青色事業専従者給与に関する届出書の書き方|記入例と3月15日の提出期限
青色事業専従者給与に関する届出書は、家族に払う給与を事業の必要経費にするために、経費にしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合や新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内)に税務署へ出す書類です。2027年分から専従者給与を経費にするなら、期限は2027年3月15日(月)です。一度出せば翌年以後も効力が続き、毎年出し直す必要はありません。
この記事では、国税庁の様式と記載要領に沿って欄ごとの書き方と記入例をまとめ、専従者の要件、変更届出書が要る場面、白色申告の事業専従者控除との違い、配偶者控除・扶養控除との関係までを、個人の確定申告を担当する税理士・会計事務所スタッフが顧問先に説明できる形で整理しました。
この記事で分かること
- 届出書の提出期限(原則・年の途中の開業・年の途中で家族が加わった場合)と、2027年分の具体的な日付
- 青色事業専従者になれる人の要件(生計を一にする・15歳以上・6か月超の専従)
- 届出書の欄ごとの書き方と、家族2人を専従者にする場合の記入例
- 「労務の対価として相当」な給与額の考え方と、変更届出書が必要になる場面
- 白色の事業専従者控除、配偶者控除・扶養控除との違い
- 届出内容の下書きや従事記録の整理にAIを使うときのプロンプトと注意点
提出期限|2027年分から経費にするなら2027年3月15日(月)まで
期限は所得税法第57条第2項と所得税法施行規則第36条の4第3項で決まっています。国税庁の手続案内「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」でも同じ内容が案内されています。
原則は「経費にしたい年の3月15日」、一度出せば以後の年分も有効
すでに青色申告をしている事業主が、ある年から家族への給与を経費にしたい場合は、その年の3月15日までに届出書を出します。2027年分からなら2027年3月15日(月)、2028年分からなら2028年3月15日(水)が期限です。条文が「その年分以後の各年分」と定めているとおり、届出の効力は翌年以後も続きます。届出書を毎年出し直す必要はなく、内容を変えるときだけ変更届出書を出します。
白色から青色へ切り替える年に専従者給与も始めたい場合は、青色申告承認申請書と同じ期限で届出書も出せます。国税庁の記載要領も、その年に新たに承認申請書を出した人を対象に含めています。承認申請書の期限と書き方は「青色申告承認申請書の書き方と記入例」で解説しています。
1月16日以後の開業・新たな専従者は「その日から2か月以内」
その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は開業日から、すでに事業をしていて1月16日以後に新たに専従者がいることになった場合はその日から、2か月以内が期限です。1月1日〜15日に開業した場合や家族が加わった場合は、原則どおり3月15日が期限になります。
きっかけ(2027年) | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
2026年以前から営業中、2027年分から専従者給与を始める | 2027年3月15日(月) | 所得税法第57条第2項(原則) |
2027年5月20日に開業し、開業時から妻が専従 | 2027年7月20日(火) | 所得税法第57条第2項かっこ書 |
営業中の事業に、2027年8月20日から長男が専従 | 2027年10月20日(水) | 所得税法施行規則第36条の4第3項 |
「2か月以内」は、国税通則法第10条第1項により初日(開業日・専従開始日)を数えず、2か月後の応当日の前日に満了します。期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は翌日が期限です(同条第2項、国税庁の手続案内にも明記)。2026年分の原則期限が3月16日だったのは、3月15日が日曜日だったためです。
期限に遅れた年分は、家族への給与を経費にできない
専従者給与を必要経費にできるのは、届出書に書いた方法と金額の範囲内で払った給与に限られます(所得税法第57条第1項)。期限後に出した届出書でさかのぼって経費にする仕組みはないため、間に合わなかった年分は家族への給与を必要経費にできないと考えておくのが安全です。
また、白色申告者向けの事業専従者控除(配偶者86万円など)は、条文上「青色申告の承認を受けている居住者を除く」とされています(同条第3項)。青色申告者が届出を忘れても、代わりに白色の控除を使うことはできません。実務では、年明けの資料依頼の段階で「今年から家族に給与を払う予定はあるか」を必ず聞いておくと取りこぼしを防げます。
