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家なき子特例の要件チェック|別居親族が小規模宅地の特例を使える条件と添付書類【令和8年】

家なき子特例とは、被相続人と別居していた親族でも、一定の要件をすべて満たせば、被相続人の自宅の敷地に小規模宅地等の特例(330㎡まで評価額を80%減額)を使えるしくみの通称です。根拠は租税特別措置法69条の4第3項第2号ロで、要件は「被相続人側の2つ」と「取得する親族側の4つ」の合計6項目です。1つでも欠ければ適用できず、しかもマイナンバーを書いても省略できない添付書類が2種類残ります。

この記事は、相続税申告を担当する税理士・会計事務所スタッフ向けに、6要件をそのまま確認に使えるチェックシートと、要件ごとの添付書類の対応表を用意しました。全体の判定手順(利用区分→取得者→継続要件→限度面積)は小規模宅地の特例チェックシートと判定の4ステップで扱っているので、本記事は「別居親族が取得する場合」の判定だけを深掘りします。

この記事で分かること

  • 家なき子特例の6要件を、そのまま顧問先ヒアリングに使えるチェックシート(コピペ用テキスト付き)
  • 「3年以内に住んでいた家」「今住んでいる家」の判定で誤りやすい10のケース早見表
  • 施行規則に定められた添付書類と、マイナンバーで省略できる書類・省略できない書類の区別
  • 生成AIに判定の下ごしらえを任せるときのプロンプト例と、任せてはいけない範囲

家なき子特例チェックシート(6要件・コピペ用)

まず結論として、判定に使うチェックシートを示します。要件は国税庁タックスアンサーNo.4124の(1)〜(6)の並びに合わせていますが、実務では「被相続人側」を先に確認すると早く結論が出ます。配偶者や同居の相続人がいれば、取得者側を調べるまでもなく家なき子特例は使えないためです。

前提チェック(被相続人側の2項目+対象宅地)

No.

確認項目

確認資料の例

判定

0

対象の宅地は「被相続人の居住の用」に供されていたか(生計を一にする親族の居住用ではない)

被相続人の住民票の除票・戸籍の附票

□可 □不可

1

被相続人に配偶者がいない

被相続人の戸籍謄本

□可 □不可

2

相続開始の直前に被相続人と同じ家屋に住んでいた相続人(相続放棄がなかったものとした場合の相続人)がいない

同一住所の住民票・ヒアリング記録

□可 □不可

取得者チェック(別居親族側の4項目)

No.

確認項目

確認資料の例

判定

3

居住制限納税義務者、または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者に当たらない

取得者の住所地・国籍・在留資格の確認

□可 □不可

4

相続開始前3年以内に、国内にある自己・自己の配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に住んだことがない(被相続人の自宅は除く)

3年分の住所履歴、各住居の賃貸借契約書・登記事項証明書

□可 □不可

5

相続開始時に住んでいる家屋を、過去に一度も所有したことがない

現住家屋の登記事項証明書(所有権の移転履歴)

□可 □不可

6

その宅地を相続開始時から申告期限まで持ち続けている

申告期限時点の登記事項証明書・売買の有無の確認

□可 □不可

No.0〜6のすべてが「可」で初めて適用できます。No.6は申告期限まで結論が確定しないため、申告書の作成段階では「売却予定なし」をヒアリング記録に残しておくと、後から確認するときの根拠になります。

コピペ用チェックシート(テキスト版)

事務所のExcelや案件管理表に貼り付けて使えるよう、同じ内容をテキストでも用意しました。【 】の部分を案件ごとに書き換えてください。

【案件名】        【被相続人】     【取得者】
【相続開始日】YYYY/MM/DD 【3年前の日】YYYY/MM/DD 【申告期限】YYYY/MM/DD

■前提(被相続人側)
[ ] 0 対象宅地=被相続人本人の居住用(生計一親族の居住用ではない)
[ ] 1 被相続人に配偶者がいない
[ ] 2 直前に同居していた相続人がいない(放棄者も相続人として数える)

■取得者側
[ ] 3 納税義務者区分:居住無制限/非居住無制限/日本国籍ありの非居住制限
[ ] 4 3年以内の住居(新しい順に全件)
      住所【   】期間【 〜 】所有者【   】続柄・関係【   】
      住所【   】期間【 〜 】所有者【   】続柄・関係【   】
      → 自己・配偶者・三親等内の親族・特別関係法人の所有なし
[ ] 5 現住家屋の所有履歴に取得者の名前がない(全部事項証明書で確認)
[ ] 6 申告期限まで売却・贈与の予定なし(確認日【  】)

