か月あたりの額に割り戻して各月に入れます。何が報酬に入るかの線引きは算定基礎届と共通です。

④改定年月と⑱備考欄

日本年金機構は、月額変更届で改定年月の記入漏れ・誤りが多いとして注意を呼びかけています(届出不備や誤りの多い事例(月額変更届))。同ページの例でも、変動後の給与を初めて支払ったのが10月なら改定年月は翌年1月です。

⑱備考には、短時間労働者なら「3.短時間労働者(特定適用事業所等)」に○をつけ、昇給・降給の理由は「4.」のカッコ内に書きます。日本年金機構の記入例では「基本額の変更」「通勤手当額の変更」といった書き方です。変動月から改定月の前月までに一般被保険者と短時間労働者の区分が変わった場合は、変更後の賃金を支払った月と新しい区分(例:「6月 短時間」)も書きます。

提出先・提出期限・電子申請

提出期限は「速やかに」

月額変更届の期限は、健康保険法施行規則第26条・厚生年金保険法施行規則第19条で「速やかに」とされており、日数は決まっていません。3か月目の給与を支払って平均が出た時点で判定できるので、実務では3か月目の給与支払後すぐに作るのが基本です。例1なら12月の給与支払後、年明け早々に提出します。

提出先は事務センターか年金事務所

提出先は、事業所を管轄する日本年金機構の事務センターまたは年金事務所です。提出方法は電子申請・郵送・窓口持参から選べます。健康保険組合に加入している事業所は、健康保険分を健康保険組合へ、厚生年金分を日本年金機構へ別々に出します(健康保険法施行規則第26条第1項)。健保組合独自の様式や締切がある場合もあるので、組合の案内も確認してください。

特定法人は電子申請が義務

資本金・出資金が1億円を超える法人などの特定法人は、月額変更届を電子申請で出さなければなりません(健康保険法施行規則第26条第3項、厚生年金保険法施行規則第19条第4項)。義務がない事業所でも、日本年金機構は電子申請を勧めています。顧問先の件数が多い事務所ほど、紙の転記と郵送の手間が減ります。届出事務全体の進め方は社会保険の届出事務をAIで効率化する手順にまとめています。

改定月と保険料が変わるタイミング

改定月は「その月分の保険料から新しい等級で計算する」という意味です。一方、事業主が給与から引けるのは前月分の保険料です(健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条)。そのため翌月徴収の会社では、控除額が変わるのは改定月の翌月に払う給与からです。

例1の流れ

時期

昇給後の給与を
初めて支払った月

2026年10月

3か月の平均が出る

2026年12月の給与支払後

月額変更届の提出

速やかに(2027年1月上旬が目安)

改定月
(新等級の保険料)

2027年1月分(2月末納付分)

給与から引く額が
変わる給与

2027年2月支給分(翌月徴収の場合)

当月分を当月の給与から引いている会社では、1月支給の給与から変わります。顧問先ごとに控除のルールが違うことはよくあるので、賃金台帳の控除欄で「何月分の保険料を引いたか」を追える状態にしておくと、切替ミスに気づきやすくなります。決定通知書が届いたら給与ソフトの等級マスタを更新し、切り替えた月を顧問先に一言伝えておくと問い合わせが減ります。

よくあるミスと迷いやすいケース

残業代など非固定的賃金だけの変動で出してしまう

いちばん多いのは、例5のように「給与が大きく上がったから月変」と判断してしまうケースです。月額変更届の出発点はあくまで固定的賃金の変動です。給与の総額だけを見て判定せず、まず「何が変わったか」を給与明細の項目単位で確認するのが確実です。反対に、昇給がなくても固定手当の新設・廃止や通勤手当の変更で月変になることもあります。

遡及昇給は「差額を払った月」が変動月

4月に昇給が決まり、2月にさかのぼって適用した場合を考えます。新しい基本給と2月・3月分の差額5万円を、まとめて4月の給与で払いました。このときの変動月は差額を払った4月で、平均からは差額を除きます。

従前26万円(17等級)、4月348,000円(差額50,000円を含む)、5月296,000円、6月302,000円とします。⑭総計は946,000円、⑮平均額は315,333円。ここで止めると32万円(20等級)になり、差は3等級です。正しくは差額を除いた⑯修正平均額(946,000円−50,000円)÷3=298,666円で、30万円(19等級)。2等級差で該当しますが、等級は1つ低くなります。⑧遡及支払額に「4月・50,000円」を書き、⑯を忘れずに埋めてください。この人は7月改定なので、その年の算定基礎届の対象からも外れます。

