賞与支払届の書き方|記入例・提出期限5日と電子申請の手順
賞与支払届(正式名称「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」)は、従業員に賞与を支給したときに、支払日から5日以内に日本年金機構へ支給額を届け出る書類です。この届出をもとに「標準賞与額」が決まり、賞与の保険料と将来の年金額の計算に使われます。書き方の要点は、通貨と現物を分けて書き、合計の1,000円未満を切り捨てて「賞与額」欄に書くこと。上限(健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1カ月150万円)は自分で当てはめず、実額を書きます。
この記事で分かること
- 賞与支払届の提出期限・対象になる賞与・総括表の扱い(令和3年3月廃止)
- 項目ごとの書き方と、3人分の記入例
- 標準賞与額の上限、退職月・育児休業中の賞与の扱い
- 賞与不支給報告書の書き方
- よくある記入ミス7つと直し方
- e-Gov・届書作成プログラムでの電子申請の手順
- AIで検算・漏れチェックをするプロンプト例
内容は日本年金機構の「従業員に賞与を支給したときの手続き」(2026年10月6日更新)と、届書様式・記入例のページをもとに整理しています。
賞与支払届とは|まず押さえる3つのルール
提出期限は「賞与支払日から5日以内」
事業主は、被保険者と70歳以上被用者に賞与を支給したら、支払日から5日以内に賞与支払届を提出します。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、方法は電子申請・電子媒体(CD・DVD)・郵送・窓口持参のいずれかです。12月賞与は年末年始の休みと重なりやすいので、支給日が決まった時点で提出日を逆算しておくのが実務の基本です。
日本年金機構に「賞与支払予定月」を登録している事業所には、その前月に氏名・生年月日などを印字した届出用紙が送られてきます。予定月以外に払った場合や、印字されていない人がいる場合は、様式ページからダウンロードして手書きで追記します。
対象は「年3回以下」の賞与。年4回以上は報酬扱い
届出の対象は、名称を問わず労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものです。寸志・決算賞与・期末手当という名前でも対象になります。反対に、年4回以上支給されるものは標準報酬月額(毎月の保険料の基準)の対象となり、賞与支払届は出しません。結婚祝金のように労働の対償とみなされないものは対象外です。
回数は就業規則・賃金規程の定め方で判断します。年金機構は、給与規程で7月と12月に「○○手当」を払うと定めていれば、支給が年2回と明確なので賞与にあたる、という例を示しています。年4回以上で報酬に入れる場合の扱いは算定基礎届の書き方と記入例で解説しています。
「被保険者賞与支払届総括表」は令和3年3月で廃止
以前は届書と一緒に総括表を出していましたが、令和3年3月で廃止され、令和3年4月1日以降は不要です。ただし、電子媒体(CD・DVD)で申請する場合の「電子媒体届書総括票」は引き続き必要です。古い社内マニュアルに「総括表を添付」と残っていないか確認しておきましょう。
【項目別】賞与支払届の書き方と記入例
届書は1枚に10人分まで書けます。項目ごとの書き方は次のとおりです(番号は届書の欄番号)。
項目 | 書き方 | 注意点 |
|---|---|---|
提出日・事業所整理記号 | 届書の提出日と、事業所整理記号(例:00-イロハ)を書く | 整理記号は必須。複数枚なら全ページに |
事業所情報 | 所在地・名称・事業主氏名・電話番号 | 社労士が提出するときは社会保険労務士記載欄も |
④賞与支払年月日(共通) | その届書で届け出る賞与の支払日 | 複数枚にまたがる場合はすべての用紙に記入 |
①被保険者整理番号 | 資格取得時に払い出された番号 | 必須。用紙は整理番号順にそろえて提出 |
②氏名・③生年月日 | 印字済みなら確認のみ | 印字のない人は手書きで追記 |
④賞与支払年月日(個別) | 共通欄と違う日に払った人だけ書く | 同じなら記入不要 |
⑤賞与支払額 ㋐通貨 | 金銭で払った額(税・保険料控除前の総支給額) | 手取り額を書かない |
⑤賞与支払額 ㋑現物 | 現物で払った賞与を金銭に換算した額 | なければ「0」。食事・住宅は厚生労働大臣が定める現物給与の価額による |
⑥賞与額 | ㋐+㋑の合計から1,000円未満を切り捨てた額(千円単位) | 「,000円」は印字済み。10,000千円以上は「9999」 |
