棚卸表テンプレートの作り方|Excel数式コピペ可・実地棚卸の手順と確認項目
この記事で分かること
棚卸表とは、決算日(法人は事業年度終了の日、個人事業者は12月31日)に残っている商品・製品・仕掛品・原材料・消耗品などを、種類や品質、型ごとに数え、数量と単価と金額を一覧にした書類です。国税庁の「青色申告の決算の手引き(一般用)」では、売上原価は「年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高」で計算すると示されています。棚卸表は在庫の記録であり、その期の利益を決める書類でもあります。
- 棚卸表に最低限そろえたい10列と、それぞれを持つ理由
- 金額・差異・低価法・入力ミス検知のExcel数式
- 実地棚卸を当日までに段取りする5ステップ
- 棚卸しの対象・時期・省略できる条件と、評価方法7つと届出
- 会計士の立会で見られる点と、AIに検算を任せる手順
本記事にダウンロードできるファイルはありません。下の項目表と数式を自分のExcelにコピーして組み立てる前提です。そのほうが自社の品目コードや保管場所の呼び方に合わせられます。
棚卸表に必要な項目一覧|最低限そろえたい10列
まずは次の10列だけで作り、足りなくなってから足すのが確実です。ExcelのA列からJ列にこの順で並べる前提で説明します。
列名 | 入れる内容 | なぜ要るか |
|---|---|---|
A 棚卸日 | 実際に数えた日付 | 決算日と違う日なら残高調整が要る |
B 保管場所 | 倉庫・店舗・外部倉庫 | 数え漏れと二重計上を場所単位で潰す |
C 品番 | 社内の品目コード | 帳簿在庫と突き合わせる鍵 |
D 品名・規格・型 | 品名とサイズ・型番 | 種類・品質・型の別に数えるため |
E 単位 | 個/箱/kg/m | 「1箱=12個」の誤りが差異の主因 |
F 実地数量 | 実際に数えた数 | 出発点。推定で埋めない |
G 単価 | 評価方法による単価 | 金額を数量×単価で再現するため |
H 金額 | 数式で算出 | 単価改定や数量修正に自動追随 |
I 帳簿数量 | システム上の理論在庫 | 差異をその場で見つける |
J 備考 | 破損・棚ざらし・預り品 | 評価減の品と他社の品を切り分ける |
数量と単価を分けて持つ理由
金額だけを手入力した表は検算できません。分けて持てば、単価を間違えたのか数え間違えたのかを切り分けられ、評価方法を変えてもG列の差し替えで済みます。国税庁の手引きも、届出をしていない場合の年末棚卸高を「年末に一番近い時期に仕入れたその棚卸資産の仕入単価×年末の棚卸資産の数量」と示しています。
帳簿在庫の列を必ず作る
I列が空欄の棚卸表は「数えた結果」しか残らず、差異が出ても気づけません。差異が出ること自体ではなく、原因を説明できない状態が問題です。月次決算チェックリストの在庫確認にも同じ列を入れておくと、期末に驚かずに済みます。
コピペで作る棚卸表のExcel計算式
1行目が見出し、2行目から501行目までデータが入る想定です。
① 金額=数量×単価
=ROUND(F2*G2,0)H2に入れて下までコピーします。ROUNDがないと行ごとの端数が積み上がり、合計が帳簿と1円単位でずれます。よくある崩れ方は、F列に「10個」と単位まで打って文字列になること。単位はE列に分けます。
② 帳簿在庫との差異と差異率
差異数量 =F2-I2
差異率 =IF(I2=0,"",(F2-I2)/I2)K2・L2に置き、L列はパーセント表示にします。IFで包むのは、帳簿数量ゼロの新規品目で「#DIV/0!」が出て合計まで伝染するのを防ぐためです。差異率の大きい順に並べれば調べる品目が分かります。
③ 低価法の判定(原価と期末時価の小さい方)
=ROUND(F2*MIN(G2,M2),0)M列に期末時価の単価を入れ、N2にこの式を置きます。法人税法施行令第28条第1項第2号の低価法は、種類等ごとに、原価法で評価した価額と事業年度終了の時における価額のうち、いずれか低い価額をもって評価額とする方法で、MINはそれを式にしたものです。M列が空欄だとMINが0を拾い評価額がゼロになるため、時価未調査の行には原価単価を入れます。Excelで計算できることと低価法を採用できること(届出が前提)は別です。
④ 入力ミスを防ぐ合計チェック
検算 =IF(SUM(H2:H501)=SUMPRODUCT(ROUND(F2:F501*G2:G501,0)),"OK","要確認")
