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株主名簿テンプレート|コピペ可のExcel作成例と記載事項・名義書換

結論:株主名簿は「会社法121条の4項目+異動履歴」で作れば実務が回る

株主名簿のテンプレートは、凝った書式を探すより会社法121条が挙げる4つの記載事項を列にするところから作るのが確実です。法律が求めているのは「誰が・何株を・いつ取得したか(株券発行会社なら株券番号も)」の4点だけで、それ以外の列は実務の都合で足すものだからです。

そのうえで実務が止まらないようにするには、現在の株主を並べた現在名簿シートと、誰から誰へ何株動いたかを1行ずつ残す異動履歴シートを分けておくことが要になります。名義書換の請求が来たとき、相続が起きたとき、登記で株主リストを出すとき──必要になるのはいつも「今の持株数」と「そこに至った経緯」の両方だからです。

この記事で分かることは次のとおりです。

  • 会社法121条の記載事項4つと、テンプレートの列への落とし込み方
  • そのままExcelにコピーして使える株主名簿の書式3種(基本形・種類株式発行会社・株券発行会社)
  • 名義書換の請求を受けたときの確認書類と、名簿への書き方(会社法130条・133条)
  • 相続で株式を取得した人が単独で名義書換を請求できる根拠と、そのときの記載例
  • 登記の添付書面「株主リスト」(商業登記規則61条2項・3項)へ名簿から転記する手順
  • 備置き・閲覧請求への対応と、怠ったときの過料(会社法125条・976条)

条文はいずれも e-Gov 法令検索の現行法令から原文を確認しています(2026年9月29日参照)。

会社法121条の記載事項|株主名簿テンプレートに必ず入れる4項目

会社法121条は「株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下『株主名簿記載事項』という。)を記載し、又は記録しなければならない」と定めています。義務であって任意ではなく、会社の規模や株主数を問いません。株主が1人の一人会社でも作成義務があります。

1号:株主の氏名又は名称及び住所

個人株主は氏名と住所、法人株主は名称と本店所在地を書きます。ここが重要なのは、会社から株主への通知・催告は名簿に書いてある住所に宛てて発すれば足りる(会社法126条1項)とされ、通常到達すべきだった時に到達したものとみなされる(同条2項)からです。株主総会の招集通知が届かないまま決議が進むトラブルの多くは、住所を何年も更新していないことに起因します。

2号:その株主が有する株式の数

種類株式発行会社では「株式の種類及び種類ごとの数」を書きます。普通株式800株・A種優先株式200株のように、種類ごとに列を分けるのがテンプレート設計の分かれ目です。1列の「株式数」で済ませると、後から種類株式を発行したときに名簿を作り直すことになります。

3号:株主が株式を取得した日

実務でいちばん抜けやすい項目です。設立時取得なら会社成立の日、譲受けなら譲渡の効力が生じた日、相続なら被相続人の死亡の日が原則になります。取得日は取得費・取得時期の判定にも効いてくるため、税理士が後から顧問先の株式譲渡や相続を見るときに、名簿の取得日欄が空白だと復元作業が発生します。

4号:株券の番号(株券発行会社のみ)

4号は「株式会社が株券発行会社である場合には、第2号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号」です。株券不発行が原則の現在の会社では不要な列ですが、平成17年改正前から続く会社で定款に株券発行の定めが残っているケースは今も珍しくありません。登記事項証明書に「株券を発行する旨の定め」があるかを先に確認してから書式を選びます。

記載事項の早見表

号

記載事項

テンプレートの列名

必須になる会社

1号

株主の氏名又は名称及び住所

株主名/住所

すべて

2号

有する株式の数(種類株式発行会社は種類及び種類ごとの数)

株式数(種類別)

すべて

3号

株式を取得した日

取得日

すべて

4号

株券の番号

株券番号

株券発行会社のみ

(任意)

議決権数

議決権数

法定外。株主リスト作成・総会実務で実質必須

(任意)

