支払通知書テンプレートの記載例|仕入明細書としてインボイス対応する書き方
支払通知書は、代金を「払う側」が「今回はこの内容でこの金額をお支払いします」と取引先に通知する書類です。名称は法律で決まっておらず、支払明細書・仕入明細書・支払通知書のどれで作っても構いません。ただし仕入税額控除のためにこの書類を請求書の代わりに使うなら、消費税法施行令49条4項が定める6つの記載事項と、消費税法30条9項3号が求める「相手方の確認」の2つを同時に満たす必要があります。
この記事では、そのままコピーして自社の様式に流し込める記載例を3パターン示したうえで、条文と国税庁のQ&Aで裏を取りながら書き方を解説します。
この記事で分かること
- コピーして使える支払通知書の記載例3種(標準/軽減税率あり/免税事業者あて)
- 仕入明細書としてインボイス対応するために必要な記載事項6つと、その条文根拠
- 「相手方の確認を受けたもの」にする3つの方法と、基本契約に入れる文言例
- 2026年10月1日から変わる、免税事業者への支払に関する書き方(80%→70%)
- 保存期間・電子データの扱いと、AIに下書き・点検させるときのプロンプト例
支払通知書のテンプレート|コピーして使える記載例3種
先に完成形を出します。以下はいずれも、消費税法施行令49条4項の記載事項6つを満たすように作った記載例です。Excelやスプレッドシートの様式に、この項目と並び順をそのまま移せば使えます。実務では「項目が足りているか」よりも「どこに何を置くか」で迷うことが多いので、レイアウトごと写すのが早道です。
標準版|仕入明細書兼支払通知書(10%のみ)
仕入明細書 兼 支払通知書
【取引先名】御中 発行日:2026年10月31日
登録番号:T【取引先の登録番号13桁】
作成者:【自社名】
担当:【担当者名】
TEL:【電話番号】
対象期間:2026年10月1日 ~ 2026年10月31日
取引年月日 │ 品名・役務の内容 │ 数量 │ 単価 │ 金額
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2026/10/05 │ 部品A 加工委託 │ 100 │ 1,200 │ 120,000
2026/10/18 │ 部品B 加工委託 │ 50 │ 1,800 │ 90,000
2026/10/27 │ 運搬費 │ 1 │ 10,000 │ 10,000
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10%対象 合計(税抜) 220,000 円
消費税額(10%) 22,000 円
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お支払金額(税込) 242,000 円
お支払予定日:2026年11月30日/お振込先:【銀行名・支店名・口座番号】
本書の記載内容について、2026年11月10日までにご連絡がない場合は、
記載のとおりご確認いただいたものとして取り扱わせていただきます。
ポイントは3つです。1つ目、登録番号は「相手方(売り手)」のものを書きます。自社の番号を書いてしまう誤りが非常に多い箇所です。2つ目、消費税額は税率ごとに1回だけ端数処理します。3つ目、最後の1文が「相手方の確認」を成立させるための仕掛けで、これがないと同じ内容でも仕入税額控除の要件を満たしません。理由は後述します。
軽減税率が混ざる版|8%と10%が同居する場合
食品卸・飲食業・小売業への支払では、8%と10%が1枚の支払通知書に同居します。国税庁のQ&A(問87)が示す記載例も、まさにこの形です。
仕入明細書 兼 支払通知書
【取引先名】御中 発行日:2026年10月31日
登録番号:T【取引先の登録番号13桁】
作成者:【自社名】
2026年10月分 お支払金額 131,200 円(税込)
取引年月日 │ 品名 │ 金額
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2026/10/01 │ いちご ※ │ 5,400
2026/10/02 │ 牛肉 ※ │ 10,800
2026/10/02 │ キッチンペーパー │ 2,200
… │ … │ …
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お支払金額合計(税込) 131,200 円
10%対象 88,000 円(うち消費税 8,000 円)
8%対象 43,200 円(うち消費税 3,200 円)
※印は軽減税率対象品目
本書の記載内容について、2026年11月10日までにご連絡がない場合は、
記載のとおりご確認いただいたものとして取り扱わせていただきます。
軽減税率対象であることは「※」などの記号で示し、欄外で「※印は軽減税率対象品目」と種明かしをすれば足ります。1行ごとに「軽減税率対象」と書き込む必要はありません。
免税事業者あて版|2026年10月1日以後は「70%控除対象」
相手が適格請求書発行事業者でない場合、支払通知書は「インボイスの代わり」にはなりません。その代わり、経過措置によって仕入税額相当額の一定割合を控除できます。この場合の書類は、区分記載請求書等と同じ記載事項があればよく、帳簿側に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を書き足します。
支払通知書