給与計算期間の途中で昇給した場合

末締め翌月末払いの会社で、15日から時給が上がったとします。翌月払いの給与には新しい単価が半月分しか入っていません。事例集では、新しい単価の給与が1か月分そろった月を変動月にするとされています。この例では昇給の翌々月に払う給与から数えます。

休職中の昇給と、休職給を挟む3か月

休職して低額の休職給を受けること自体は、固定的賃金の変動に当たりません。休職中に昇給があった場合は、休職給では昇給が正しく反映されないため、休職が終わって通常の給与に戻った月から3か月の平均で判定します。反対に、昇給後の3か月の途中で休職に入り休職給が混ざっても、どの月も支払基礎日数が17日以上あれば随時改定の対象のままです。いずれも事例集に示された扱いです。

産休・育休で無給の期間中に昇給した場合は、実際に昇給後の給与を受けた月が起算月です。ただし、給与計算期間の途中で休業に入った、または途中で復帰したために3か月の中に17日未満の月がある場合は、通常の月変には当たりません。

育休明けは「育児休業等終了時報酬月額変更届」と比べて選ぶ

育休から短時間勤務で復帰して給与が下がった人は、固定的賃金が変わっていない(時間が減っただけ)、あるいは17日未満の月がある、などの理由で通常の月変に当たらないことがあります。そのために別の手続きがあるのが育児休業等終了時報酬月額変更届です(健康保険法第43条の2、厚生年金保険法第23条の2)。産前産後休業の終了時にも同じしくみの届出があります(健康保険法第43条の3)。

比較

月額変更届

育児休業等終了時
報酬月額変更届

きっかけ

固定的賃金の変動

3歳未満の子を養育しての育休終了

等級差

2等級以上

1等級以上

日数

3か月とも17日以上

17日以上の月が1か月以上(17日未満の月は除いて平均)

起算月

変動後の給与を支払った月

育休終了日の翌日が属する月

届出の主体

事業主の義務

本人の申出を受けて事業主が提出

育休明けの改定は本人の申出が前提なので、顧問先から「戻ってきた人の保険料が高いまま」と相談されたら、まずこちらに当たるかを確認します(日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」)。

AIの使いどころ|3か月判定の検算プロンプト

月額変更届の作業のうち、3か月の数字の拾い方と平均の計算はAIに検算させやすい部分です。正解が賃金台帳にあり、人が答え合わせできるからです。一方で、等級の当てはめや保険料額をAIに答えさせるのは避けます。古い年度の等級表や料率がもっともらしく出てくることがあるためです。等級は保険料額表で人が確認します。

次のプロンプトは、氏名や個人番号を入れず、日数と金額だけを渡す前提です。等級表の境界は、その年の保険料額表から自分で写して貼り付けます。

あなたは社会保険事務に詳しいアシスタントです。
以下は随時改定(月額変更届)の判定用データです。氏名は伏せています。

区分:【一般/特定適用事業所の短時間労働者】
給与形態:【月給/時給/日給】
従前の標準報酬月額:【260,000】円(厚生年金【17】等級)
固定的賃金の変動内容:【基本給 +30,000円】
変動後の給与を初めて支払った月:【10】月
遡及支払額:【なし/〇月に〇〇円】

【10】月:支払基礎日数【31】日、通貨【302,000】円、現物【0】円
【11】月:支払基礎日数【30】日、通貨【298,000】円、現物【0】円
【12】月:支払基礎日数【31】日、通貨【306,000】円、現物【0】円

参考:等級表の境界(私が保険料額表から写したもの)
【29万円以上31万円未満 → 30万円(厚年19等級)など、前後数等級分】

次の順に、計算過程を省略せずに確認してください。
1) 3か月とも支払基礎日数の基準(一般17日/短時間11日)を満たすか
2) 総計と平均額(1円未満切捨て)。遡及支払額があれば、それを除いた修正平均額も
3) 上の境界表に当てはめた等級と、従前等級との差
4) 固定的賃金の増減の向きと、平均の増減の向きが一致しているか
5) 以上から、随時改定に該当する可能性が高いか。改定年月はいつか