提出先・提出方法・添付書類
- 提出先:納税地を所轄する税務署長
- 提出方法:e-Tax(e-Taxソフトで作成)、または書面を持参・送付
- 添付書類:届出書とは別に給与規程を定めている場合は、その写し
書面で出す場合、2025年1月以後は税務署が控えに収受日付印を押さなくなりました(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」)。提出日を後で示せるよう、e-Taxの受信通知を保存するか、郵送なら記録が残る方法を選ぶと安心です。
青色事業専従者の要件|「生計を一にする」「15歳以上」「6か月超」
届出書を出しても、そこに書いた家族が専従者の要件を満たさなければ給与は経費になりません。国税庁も手続の審査基準として「要件に該当しない者を届け出ていないか」を挙げています。要件は次の3つです(所得税法第57条第1項・第7項、所得税法施行令第165条、国税庁タックスアンサーNo.2075)。なお、不動産所得の場合は、不動産の貸付けが事業として行われているときに限って適用があります。
要件 | 内容 | 確認のポイント |
|---|---|---|
生計を一にする親族 | 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族 | 親族であっても生計が別なら対象外。親族でない従業員も対象外 |
15歳以上 | その年12月31日現在で15歳以上 | 年の途中で死亡した場合などは、その時点の現況で判定 |
専ら従事 | その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事 | 年の途中の開業・就職や退職などの場合は、従事できる期間の2分の1超で足りる特例あり |
「6か月超」の例外|従事できる期間の2分の1を超えればよい場合
青色事業専従者には、次のいずれかに当たるとき、事業に従事できる期間の2分の1を超えて専ら従事していれば足りる特例があります(所得税法施行令第165条第1項)。
- 年の途中の開業・廃業・休業、事業主の死亡、季節営業などで、事業がその年を通じて営まれなかった
- 家族側の死亡、長期の病気、婚姻その他相当の理由で、その年を通じて従事できなかった
国税庁の質疑応答事例「年の中途で事業に従事した親族に係る青色事業専従者給与」では、8月に会社を退職して親の事業に加わった子について、退職から年末までを従事可能期間とし、その2分の1を超えて専ら従事していれば専従者給与を経費にできると回答しています。この場合も、専従者になった日から2か月以内の届出(変更届出)が必要です。
なお、この2分の1特例は青色事業専従者だけのもので、白色の事業専従者は「6か月超」で判定します(タックスアンサーNo.2075)。
専従期間に数えない人|学生・他に職業がある人など
次に当たる期間は、専ら従事している期間に含めません(所得税法施行令第165条第2項)。
- 学生・生徒:ただし、夜間に授業を受けて昼間を主とする事業に従事する人など、専従が妨げられないと認められる人は除かれます
- 他に職業がある人:ただし、その職業に従事する時間が短い人など、専従が妨げられないと認められる人は除かれます
- 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている人
「会社員の配偶者が週末だけ手伝う」「昼間の大学に通う子が帳簿をつけている」といった相談は、この規定に照らすと専従者に当たらない可能性が高い典型例です。逆に「他社でごく短時間だけ働いている」ケースは、勤務時間と事業への従事の実態を聞き取ってから判断します。届出書の「その他参考事項」欄は、まさにこの点を書く欄です。
青色事業専従者給与に関する届出書の書き方|欄ごとの記入ポイント
様式は「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」の1枚で、初めて出す届出と変更届出を兼ねています。様式と記載要領は国税庁の手続案内ページから入手できます。届出書の記載事項は所得税法第57条第2項と所得税法施行規則第36条の4第1項に定めがあり、様式の各欄はそれに対応しています。
表題と上段|「届出」に○、提出先・納税地・氏名・職業・屋号
- 表題:「届出書」と「変更届出書」のうち、初めて出すなら「届出」の側を選びます。
- 提出日・提出先:提出する日と、納税地を所轄する税務署名を書きます。
- 納税地:住所地・居所地・事業所等のどれを納税地にしているかを番号で選び、その所在地を書きます。納税地以外に住所や事業所がある場合は下の欄に書きます。