重複検知 =IF(COUNTIF($C$2:$C$501,C2)>1,"重複","")1本目は、H列に数式でなく手入力の数字が混ざると「要確認」に変わります。SUMPRODUCT側も行ごとにROUNDしているのは、先に合計してから丸めると単価に小数がある場合に端数分だけずれ、正しい表まで「要確認」になってしまうためです。2本目は品番の重複検知。保管場所ごとに行を分けている場合はB列とC列を結合したキーで判定するよう直します。
実地棚卸の手順|当日までの5ステップ
1. 事前準備(指示書・担当割り・カウント票の管理)
誰がどこを数えるか、数え方(開梱の有無)、記入ルール、疑義の聞き先を1枚の指示書にまとめます。カウント票は連番で発行し、配った番号を記録して、使った票も未使用の票も全部回収します。1枚行方不明だと、その区画を数えたのかが分かりません。
2. 当日のカウントとダブルカウント
数える人と記録する人を分け、重要な区画は別の人が再カウントします。数え終わった棚には印を付けて未実施と区別します。棚卸中は入出庫を止め、やむを得ず動かす分は別置きにして入出庫を票に残します。
3. 第三者の預り品・仕掛品の扱い
他社からの預り品は自社の棚卸資産ではないので、数えたうえで棚卸表から除外し、備考に明記します。逆に外部倉庫や加工委託先にある自社在庫は、現場になくても自社の在庫です。仕掛品は加工の進み具合まで記録しないと金額になりません。
4. 差異が出たときの原因調査
原因は、数え間違い、単位の取り違え、入出庫の計上漏れ、期ずれ、破損・廃棄の未処理のどれかに落ちることがほとんどです。金額の大きい順に潰し、調べた結果を差異一覧の備考に残せば翌期が速くなります。
5. 期末日以外の日に棚卸しする場合
国税庁の手引きは、個人事業者について、年末にできない場合は多少前後した日でも差し支えないが、12月31日と棚卸日の間の売上げ・仕入れなどから12月31日現在の棚卸高を計算し、その計算方法を明らかにしておく必要があるとしています。法人も同じで、調整の計算過程を残すところまでが手順です。
数量と金額が固まったら、期末商品棚卸高の振替など決算整理仕訳の一覧と手順に沿って仕訳に落とし、棚卸表の合計と突き合わせます。
棚卸しの対象・時期・省略できる条件(国税庁の手引きが示す線)
以下は国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」の内容です。個人事業者向けなので時期は12月31日が前提。法人は事業年度終了の日に読み替えてください。
対象は2区分です。1つは商品など(商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副産物、仕損じ品、作業くずなど)。もう1つは消耗品などで、まだ使用していない包装材料、ガソリン、事務用品などの消耗品や、使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の少額な減価償却資産です。消耗品は、通常の年に比べて特に増えていないものなら棚卸しを省略しても差し支えないとされています。
方法は、種類、品質、型などの別に数量を実地に調べること。ただし、商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地に棚卸しをしてその正否を確かめている場合は、商品出入帳などを基に年末の棚卸高を計算することで、年末の実地棚卸しを省略できます。日々の記録が信頼できることが前提の取扱いです。
評価では、災害により著しく損傷を受けたり、棚ざらしや流行遅れなどで著しく陳腐化したなどのため、通常の販売価額では販売できないもの、通常の方法では使用に耐えないものは、他と区別して12月31日現在の処分可能価額で評価することもできます。製造過程で生じた仕損じ品・作業くず・副産物のうち著しく少額なものは1円以上の備忘価額でも構いません。J列に状態を書くのは、この区別を後から説明するためです。
そして手引きは、実地棚卸しに際して数量などを記載したメモなどの原始記録は棚卸表と一緒に保存する、と明記しています。カウント票は集計後に捨ててよいものではありません。
棚卸資産の評価方法は7つ|届出をしないと最終仕入原価法になる
法人税法施行令第28条第1項は、第1号に原価法6種類、第2号に低価法を定めています。
方法名 | 中身 | 向く場面 |
|---|---|---|
個別法 | 期末棚卸資産の全部について、個々の取得価額をその取得価額とする | 1点ごとに仕入値が違う商材 |
先入先出法 | 種類等ごとに、期末に最も近い時に取得したものから順次成るとみなす | 古い順に出る実際の流れに合わせる |
