税務×AI

青色申告決算書の書き方|一般用4ページの記入例と減価償却費の計算【令和8年分】

青色申告決算書は、青色申告をしている個人事業主が、1年間のもうけ(所得)と年末時点の財産・負債をまとめて、確定申告書と一緒に税務署へ出す書類です。事業所得の人が使う「一般用」は4ページ構成で、1ページが損益計算書、2ページが月別売上や給与・専従者給与の内訳、3ページが減価償却費の計算と取引先などの明細、4ページが貸借対照表です。

書き方のコツは、3ページ・2ページの内訳を先に固めてから1ページへ転記し、最後に4ページで「青色申告特別控除前の所得金額」が1ページと一致するか確かめることです。この記事では、令和8年分(2026年分)を令和9年(2027年)3月15日(月)までに申告する前提で、各ページの欄の埋め方を、架空の雑貨店の数値(すべて検算済み)でたどります。

  • 青色申告決算書(一般用)4ページの中身と、収支内訳書(白色)との違い
  • 1ページ損益計算書の①〜㊺欄と、2ページの月別売上・給料賃金・専従者給与・貸倒引当金・地代家賃の書き方
  • 青色申告特別控除65万円・55万円・10万円の要件と、2ページ⑥〜⑨欄での控除額の計算
  • 3ページ減価償却費の計算(イ〜ヌ列)の記入例と、令和8年4月から40万円未満に広がった少額減価償却資産の特例
  • 4ページ貸借対照表と元入金の計算、1ページとの一致チェック
  • よくある記入ミスと、AIで検算・下書きを作るときのプロンプト例と注意点

青色申告を始める手続は青色申告承認申請書の書き方と提出期限で、申告準備の全体像は個人事業主の確定申告×AI活用術で解説しています。この記事は「決算書(一般用)の各欄をどう埋めるか」に絞ります。

青色申告決算書とは?一般用は4ページで確定申告書と一緒に出す

青色申告決算書には、事業所得向けの「一般用」のほか、「不動産所得用」「農業所得用」「現金主義用」があります。小売業・飲食業・サービス業・士業など、ほとんどの個人事業主が使うのは一般用です。様式は国税庁の所得税青色申告決算書(一般用)【令和5年分以降用】で、令和7年分の書き方(国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」)もこの様式を前提にしています。

4ページそれぞれに何を書くか

ページ

主な表

書く内容のイメージ

1ページ

損益計算書

売上・原価・経費から所得金額(㊺)まで

2ページ

月別売上(収入)金額及び仕入金額/給料賃金の内訳/専従者給与の内訳/貸倒引当金繰入額の計算/地代家賃の内訳/青色申告特別控除額の計算

1ページの内訳と控除額の計算

3ページ

減価償却費の計算/売上(収入)金額の明細/仕入金額の明細/利子割引料の内訳(金融機関を除く)/税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳/本年中における特殊事情

資産ごとの償却費と取引先の明細

4ページ

貸借対照表(資産負債調)/製造原価の計算

期首・期末の資産・負債(製造原価は原価計算をする人だけ)

4ページ目の貸借対照表には「65万円又は55万円の青色申告特別控除を受ける人は必ず記入」と印字されています。10万円控除の人は記入が必須ではありませんが、分かる箇所はできるだけ書くよう求められています。

令和8年分の提出期限と提出方法

令和8年分の確定申告期限は令和9年(2027年)3月15日(月)です。決算書は確定申告書に添付して出します。e-Taxで期限内に送信すると、後述する65万円控除の要件の一つを満たせます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って入力すると決算書と申告書が自動計算で作れます。

なお、本稿執筆時点(2026年10月)では令和8年分の「書き方」はまだ公表されていないため、令和7年分の書き方と令和5年分以降用の様式で欄名・欄番号を確認しています。令和8年分版が公表されたら、欄番号や様式の変更がないか必ず見比べてください。

収支内訳書(白色申告)との違い

白色申告の人が出すのは「収支内訳書」です。国税庁の令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方を見ると、収支内訳書は2ページ構成で、貸借対照表がありません。家族への給与の扱いも違います。