【取引先名】御中 発行日:2026年10月31日
作成者:【自社名】
2026年10月分 お支払金額 110,000 円(税込)
取引年月日 │ 品名・役務の内容 │ 金額
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2026/10/12 │ 撮影業務委託 ☆ │ 66,000
2026/10/25 │ 編集業務委託 ☆ │ 44,000
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10%対象(税込) 110,000 円
☆は経過措置(70%控除対象)の取引です。
本書の記載内容について、2026年11月10日までにご連絡がない場合は、
記載のとおりご確認いただいたものとして取り扱わせていただきます。
ここで注意したいのが割合です。免税事業者等からの仕入れに係る経過措置は、令和8年(2026年)9月30日までが80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までが70%と段階的に下がります。2026年10月分の支払通知書から表記を「80%控除対象」のまま使い回すと、帳簿記載と実際の控除額が食い違います。詳しくは後半の専用セクションで扱います。
支払通知書とは|請求書・仕入明細書・支払明細書との違い
出すのは「払う側」。請求書と向きが逆になる
請求書は売り手が買い手に出す「払ってください」の書類です。支払通知書はその逆で、買い手(払う側)が売り手に出す「この内容でお支払いします」の書類です。方向が逆になるだけで、記載する中身は取引年月日・内容・金額・消費税額とほぼ同じになります。
実務でこの形が選ばれるのは、買い手側が数量や単価を確定させている取引が多いからです。加工委託、業務委託、原稿料、運送、建設の出来高、フリマ型のプラットフォーム手数料など、「売り手が請求書を起こすより、買い手が締めた数字を通知したほうが早くて正確」な場面で使われます。
支払通知書・仕入明細書・支払明細書は、名称が違うだけ
消費税法30条9項3号は「仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類」と書いています。つまり書類の名前は何でもよく、記載事項と相手方の確認という中身の条件だけで判定されます。この点は納品書や請求書も同じで、書類の名称ではなく記載内容でインボイスに当たるかが決まります(見積書から領収書まで6書式60種をまとめた帳票テンプレートの記事でも同じ考え方を整理しています)。
一方で、社内・社外の誤解を減らす意味では名称を使い分けたほうが親切です。実務では次のように呼び分けている事務所が多い印象です。
名称 | よくある使われ方 | インボイスとして使えるか |
|---|---|---|
仕入明細書 | 仕入れた品目・数量・単価を明細で示す | 6項目+確認があれば使える |
支払通知書 | 締め後の支払額・支払日・振込先を通知する | 6項目+確認があれば使える |
支払明細書 | 手数料・控除額を差し引いた内訳を示す | 6項目+確認があれば使える |
支払通知書を使うと何が楽になるか
売り手にとっては請求書を作る手間が消えます。買い手にとっては、自社が締めた数字がそのまま証憑になるため、請求書と自社データの突合作業がなくなります。記帳代行の現場では、この突合(請求書の金額と発注データが合わない、消費税の端数が1円ずれる)が毎月の時間を最も食う工程なので、支払通知書方式への切り替えは月次の締めを実際に短くします。
逆に、支払通知書を使うと記載事項の責任が買い手側に移る点は見落とせません。登録番号の誤記も、税率区分の誤りも、控除を否認されるのは書類を作った買い手です。だからこそ、次に説明する記載事項のチェックは毎回必要になります。
インボイス対応に必要な記載事項6つ(消費税法施行令49条4項)
6項目の一覧と、それぞれの落とし穴
支払通知書を仕入税額控除のための請求書等として使うには、消費税法施行令49条4項が定める次の6項目が必要です。区分記載請求書等保存方式のころと比べて、②の登録番号、⑤の適用税率、⑥の消費税額等が追加されています。
# | 記載事項(条文の表現) | 実務での落とし穴 |
|---|---|---|
① | 書類の作成者の氏名又は名称 | 自社名。支店名だけでは不足しやすい |
② | 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号 | 相手方の登録番号。自社の番号を書く誤りが最多 |
③ | 課税仕入れを行った年月日(一定期間分をまとめる場合はその期間) | 「10月分」のような期間表記でよい |
④ | 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象なら、その旨も) | 「業務委託費」だけでは内容が特定できない場合がある |
⑤ | 税率ごとに区分して合計した支払対価の額及び適用税率 | 税率区分をせず合計だけ書いてしまう |
⑥ | 税率ごとに区分した消費税額等 | 明細行ごとに端数処理してしまう |
なお⑥の消費税額等は、税率ごとに合計した支払対価の額に110分の10(軽減対象なら108分の8)を乗じて計算し、1円未満の端数が出たときに処理する、と施行令が定めています。端数処理は税率ごとに1回までで、明細の行ごとに切り捨てて足し上げる方式は認められません。行ごとに処理すると、同じ取引でも請求書側と1〜数円ずれます。