■添付書類
[ ] 付表1 [ ] 遺言書または遺産分割協議書の写し [ ] 印鑑証明書
[ ] 3年以内の住所を明らかにする書類(取得者がマイナンバーを有する場合は不要)
[ ] 3年以内の住居が自己等の所有でない旨を証する書類(省略不可)
[ ] 現住家屋を所有したことがないことを証する書類(省略不可)

うまくいかない例として多いのが、No.4の住居欄に「現住所だけ」を書いてしまうケースです。3年以内に引っ越していれば前の住居も判定対象なので、相続開始日から逆算した「3年前の日」を先に計算し、その日以降の住居を新しい順にすべて並べる形にしておくと漏れません。

家なき子特例の要件を条文どおりに読む

チェックシートの各項目が条文のどこに対応するかを押さえておくと、判断に迷うケースで立ち返る場所ができます。要件の本体は租税特別措置法69条の4第3項第2号ロ、細目は同法施行令40条の2と同法施行規則23条の2に置かれています。

対象は「被相続人の居住用」の宅地だけ

条文は、家なき子特例を使える親族を「当該被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者」に限っています。被相続人と生計を一にしていた親族が住んでいた宅地(たとえば被相続人と生計を一にする子が住んでいた、被相続人所有の別の家の敷地)は、家なき子特例の対象になりません。生計一親族の居住用宅地は、配偶者かその生計一親族本人が取得する場合だけが特定居住用宅地等になります。

「配偶者がいない」「同居の相続人がいない」の判定

条文上、家なき子特例は「被相続人の配偶者」も「相続開始の直前に被相続人の居住用家屋に住んでいた親族で政令で定める者」もいない場合に限られます。政令で定める者は相続人(相続放棄があった場合は、放棄がなかったものとした場合の相続人)です(施行令40条の2第14項)。そのため、同居していた子が相続放棄をしても、別居の子は家なき子特例を使えません。

逆に、同居していたのが相続人ではない親族、たとえば子が健在のときの孫や、子の配偶者であれば、この要件には抵触しません。なお「同居」とは、相続開始の直前にその家屋で被相続人と共に起居していたことをいい、構造上区分された独立部分のある建物ではその独立部分で判定します(措置法通達69の4-21)。

3年しばり:誰が所有する家に住んでいたか

判定の中心がNo.4の「3年しばり」です。相続開始前3年以内に、国内にある次のいずれかが所有する家屋に住んだことがあれば適用できません。

  • 取得者本人
  • 取得者の配偶者
  • 取得者の三親等内の親族(配偶者の親など姻族も含む)
  • 取得者と特別の関係がある法人(取得者や親族等が発行済株式の50%超を持つ法人など。施行令40条の2第15項)

ここで見落としやすいのが判定の時点です。「配偶者」「三親等内の親族」「特別の関係がある法人」に当たるかどうかは、相続開始の直前の関係で判定します(措置法通達69の4-22)。また、被相続人自身の家屋(つまり実家)に住んでいた期間は除外されるので、3年以内に実家へ一時的に戻っていたこと自体は不適用の理由になりません。

平成30年改正で加わった「今の家を所有したことがない」要件

No.5の「相続開始時に住んでいる家屋を、相続開始前のいずれの時においても所有していたことがない」は、平成30年度税制改正で加わった要件です。同じ改正で、No.4の対象も「自己または配偶者の所有家屋」から三親等内の親族・特別の関係がある法人の所有家屋にまで広げられました。持ち家を親族や同族法人に売却して住み続ける、親族の持ち家に住む、といった形で要件を作る対応を封じる趣旨と考えられます。改正前の要件で判定できた経過措置は、平成30年4月1日から令和2年3月31日までの相続などに限られていたため(措置法通達69の4-22の2)、令和8年に開始した相続では改正後の要件で判定します。

No.5は条文上「国内にある」の限定がありません。海外に住む子が現地で持ち家に住んでいれば、No.4(国内の家屋が対象)はクリアしても、No.5で適用できなくなる点に注意が必要です。

申告期限までの「保有」と納税義務者区分

No.6は、相続開始時から申告期限まで宅地を持ち続けることです。同居親族のような「居住継続」は求められていないので、取得者がその家に住む必要はありません。ただし申告期限前に売却すれば、その時点で要件を欠きます。