異動事由・異動日

異動履歴シート

法定外。名義書換の経緯を残すため推奨

議決権数は121条の記載事項ではありませんが、後述する株主リストや総会の定足数計算で毎回必要になるため、テンプレートに列を用意しておくと二度手間が消えます。

株主名簿テンプレート(Excelにコピペできる書式3種)

以下の表はそのままコピーしてExcelに貼り付けられます。貼り付け後に列幅を整え、住所列と株主名列を文字列書式、取得日列を日付書式(yyyy/mm/dd)に設定してください。【 】はプレースホルダです。

書式1:基本形(非公開会社・株券不発行)

もっとも多いパターンです。中小の非上場会社であれば、まずこの5列で足ります。

No	株主の氏名又は名称	住所	株式数(株)	取得日	議決権数	取得事由
1	【山田 太郎】	【東京都千代田区○○1-2-3】	600	2018/04/02	600	設立時発行
2	【山田 花子】	【東京都千代田区○○1-2-3】	200	2018/04/02	200	設立時発行
3	【株式会社○○】	【大阪府大阪市北区○○4-5-6】	200	2022/06/15	200	譲受け(売買)
 	発行済株式総数	 	1,000	 	1,000	 

最終行に発行済株式総数の合計行を置き、=SUM() で持株数と議決権数を集計します。合計が登記事項証明書の発行済株式の総数と一致しない名簿は、どこかで異動が反映されていません。

書式2:種類株式発行会社

種類ごとに列を分け、議決権は種類ごとの内容に従って計算します。

No	株主の氏名又は名称	住所	普通株式(株)	A種優先株式(株)	取得日	議決権数	取得事由
1	【山田 太郎】	【東京都千代田区○○1-2-3】	600	0	2018/04/02	600	設立時発行
2	【○○投資事業有限責任組合】	【東京都港区○○7-8-9】	0	200	2024/03/29	200	第三者割当
3	【株式会社○○】	【大阪府大阪市北区○○4-5-6】	200	0	2022/06/15	200	譲受け(売買)
 	合計	 	800	200	 	1,000	 

議決権制限種類株式を発行している場合、議決権数の列は「0」になることがあります。株式数と議決権数を同じ数字で埋めてしまう誤りが実務で最も多いので、種類株式を入れた時点で必ず定款の当該種類の内容を確認してください。

書式3:株券発行会社

121条4号の株券番号を追加します。番号は「第1号〜第600号」のように範囲で書くのが一般的です。

No	株主の氏名又は名称	住所	株式数(株)	株券番号	取得日	議決権数
1	【山田 太郎】	【東京都千代田区○○1-2-3】	600	第1号〜第600号	2018/04/02	600
2	【山田 花子】	【東京都千代田区○○1-2-3】	200	第601号〜第800号	2018/04/02	200
3	【株式会社○○】	【大阪府大阪市北区○○4-5-6】	200	第801号〜第1000号	2022/06/15	200

異動履歴シート(全書式に共通で付ける)

現在名簿を上書きしていくと、過去の株主構成が消えます。別シートに1行1異動で残します。

異動日	異動事由	譲渡人(前株主)	譲受人(新株主)	株式の種類	株式数(株)	請求日	添付書類	承認機関・承認日
2022/06/15	譲渡	【山田 太郎】	【株式会社○○】	普通株式	200	2022/06/10	譲渡契約書写し・株主名簿記載事項記載請求書	取締役会 2022/06/08
2026/02/20	相続	【亡・山田 一郎】	【山田 二郎】	普通株式	100	2026/02/25	戸籍一式・遺産分割協議書	—

この履歴があると、事業承継やM&Aのデューデリジェンスで「持株がどう動いたか」を聞かれたときに、名簿1本で答えられます。逆に履歴がないと、契約書と通帳を遡って再構成することになり、数日単位の作業になります。

