社会保険の資格取得届の書き方|4月入社の記入例・5日以内の期限と添付書類
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届(以下「資格取得届」)は、従業員を採用して社会保険に加入させるときに、事実発生(入社)から5日以内に事業主が日本年金機構へ出す届出です。1枚の様式で健康保険と厚生年金保険の加入をまとめて届け出ます。70歳以上の人を採用したときの「70歳以上被用者該当届」も同じ様式を使います。
この記事では、日本年金機構の様式と記入例に沿って①〜⑫の欄ごとの書き方と、4月入社を想定した架空の数値での記入例をまとめました。差し戻しの多い事例、2026年10月の短時間労働者の賃金要件の撤廃、雇用保険の資格取得届との違いも整理しています。
この記事で分かること
- 資格取得届を出す対象者と、提出期限「事実発生から5日以内」の考え方
- 2026年10月1日から変わった短時間労働者の加入要件と、備考欄の新しい選択肢
- 健康保険・厚生年金の資格取得届と、雇用保険の資格取得届(ハローワーク・翌月10日まで)の違い
- ①〜⑫の欄ごとの書き方と、報酬月額(通貨・現物・合計)の計算方法
- 4月入社の新卒・パート・定年後再雇用の記入例(架空の数値)
- 差し戻しが多い6つのミスと、電子申請・郵送・窓口での提出方法
資格取得届とは|入社から5日以内に年金機構へ出す届出
様式(コード2200)は、日本年金機構の「従業員を採用したとき」のページからPDF・エクセルと記入例をダウンロードできます。1枚に4人まで書けます。
誰について出すか|正社員・4分の3以上のパート・短時間労働者
適用事業所に「常時使用される人」は、国籍や性別、賃金の額に関係なく被保険者になります。従業員が年金を受け取っている人でも、加入要件を満たしていれば届出が必要です(日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」)。パート・アルバイトは、次の基準で判断します。
区分 | 加入の基準 | 備考欄 |
|---|---|---|
正社員など通常の労働者 | 常時使用される人は原則すべて加入 | 記入なし |
短時間就労者(パート) | 1週の所定労働時間と1月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務をする通常の労働者の4分の3以上 | 記入なし(通常の被保険者) |
短時間労働者 | 特定適用事業所・任意特定適用事業所・国や地方公共団体の事業所で、4分の3未満でも週の所定労働時間が20時間以上かつ学生でない | 「3.短時間労働者の取得」に○ |
特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数(短時間労働者を除く、法人は同じ法人番号の事業所の合計)が1年のうち6か月以上51人以上になると見込まれる企業等です。なお、2か月以内の期間を定めて使用される人や臨時に使用される人などは、加入の対象から除かれます(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」)。
提出期限は「事実発生から5日以内」
「事実発生」は、原則として適用事業所に使用されるようになった日(事実上の使用関係が生じた日)です。4月1日入社なら、入社式や研修の週のうちに提出まで終えるスケジュールになります。
新卒の一斉入社では、内定者からマイナンバーや扶養家族の情報を3月中に集めておくと、入社後の作業は入力と確認だけで済みます。
出し忘れると保険料をさかのぼって払うことになる
届出が必要な人の資格取得届を出していなかったことが後で分かった場合、資格取得届を出したうえで、事実が発生したときまでさかのぼって保険料を払うことになります。老齢厚生年金の受給者なら、支払停止もさかのぼって行われ、年金の返納が生じる場合があります。
2026年10月1日から変わった点|短時間労働者の賃金要件の撤廃