項目

青色申告決算書(一般用)

収支内訳書(一般用)

ページ数

4ページ

2ページ

貸借対照表

あり(65万円・55万円控除では必須)

なし

家族への給与

届け出た範囲で実際に払った「専従者給与」を経費にできる

専従者控除(配偶者86万円、その他の親族は1人50万円が上限)

貸倒引当金(一括評価)

年末の貸金の5.5%(金融業は3.3%)まで繰り入れられる

欄なし

特別控除

青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)

なし

書き始める前にそろえる資料と、記入の順番

手元にそろえる資料

  • 総勘定元帳(または経費帳・売上帳・仕入帳)の決算整理後の残高
  • 期首・期末の棚卸表(棚卸の手順は棚卸表テンプレートの作り方と実地棚卸の手順を参照)
  • 固定資産台帳(取得年月・取得価額・前年末の未償却残高・耐用年数・償却方法)と前年の決算書
  • 源泉徴収簿(給料賃金・専従者給与の年末調整後の税額)
  • 賃貸借契約書、借入金の返済予定表、税理士等への報酬の支払明細
  • 前年の貸倒引当金の繰入額と、年末の売掛金・貸付金などの残高

3ページ→2ページ→1ページ→4ページの順で書くと転記ミスが減る

1ページから順に書くと、内訳が固まる前の数字を書くことになり書き直しが増えます。3ページで減価償却費を、2ページで月別売上・給与・貸倒引当金・地代家賃を固めてから1ページへ転記し、2ページで控除額を出して㊹・㊺を埋め、最後に4ページで所得金額の一致を確かめます。

この記事の記入例の前提(架空の数値)

以下、すべて架空の雑貨小売店「〇〇商店」(個人事業主、妻が青色事業専従者、パート従業員1名、店舗は賃借、e-Taxで期限内に申告)を例にします。金額はpythonで検算済みです。

1ページ:損益計算書の書き方と記入例

1ページの損益計算書は、①売上から㊺所得金額まで、欄番号どおりに上から計算していく表です。国税庁の書き方では、経費(⑧〜㉛)と専従者給与(㊳)は「経費帳の各科目の口座から、決算整理後の金額を記入」するとされています。決算整理の仕訳がまだの場合は、決算整理仕訳の一覧と手順で先に締めておきます。

売上①と売上原価②〜⑥

  • ①売上(収入)金額:2ページ「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の売上の計を書きます。雑収入と家事消費等を含みます。
  • ②期首・⑤期末の商品棚卸高:期首と期末の棚卸表から書きます。②は前年の決算書の⑤と同じ金額になるはずです。
  • ③仕入金額:2ページの仕入金額の計を書きます。
  • ④小計(②+③)、⑥差引原価(④−⑤)、⑦差引金額(①−⑥):計算して書きます。

経費⑧〜㉛で迷いやすい科目

  • ⑧租税公課:事業税・固定資産税(事業分)・印紙税など。所得税・住民税は経費にならないので書きません。消費税を税込経理している課税事業者は、消費税等の納付税額もここに含めます。
  • ⑱減価償却費:3ページ「減価償却費の計算」のリ列(本年分の必要経費算入額)の計を書きます。
  • ⑳給料賃金:青色事業専従者への給与はここに入れず、㊳専従者給与に書きます。
  • ㉓地代家賃:2ページ「地代家賃の内訳」の必要経費算入額と合わせます。
  • ㉕〜㉚の空欄:既定の科目に当てはまらない経費(支払手数料、車両費など)は、空欄に科目名を書いて使います。

引当金・専従者給与と㊸〜㊺

㉝差引金額(⑦−㉜)に、前年に繰り入れた貸倒引当金などの戻し入れ(㉞〜㊲)を足し、専従者給与(㊳)と本年の繰入額(㊴〜㊷)を引いたものが、㊸青色申告特別控除前の所得金額です。㊹には2ページで計算した青色申告特別控除額(⑨)を書き、㊸−㊹が㊺所得金額になります。㊺が確定申告書の事業所得の金額に移ります。