株主名簿の作り方|Excelで整える5ステップ

ステップ1:原始資料を集める

定款、登記事項証明書、設立時の発起人・引受けに関する書面、過去の株式譲渡契約書、増資の際の総会・取締役会議事録、法人税申告書別表二を揃えます。名簿が存在しない会社でも、この6点があればほぼ復元できます。議事録の整備状況が悪い会社では、取締役会議事録のひな形・記載例と会社法上の作成要件を先に押さえ、譲渡承認の決議が記録に残っているかを確認しておくと手戻りが減ります。

ステップ2:取得日を1件ずつ確定する

設立時は会社成立の日(設立登記の申請日)、増資は払込期日または払込期間内に払い込んだ日、譲受けは譲渡の効力発生日、相続は被相続人の死亡日。分からない場合に「不明」と書くのは避け、根拠資料名を備考に残したうえで推定日を入れ、後日確定させます。設立関係の日付の考え方は設立登記申請書の書き方と添付書類の一覧の整理が参考になります。

ステップ3:現在名簿と異動履歴を分ける

前述のとおり2シート構成にします。現在名簿は「今日時点の株主」、履歴は「過去すべての異動」。現在名簿の持株数は履歴の積み上げと一致していなければなりません。Excelなら履歴シートを SUMIFS で集計し、現在名簿と突き合わせる検算列を1本入れておくと、入力漏れがその場で分かります。

ステップ4:議決権数を計算する

会社法308条1項は「株主は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する」と定め、同条2項で自己株式には議決権がないとしています。単元株式数を定款で定められることは188条1項が根拠で、その数には法務省令の上限があります。

したがって議決権数の列は、①単元株式数の定めの有無 ②自己株式の有無 ③議決権制限種類株式の有無、の3点を確認してから埋めます。自己株式を名簿に「会社自身が保有する株式」として載せつつ議決権を0にするのが実務上の書き方です。

ステップ5:備置きと更新のルールを決める

会社法125条1項は「株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない」と定めています。支店への備置きは求められていません(この点は株主総会議事録と異なります)。

なお123条により、定款で株主名簿管理人を置く旨を定めて事務を委託することもできます。非上場の中小会社で管理人を置く例は多くありませんが、株主数が増えてきた段階では選択肢になります。

更新のタイミングは「異動が起きた都度」が原則です。そのうえで、定時株主総会の招集通知を出す前と、法人税申告書別表二を作る前の年2回、全件を棚卸しする運用にしておくと、実務のリズムに乗ります。

名義書換の実務|請求の受け方と会社の確認事項(会社法130条・133条)

なぜ名義書換が必要か──対抗要件だから

会社法130条1項は「株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない」と定めます。株券発行会社では、同条2項により「株式会社その他の第三者」が「株式会社」に読み替えられ、会社に対する対抗要件だけになります。

つまり譲渡契約を結んだだけでは、会社に対して「私が株主です」と主張できない。配当も議決権も、名簿上の株主に対して処理されます。ここが顧問先への説明でいちばん腹落ちしてもらいやすいポイントです。

原則は譲渡人と譲受人の共同請求(133条2項)

133条1項は、株式を会社以外から取得した者(株式取得者)が会社に対し名簿への記載を請求できると定め、2項で「利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない」としています。

原則は買った人と売った人が連名で請求する、と覚えてください。譲受人だけの請求書を受け取った会社が、そのまま書き換えてしまう事故がしばしば起きます。

会社側が確認する書類

確認する事項

確認方法

抜けたときのリスク

譲渡制限の有無

定款・登記事項証明書

承認のない譲渡を名簿に反映してしまう

譲渡承認決議

株主総会または取締役会の議事録

決議不存在を後から争われる

共同請求の要件

譲渡人・譲受人連名の請求書

133条2項違反。二重譲渡時に会社が板挟みになる

本人性

印鑑証明書・本人確認書類

なりすましによる不正な書換

株券の提示(株券発行会社)

株券現物

株券と名簿の齟齬が残る

書換後に株主へ渡す書面(会社法122条)