No.3は施行規則23条の2第4項の定めで、家なき子特例を使えるのは、居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、日本国籍を有する非居住制限納税義務者です。納税義務者の区分そのものは国税庁タックスアンサーNo.4138(相続人が外国に居住しているとき)で確認できます。

別居親族の判定がぶれやすい10ケース早見表

顧問先から相談が多いケースを、チェックシートのどの項目で結論が決まるかとあわせて整理しました。結論はあくまで表に書いた事実関係を前提にしたもので、実際の案件では資料で事実を確定させてから判定してください。

ケース

結論

決め手

3年以上前から第三者所有の賃貸マンションに住んでいる

適用可の余地あり

No.4・No.5とも抵触しない

勤務先(取得者と無関係の会社)の社宅に住んでいる

適用可の余地あり

所有者が特別の関係がある法人に当たらない

自分や親族が50%超を持つ会社の社宅に住んでいる

不可

No.4(特別の関係がある法人)

配偶者の親が所有する家に同居している

不可

No.4(三親等内の親族)

2年前に自宅を売却し、以後は賃貸住宅に住んでいる

不可

No.4(3年以内に自己所有家屋に居住)

持ち家を第三者に売却し、そのまま賃借して住み続けている

不可

No.5(現住家屋を過去に所有)

海外在住で、現地の持ち家に住んでいる

不可

No.5(国外の家屋も対象)

同居していた子が相続放棄した

不可

No.2(放棄者も相続人として数える)

同居していたのは相続人ではない孫だけ

No.2は抵触しない

同居者が相続人に当たらない

被相続人が要介護認定を受けて老人ホームに入所したまま亡くなった

適用可の余地あり

入所前の自宅が居住用とされ、追加書類が必要

老人ホームのケースは、入所後にその家を事業用や被相続人等以外の人の居住用にしていないことが前提です。要件の全体像は国税庁タックスアンサーNo.4124の(注1)にまとまっています。

家なき子特例の添付書類と「省略できない2種類」

添付書類は施行規則23条の2第8項第2号に列挙されています。家なき子特例(同号では措置法69条の4第3項第2号ロの親族)の場合は、共通書類に加えて次の3種類が必要です。

書類

マイナンバーによる省略

実務で充てる資料の例

申告書第11・11の2表の付表1(小規模宅地等の計算明細書)

不可

申告書様式

遺言書の写し、または遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書

不可

協議書は全員の自署・押印があるもの

相続開始前3年以内の住所または居所を明らかにする書類

取得者がマイナンバーを有する場合は提出不要

戸籍の附票の写し、住民票(除票)の写し

3年以内に住んでいた家屋が、自己・配偶者・三親等内の親族・特別関係法人の所有でない旨を証する書類

省略不可

賃貸借契約書の写し、家屋の登記事項証明書

相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないことを証する書類

省略不可

現住家屋の登記事項証明書(所有権の移転履歴が分かるもの)

マイナンバーで省略できるのは「住所の履歴」だけで、「誰の家に住んでいたか」「今の家を持っていたことがないか」の証明は残ります。国税庁の相続税の申告のしかた(令和8年分用)の添付書類一覧も、この3種類を分けて記載しています。社宅の場合は、所有者が分かる資料として勤務先の証明書などを用意することがあります。

被相続人が老人ホームに入所していた場合は、さらに被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始日以後に作成されたもの)、介護保険の被保険者証の写しなど要介護認定等を受けていたことを明らかにする書類、施設の名称・所在地・種類が分かる入所契約書の写しなどが加わります(同項第3号)。共通書類の集め方は相続税申告チェックシートの必要書類リスト、付表1を含む申告書の記入順は相続税申告書の書き方と記入順序で確認できます。

申告期限と未分割のときの扱い

小規模宅地等の特例は、申告書に適用を受ける旨を記載し、上記書類を添付した場合に限り適用されます(措置法69条の4第7項)。申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割がまとまらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておく必要があります。誰が実家の宅地を取得するかで家なき子特例の可否が変わるため、分割協議の段階で取得者の要件を確認しておくことが重要です。協議書の書き方は遺産分割協議書の記載例も参考になります。

AIで家なき子判定の下ごしらえをする方法

家なき子特例の判定作業のうち、時間がかかるのは「3年分の住所履歴と各住居の所有者を一覧にする」作業です。ここは生成AIに整理を任せやすい部分です。一方で、相続人に当たるかどうか、特別の関係がある法人に当たるかどうかといった最終判断は、資料を確認した担当者が行う必要があります。