1ページの記入例

欄

項目

金額(円)

①

売上(収入)金額(雑収入を含む)

30,000,000

②

期首商品棚卸高

2,000,000

③

仕入金額

18,000,000

④

小計(②+③)

20,000,000

⑤

期末商品棚卸高

2,300,000

⑥

差引原価(④−⑤)

17,700,000

⑦

差引金額(①−⑥)

12,300,000

⑧〜㉛

経費(うち⑱減価償却費 690,360円、⑳給料賃金 1,800,000円、㉓地代家賃 1,440,000円)

6,140,360

㉜

経費の計

6,140,360

㉝

差引金額(⑦−㉜)

6,159,640

㉞・㊲

繰戻額等(貸倒引当金)

66,000

㊳

専従者給与

2,400,000

㊴・㊷

繰入額等(貸倒引当金)

82,500

㊸

青色申告特別控除前の所得金額(㉝+㊲−㊳−㊷)

3,743,140

㊹

青色申告特別控除額

650,000

㊺

所得金額(㊸−㊹)

3,093,140

経費㉜の内訳は、租税公課250,000、荷造運賃180,000、水道光熱費360,000、旅費交通費120,000、通信費150,000、広告宣伝費300,000、接待交際費100,000、損害保険料80,000、修繕費90,000、消耗品費400,000、減価償却費690,360、福利厚生費50,000、給料賃金1,800,000、利子割引料60,000、地代家賃1,440,000、雑費70,000(単位:円)です。

2ページ:月別売上・給料賃金・専従者給与・貸倒引当金・地代家賃の書き方

月別売上(収入)金額及び仕入金額

1月から12月の売上と仕入を月ごとに書き、家事消費等と雑収入を足して「計」を出します。売掛帳を20日締めなどにしていても、1月1日から12月31日までの金額を書きます。国税庁の書き方では、2月〜11月は帳簿の月計をそのまま書き、1月と12月の欄で調整しても差し支えないとされています。

  • 家事消費等:商品を自分や家族で使った分。都度売上に含めて記帳しているなら、記入を省略してかまいません。
  • 雑収入:事業に関連する受取手数料など。事業所得として課税される国や自治体の助成金等もここに含めます。

記入例では、1月〜12月の売上の合計が29,800,000円、家事消費等60,000円、雑収入140,000円で、計30,000,000円。これが1ページの①になります。

給料賃金の内訳

従業員ごとに氏名・年齢・従事月数・給料賃金・賞与・合計と、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額を書きます。源泉徴収税額は年末調整後の金額です。年の途中で辞めて年末調整をしていない人は、本年中に徴収した税額を書きます。記入例ではパート1名・12か月・合計1,800,000円で、1ページの⑳と一致させます。

専従者給与の内訳

青色事業専従者(生計を一にする配偶者や15歳以上の親族で、年6か月を超えて事業に専ら従事している人)に払った給与を書きます。必要経費にできるのは、「青色事業専従者給与に関する届出書」に書いた方法・金額の範囲内で実際に払い、労務の対価として相当な金額だけです(国税庁 タックスアンサー No.2075)。記入例は妻・12か月・月200,000円×12=2,400,000円で、1ページの㊳と一致させます。届出書の書き方は青色事業専従者給与に関する届出書の書き方で解説しています。

貸倒引当金繰入額の計算

青色申告者は、年末の売掛金・貸付金などの貸金の合計額に5.5%(金融業は3.3%)を掛けた金額まで、一括評価による貸倒引当金を繰り入れられます。様式の欄は次のとおりです。

欄

内容

記入例(円)

①

個別評価による本年分繰入額

0

②

年末における一括評価による貸倒引当金の繰入れの対象となる貸金の合計額

1,500,000

③

本年分繰入限度額(②×5.5%)

82,500

④

本年分繰入額

82,500

⑤

本年分の貸倒引当金繰入額(①+④)→1ページ㊴へ

82,500

前年に繰り入れた66,000円(前年末の貸金1,200,000円×5.5%)は、1ページの㉞(繰戻額等)に書いて全額戻し入れます。仕訳の考え方は貸倒引当金の仕訳(洗替法・差額補充法と繰入限度額)を参照してください。