122条1項により、株主は会社に対し、自分についての株主名簿記載事項を記載した書面の交付(または電磁的記録の提供)を請求できます。この書面には代表取締役が署名し、又は記名押印しなければならない(同条2項)。電磁的記録の場合は、法務省令で定める署名・記名押印に代わる措置が必要です(同条3項)。ただし4項により、株券発行会社にはこの規定は適用されません(株券そのものが権利の証明になるため)。

名義書換の完了通知としてこの書面を渡す運用にしておくと、「書き換えてもらえたのか分からない」という株主からの問い合わせが減ります。テンプレートに「株主名簿記載事項証明書」のシートを1枚足しておくと使い回せます。

相続で株式を取得したときの名義書換

相続人は単独で請求できる(会社法施行規則22条1項4号)

相続の場面で共同請求の原則をそのまま当てはめると、亡くなった人と連名で請求することになり、成り立ちません。ここを解決するのが会社法施行規則22条1項です。同項は133条2項の「法務省令で定める場合」を列挙しており、その4号が「株式取得者が一般承継により当該株式会社の株式を取得した者である場合において、当該一般承継を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき」と定めています。

相続は一般承継ですから、相続人は一般承継を証する書面を添えれば単独で名義書換を請求できます。実務での提供書類は次のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)または法定相続情報一覧図の写し
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(協議で取得者を決めた場合)または遺言書
  • 取得者の印鑑証明書・住民票

なお、株券発行会社では同条2項が別に適用され、1号の「株式取得者が株券を提示して請求をした場合」が基本になります。自社が株券発行会社かどうかで提供書類が変わる点に注意してください。

遺産分割が終わっていない場合

分割未了の間、株式は相続人の準共有になります。会社法126条3項は「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者一人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない」と定め、同条4項で、その通知がない場合は共有者のうち一人に対して通知すれば足りるとしています。

名簿への書き方は「亡・山田一郎 相続人 山田二郎 外2名(準共有)」のように、共有状態であることと受領者を備考に残す形が実務的です。分割協議が数次にわたるなど当事者関係が複雑な案件では、数次相続の遺産分割協議書の書き方と押印する人の範囲を先に整理してから名簿に手を付けるほうが、書き直しになりません。

相続を反映した記載例

【現在名簿】
No	株主の氏名又は名称	住所	株式数(株)	取得日	議決権数	備考
2	【山田 二郎】	【東京都世田谷区○○1-1-1】	100	2026/02/20	100	相続(被相続人 山田 一郎)

【異動履歴】
異動日	異動事由	譲渡人(前株主)	譲受人(新株主)	株式数	請求日	添付書類
2026/02/20	相続	【亡・山田 一郎】	【山田 二郎】	100	2026/02/25	法定相続情報一覧図の写し・遺産分割協議書・印鑑証明書

取得日は請求日ではなく被相続人の死亡日を書きます。相続の効力は死亡時に遡って生じているためで、ここを請求日にすると、相続税の評価時点や取得費の引継ぎの説明と食い違います。

株主名簿から株主リストを作る(商業登記規則61条2項・3項)

司法書士の実務で株主名簿が効いてくるのが、登記申請の添付書面である「株主リスト」です。根拠は商業登記規則61条で、2項と3項で対象が違います。

場面

根拠

載せる株主

載せる内容

登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合

61条2項1号

株主全員

氏名又は名称・住所・有する株式の数・議決権の数

登記すべき事項につき株主総会(種類株主総会)の決議を要する場合

61条3項

議決権割合の上位者のうち「10名」と「割合を多い順に加算して3分の2に達するまでの人数」のいずれか少ない人数

氏名又は名称・住所・株式数・議決権数・議決権割合

3項は「上位10名」で機械的に固定されているわけではありません。たとえば筆頭株主1人で議決権の70%を持つ会社なら、加算して3分の2に達するのはその1人で済むため、リストに載るのは1名です。逆に持株が分散していれば10名が上限になります。

ここで議決権数の列を名簿に用意しておいた効果が出ます。現在名簿を議決権数の降順に並べ替え、累計比率の列を1本足せば、対象人数はその場で確定します。名簿がないと、役員変更や定款変更のたびに株主構成を作り直すことになり、議事録の整備と合わせて毎回数時間が消えます。