登録番号は「相手方の番号」。ここが最大のミス発生源
請求書は売り手が自分の番号を書くので、作成者=登録番号の持ち主です。支払通知書は作成者が買い手なので、作成者と登録番号の持ち主が別人になります。この逆転が、実務で最も間違えられる箇所です。
対策はシンプルで、取引先マスタに登録番号の欄を作り、支払通知書はマスタから差し込むようにすることです。手打ちしている限り、必ずどこかで自社の番号が紛れ込みます。番号そのものは国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照合できます。
税抜金額と消費税額を書く形でもよい
国税庁のQ&A(問89)では、「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」と「税率ごとに区分した消費税額等」の書き方について、税抜きの仕入金額と消費税額を記載する方法が取り上げられています。税込表記に統一しなければならないわけではありません。自社の会計システムの出力に合わせて、税抜+消費税額の形にしても構いません。
「相手方の確認を受けたもの」にする3つの方法
記載事項が全部そろっていても、それだけでは足りません。消費税法30条9項3号は、仕入明細書等について「当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る」と括弧書きで限定しています。この一文を落としたまま運用している会社が、実は少なくありません。
国税庁が示す3パターン
では「確認を受けた」とは何をすればよいのか。適格請求書等保存方式に関する取扱通達4-6と、国税庁Q&A問86が、次の3つを例示しています。
- 端末出力型:仕入明細書等の記載内容を通信回線等を通じて相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けたうえで自己の端末機から出力したもの。EDIで受発注している取引に向きます。
- 通知受領型:記載すべき事項に係る電磁的記録をインターネットや電子メールで相手方に提供し、相手方から確認した旨の通知等を受けたもの。PDFをメール送付し、返信で「確認しました」をもらう運用がこれに当たります。
- みなし確認型:仕入明細書等の写しを相手方に交付(または電磁的記録を提供)したうえで、一定期間内に誤りの連絡がなければ記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を結び、その一定期間が経過したもの。
件数が多い取引では、現実的に回るのは3番目です。1件ずつ返信をもらう運用は、取引先が数十社を超えた時点で破綻します。
みなし確認型に入れる文言例(そのまま使えます)
Q&A問86は、みなし確認型について、通知文書を添付して了承を得る方法と、書類そのものに文言を記載して了承を得る方法の2つを示しています。書類に直接入れる場合は、次のような一文になります。
本支払通知書の記載内容につきまして、発行日から【10】日以内に
誤りのある旨のご連絡をいただかない場合は、記載のとおりご確認を
いただいたものとして取り扱わせていただきます。
基本契約書に条項として置く場合は、次のような形です。
第○条(支払通知書の確認)
1. 甲は、毎月末日締めで当月分の支払通知書を作成し、翌月【5】日までに
乙へ書面または電磁的記録により交付する。
2. 乙は、前項の支払通知書の記載内容を確認し、誤りがある場合は交付日から
【10】日以内に甲へ通知する。
3. 前項の期間内に乙から通知がない場合、乙は当該支払通知書の記載内容を
確認したものとみなす。
「一定期間」について、国税庁は具体的な日数を表示することまでは求めていないと注記していますが、業務の内容や取引先との関係を踏まえて認識を合わせておくことが求められるとも書いています。空欄のまま運用せず、締め日と支払日の間に収まる日数を決めておくのが実務的です。
確認の証跡をどう残すか
税務調査で問われるのは「確認を受けた実態があったか」です。みなし確認型を採るなら、少なくとも次の3点を残しておくと説明が通ります。
- みなし確認の合意(基本契約書の該当条項、または了承を得たメール)
- 支払通知書を交付・提供した事実(送信ログ、送付履歴)
- 期間内に誤りの連絡がなかったこと(連絡があった場合の訂正記録も含めて)
3点目は「なかったことの証明」なので、訂正依頼が来たときの対応記録を残すことで代替します。訂正が発生したら差替版を出し、その履歴を残す。この運用が回っていれば、確認の実態があったと説明できます。
2026年10月1日から変わる点|免税事業者への支払通知書
控除割合が80%から70%へ
適格請求書発行事業者以外の者(消費者・免税事業者・登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、原則として仕入税額控除ができません。ただし経過措置により、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できます。国税庁Q&A問113が示す割合は次のとおりです。
期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
令和5年10月1日 ~ 令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