地代家賃の内訳

支払先の住所・氏名、賃借物件、本年中の賃借料・権利金等、そのうち必要経費算入額を書きます。権利金や更新料は上段、賃借料は下段に書き、権利金は「権」、更新料は「更」を○で囲みます。自宅兼事務所の家賃は、全額を「本年中の賃借料」に書き、事業分だけを「必要経費算入額」に書くと、按分の根拠が見えて伝わりやすくなります。記入例は店舗家賃月120,000円×12=1,440,000円(全額事業用)です。

青色申告特別控除65万円・55万円・10万円の要件と計算【令和8年分】

令和8年分の3つの控除額と要件

令和8年分の要件は、国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(令和8年4月1日現在法令等)のとおりです。

控除額

要件

65万円

55万円の要件をすべて満たし、さらに「e-Taxで申告書・貸借対照表・損益計算書等を期限内に送信」または「仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件で保存し、届出書を出している」のどちらかに当てはまる

55万円

不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般には複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告する。現金主義の特例を選んでいる人は不可

10万円

上記に当てはまらない青色申告者(簡易な記帳など)

e-Taxでもイメージデータ(PDFなど)での送信は65万円の要件になりません。また、期限を1日でも過ぎると、複式簿記でも10万円になります。還付申告でも期限内の提出が必要です。

2ページ⑥〜⑨欄での控除額の計算

控除額は2ページ「青色申告特別控除額の計算」で出します。不動産所得がある人は、先に不動産所得から控除し、残りを事業所得から引く仕組みです。

欄

内容

記入例(円)

⑥

本年分の不動産所得の金額(赤字のときは0)

0

⑦

青色申告特別控除前の所得金額(1ページ㊸、赤字のときは0)

3,743,140

⑧

65万円(又は55万円)と⑥のいずれか少ない方(不動産所得から差し引かれる控除額)

0

⑨

「65万円(又は55万円)−⑧」と⑦のいずれか少ない方→1ページ㊹へ

650,000

10万円控除の人は、同じ表の下段で「10万円」を基準に同じ計算をします。所得が控除額より少ないときは所得の金額が上限になり、控除で赤字を作ることはできません。

令和9年分からは75万円・65万円・10万円に変わる

令和8年度税制改正で、青色申告特別控除は令和9年分以後、e-Tax+優良な電子帳簿保存で75万円、複式簿記+期限内e-Taxで65万円、書面提出だと複式簿記でも10万円に見直されました(財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(所得税関係)の改正)。令和8年分は従前どおり65万円・55万円・10万円です。顧問先へ説明するときは、どの年分の話かを必ず添えてください。改正の詳しい整理は青色申告承認申請書の記事の控除額の章にまとめています。

3ページ:減価償却費の計算の書き方と各内訳

3ページの中心は「減価償却費の計算」です。資産1つにつき1行を使い、左から順に計算します。列の意味は次のとおりです(国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」)。

減価償却費の計算の各列(イ〜ヌ)の意味

列

項目

書き方(平成19年4月1日以後に取得した資産)

イ

取得価額(償却保証額)

取得価額(定率法は括弧内に償却保証額)

ロ

償却の基礎になる金額

定額法は取得価額、定率法は前年末の未償却残高

—

償却方法・耐用年数

届け出た方法。届出がなければ定額法(建物などは定額法のみ)

ハ

償却率又は改定償却率

耐用年数に応じた償却率。一括償却資産は「1/3」

ニ

本年中の償却期間

月の途中の取得はその月を1か月と数える

ホ

本年分の普通償却費

ロ×ハ×ニ

ヘ

割増(特別)償却費

特別償却などの割増部分だけ

ト

本年分の償却費合計

ホ+ヘ

チ

事業専用割合

家事と共用の資産は事業で使う割合

リ

本年分の必要経費算入額

ト×チ。リ列の計を1ページ⑱へ

ヌ

未償却残高(期末残高)