⑦個人番号[基礎年金番号] | 70歳以上被用者のときだけ記入 | それ以外は空欄でよい |
⑧備考 | 該当する番号を○で囲む(1.70歳以上被用者/2.二以上勤務/3.同一月内の賞与合算) | 3は初回支払日も書く |
記入例:12月賞与を3人分届け出る場合
12月に賞与を支給し、1人だけ現物(自社製品)を一緒に支給したケースです。年金機構の公式記入例と同じ金額で示します。
被保険者 | ⑤㋐通貨 | ⑤㋑現物 | ⑥賞与額(千円) | ⑧備考 |
|---|---|---|---|---|
Aさん(一般) | 1,624,000円 | 0円 | 1,624 | なし |
Bさん(一般) | 487,500円 | 0円 | 487 | なし |
Cさん(72歳・在職) | 104,000円 | 5,000円 | 109 | 1(70歳以上被用者)+⑦に個人番号 |
Aさんは厚生年金の上限150万円を超えていますが、⑥には実際の額「1,624」をそのまま書きます。上限の適用は年金機構側で行われ、決定内容は「標準賞与額決定通知書」で届きます。Bさんは487,500円の500円を切り捨てて「487」です。
備考欄の3つのチェック
- 1. 70歳以上被用者:厚生年金の被保険者ではない70歳以上の在職者も届出対象です。⑦に個人番号(または基礎年金番号)を書きます。
- 2. 二以上勤務:複数の事業所で被保険者になっている人。
- 3. 同一月内の賞与合算:同じ月に2回以上払ったときは、最後の支払い後にその月の合計額で1行にまとめ、初回支払日を書きます。届出済みの月に追加で払った場合も、同月分をすべて合算して届け出ます。
標準賞与額の上限と保険料の計算
健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1カ月150万円
標準賞与額の上限は、健康保険が年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計573万円、厚生年金保険が1カ月あたり150万円です。同じ月に2回以上払ったときは、合算した額に上限が適用されます。
支給 | 賞与額 | 健康保険の標準賞与額 | 厚生年金の標準賞与額 |
|---|---|---|---|
6月賞与 | 3,000千円 | 3,000千円(累計3,000千円) | 1,500千円 |
12月賞与 | 3,000千円 | 2,730千円(累計5,730千円で頭打ち) | 1,500千円 |
翌年3月賞与 | 500千円 | 0円(同一年度で上限到達後) | 500千円 |
同じ年度に被保険者期間が続いている人は、573万円を超えても特別な書類は要りません。年度の途中で転職・転勤があり、同じ保険者で複数の被保険者期間がある人だけ、本人の申し出に基づき「健康保険 標準賞与額累計申出書」を出します(この申出書は電子申請できません)。健康保険組合に加入している事業所は、健康保険分の取扱いを組合に確認してください。
保険料=標準賞与額×保険料率(労使折半)
賞与の保険料は、毎月の保険料額表を使わず、標準賞与額に保険料率を直接掛けて計算します。厚生年金保険料率は18.3%で、上の例の6月賞与なら1,500,000円×18.3%=274,500円、本人負担はその半分の137,250円です。健康保険料率は都道府県ごとに違うため、協会けんぽの料率表で確認します。
2026年度からは子ども・子育て支援金も始まっています。こども家庭庁のFAQは、ボーナスからも支援金を拠出すると明記しており、協会けんぽの支援金率は令和8年4月分から0.23%です。賞与明細の控除欄の作り方は給与明細テンプレート(賞与明細つき)で確認できます。賞与の保険料は翌月の納入告知書で毎月分とあわせて通知されます。
退職月・育児休業中の賞与も「届出は必要」
保険料がかからない賞与でも、届出が要るケースがあります。現場で漏れやすいのが次の2つです。
- 資格喪失月に払った賞与:保険料はかかりません。ただし健康保険では、喪失日の前日までに払った賞与は標準賞与額として決定され、年度累計に含まれるため届出が必要です。たとえば12月15日退職(喪失日12月16日)で12月10日に払った賞与がこれにあたります。
- 育児休業等の期間中の賞与:保険料は免除されますが、届出は必要です。令和4年10月1日以降に始まった育児休業等は、賞与月の末日を含む連続した1カ月を超える休業の場合に限り、賞与の保険料が免除されます。
賞与不支給報告書の書き方
登録している賞与支払予定月に、誰にも賞与を払わなかった場合は、賞与支払届の代わりに「賞与不支給報告書」を出します。予定月の翌月までに届出がないと、翌々月に催告状が送られてきます。