令和8年10月1日 ~ 令和10年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
令和10年10月1日 ~ 令和12年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
令和12年10月1日 ~ 令和13年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
この記事の公開時点は令和8年9月末の直前です。2026年10月1日以後の課税仕入れから、割合は70%になります。支払通知書や帳簿のテンプレートに「80%控除対象」と直書きしている場合は、10月分の処理に入る前に差し替えが必要です。
どちらの割合を使うかは「課税仕入れの時期」で決まる
切替えをまたぐ取引の判定について、国税庁Q&A問113-3が具体例を示しています。役務の提供を受けた場合の課税仕入れの時期は、原則として約した役務の全部が完了した日です。したがって令和8年9月21日から提供を受けている役務が同年10月20日に完了する場合、課税仕入れを行った日は10月20日となり、70%で計算します。
商品の仕入れ(資産の譲受け)の場合は、原則として引渡しのあった日で判定します。同じQ&Aの例では、9月21日から9月30日までの仕入れは80%、10月1日から10月20日までの仕入れは70%と、1枚の締めの中で割合が割れます。支払日ではなく取引日で割ることを、支払通知書の明細設計に反映しておく必要があります。
帳簿への「経過措置の適用を受ける旨」の書き方
経過措置を使うには、帳簿に原則的な記載事項に加えて「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載が必要です。国税庁Q&Aは、個々の取引ごとに「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などと記載する方法のほか、対象取引に「※」や「☆」の記号を付し、欄外で「☆は70%控除対象」などと表示する方法も認められるとしています。前掲の免税事業者あて版の記載例は、この後者の書き方を採っています。
あわせて変わる金額基準
もう1点、令和6年10月1日以後に開始する課税期間では、一の免税事業者等から行う経過措置対象の課税仕入れの合計額が一定額を超えると、超えた部分には経過措置を適用できません。この基準額も、令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間は税込み10億円、令和8年10月1日以後に開始する課税期間は税込み1億円へと引き下げられます。大口の外注先が免税事業者のままである場合は、事前に試算しておきたい論点です。
経理・記帳代行でつまずく4つのポイント
値引き・相殺を支払通知書で処理するとき
締め後に値引きや返品があった場合、支払通知書の中で控除して表示するのが一般的です。国税庁Q&Aにも「仕入明細書において対価の返還等について記載した場合」(問90)の取扱いが用意されています。相手方にとっては売上げに係る対価の返還等になるため、単に金額を引くだけでなく、何に対する返還かが読み取れる摘要を残しておくと、双方の帳簿が合います。
注意したいのは、送料や手数料を「自社の売上げ」として差し引いているケースです。この場合は仕入れと売上げが1枚の書類の中で交差するので、税額計算を誤りやすくなります。Q&A問91がこのパターンを扱っており、支払通知書とは別に、その手数料に係る適格請求書の扱いを整理する必要があります。
源泉徴収がある支払(士業報酬・原稿料など)
税理士報酬やデザイン料のように源泉徴収が必要な支払では、支払通知書に源泉所得税額と差引支払額を併記するのが実務上の定番です。ここで消費税との関係が問題になります。国税庁は、源泉徴収の対象は原則として消費税等込みの金額だが、請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えないとしています(タックスアンサーNo.6929)。支払通知書は税率ごとの区分表示が必須なので、この条件は自然に満たせます。税理士報酬110,000円とだけ書けば源泉徴収税額は11,231円、報酬100,000円・消費税等10,000円と区分して書けば10,210円となり、書き方だけで1,021円の差が出ます。
相手が登録を取りやめた・番号が変わった
取引先が登録を取りやめると、翌期以降その相手方との取引は経過措置扱いに変わります。支払通知書は買い手が作る書類なので、この変更を買い手が把握していないと、存在しない登録番号を書き続けることになります。半期に1度は、取引先マスタの登録番号を公表サイトで一括照合する運用にしておくのが安全です。
保存期間と電子で受け渡しするときの扱い
仕入税額控除のために保存する請求書等は、消費税法施行令50条1項により、その受領した日(電磁的記録の場合は提供を受けた日)の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保存が必要です。3月決算の法人が2026年10月に受け取った書類なら、2027年6月1日から7年間ということになります。