短時間労働者の加入要件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。日本年金機構と厚生労働省のチラシ「2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃と最低賃金の減額特例の対象者に関する制度が始まります!」によると、10月1日以降は、週20時間以上・企業規模・学生でないことの3つを満たせば、短時間労働者として加入の対象になります。いわゆる「106万円の壁」との関係や扶養への影響は106万円の壁の撤廃と130万円の壁・適用拡大の早見表で整理しています。
新しく加わった「特定減額特例対象者」
賃金要件の撤廃にあわせて、「特定減額特例対象者」の制度が始まりました。最低賃金の減額の特例許可(最低賃金法第7条)を受けていて、所定内賃金が月額8.8万円未満の短時間労働者が該当します。この人たちは原則として加入の対象外ですが、本人が事業主を経由して申し出れば任意に加入できます。申し出に事業主の同意は要りません。
従業員から申出書を受け取った事業主は、資格取得届の⑩備考欄で「6.特定減額特例対象者の任意取得」に○をし(⑦取得年月日は記入不要)、申出書とあわせて速やかに提出します。資格の取得日は、年金機構が申出書を受理した日です。
企業規模の要件は2027年10月から段階的に広がる
企業規模の要件は残っています。日本年金機構の適用拡大のご案内では、令和9年(2027年)10月から対象が「厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等」に広がり、令和11年10月以降も段階的に拡大すると案内されています。
健康保険・厚生年金と雇用保険の資格取得届の違い
入社手続きでは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険の2つの資格取得届を出します。名前は似ていますが、提出先も期限も加入の基準も違います。
項目 | 健康保険・厚生年金保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所(日本年金機構) | 事業所の所在地を管轄するハローワーク |
提出期限 | 事実発生から5日以内 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
4月1日入社の場合 | 入社から5日以内(4月上旬) | 5月10日まで |
パートの加入基準 | 4分の3基準、または短時間労働者の要件(週20時間以上・企業規模・学生でない) | 31日以上の雇用見込みがあり、週の所定労働時間が20時間以上 |
資本金1億円超の法人の電子申請義務 | 資格取得届は義務の対象外(義務は算定基礎届・月額変更届・賞与支払届) | 資格取得届も義務の対象 |
出典は厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」と、リーフレット「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。」です。資本金1億円超の法人では、雇用保険側だけ電子申請が必要になる点に注意してください。
提出前に集める情報と添付書類
本人から受け取るもの
- マイナンバー(個人番号):番号法に基づく本人確認(番号確認と身元確認)をしたうえで記入します。マイナンバーカードの提示を受けるのが確実です。
- 基礎年金番号:マイナンバーが記入できない場合に使います。基礎年金番号通知書や年金手帳で10桁を確認します。
- 住民票どおりの氏名・生年月日・住所:年金機構は原則として住民票上の氏名と住所で記録を管理しています。
- 扶養家族の有無:配偶者や子を扶養に入れる場合は、被扶養者(異動)届も同時に出します。
- 雇用契約書・労働条件通知書:報酬月額と所定労働時間を確認する元資料です。
報酬月額の欄は、通知書の賃金の記載から作るのが基本です。記載事項の整え方は労働条件通知書をAIで作成する手順と2024年改正の明示事項で解説しています。
添付書類は原則不要、例外は2つ
資格取得届には、原則として添付書類は要りません。例外は次の2つです。
ケース | 添付するもの |
|---|---|
60歳以上の人が退職後1日の間もなく再雇用された(同日付の資格喪失届も必要) | ①就業規則・退職辞令の写し(退職日が分かるもの)と②雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるもの)の両方、または③「退職日」と「再雇用された日」に関する事業主の証明書 |