総平均法 | 期首と当期取得の取得価額の総額を総数量で除して単位当たり価額とする | 期末に一括計算し単価変動を平す |
移動平均法 | 取得の都度平均単価を改定し、期末直近に改定された単価による | 都度単価を持てる場合 |
最終仕入原価法 | 種類等ごとに、期末に最も近い時に取得したものの単位当たり取得価額とする | 最も簡便。届出がない場合の法定の方法 |
売価還元法 | 種類等または差益の率ごとに、期末の通常の販売価額の総額に原価の率を乗じる | 品目数が極めて多い小売業 |
低価法 | 種類等ごとに、原価法の価額と事業年度終了の時における価額の低い方をとる | 時価下落を評価に反映させたい |
個別法(およびそれを基礎とする低価法)は、通常一の取引によって大量に取得され、かつ規格に応じて価額が定められている棚卸資産には選定できません(同条第2項)。また第29条第1項により、評価方法は事業の種類ごとに、かつ、商品又は製品/半製品/仕掛品(半成工事を含む)/主要原材料及び補助原材料その他の区分ごとに選定します。
届出は、国税庁「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」によれば、普通法人を設立した場合は設立第1期の確定申告書の提出期限まで(仮決算による中間申告書を提出するときはその提出期限まで)に納税地の所轄税務署長へ提出します。根拠は法人税法施行令第29条第2項、第184条第5項です。
評価方法を選定しなかった場合、または選定した方法により評価しなかった場合は、第31条第1項により最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法となります。変更には所轄税務署長の承認が必要で、第30条第2項により、新たな方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに申請書を提出します。期が始まってからでは間に合いません。
公認会計士の棚卸立会では、棚卸表のどこを見られるか
ここからは会社法監査や金融商品取引法監査の対象になる会社の話です。監査を受けていない中小企業に同じ手続が求められるわけではありませんが、監査人の視点を知ると自社の棚卸表の弱点が見えます。
日本公認会計士協会の監査基準報告書501「特定項目の監査証拠」第3項は、棚卸資産が財務諸表において重要である場合、実務的に不可能でない限り実地棚卸の立会を実施し、経営者による指示と手続の評価、棚卸手続の観察、棚卸資産の実査、テスト・カウントを行うことを求めています。あわせて、企業の最終的な在庫記録が実地棚卸結果を正確に反映しているかを判断するため、当該記録にも監査手続を実施します。
A4項は、経営者の指示と手続の評価として、使用された実地棚卸の記録用紙の回収、未使用の記録用紙の取扱い、カウントと再カウント手続といった内部統制、仕掛品の進捗度・滞留品・陳腐化品又は破損品・預り品など第三者が所有する棚卸資産の正確な識別、数量の見積りの手続、基準日前後の保管場所の移動及び入出庫に係る内部統制への対処を例示しています。先の5ステップはこの観点に対応しています。
A7項は、経営者の実地棚卸記録から抽出した品目を実物在庫と照合し、反対に実物在庫から抽出した品目を記録と照合することで、記録の網羅性及び正確性の監査証拠を入手するとしています。帳簿から現物への一方通行では足りません。A6項は実査が実在性の確認(所有権までは必ずしも確かめられない)と陳腐化品・破損品・老朽品の識別に役立つとし、A8項は完了した実地棚卸記録の写しの入手が後の手続に役立つとしています。写しを求められたらその版をすぐ渡せる状態にしておくとスムーズです。
実地棚卸が期末日以外の日に行われる場合は、棚卸日と期末日の間の増減が適切に記録されているかの証拠を得るため追加の手続が入ります(第4項)。第三者が保管し管理している棚卸資産が重要な場合は、第三者への確認、実査等のいずれか又は両方を実施します(第7項)。立会が実務的に不可能なら代替的な監査手続、それもできなければ監査基準報告書705に従って限定意見を表明するか意見を表明してはならないとされています(第6項)。立会う側の実務は公認会計士向けの会計AIでも効率化できます。
棚卸表の作成と検算をAIに任せる手順
AIが効くのは、様式をゼロから考える場面と、できた表を疑う場面です。士業AIは税務・会計の業務に合わせたAIチャットで、普段の言葉で聞いてもそのまま仕事に使える形で返ってきます。経理スタッフ向けの「経理AI」は日々の記帳や決算作業の相談を想定した入口です。