なお株主リストに書くのは「その決議において行使することができる議決権」です。自己株式や議決権制限種類株式を含めたまま割合を計算しないよう、ステップ4の確認をここでも繰り返してください。

備置き・閲覧請求への対応と、怠ったときの過料

閲覧・謄写を請求できる人

会社法125条2項は、株主および債権者が営業時間内はいつでも、名簿が書面なら閲覧・謄写を、電磁的記録なら法務省令で定める方法により表示したものの閲覧・謄写を請求できるとし、請求の理由を明らかにしてしなければならないと定めています。親会社社員(親会社の株主等)は、権利行使に必要があるときに裁判所の許可を得て同じ請求ができます(同条4項)。

会社が拒める4つの場合(125条3項)

請求があったとき、会社は次のいずれかに該当する場合を除いて拒めません。

  1. 請求者が、その権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
  2. 請求者が会社の業務の遂行を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
  3. 請求者が閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
  4. 請求者が過去2年以内に、閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき

裏を返せば、「見せたくないから」という理由では拒めません。請求書に理由が書かれているかを確認し、拒否するなら上記のどれに当たるかを社内で記録に残す、という手順を標準化しておくのが安全です。

過料のリスク(会社法976条)

会社法976条は、取締役等が一定の行為をした場合に100万円以下の過料に処すると定めています。株主名簿に関係するのは次の2つです。

  • 7号:定款、株主名簿、議事録などに記載・記録すべき事項を記載せず、記録せず、または虚偽の記載・記録をしたとき
  • 8号:125条1項などの規定に違反して、帳簿または書類・電磁的記録を備え置かなかったとき

「小さい会社だから名簿は作っていない」という状態は、条文上はこの7号・8号に真正面から当たります。顧問先に作成を促すときの説得材料として、過料の条文を示すのは有効です。

税理士が株主名簿を押さえておく理由

株主名簿は法務の書類に見えますが、税務の入口でもあります。

  • 同族会社の判定:法人税申告書別表二(同族会社等の判定に関する明細書)は、株主とその同族関係者の持株数・議決権数を基礎に作ります。名簿の議決権列がそのまま使えます。
  • 取引相場のない株式の評価:国税庁の解説によれば、取引相場のない株式は、株式を取得した株主が同族株主か否かなどにより原則的評価方式と特例的評価方式(配当還元方式)に分かれます。判定の基礎になるのは取得後の議決権割合で、名簿と異動履歴がないと判定できません。
  • 事業承継の設計:誰がいつ何株を取得したかは、生前贈与や納税猶予の前提条件そのものです。事業承継税制の特例措置と一般措置の違い・要件を検討する前段として、まず名簿の現況確認から入るのが実務の順序になります。

税務の側から顧問先に入っている場合、決算の打ち合わせの場で「株主名簿は最新ですか」と一言聞くだけで、後年の相続・承継の手戻りをかなり減らせます。税理士業務でのAI活用の全体像は税理士向けの士業AIで整理しています。

株主名簿まわりをAIで下書きする手順

株主名簿の作業は「資料の読み取り」「表への転記」「要件の当てはめ」に分かれます。AIに向くのは前の2つ、人が必ず見るのが3つ目です。ここではそのまま使えるプロンプトを3つ挙げます。いずれも実名・住所を入れる前に、社内で利用可能なAIかを確認してください。

プロンプト1:原始資料から名簿の下書きを作らせる

あなたは商業登記に詳しい実務者です。以下の資料の記載内容から、会社法121条の
記載事項(1号 氏名又は名称及び住所/2号 有する株式の数/3号 取得した日/
4号 株券番号)を満たす株主名簿の下書きを、タブ区切りの表で作成してください。

【資料1:設立時の発起人と引受株式数】
(貼り付け)
【資料2:過去の株式譲渡契約書の要旨(日付・当事者・株式数)】
(貼り付け)
【資料3:登記事項証明書の記載(発行済株式の総数・株券発行の定めの有無)】
(貼り付け)