国民健康保険組合に引き続き加入する(国保組合の理事長が認めた場合に限る) | 健康保険被保険者適用除外承認申請書(事実発生日から14日以内。やむを得ず遅れた場合は理由書も) |
外国籍の従業員で、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない人や番号制度の対象外の人は、「厚生年金保険被保険者ローマ字氏名届」をあわせて出します。電子申請の場合に限り、ローマ字氏名届をPDFやJPEGの画像で添付できます。
【欄ごと】資格取得届の書き方
ここからは、様式の裏面にある「記入方法」と日本年金機構の記入例(PDF)に沿って、欄ごとの書き方を整理します。
提出者記入欄|事業所整理記号・事業所番号は必ず書く
提出日、事業所整理記号、事業所番号、事業所の所在地・名称、事業主の氏名、電話番号を書きます。事業所整理記号と事業所番号は、新規適用時や名称・所在地変更時に付された記号・番号です。記入例でも「必ず記入」と強調されています。社労士が代行する場合は「社会保険労務士記載欄」に氏名等を書きます。
①被保険者整理番号・②氏名・③生年月日・④種別
- ①被保険者整理番号:年金機構が払い出すので、記入しません。
- ②氏名:住民票に登録されている氏名を書き、フリガナはカタカナで正確に振ります。
- ③生年月日:元号(5.昭和・7.平成・9.令和)を○で囲み、年月日を書きます。
- ④種別:基金に加入していない一般の被保険者は、男性「1」、女性「2」、坑内員「3」を○で囲みます。厚生年金基金の加入員は「5」〜「7」です。
⑤取得区分・⑥個人番号(基礎年金番号)
⑤取得区分は、通常の入社なら「1.健保・厚年」を○で囲みます。
⑥には、本人確認をしたうえでマイナンバー(12桁)を書くのが原則です。マイナンバーを書けない場合は、基礎年金番号通知書などに記載された基礎年金番号10桁を左詰めで書きます。どちらも書かれていない届書は返戻されます。
⑦取得年月日・⑧被扶養者
⑦には、適用事業所に使用されるようになった日(事実上の使用関係が発生した日)を書きます。契約日や内定日ではなく、実際に働き始める日です。70歳以上被用者該当届として出す場合は該当した日を書きます。
⑧は、健康保険の被扶養者がいれば「1.有」、いなければ「0.無」を○で囲みます。「1.有」にしたときは、健康保険被扶養者(異動)届を別に出します。欄ごとの書き方と年収要件の確認は被扶養者異動届の書き方(記入例・年収要件・添付書類)で解説しています。
⑨報酬月額|通貨・現物・合計の3つを必ず埋める
報酬月額は、資格取得時の標準報酬月額を決めるもとになる、いちばん重要な欄です。
- ㋐通貨:給料・手当など、名称を問わず労働の対償として金銭で支払われるものの合計です。基本給のほか、通勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、残業手当なども含みます。臨時に支払うものや、3か月を超える期間ごとに支払う賞与は含めません。
- ㋑現物:食事・住宅・被服・定期券など、金銭以外で支払うものです。食事と住宅は厚生労働大臣が定めた都道府県ごとの価額(全国現物給与価額一覧表)で換算します。現物がなければ「0」と書きます。
- ㋒合計:㋐と㋑の合計です。現物が0でも必ず書きます。
入社時点では給与の支払実績がないため、就業規則や労働契約の内容から金額を出します(日本年金機構「資格取得時の決定」)。月給制なら資格取得日現在の月額を書き、週給制なら週給を7で割って30倍した額を書きます。時給・日給・出来高など実績で報酬が変わる人は、資格取得月の前月1か月間に、同じ事業所で同様の業務をしている人が受けた報酬の平均額を書きます。
残業手当のように月によって変わるものは、見込み額を含めて報酬月額を出します。年金機構のQ&Aでは、資格取得時の標準報酬月額は、固定的賃金の算定誤りなら訂正できるものの、残業代のような非固定的賃金の見込みが増減しても訂正できないとされています。見込みの根拠(同じ部署の平均残業時間など)は記録に残しておきます。
⑩備考|該当する人だけ番号を○で囲む