本年取得はイ−ト、前年以前の取得は前年末の未償却残高−ト

ヌ列は、事業専用割合を掛ける前のトを引く点がポイントです。家事分も含めて資産の価値は減っていくため、事業専用割合が60%でも、未償却残高からは償却費の全額を差し引きます。

記入例:4つの資産で減価償却費を計算する

資産(取得年月)

計算

リ 必要経費算入額

ヌ 未償却残高

普通乗用車(令和8年4月、2,400,000円、定額法・耐用年数6年・償却率0.167、事業専用60%)

ホ=2,400,000×0.167×9/12=300,600、リ=300,600×60%

180,360円

2,099,400円

陳列ケース(令和5年10月、800,000円、定額法・8年・0.125、前年末未償却残高575,000円)

ホ=800,000×0.125×12/12=100,000

100,000円

475,000円

一括償却資産(令和8年取得、合計180,000円)

180,000×1/3

60,000円

(残り120,000円は翌年以後)

レジ用パソコン(令和8年6月、350,000円)摘要「措法28の2」

少額減価償却資産の特例で全額

350,000円

0円

計

690,360円

普通乗用車は4月に取得したので、4月〜12月の9か月分です。陳列ケースは定額法なので、ロ列は取得価額の800,000円のまま毎年同じ償却費になります。リ列の計690,360円を1ページの⑱に書きます。耐用年数や償却率は、書き方の5〜8ページの表か国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらましで確認します。

一括償却資産と少額減価償却資産の特例(令和8年4月から40万円未満)

取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、「一括償却資産」として3年間で3分の1ずつ必要経費にできます。決算書ではハ列に「1/3」と書きます。10万円未満の資産(または使用可能期間が1年未満のもの)は、減価償却をせず消耗品費などで全額経費にします。

中小事業者である青色申告者は、少額減価償却資産の特例(措置法28条の2)で、一定の金額未満の資産を取得した年に全額経費にできます(年300万円まで)。令和8年度税制改正で、令和8年4月1日以後に取得等した資産は40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げられ、適用期限は令和11年3月31日まで延びました。同日前に取得した資産は従前どおり30万円未満で判定します(財務省「令和8年度 税制改正の解説」)。令和8年分の決算書では、1〜3月に取得した資産と4月以後に取得した資産で基準が違うため、取得日を必ず確かめます。適用するときは摘要欄に「措法28の2」と書きます。制度の詳細は少額減価償却資産の特例(40万円未満を一括経費にする方法)で解説しています。

売上・仕入の明細、利子割引料、税理士報酬、特殊事情

  • 売上(収入)金額の明細・仕入金額の明細:主な取引先ごとに名称・所在地・登録番号(法人番号)・金額を書き、それ以外は「上記以外の売上先(仕入先)の計」にまとめます。登録番号か法人番号を書いた取引先は、名称と所在地の記入を省略できます。登録番号は先頭に「T」を付けます。
  • 利子割引料の内訳(金融機関を除く):銀行など金融機関からの借入れは書きません。親族や取引先など金融機関以外から借りている場合に、期末の借入金額・本年中の利子・必要経費算入額を書きます。
  • 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳:本年中に支払うことが確定した報酬と源泉徴収税額を書きます。未払いの報酬に対応する源泉徴収税額も含めます。
  • 本年中における特殊事情:売上や利益率が大きく変わった理由(店舗改装で休業した、主要取引先を失ったなど)を簡潔に書きます。前年と比べて数字が大きく動いた年ほど、一言あると伝わります。

4ページ:貸借対照表の書き方と元入金の計算

貸借対照表には、期首(1月1日)と期末(12月31日)の資産・負債・資本を書きます。

資産の部・負債の部で迷いやすい科目

  • 棚卸資産:商品・製品のほか、消耗品費から除いた未使用の消耗品も含めます。1ページの②⑤と一致します。
  • 事業主貸:生活費、所得税・住民税など経費にならない税金、家事消費などで、本年中に事業から出したお金の合計。期末だけに書きます。
  • 預り金:給与や専従者給与から天引きして、まだ納めていない源泉所得税を含めます。
  • 事業主借:事業主が個人のお金から入れた事業資金や、事業用口座に入った預金利息など事業所得以外の入金の合計。期末だけに書きます。
  • 元入金:期首と期末に同じ金額を書きます。金額は「期首の資産の総額−期首の負債の総額」です。