- 氏名・生年月日・職業・屋号:事業主本人の情報です。職業は「青果小売業」のように事業の内容が分かる書き方にします。
「__年__月以後の青色事業専従者給与の支給に関しては…定めた」
上段の下にある一文は、どの時点からこの内容で給与を払うかを示す欄です。2027年1月から払うなら「2027年1月」、年の途中で家族が加わったならその月を書きます。届出の場合は「定めた」、変更届出の場合は「変更することとした」の側を選びます。
「1 青色事業専従者給与」|氏名・続柄・年齢・経験年数・仕事の内容
専従者1人につき1行を使います。記載要領の注意書きをまとめると次のとおりです。
欄 | 書き方 |
|---|---|
専従者の氏名・続柄・年齢 | 事業主から見た続柄(妻、長男など)と年齢を書きます |
経験年数 | あなたの事業に従事している期間を書きます。他の同種・類似の事業に従事した期間があれば加えます |
仕事の内容・ | 「販売事務」「記帳事務」などの内容に、「経理責任者」などの職責を併せて書きます。従事の程度は「毎日○時間程度従事」「○月から○月まで毎日従事」のように書きます |
資格等 | 「簿記○級」「大型運転免許」など、特殊技能や資格の有無を書きます |
この欄は、後で給与額が相当かどうかを説明するときの土台になります。「手伝い」「事務全般」といったあいまいな書き方より、担当業務と1日の従事時間を具体的に書いておくほうが、税務調査で聞かれたときに説明しやすくなります。
給料・賞与・昇給の基準|賞与を払うなら必ず書く
- 給料:支給期(「毎月25日」など)と月額を書きます。定額以外の給与がある場合は、その種類と見込月額を付記します。
- 賞与:支給期(「毎年7月」「毎年12月」など)と、支給の基準(「○か月分」または金額)を書きます。
- 昇給の基準:「使用人の昇給基準と同じ」「毎年おおむね○%(又は○円)」のように書きます。給与規程の写しを添付した場合は省略できます。
経費にできるのは、届出書に書いた方法で、書いた金額の範囲内で払った給与です(所得税法第57条第1項)。賞与欄が空欄のまま賞与を払うと、その賞与は経費にならないおそれがあります。賞与を払う予定が少しでもあるなら、支給期と基準を書いておきます。
「2 その他参考事項」「3 変更理由」「4 使用人の給与」と税理士署名
- 2 その他参考事項(他の職業の併有等):専従者が他に職業を持っている場合や就学している場合に、「○○(株)取締役」「○○大学夜間部」のように書きます。
- 3 変更理由:変更届出書のときだけ、理由を具体的に書きます。
- 4 使用人の給与:家族以外の使用人がいる場合に、専従者と似た仕事をしている人や給与水準の代表例を選んで、提出日現在の状況を書きます。使用人がいなければ空欄で構いません。
- 税理士署名:税理士が作成した場合に記入します。
記入例|妻と長男を専従者にする青果小売業の場合
2026年以前から青色申告で青果店を営む事業主が、2027年1月から妻と長男(22歳)に給与を払う例です。パート従業員が1人います。金額は書き方を示すための仮の数字で、適正額の目安ではありません。
欄 | 妻(1行目) | 長男(2行目) |
|---|---|---|
年齢・経験年数 | 52歳・15年 | 22歳・2年 |
仕事の内容・ | 販売・仕入伝票と現金出納帳の記帳(経理責任者)、毎日6時間従事 | 市場での仕入れと配達(仕入責任者)、毎日8時間従事 |
資格等 | 日商簿記2級 | 普通自動車免許 |
給料 | 毎月25日・月額180,000円 | 毎月25日・月額200,000円 |
賞与 | 毎年7月・12月、各1か月分以内 | 毎年7月・12月、各1か月分以内 |
昇給の基準 | 使用人の昇給基準と同じ | 使用人の昇給基準と同じ |
冒頭の一文は「2027年1月以後の青色事業専従者給与の支給に関しては次のとおり定めた」とし、「4 使用人の給与」欄にはパート従業員の仕事の内容(店頭販売、1日5時間)と時給・賞与・昇給の基準を書きます。長男が昼間に他社で働いていたり大学に通っていたりする場合は、「2 その他参考事項」に書いたうえで、専従の要件を満たすかどうかを先に確かめます。
記入例で気をつけたのは次の3点です。
- 仕事の内容に「経理責任者」「仕入責任者」と職責を入れ、使用人との役割の違いが分かるようにした
- 従事の程度を時間で書き、給与額との釣り合いを後から説明できるようにした
- 賞与を払う可能性があるため、支給期と上限の基準を書いた
給与額の決め方|「労務の対価として相当」かを判断する材料