番号 | ○をつける場面 |
|---|---|
1.70歳以上被用者該当 | 70歳以上の人を採用したとき(在職中に70歳になった人は別の「70歳到達届」) |
2.二以上事業所勤務者の取得 | 他社でも加入している人。本人が10日以内に所属選択・二以上事業所勤務届を出す |
3.短時間労働者の取得(特定適用事業所等) | 短時間労働者として加入させるとき |
4.退職後の継続再雇用者の取得 | 60歳以上の定年後再雇用で同日得喪をするとき(資格喪失届も同時に出す) |
5.その他 | 共済組合の短期給付との調整などのケースで、( )内に理由を書く |
6.特定減額特例対象者の任意取得 | 特定減額特例対象者が申し出て加入するとき |
⑪住所・⑫資格確認書発行要否
⑥にマイナンバーを書いた場合、⑪住所は記入不要です。基礎年金番号を書いた場合は、住民票の住所を都道府県から漢字で、マンション名まで正確に書き、フリガナを振ります。
⑫は、資格確認書の発行が必要な人だけ「□発行が必要」にチェックを入れます。対象は、マイナンバーカードを取得していない人・返納した人、カードはあるが健康保険証の利用登録をしていない人や利用登録を解除した人、カードの電子証明書の有効期限が切れている人に限られます。
4月入社の記入例(架空の数値)
ここでは、協会けんぽに加入している架空の会社「株式会社サンプル商事」(厚生年金の被保険者数60人の特定適用事業所)に、2027年(令和9年)4月1日に3人が入社したケースで記入例を示します。氏名・金額はすべて架空です。
例1:新卒の正社員(扶養なし・マイナンバーで届出)
欄 | 記入内容 |
|---|---|
②氏名 | 見本 太郎(ミホン タロウ) |
③生年月日 | 7.平成 16年5月20日 |
④種別 | 1(男) |
⑤取得区分 | 1.健保・厚年 |
⑥個人番号 | 本人確認したマイナンバー12桁 |
⑦取得年月日 | 9.令和 9年4月1日 |
⑧被扶養者 | 0.無 |
⑨報酬月額 | ㋐通貨 242,000円(基本給220,000円+住宅手当10,000円+通勤手当12,000円)/㋑現物 0円/㋒合計 242,000円 |
⑩備考・⑪住所 | 記入なし(マイナンバーを書いたので住所は不要) |
新卒で多い誤りは、通勤手当を入れ忘れることです。年金機構のQ&Aでも、通勤手当は報酬に含まれるとされています。
例2:週25時間のパート(短時間労働者)
所定労働時間が週25時間(正社員は週40時間)で、時給1,200円のパートを採用した例です。4分の3基準(週30時間)には届きませんが、特定適用事業所で週20時間以上、学生でもないため、短時間労働者として加入します。
欄 | 記入内容 |
|---|---|
⑦取得年月日 | 9.令和 9年4月1日 |
⑧被扶養者 | 0.無 |
⑨報酬月額 | ㋐通貨 138,000円(3月に同様の業務をしていたパートが受けた報酬の平均。通勤手当を含む)/㋑現物 0円/㋒合計 138,000円 |
⑩備考 | 「3.短時間労働者の取得(特定適用事業所等)」に○ |
時給制なので、月給のように1つの金額で決まりません。資格取得月の前月1か月間に同様の業務をした人の報酬の平均を使います。比べられる人がいなければ、その地方で同様の業務をする人の報酬額で算定するので、年金事務所に相談します。短時間労働者は定時決定のときの標準報酬月額の決め方が一般の被保険者と違うので、備考欄の○を忘れると適正な決定ができない場合があります。
例3:3月末で定年退職し4月1日に再雇用した60歳以上の社員
3月31日に定年退職し、1日も空けずに4月1日から嘱託社員として再雇用したケースです。同日付で資格喪失届と資格取得届を出す(同日得喪)ことで、再雇用後の給与に合わせた標準報酬月額に4月から切り替えられます。
- ⑦取得年月日:9.令和 9年4月1日
- ⑨報酬月額:再雇用後の契約による月額(例:㋐通貨 280,000円/㋑現物 0円/㋒合計 280,000円)
- ⑩備考:「4.退職後の継続再雇用者の取得」に○
- 添付書類:就業規則や退職辞令の写しと再雇用の雇用契約書の写し、または事業主の証明書
資格取得日に60歳以上であることが条件です。年金機構は、4月1日取得なら4月2日以後に60歳の誕生日を迎える人が該当すると例示しています。