4ページの記入例

科目

期首(1月1日)

期末(12月31日)

現金

300,000

350,000

その他の預金

3,000,000

3,200,000

売掛金

1,200,000

1,500,000

棚卸資産

2,000,000

2,300,000

車両運搬具

—

2,099,400

工具器具備品(一括償却資産の残額を含む)

575,000

595,000

事業主貸

—

2,510,240

資産の部 合計

7,075,000

12,554,640

買掛金

1,000,000

1,100,000

借入金

—

1,500,000

未払金

200,000

250,000

預り金

—

20,000

貸倒引当金

66,000

82,500

事業主借

—

50,000

元入金

5,809,000

5,809,000

青色申告特別控除前の所得金額

—

3,743,140

負債・資本の部 合計

7,075,000

12,554,640

元入金は、期首の資産7,075,000円−期首の負債1,266,000円(買掛金・未払金・貸倒引当金)=5,809,000円です。期末の「青色申告特別控除前の所得金額」には1ページの㊸(3,743,140円)を書きます。

1ページの㊸と一致しなければどこかが間違っている

国税庁の書き方は、損益計算書と貸借対照表の青色申告特別控除前の所得金額は必ず一致し、一致しない場合は記帳漏れ・二重記帳・転記誤りを確認するよう求めています。会計ソフトなら自動で一致しますが、手書きや表計算で作ると、減価償却の家事分や事業主貸・事業主借の集計漏れでずれやすくなります。

翌年(令和9年分)の期首の元入金は、「元入金+青色申告特別控除前の所得金額+事業主借−事業主貸」で求めます。記入例では5,809,000+3,743,140+50,000−2,510,240=7,091,900円で、これは期末の資産(事業主貸を除く)10,044,400円から期末の負債2,952,500円を引いた金額と一致します。

青色申告決算書のよくある記入ミス7選

よくあるミス

防ぎ方

専従者給与を⑳給料賃金に入れてしまう

家族への給与は㊳専従者給与へ。2ページの内訳と一致させる

届出額を超える専従者給与をそのまま経費にする

届出書の金額と支給方法を毎年突き合わせる。増額するなら変更届出書

家事共用の資産で、ヌ列を事業分だけ減らしている

未償却残高は償却費合計(ト)の全額を引く

令和8年1〜3月取得の30万円以上40万円未満の資産に少額特例を使う

4月1日以後の取得分だけが40万円未満の対象。取得日で判定

銀行借入れの利息を「利子割引料の内訳」に書く

この内訳は金融機関以外からの借入れだけ

前年の貸倒引当金を戻し入れていない

前年の繰入額を㉞に書き、本年分を㊴に書く

書面で出して65万円控除を書いている

65万円はe-Tax送信か優良な電子帳簿保存が条件。書面なら55万円

AIで青色申告決算書を検算・下書きする方法とプロンプト例

決算書づくりでAIが役立つのは、数字のつじつま合わせと、内訳表の整理・文章の下書きです。一方、耐用年数の判定、専従者給与の相当性、特例が使えるかどうかの判断は、AIの答えをそのまま採用せず、国税庁の資料で人が確認します。汎用AIは改正前の金額で答えることがあるため、年分を明記して聞きます。

プロンプト1:損益計算書の欄番号どおりに検算する

あなたは個人事業主の決算書の検算担当です。
以下は令和8年分 青色申告決算書(一般用)1ページの金額です。
次の計算式で検算し、合わない欄だけを表で示してください。
・④=②+③ ・⑥=④−⑤ ・⑦=①−⑥ ・㉜=⑧〜㉛の合計
・㉝=⑦−㉜ ・㊸=㉝+㊲−㊳−㊷ ・㊺=㊸−㊹
税務上の判断はせず、計算の一致だけを確認してください。