届出書に書いた金額の範囲内であっても、相当と認められる額を超える部分は必要経費になりません(タックスアンサーNo.2075)。相当かどうかの判断材料は、所得税法第57条第1項と所得税法施行令第164条第1項に挙げられています。
法令が挙げる3つの物差し
- 働き方:専従者が労務に従事した期間、労務の性質とその提供の程度
- 他の人の給与:その事業の他の使用人の給与、同種で規模が類似する事業に従事する人の給与
- 事業の状況:事業の種類・規模と、収益の状況
実務で説明が難しくなるのは、パート従業員より短い時間しか働いていない家族に、従業員の何倍もの給与を払っているケースや、事業の利益に比べて専従者給与が突出しているケースです。届出書の「4 使用人の給与」欄や「仕事の内容・従事の程度」欄は、この比較を税務署側が見るための材料でもあります。
説明できる記録を日頃から残す
相当額かどうかは、最終的には働いた実態で判断されます。法令で様式が決まっているわけではありませんが、次のような記録があると、税務調査で質問されたときに説明しやすくなります。
- 出勤日と従事時間が分かる記録(出勤簿、業務日報、カレンダーへのメモなど)
- 担当業務が分かる資料(専従者名で作った帳簿・伝票・発注書・配達記録など)
- 給与の支払記録(専従者名義の口座への振込記録、給与台帳)
事業用口座から家族名義の口座へ毎月振り込む形にしておくと、「届出書に記載されている方法に従い」支払ったことも示しやすくなります。
届出額を超えた分・労務の実態がない期間の給与
- 届出書の金額を超えて払った分:記載された金額の範囲を超えるため、超えた部分は経費になりません(所得税法第57条第1項)。昇給する前に変更届出書を出しておく必要があります。
- 休業中など労務の実態がない期間の給与:国税庁の質疑応答事例「区画整理事業により休業する期間の青色事業専従者給与」では、休業期間中に払う給与は労務の対価の性質がないため必要経費に算入されないとされています。
変更届出書が必要な場面|昇給・賞与の追加・専従者が加わったとき
届出書に書いた内容を変えるときは、同じ様式で「変更届出書」を出します(所得税法施行令第164条第2項、所得税法施行規則第36条の4第2項)。国税庁の「A1-11 青色事業専従者給与に関する変更届出手続」では、次のような場面が挙げられています。
場面 | 期限 | 実務での注意 |
|---|---|---|
給与規程を変更する | 遅滞なく | 規程の写しを添付している場合は、新しい規程の写しも付ける |
通常の昇給の枠を超えて給与を増額する | 遅滞なく | 増額分を払う前に出しておくと安全 |
新たに専従者が加わる | 1月16日以後に加わった場合は、その日から2か月以内 | 1月15日以前に加わった場合はその年の3月15日まで |
「通常の昇給の枠」の内側なら変更届出は不要
届出書の「昇給の基準」欄に「使用人の昇給基準と同じ」「毎年おおむね3%以内」などと書いていれば、その範囲内の昇給は届出書に書いた方法どおりの支給と考えられます。変更届出書が必要になるのは、その枠を超える増額や、届出書に書いていない賞与を新たに払う場合のように、届出書に記載した金額の基準そのものを変える場合です。
変更届出書の書き方
表題の「変更届出書」を選び、冒頭の一文は「__年__月以後の…変更することとした」の側にします。「1 青色事業専従者給与」欄には変更後の内容を書き、「3 変更理由」欄に「業務範囲の拡大に伴い仕入責任者として従事時間が増えたため」のように具体的な理由を書きます。法令上も、変更届出書には変更する内容とその理由を書くこととされています(所得税法施行規則第36条の4第2項)。
専従者が退職した場合や給与を減らす場合については、手続案内に明示された期限はありません。ただ、届出書の内容と実際の支給がずれたままだと後で説明が必要になるため、変更届出書で現状にそろえておくと、翌年以後の確認がしやすくなります。
白色申告の事業専従者控除との違い
白色申告者は家族に払った給与を必要経費にできず、代わりに「事業専従者控除」として一定額を必要経費とみなします(所得税法第57条第3項)。違いを並べると次のとおりです。
項目 | 青色事業専従者給与 | 白色の事業専従者控除 |
|---|---|---|
事前の手続 | 届出書の提出が必要 | 不要。確定申告書に控除を受ける旨と金額を記載 |
必要経費になる額 | 実際に払った給与のうち、届出の範囲内で相当と認められる額 | 配偶者86万円・その他の親族50万円と、控除前の所得÷(専従者数+1)のいずれか低い額 |
従事期間の要件 | 6か月超(従事できる期間の2分の1超の特例あり) | 6か月超 |
家族側の扱い | 受け取った給与が給与所得の収入金額 | 控除額が給与所得の収入金額とみなされる |