以下は【 】を自社の事情に置き換えて使えます。
① 棚卸表の項目設計をさせる
当社は【業種:食品卸】、保管場所は【倉庫2・店舗3】、品目数【800】点、
在庫管理システム【あり】、決算日【3月31日】。
実地棚卸に使う棚卸表の列構成を提案してください。
各列の「入れる内容」「なぜ必要か」「入力担当者」を表にし、
当社に不要と思う列は理由とともに外してください。② Excel数式を書かせる
A:棚卸日 B:保管場所 C:品番 D:品名 E:単位 F:実地数量 G:単価
H:金額 I:帳簿数量 J:備考 のシート、データは2〜【501】行。
(1)金額 (2)差異数量と差異率 (3)合計の検算 (4)品番の重複検知
の数式をセル参照つきで書き、各式が壊れる典型例を1つずつ挙げて。③ 差異の原因候補を洗い出させる
差異の原因候補を可能性の高い順に挙げ、「確認する資料」と
「確認の手順」をセットで示してください。
・品番【A-1023】単位【箱】実地【48】帳簿【60】
・品番【B-2200】単位【個】実地【315】帳簿【300】
補足:【棚卸日は3月28日。3月29〜31日に出荷3件】④ 立会前の事前チェックリストを作らせる
当社は【会計監査人設置会社】、【4月10日】に棚卸立会があります。
経理側が当日までに準備すべき項目を「棚卸指示書」「カウント票の管理」
「預り品・外部保管在庫」「仕掛品」「基準日前後の入出庫」の5区分で
チェックリスト化し、各項目に「誰が」「いつまでに」と、
当日会計士へ渡す資料を入れてください。聞き方の型は経理のChatGPTプロンプト集がそのまま流用できます。うまくいかない例を1つ。「棚卸表を作って」とだけ頼むと、どこにでもある一般的な列が並びます。直し方は、業種・品目数・保管場所・決算日・在庫管理システムの有無という5つの前提を先に書くこと。それだけで外部倉庫や仕掛品の進捗度など自社に要る列が出てきます。
よくある質問
棚卸表は何年保存すればいいですか
棚卸表は決算関係書類として、帳簿書類と同じ扱いで保存が必要です。国税庁の手引きは、数量などを記載したメモなどの原始記録も棚卸表と一緒に保存するとしています。保存期間は法人・個人、青色・白色で異なるため、所轄税務署または顧問税理士に確認してください。
期末日に棚卸できないときは
国税庁の手引きは、個人事業者について、年末から多少前後した日でも差し支えないが、12月31日と棚卸日の間の売上げ・仕入れなどから12月31日現在の棚卸高を計算し、計算方法を明らかにしておく必要があるとしています。法人も同じで、調整計算と根拠資料を残すのが要点です。監査を受ける会社では監査基準報告書501第4項の追加手続が入ります。
棚卸差異はどこまで許容されますか
法令に一律の許容率は定められていません。「何パーセントまで」を探すより、原因を自分の言葉で説明できるかを基準にしてください。率が小さくても原因不明のまま放置した差異は、翌期に同じ形で膨らみます。
AIが出した数字をそのまま使ってよいですか
数式や項目案のたたき台には使えますが、金額と数量の最終確認は人が行ってください。AIは実地で数えた結果も、自社が届け出た評価方法も、期末近くの入出庫も知りません。枠組みづくりと見落としの洗い出しまでを任せ、決算に使う数字の責任は現場を見た人が持つ、と線を引くのが安全です。
まとめ
10列そろえ、金額を数式で出し、帳簿在庫と並べて差異を見る。様式としてはこれで十分です。あとは当日の段取りと、決算日と棚卸日がずれる場合の調整計算を残すこと。評価方法は事業の種類ごと・区分ごとに選定し、届け出ていなければ最終仕入原価法。変更は事業年度開始の日の前日までの申請が必要です。
項目設計も数式も差異の原因候補も、AIに壁打ちすればその日のうちに形になります。士業AIは無料登録ですぐ試せます。まずは自社の業種と品目数を伝えて、列構成を出させるところから始めてください。
参考文献
- 法人税法施行令 第28条(棚卸資産の評価の方法)・第29条(選定)・第30条(変更手続)・第31条(法定評価方法)/e-Gov法令検索(2026年9月29日参照)
- 国税庁「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」(2026年9月29日参照)
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」Ⅰ 棚卸表の作成(2026年9月29日参照)
- 日本公認会計士協会 監査基準報告書501「特定項目の監査証拠」(2011年12月22日、最終改正2023年1月12日)(2026年9月29日参照)