支払通知書は自社が作る書類なので、相手方に交付した控えを保存します。メールやEDIで提供している場合は電磁的記録の保存となり、電子帳簿保存法の電子取引の要件に沿った保存が必要です。この点は電子帳簿保存法の対応要件を整理した記事で詳しく扱っています。売り手側として請求書を発行する立場の書き方は請求書テンプレート10種と記載事項の記事、納品段階での取引年月日の確定は納品書テンプレートと受領書の記事が対応します。
AIで支払通知書を下書き・点検する
支払通知書は、毎月ほぼ同じ形で、取引先ごとに少しずつ違う書類を大量に作る仕事です。この「型は同じ、中身が違う」という性質は、生成AIが最も得意とする領域でもあります。ただし金額の計算そのものをAIに任せるのは危険なので、点検と文章化に使うのが現実的な線引きです。
記載事項の抜けを点検するプロンプト
あなたは消費税実務に詳しい経理担当です。
以下は当社が作成した支払通知書の案です。
消費税法施行令49条4項が定める6つの記載事項
(①書類の作成者 ②相手方の氏名又は名称及び登録番号 ③課税仕入れを行った年月日
④資産又は役務の内容 ⑤税率ごとに区分した支払対価の額及び適用税率
⑥税率ごとに区分した消費税額等)
について、満たしている項目と不足している項目を表で示してください。
不足がある場合は、どの行にどう書き足せばよいかまで具体的に示してください。
金額の再計算はしないでください。
【支払通知書の案】
(ここに本文を貼り付け)
みなし確認の文言を自社仕様にするプロンプト
当社は取引先【約80社】に対し、毎月末日締めで支払通知書を交付しています。
交付は【メールへのPDF添付】で行い、支払日は【翌月末】です。
この運用に合わせて、
(1)支払通知書に記載する「一定期間内に連絡がなければ確認とみなす」旨の文言
(2)基本契約書に追加する条項案
の2つを作成してください。
期間は締め日と支払日の間に収まる日数とし、根拠として
消費税法30条9項3号の「相手方の確認を受けたもの」に触れてください。
うまくいかない例と、その直し方
よくある失敗は「支払通知書のテンプレートを作って」とだけ頼むことです。この頼み方だと、AIは一般的なひな形を出してきますが、登録番号が自社のものになっていたり、消費税額の欄が明細行ごとになっていたりと、インボイスとして致命的な箇所だけが間違っているものが返ってきます。
直し方は、チェックの基準を先に渡すことです。上のプロンプトのように条文の記載事項6つを列挙して「これに照らして点検して」と頼めば、AIは判断基準を持った状態で答えます。生成AIは「何を正解とするか」を持っていないだけで、正解を渡せば照合は正確にこなします。
もう一つの失敗は、割合や期限をAIに直接答えさせることです。経過措置の割合のように改正で動く数値は、学習時点の古い内容が返ることがあります。実際、80%から70%への切替えのような直近の改正は、汎用AIが取り違えやすい典型です。数値は必ず国税庁の資料で確認し、AIには構成と点検を任せる。この役割分担が、実務で事故を起こさない使い方です。
士業AIの会計AIは、この役割分担を前提に作っています。仕訳や帳票の下書きを支援しつつ、根拠を公的な情報に寄せて確認できるようにしているため、経理スタッフが「この書き方で要件を満たすか」を確かめながら進められます。日々の処理を担う方は経理スタッフ向けの活用ページ、顧問先の支払通知書をまとめて点検する立場の方は税理士向けの税務AI活用ページが参考になります。書式そのものは帳票テンプレートの一覧から探せます。
まとめ
支払通知書は「払う側が出す請求書」であり、書類の名称ではなく中身で扱いが決まります。仕入税額控除のために使うなら、次の2つを両方満たすことが条件です。
- 記載事項6つ(消費税法施行令49条4項)。とくに登録番号は相手方のもの、消費税額の端数処理は税率ごとに1回
- 相手方の確認(消費税法30条9項3号)。件数が多いならみなし確認型の条項を基本契約に入れる
そして2026年10月1日からは、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の割合が80%から70%に下がります。テンプレートに「80%控除対象」と直書きしている場合は、10月分の締めに入る前に差し替えてください。判定は支払日ではなく課税仕入れの時期(役務なら完了日、物なら引渡日)で行います。
毎月の締めでこの点検を全件やり切るのは現実的ではありません。型の部分はテンプレートで固定し、変わる部分だけを目視と AI の点検に回す。この配分にできれば、支払通知書の運用はかなり軽くなります。
参考文献
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第30条 ― e-Gov法令検索
- 消費税法施行令(昭和63年政令第360号)第49条・第50条 ― e-Gov法令検索
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A ― 国税庁
- 問86 仕入明細書の相手方への確認(PDF)― 国税庁
- 問87 仕入明細書等の記載事項(PDF)― 国税庁
- 問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(PDF)― 国税庁
- 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達 4-6 ― 国税庁
- 特集 インボイス制度 ― 国税庁
- タックスアンサー No.6929 消費税等と源泉所得税および復興特別所得税 ― 国税庁