プロンプト例1:住居履歴をチェックシートに整理する

あなたは相続税申告を担当する税理士事務所のスタッフです。
次のヒアリングメモから、家なき子特例(措置法69条の4第3項第2号ロ)の
判定に使う住居履歴表を作ってください。

条件:
- 相続開始日は【YYYY/MM/DD】。3年前の日を計算して表の冒頭に示す
- 3年前の日以降に住んでいた住居をすべて新しい順に並べる
- 列は「住所/居住期間/家屋の所有者/取得者との関係/確認資料」
- 所有者や関係がメモから分からない欄は「要確認」と書き、推測で埋めない
- 最後に、追加で顧問先に確認すべき事項を箇条書きにする

ヒアリングメモ:
【ここに貼り付け。氏名・住所は仮名や番地省略に置き換える】

うまくいかない例は、AIが所有者の空欄を「賃貸と思われる」などと推測で埋めてしまうケースです。プロンプトに「分からない欄は要確認と書く」と明記すると、確認漏れを洗い出す用途に変わります。

プロンプト例2:6要件の抜け漏れをチェックする

次の事実関係について、家なき子特例の6要件
(配偶者なし/同居相続人なし/納税義務者区分/3年以内の居住家屋の所有者/
現住家屋の所有歴/申告期限までの保有)ごとに、
「満たす」「満たさない」「事実不足で判定不可」のいずれかを示してください。
判定の根拠となった事実を各項目に1行で添え、
条文や通達の番号を挙げる場合は、確認が必要な旨も併記してください。

事実関係:
【被相続人の配偶者の有無、同居者と続柄、取得者の住居履歴、現住家屋の登記の状況など】

このプロンプトの狙いは結論を出させることではなく、「事実不足で判定不可」の項目を見つけることです。汎用AIは条文番号や改正時期をもっともらしく誤って答えることがあるため、出力された条文番号は必ずe-Gov法令検索や国税庁の資料で照合してください。

士業AIの税理士向けサービスは、国税庁などの公的情報を参照しながら回答するよう調整した税務特化のAIです。家なき子特例のように要件が細かく、改正の経緯も絡む論点の下調べに使えます。

よくある質問

家なき子特例のチェックシートは国税庁から出ていますか

家なき子特例だけを判定する専用のチェックシートは、国税庁からは出ていません。国税庁の相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)には、小規模宅地等の特例の項目の中に家なき子特例の添付書類欄があります。要件の判定には、本記事のような自作のチェックシートを併用するのが実務的です。

家なき子特例で取得した宅地を、申告期限後に売却してもよいですか

条文上の保有要件は「相続開始時から申告期限まで」なので、申告期限後の売却で適用が取り消される定めはありません。ただし申告期限より前に売却や贈与をすると要件を欠くため、売却を急ぐ顧問先には時期を必ず確認してください。

孫が遺言で実家の宅地を取得した場合も使えますか

孫も被相続人の親族なので、6要件を満たせば対象になり得ます。No.4の判定では、孫の三親等内の親族には孫の親(被相続人の子)も含まれるため、親の持ち家で暮らしている孫は適用できません。また、孫が相続人でない場合は相続税額の2割加算の対象になる点もあわせて確認が必要です。

相続開始前3年以内に実家に戻って同居していた期間があります

被相続人の居住用家屋に住んでいた期間は、No.4の判定対象から除かれます。ただし相続開始の直前まで同居していたのであれば、家なき子特例ではなく同居親族としての要件(申告期限まで居住と保有を継続)で判定することになります。

まとめ

  • 家なき子特例は、被相続人側2項目(配偶者なし・同居相続人なし)と取得者側4項目(納税義務者区分・3年しばり・現住家屋の所有歴なし・申告期限まで保有)をすべて満たす必要がある
  • 同居していた相続人が相続放棄をしていても「相続人がいる」扱いになり、適用できない
  • 3年しばりは国内の家屋が対象。現住家屋の所有歴は国外の家屋も対象になる
  • 親族関係の判定時点は相続開始の直前(措置法通達69の4-22)
  • マイナンバーで省略できるのは住所履歴の書類だけ。所有者の証明と現住家屋の所有歴の証明は必ず添付する

小規模宅地等の特例全体の判定と限度面積の計算は、小規模宅地の特例チェックシートとあわせて確認してください。

参考文献

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