4月入社の人は7月の算定基礎届の対象になる
資格取得時に決まった標準報酬月額は、1月〜5月に資格を取得した人ならその年の8月まで使われます(6月〜12月の取得なら翌年8月まで)。そのため4月入社の人は、7月1日〜10日に出す算定基礎届の対象になり、4〜6月の実際の給与で9月から標準報酬月額が決め直されます。
4月の給与が日割りで1か月分そろっていない場合などの書き方は、算定基礎届の書き方(定時決定の記入例・提出期限とAI検算)の備考欄の項目で解説しています。
差し戻しを防ぐチェックと提出方法
差し戻しが多い6つのミス
日本年金機構は資格取得届の届出不備や誤りの多い事例を公表しています。不備があると、一度受け付けた届書が返戻され、出し直しになります。
よくある不備 | 防ぎ方 |
|---|---|
1. ⑦取得年月日の記入漏れ | 入社日ではなく「実際に働き始めた日」を雇用契約書で確認して書く |
2. ⑥マイナンバーの記入漏れ | 入社前にマイナンバーを回収。書けない場合は基礎年金番号を書く |
3. 基礎年金番号を書いたのに⑪住所が空欄 | 基礎年金番号を使うときは住所とフリガナを必ず書く |
4. 短時間労働者の○のつけ忘れ | パートは「4分の3以上か」「短時間労働者か」を先に判定し、⑩備考の3に○ |
5. ⑨報酬月額の合計の記入漏れ | 現物が0円でも「0」と書き、合計欄まで埋める |
6. 定年後再雇用の添付書類の不備 | 退職日と再雇用日が両方分かる書類をそろえ、資格喪失届と一緒に出す |
1〜5はどれも「欄が空いている」ミスです。空欄でよい欄(①整理番号、マイナンバーを書いた人の⑪住所など)とそうでない欄を分けたチェック表を1枚用意しておくと、担当者が替わっても精度が落ちません。
提出方法|電子申請はe-Govか届書作成プログラムで
提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参のいずれでも出せます。電子申請には、e-Govの画面に直接入力する方法と、日本年金機構の無料の届書作成プログラムでデータを作って申請する方法があります。認証には電子証明書やGビズIDを使います。社会保険の手続きに必要な「GビズIDプライム」は無料ですが、年金機構の案内では審査に2週間程度かかります。4月の一斉入社を電子申請で出すなら、2月中にはアカウントを用意しておきたいところです。
提出後に届く書類と従業員への案内
資格の取得が確認され標準報酬月額が決まると、事業所に「資格取得確認および標準報酬決定通知書」が届きます。事業主は、その内容を従業員本人に知らせます。協会けんぽに加入している事業所では、協会けんぽから「資格情報のお知らせ」と、必要な人には「資格確認書」が交付されます。初めて公的年金制度に加入した人には、基礎年金番号通知書が交付されます。
健康保険組合に加入している事業所は、組合の案内もあわせて確認してください。特定減額特例対象者の任意加入のように、年金機構と組合の両方へ同時に出す手続きもあります。
資格取得届の作成でAIを使うところ・使わないところ
社会保険手続き全体でのAIの使い方は社会保険の手続きをAIで効率化する実務で整理しているので、ここでは資格取得届に絞って3つの使いどころを紹介します。
1. 入社書類から記入項目を拾う
労働条件通知書の賃金・労働時間の部分を貼り付け、届書の欄に対応させて書き出させます。氏名やマイナンバーは入れず、条件だけを渡します。
以下は【会社名】で【入社日】に入社する従業員の労働条件通知書の抜粋です(個人情報は削除済み)。
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届の記入に使うため、次の形で整理してください。
・⑨報酬月額の㋐通貨に含める項目と金額(基本給・各種手当・通勤手当・残業の見込み)
・㋑現物に当たるもの(食事・社宅・定期券の現物支給など)の有無
・含めない項目(賞与・臨時の支給)と、その理由
・週の所定労働時間と、正社員の所定労働時間に対する割合
判断できない項目は推測で埋めず「要確認」と書いてください。
【労働条件通知書の抜粋】
(ここに賃金・労働時間の部分を貼り付け)2. 報酬月額の計算を検算する