- 記入する項目:提出日、事業所整理記号・事業所番号、事業所情報、不支給となった賞与支払予定年月
- 今後の支払予定月が登録と違う場合:変更後の予定月を記入
- 賞与の支払予定がなくなった場合:変更後の予定月にすべて「00」を記入
一部の人にだけ払わなかったときは不支給報告書ではなく、届出用紙の該当者欄に斜線を引きます。電子媒体で出すときは、払わなかった人のデータを設定しません。
よくある記入ミス7つと直し方
年金機構は、返戻(差し戻し)が多い例として「賞与支払年月日の記入漏れ」と「賞与額の記入不備」を公表しています。実務で見かけるミスもあわせて整理しました。
よくあるミス | 直し方 |
|---|---|
2枚目以降の「賞与支払年月日(共通)」が空欄 | すべての用紙に記入する。空欄だと再提出になる |
⑤に通貨だけ書き、㋑現物が空欄 | 現物がなくても「0」を書く |
⑥に円単位で「487,500」と書く | 千円単位で「487」。「,000円」は印字済み |
上限を当てはめて⑥に「1,500」と書く | 実額(千円未満切捨て)を書く。上限は機構側で適用 |
手取り額や社会保険料控除後の額を書く | 税・保険料を引く前の総支給額を書く |
同じ月に2回払い、2行に分けて届け出る | 合算して1行にし、備考3に初回支払日を書く |
退職者・育休中の人を「保険料がかからないから」と外す | 喪失日前日までの支払い・育休中の支払いは届出対象 |
ミスの多くは「元データとの突合」で防げます。届出前に、賃金台帳の賞与欄と届書の人数・金額が一致しているかを確認する手順を、事務所の標準チェックに入れておくと安心です。
電子申請の手順(e-Gov・届書作成プログラム)
3つの申請ルートの選び方
ルート | 向いているケース | 準備するもの |
|---|---|---|
労務管理ソフト(市販) | 給与ソフトから届出データを出したい。人数が多い | 電子申請に対応したソフト(認証方法はソフトの案内に従う) |
届書作成プログラム(無料) | 主要な届書だけを費用をかけずに電子化したい | 事業主(または事業主代理人)のマイナンバーカード、またはGビズID |
e-Gov電子申請 | 特別なソフトなしで少人数分を出したい | GビズIDまたは電子証明書 |
届書作成プログラムは、賞与支払届を含む資格取得届・算定基礎届などの主要な届書に対応しています(日本年金機構「電子申請(届書作成プログラム)」)。
e-Govで出す手順
- GビズIDアカウント(または社会保険手続きに使える電子証明書)を用意する
- e-Govのマイページにログインし、「被保険者賞与支払届」の手続きを選ぶ
- 1件ずつ入力する「直接入力方式」か、届書作成プログラム等で作ったCSVを付ける「CSVファイル添付方式」を選ぶ
- 年金機構の賞与支払届の入力例を見ながら入力し、送信する
- 審査完了後、マイページから標準賞与額決定通知書(公文書)を取得し、被保険者本人へ通知する
送信データは機構側で自動チェックされ、不備があれば返戻されます。紙と同じく「支払日から5日以内」が期限なので、返戻を見込んで早めに送るのが安全です。
資本金1億円超の法人は電子申請が義務
資本金・出資金等が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社は、2020年4月以降に始まる事業年度から、賞与支払届を電子申請で行う義務があります。社労士が代わりに手続きする場合も含まれます(厚生労働省「特定の法人の電子申請義務化」)。顧問先の資本金は、増資のタイミングで見直しておきましょう。
AIで検算・チェックするプロンプト例
賞与支払届はルールが決まっている分、AIに検算と漏れ探しを手伝わせやすい書類です。ただし最終判断は人が行い、料率や上限はAIの記憶ではなく一次ソースで確認した値を渡します。顧問先の従業員データは、氏名を記号に置き換えるなど情報管理の手順を守って使ってください。
プロンプト1:賞与額と上限の検算
あなたは社会保険の届出チェック担当です。
以下の賞与データについて、賞与支払届の「⑥賞与額(千円単位)」を計算し、
上限にかかる人を指摘してください。
# ルール(私が日本年金機構のページで確認済み)
- ⑥賞与額=通貨+現物の合計から1,000円未満を切り捨て(千円単位)
- ⑥には上限を当てはめず実額を書く(10,000千円以上は9999)
- 健康保険:年度(4月〜3月)累計573万円が上限
- 厚生年金:1カ月150万円が上限
- 同一月に2回以上の支給は合算