配偶者控除・扶養控除 | 給与の支払を受ける専従者は対象外 | 事業専従者は対象外 |
白色の控除額は所得で頭打ちになる一方、青色は実際に払った相当額まで経費にできます。家族が事業の中心で働いている場合ほど、青色にして届出書を出す効果は大きくなります。個人事業主の節税策全体の中での位置づけは「個人事業主の節税10選|効果額と要件・否認リスク」の一覧表で比べられます。
配偶者控除・扶養控除との関係と、源泉徴収の手続
専従者給与を受ける家族は、配偶者控除・扶養控除の対象にならない
青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、同一生計配偶者や扶養親族から除かれます(所得税法第2条第1項第33号・第34号)。配偶者特別控除も、青色事業専従者等は対象外です(同法第83条の2)。給与の額が少なくても、専従者給与を1円でも受け取ればこれらの控除は使えません。
この扱いは事業主本人に限りません。国税庁の質疑応答事例「青色事業専従者である妻」では、父の事業の青色事業専従者として給与を受けている妻を、会社員の夫が控除対象配偶者にすることはできないと回答しています。家族の誰かが別の家族の事業で専従者になっていないかは、年末調整の扶養控除等申告書を確認するときにも見ておきたい点です。
専従者給与と配偶者控除、どちらが有利かの考え方
配偶者控除は、事業主の合計所得金額が900万円以下なら38万円(70歳以上の老人控除対象配偶者は48万円)の所得控除です(所得税法第83条、国税庁タックスアンサーNo.1191)。専従者給与は払った相当額がそのまま必要経費になる一方、家族側では給与所得として所得税・住民税の対象になります。比べるときは、次の順で試算すると判断がぶれません。
- 専従者給与を払った場合に、事業主の所得税・住民税がいくら減るか
- 家族側に給与所得の所得税・住民税がいくらかかるか
- 専従者給与を払わずに配偶者控除・扶養控除を使った場合と比べて、世帯全体でどちらが少ないか
家族側の税額は、基礎控除と給与所得控除の額で大きく変わります。2026年分からは、令和8年度税制改正で基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正が行われています(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」)。前年の試算表をそのまま使わず、対象年分の控除額で計算し直してください。
給与を払うなら源泉徴収と年末調整もセットで
専従者給与は給与なので、事業主は源泉徴収義務者として毎月の給与から所得税を源泉徴収し、年末調整をします。専従者からは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受け取っておきます。書き方は「扶養控除等申告書の書き方と記入例」で解説しています。
給与の支給人員が常時10人未満なら、源泉所得税を半年ごとにまとめて納める「納期の特例」を申請できます(国税庁タックスアンサーNo.2505)。納付書の書き方と特例の納期限は「源泉所得税の納付書の書き方と納期の特例」にまとめています。届出書と一緒に顧問先へ案内しておくと、給与を払い始めてから手続が抜けるのを防げます。
AIの使いどころ|届出内容の下書きと従事記録の整理
届出書そのものは1枚ですが、顧問先から聞き取った内容を「仕事の内容・従事の程度」欄の文に落とし込む作業や、家族の働き方の記録を整える作業は手間がかかります。こうした文章化・整理の作業はAIに下書きさせ、要件と金額の判断は担当者が行う、という分担が現実的です。
プロンプト1:聞き取りメモから届出書の記載案を作る
あなたは税理士事務所のスタッフです。以下は顧問先(【業種】の個人事業主)から聞き取った、家族の働き方のメモです。
「青色事業専従者給与に関する届出書」の「1 青色事業専従者給与」欄に書く記載案を、専従者ごとに作ってください。
条件:
- 「仕事の内容・従事の程度」は、担当業務+職責(例:経理責任者)+1日あたりの従事時間の形で、40字以内
- 「資格等」は、メモにある資格だけを書く。無ければ空欄
- 給料・賞与・昇給の基準は、メモにある数字だけを使い、数字を補わない
- 専従者の要件(他の職業・就学・従事期間)について確認が必要な点があれば、最後に箇条書きで挙げる
聞き取りメモ:
【聞き取りメモを貼り付け】うまくいかない例は、メモに書いていない給与額や賞与の基準をAIが「一般的な水準」として補ってしまうケースです。条件に「数字を補わない」と書き、出てきた案はメモと突き合わせてから使います。
プロンプト2:家族の従事記録を月ごとに整理する
以下は【専従者の続柄】の【年月】分の業務日報(日付・作業内容・時間)です。