【欄番号と金額を貼り付け】

うまくいかない例:「この決算書をチェックして」とだけ頼むと、一般論の注意点が並ぶだけで、どの欄が合わないのか分かりません。直し方は、上のように検算する式を指定し、判断はしないと明記することです。

プロンプト2:減価償却費の計算表を作る

令和8年分の減価償却費の計算表を作ってください。
列は「名称/取得年月/イ取得価額/ロ償却の基礎になる金額/償却方法/耐用年数/ハ償却率/ニ本年中の償却期間(月)/ホ普通償却費/ト償却費合計/チ事業専用割合/リ必要経費算入額/ヌ未償却残高」です。
・ホ=ロ×ハ×ニ/12(1円未満切り捨て)、リ=ト×チ、ヌは本年取得ならイ−ト、それ以外は前年末未償却残高−ト
・耐用年数と償却率は私が入力した値を使い、あなたは決めないでください
・計算式も各行に示してください

【資産の一覧を貼り付け】

うまくいかない例:耐用年数をAIに推測させると、似た資産の年数を取り違えることがあります。耐用年数と償却率は人が入れ、AIには掛け算と未償却残高の計算だけを任せます。

プロンプト3:損益計算書と貸借対照表の一致チェック

以下の貸借対照表(期首・期末)と、損益計算書の㊸の金額を照合してください。
1. 期首の元入金=期首の資産合計−期首の負債合計 になっているか
2. 期末の資産合計=期末の負債合計+事業主借+元入金+㊸ になっているか
3. 一致しない場合、差額と、差額が生じやすい原因の候補(事業主貸・事業主借の集計漏れ、減価償却の家事分、棚卸高の転記など)を挙げてください

【貸借対照表と㊸を貼り付け】

顧客データをAIに入れるときの注意

  • 取引先名・従業員の氏名・マイナンバー・口座番号などは、記号に置き換えてから入力する
  • 入力したデータが学習に使われない設定か、事務所の利用規程で認められたサービスかを確認する
  • 出てきた数字は、会計ソフトや元帳の金額と最後に人が突き合わせる

汎用AIでもここまでの検算・整理はできますが、「令和8年分の少額特例の基準は?」「専従者給与の要件は?」のように制度の根拠が要る質問は、国税庁の資料を出典付きで返せるAIのほうが確認の手間が減ります。士業AIの税務AIは、国税庁などの公的情報を参照して回答するため、決算期の確認作業の下調べに使えます。申告書のチェックに使うプロンプトは税理士のChatGPT申告書チェック術も参考になります。税理士事務所での使い方は税理士向けの士業AI、記帳や決算資料の整理を担う事務所スタッフ向けは事務所スタッフ・経理向けの士業AIで紹介しています。

青色申告決算書の書き方でよくある質問

開業1年目で期首の数字がない場合はどう書きますか?

年の途中で開業した場合、期首の欄には開業日時点の資産・負債を書き、その差額が元入金になります。損益計算書の期首棚卸高は、開業時に持っていた商品があればその金額、なければ0です。

自宅兼事務所の家賃や車の減価償却はどう按分しますか?

使用面積や使用時間など合理的な基準で事業分を決め、家賃は2ページ「地代家賃の内訳」の必要経費算入額に、車は3ページのチ列(事業専用割合)に反映します。按分の考え方は個人事業主の節税10選でも触れています。

まとめ:内訳から書き、最後に㊸の一致で確かめる

青色申告決算書(一般用)は、内訳(3ページ・2ページ)を先に固めて1ページへ転記し、最後に4ページの貸借対照表で㊸が一致するかを確かめる順番で書くと、書き直しがほとんど出ません。

令和8年分は、青色申告特別控除が従前どおり65万円・55万円・10万円で、少額減価償却資産の特例は4月1日以後の取得分から40万円未満に広がった年です。数字の検算や表の整理はAIに下書きさせ、制度の判断と元帳との照合は人が国税庁の資料で行う分担にすると、1〜3月の繁忙期でも精度を保てます。

参考文献

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