# データ(支払日:【支払日】)
社員記号,通貨,現物,今年度の既決定標準賞与額(健保)
【A】,【金額】,【金額】,【金額】
【B】,【金額】,【金額】,【金額】
# 出力
表形式:社員記号/⑥賞与額/健保の上限超過の有無/厚年の上限超過の有無/確認メモ
計算過程も1行ずつ示してください。プロンプト2:届出対象者の漏れチェック
次の2つのリストを突き合わせ、賞与支払届の記入漏れの可能性がある人を挙げてください。
# リスト1:賃金台帳の賞与支給者(【顧問先名】・【支給年月】)
【社員記号・支給額の一覧】
# リスト2:届書に記入済みの人
【社員記号の一覧】
# 確認してほしい観点
- リスト1にいてリスト2にいない人
- 退職者(喪失日の前日までに支給)・育児休業中の人が外れていないか
- 70歳以上の在職者に備考1と個人番号が付いているか
- 同じ月に2回支給した人が合算されているか
判断がつかない人は「要確認」とし、理由を書いてください。プロンプト3:顧問先への賞与データ依頼文
社労士事務所から【顧問先名】の総務担当者へ送る依頼文を作ってください。
目的:【支給月】賞与の賞与支払届を作るためのデータ回収
依頼する項目:支給日、対象者ごとの総支給額、現物支給の有無と内容、
同月内の追加支給の予定、支給しない場合はその旨
提出期限:【回答期限】(支払日から5日以内に届出するため)
トーン:丁寧だが簡潔に。箇条書きで、300字以内。うまくいかない例→直し方
うまくいかない例:「賞与支払届をチェックして」とだけ頼み、データを貼る。AIが古い上限額や総括表の添付を前提に指摘してくることがあります。
直し方:プロンプト1のように「確認済みのルール」を先に渡し、「このルール以外は使わない」と指示します。出てきた結果は、元の賃金台帳と人が突合して確定させます。保険料の控除額まで確かめたいときは給与計算のチェックをAIで行うプロンプト集のプロンプト7も使えます。
AIに任せてはいけないこと
- 「賞与」か「報酬」かの区分判断(規程の文言と支給実態を人が確認する)
- 電子申請の送信操作と、決定通知書の内容確認
- 保険料率・上限額の最新値の確認(必ず年金機構・協会けんぽで確認)
汎用のAIでも検算や依頼文の下書きはできますが、毎回ルールを貼り付ける手間が残ります。士業AIは、社労士事務所・事務所職員の定型業務に合わせて一次ソースを参照しながら下書きとチェックを行うので、届出の多い時期の確認作業をまとめて短くできます。事務所職員の方向けの使い方は事務所スタッフ向けページでご紹介しています。
よくある質問
賞与支払届の提出期限は何日ですか?
賞与を支払った日から5日以内です。電子申請でも紙でも同じです。
賞与支払予定月以外に賞与を払った場合はどうしますか?
届出用紙は送られてこないため、日本年金機構の様式ページから賞与支払届をダウンロードして提出します。今後も同じ月に払うなら、事業所関係変更(訂正)届で賞与支払予定月の登録を見直すと、印字済み用紙が届くようになります。
寸志や決算賞与も届出が必要ですか?
名称を問わず、労働の対償として年3回以下で支給するものは対象です。寸志・決算賞与も届け出ます。結婚祝金など労働の対償にあたらないものは対象外です。
賞与支払届の総括表はまだ必要ですか?
不要です。被保険者賞与支払届総括表は令和3年3月に廃止されました。電子媒体(CD・DVD)で申請するときの「電子媒体届書総括票」だけは引き続き必要です。
標準賞与額決定通知書が届いたら何をしますか?
決定された標準賞与額を被保険者本人へ通知します。不支給報告書を出した場合は、決定通知書は送られてきません。
年4回賞与を払う会社も賞与支払届を出しますか?
年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象となるため、賞与支払届は出しません。ただし、7月2日以降に賞与の規定を新設した場合は、次の定時決定の標準報酬月額が適用されるまでは賞与として届け出る取扱いが年金機構から示されています。
まとめ
- 賞与支払届は支払日から5日以内。総括表は令和3年3月で廃止済み
- ⑤は通貨と現物を分けて書き、⑥は合計の1,000円未満を切り捨てて千円単位で書く
- 上限(健保:年度累計573万円、厚年:1カ月150万円)は自分で当てはめず実額を書く
- 退職月・育休中の賞与も届出が必要。誰にも払わなかった月は賞与不支給報告書
- 資本金1億円超の法人は電子申請が義務。AIは検算と漏れチェックの補助に使う
社会保険の届出全体の流れは社会保険の手続きをAIで効率化する方法、日々の労務で使える指示文は社労士のChatGPTプロンプト集もあわせてご覧ください。