境界表にない等級や保険料額は推測で答えず「表に無い」と書いてください。

うまくいかない例は「この人は月変ですか?」とだけ聞くケースです。要件3の日数や向きの一致を飛ばして、「平均が2等級上がったので該当」と返ってくることがあります。確認の順番を番号で指定し、各段階の途中経過を出させると、どこで判断を誤ったかを人が追えます。

もう1つ便利なのが、顧問先から昇給情報を集める段階での使い方です。月変の見落としは、そもそも事務所に昇給の情報が届いていないことから起きます。

あなたは社会保険労務士事務所のアシスタントです。
顧問先の給与担当者に毎月送る「月額変更届の確認依頼」の文面を作ってください。

条件:
・専門用語は使わず、「基本給・時給・手当の金額が変わった人はいますか」という聞き方にする
・確認してほしい項目を箇条書きで:基本給の変更、時給・日給の変更、
 手当の新設・廃止・金額変更、通勤手当の変更、勤務時間(契約時間)の変更、
 さかのぼって支払った差額の有無
・残業代が増えただけの場合は報告不要と明記する
・返信の締切は【毎月〇日】
・300字程度、丁寧だが短く

この文面で集まった情報を賃金台帳と突き合わせ、1件目のプロンプトで検算する流れにすると、判定の抜けと計算のミスを両方減らせます。給与明細全体をAIで点検する方法は、給与計算のチェックに使えるAIプロンプト集も参考にしてください。士業AIでは、こうした依頼文の作成や届出の段取りの整理を社労士業務向けに使えるようにしています。具体的な活用イメージは社労士・士業スタッフ向けのAI活用ページで紹介しています。

よくある質問

月額変更届の提出が遅れたらどうなりますか?

期限は「速やかに」で日数の定めはありません。ただ、改定月は届出の日ではなく給与の変動で決まるため、遅れて出すと、すでに控除・納付した保険料との差額を後から精算することになりがちです。従業員への説明も手間が増えます。昇給月が分かった時点で、3か月後に判定する予定を入れておくのが確実です。遅れが大きい場合の扱いは、管轄の年金事務所に確認してください。

2等級以上下がった場合も届け出る必要がありますか?

はい。降給などで固定的賃金が下がり、平均が2等級以上下がった場合も月額変更届の対象です。保険料が下がる方向なので本人には有利ですが、出し忘れると高い保険料を払い続けることになります。

健康保険だけ、厚生年金だけ2等級差になることはありますか?

あります。厚生年金の上限は32等級65万円で、健康保険の上限は50等級139万円と幅が違うため、高い報酬の人では片方だけ等級が動くことがあります。上限付近の人については、どちらで要件を満たしているかを個別に確認し、迷う場合は年金事務所に確認してください。なお、厚生年金の上限は2025年の年金制度改正法により、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます。上限の特例にかかる金額もそれに合わせて変わる見込みなので、2027年9月以降は日本年金機構の最新の案内を確認してください。

賞与が増えた場合は月額変更届の対象ですか?

年3回以下の賞与は標準報酬月額ではなく標準賞与額の対象なので、月額変更届とは関係ありません。支給のたびに賞与支払届を出します。書き方は賞与支払届の書き方と記入例をご覧ください。入社時の標準報酬月額の決め方は資格取得届の書き方で解説しています。

まとめ

月額変更届は、固定的賃金の変動・3か月平均で2等級以上の差・3か月とも17日(短時間労働者は11日)以上の3つがそろったときに、変動月から4か月目の改定として「速やかに」届け出る手続きです。書き方そのものより、「何が変わったか」「どの月を変動月にするか」の判定で差がつきます。

  • 残業代だけの増減は対象外。ただし手当の新設・廃止、通勤手当の変更は対象になる
  • ⑨は給与を払った月。末締め翌月払いでは1か月ずれる
  • 遡及昇給は差額を払った月が変動月で、⑯修正平均額で判定する
  • 上限・下限は1等級差でも改定。厚生年金の上限は2027年9月から段階的に上がる
  • 控除額が変わるのは、翌月徴収なら改定月の翌月に払う給与から
  • 育休明けで給与が下がった人は、育児休業等終了時報酬月額変更届も検討する

判定の検算や顧問先への確認依頼の文面づくりは、AIに任せやすい作業です。等級と保険料は必ずその年の保険料額表で人が確認する、という線を守ったうえで取り入れてみてください。

参考文献

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