担当者が出した報酬月額を、AIにもう一度計算させて照らし合わせます。等級を決めさせるのではなく、計算過程を並べさせて人が確認します。
次の内訳で、資格取得届の報酬月額(㋐通貨・㋑現物・㋒合計)を計算してください。
計算式を1行ずつ示し、最後に私の計算結果【担当者の計算額】と一致するかを答えてください。
・基本給:【金額】円(月給)
・手当:【手当名と金額】
・通勤手当:【金額】円(【1か月/6か月】分を支給)
・残業の見込み:【時間】時間 × 【単価】円
・現物給与:【内容と換算額】(なければ0)
一致しない場合は、差額の原因になりそうな項目を挙げてください。3. 新入社員への案内文を作る
入社前に回収するもの(マイナンバーの確認書類、扶養家族の情報、マイナ保険証の利用状況)を、新入社員に分かる言葉で案内するメールの下書きもAIが得意な作業です。会社名・回収期限・提出先をプレースホルダにして作らせ、送る前に担当者が期限と提出方法を確かめます。
AIに任せてはいけないこと
- 加入するかどうかの判定:4分の3基準、短時間労働者、特定減額特例対象者の判定は、2026年10月のように制度が変わります。AIの答えではなく、年金機構の最新のページで確認します。
- 提出期限や制度の数字の確定:期限・人数要件・金額は一次情報で確かめます。
- マイナンバーの入力:マイナンバーや基礎年金番号は、学習に使われない設定かどうかにかかわらず、AIに入力しない運用が安全です。
給与計算側の検算プロンプトは給与計算のチェックをAIで行う検算・社会保険料確認プロンプト集に、入社手続き全体を担う事務所スタッフ向けの活用法は社労士・事務所スタッフ向けの士業AIのページにまとめています。
よくある質問
年金を受け取っている人を採用しても資格取得届は必要ですか?
必要です。加入要件を満たしていれば、年金受給者でも届出が要ります。70歳以上の人は厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、過去に厚生年金保険の加入期間があるなどの要件に当てはまれば、⑩備考の「1.70歳以上被用者該当」に○をして同じ様式で届け出ます。
入社日と⑦の取得年月日がずれることはありますか?
⑦には、事実上の使用関係が発生した日を書きます。たとえば4月1日付の採用でも、研修として3月中から実際に働き報酬を支払っているなら、その働き始めた日が基準になります。雇用契約の日付だけでなく、実際の勤務開始日を確認してください。
まとめ|5日以内・報酬月額・備考欄の3点を押さえる
健康保険・厚生年金保険の資格取得届は、入社から5日以内に日本年金機構へ出す届出です。書き方で差がつくのは、⑥マイナンバー(書けなければ基礎年金番号と住所)、⑨報酬月額の通貨・現物・合計、⑩備考欄の○の3点です。2026年10月からは短時間労働者の賃金要件がなくなり、特定減額特例対象者の任意加入という新しい手続きも始まりました。
4月の一斉入社に向けては、3月中にマイナンバーと扶養の情報を集め、報酬月額を計算し、空欄チェックをしてから出す流れを手順にしておくと差し戻しを防げます。検算や案内文にはAIが役立ちますが、加入の判定と期限は一次情報で確認してください。
参考文献
- 日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」
- 日本年金機構「2-1:従業員を採用したとき」(様式・記入例)
- 日本年金機構「被保険者資格取得届/70歳以上被用者該当届の届出不備や誤りの多い事例」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 厚生労働省・日本年金機構「2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃と最低賃金の減額特例の対象者に関する制度が始まります!」(PDF)
- 日本年金機構「資格取得時の決定」
- 厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
- 厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。」(PDF)
- 日本年金機構「GビズID」