1. 作業を「販売」「仕入」「記帳」「配達」「その他」に分類し、月の合計時間を出してください
2. 出勤日数と、1日あたりの平均従事時間を出してください
3. 届出書の「従事の程度」(毎日【時間】時間)と比べて、大きく違う点があれば指摘してください
計算過程も表で示してください。
業務日報:
【日報を貼り付け】集計した結果は、給与額が相当かを説明するときの裏付けになります。AIの集計は必ず元の日報と合計を照合し、検算してから保存してください。
期限・要件・控除額の判断はAIに任せない
提出期限(2か月以内の数え方、土日祝の延長)、専従者の要件の当てはめ、その年分の基礎控除や給与所得控除の額は、AIが古い情報や一般論で答えてしまいやすい部分です。とくに控除額は毎年のように改正されているため、国税庁のタックスアンサーや手続案内で必ず確認します。
公的情報を根拠にした下調べには、国税庁などの資料を参照して回答する税理士向けの士業AI(税務AI)が使えます。根拠のリンクが付くので、担当者が原典を開いて確かめる作業が速くなります。
よくある質問
青色事業専従者給与の届出書は毎年出す必要がありますか
ありません。届出書は「その年分以後の各年分」に効力があるため、一度出せば翌年以後も有効です。給与の基準を変えるときや専従者が加わるときに、変更届出書を出します。
3月15日を過ぎてしまいました。今年の分はどうなりますか
その年の1月16日以後に開業した場合や新たに専従者がいることになった場合を除き、期限後の届出ではその年分の専従者給与を経費にできないと考えておくのが安全です。青色申告者は白色の事業専従者控除も使えないため、翌年分に向けて早めに届出書を出しておきます。
会社でパート勤務をしている配偶者を専従者にできますか
他に職業がある期間は、原則として専ら従事している期間に含めません。ただし、その職業に従事する時間が短いなど、専従が妨げられないと認められる場合は例外があります(所得税法施行令第165条第2項)。勤務時間と事業への従事の実態を確認してから判断し、届出書の「その他参考事項」欄にも記載します。
年の途中から家族が手伝い始めた場合はどうなりますか
就職・退職などの相当の理由で年の途中から従事した場合は、従事できる期間の2分の1を超えて専ら従事していれば専従者に当たります(所得税法施行令第165条第1項第2号)。1月16日以後に専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内に届出書(すでに届出済みなら変更届出書)を出します。
まとめ|期限は「3月15日」か「その日から2か月以内」、金額は説明できる範囲で
青色事業専従者給与に関する届出書は、家族への給与を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後の開業や新たな専従者はその日から2か月以内)に出す書類です。2027年分から始めるなら2027年3月15日(月)が期限で、一度出せば翌年以後も有効です。書き方で差がつくのは、仕事の内容と従事時間を具体的に書く欄と、賞与・昇給の基準の欄です。
専従者になれるのは生計を一にする15歳以上の親族で、原則としてその年の6か月を超えて専ら従事する人です。給与を受ければ配偶者控除・扶養控除の対象から外れ、源泉徴収と年末調整も必要になります。届出の段階で、要件の確認、金額の根拠、従事記録の残し方までを顧問先とすり合わせておくと、申告期にも税務調査でも説明に困りません。
参考文献
- 国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
- 国税庁「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」(様式・記載要領)
- 国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する変更届出手続」
- 国税庁 質疑応答事例「年の中途で事業に従事した親族に係る青色事業専従者給与」
- 国税庁 質疑応答事例「青色事業専従者である妻」
- 国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁 タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- e-Gov法令検索「所得税法」(第2条、第57条、第83条、第83条の2)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(第164条、第165条)
- e-Gov法令検索「所得税法施行規則」(第36条の4)
- e-Gov法令検索「国税通則法」(第10条)