条件:
- 現在名簿シートと異動履歴シートの2つに分けて出力する
- 資料から取得日が確定できない行は「要確認」と書き、根拠になりそうな資料名を併記する
- 発行済株式の総数と現在名簿の合計が一致するか検算し、一致しない場合は差分を指摘する
- 推測で氏名・住所・株数を補わない

うまくいかない例 → 直し方:「株主名簿を作って」とだけ投げると、それらしい架空の株主が並んだ表が返ってきます。上のように入力資料を明示し、確定できない欄は「要確認」と書かせる指示を入れると、埋めてはいけない欄が空のまま返ってくるようになります。

プロンプト2:名義書換請求の受付チェックリストを作らせる

次の前提の会社が、株式の譲渡による名義書換請求を受け付けました。
会社が請求を受理する前に確認すべき事項を、確認書類・根拠条文・抜けたときの
リスクの3列のチェックリストにしてください。

【前提】
- 非公開会社(全株式譲渡制限あり)/株券不発行
- 譲渡承認機関:取締役会
- 請求者:譲受人のみの署名

条件:
- 会社法130条・133条、会社法施行規則22条の枠組みで整理する
- 今回の請求が共同請求の要件を満たしているかを明示し、満たさない場合の会社側の対応案を示す
- 条文番号を書くときは、引用した条文の要旨も一緒に出す(番号だけにしない)

うまくいかない例 → 直し方:条文番号だけを書かせると、もっともらしい番号を創作することがあります。「要旨も一緒に出す」と条件に入れておくと、番号と内容の食い違いが目視で見つけられます。出てきた条文は必ず e-Gov 法令検索の原文で突き合わせてください。

プロンプト3:名簿から株主リストの対象人数を判定させる

以下の株主名簿(議決権数つき)をもとに、商業登記規則61条3項の株主リストに
記載すべき株主を特定してください。

【株主名簿】
(氏名・住所・株式数・議決権数をタブ区切りで貼り付け)

条件:
- 議決権数の降順に並べ替え、議決権割合と累計割合の列を付ける
- 「上位10名」と「累計が3分の2に達するまでの人数」を両方計算し、少ない方の人数を採用して結論を書く
- 自己株式・議決権制限株式がある場合は、議決権数を0として計算し、その旨を注記する
- 計算過程を表で示し、結論だけを書かない

うまくいかない例 → 直し方:「上位10名を出して」と依頼すると、3分の2ルールを飛ばして常に10名返します。両方を計算させて少ない方を採用させるのが正しい指示です。

汎用のAIでもここまでは下書きできます。一方で、条文の原文に当たって番号と内容を突き合わせる工程や、顧問先の情報を扱う際の取り扱いルールまで含めて業務に載せようとすると、業務文脈を前提にした環境のほうが運用は楽になります。司法書士・弁護士向けの士業AI(法務AI)は、e-Gov法令データなどの公的情報を参照しながら、登記書類のドラフトや条文リサーチを支援する用途を想定しています。

e-Gov法令データ等の公的情報を参照する法務特化AI のデモです。

よくある質問

株主が1人でも株主名簿は必要ですか

必要です。会社法121条は株式会社一般に作成を義務づけており、株主数による例外はありません。一人会社であっても、後日の株式譲渡・相続・登記のために取得日の記録は残しておくべきです。

株主名簿はExcelで作ってもよいですか

問題ありません。121条は「記載し、又は記録しなければならない」としており、電磁的記録での作成を認めています。ただし125条2項2号のとおり、電磁的記録で作った場合の閲覧請求には「法務省令で定める方法により表示したもの」を用意する必要があるため、いつでも画面表示・印刷できる状態にしておいてください。

名簿に押印や代表者の署名は必要ですか

株主名簿そのものに署名・押印を求める規定はありません。署名または記名押印が要るのは、122条1項の株主名簿記載事項を記載した書面を株主に交付する場合で、同条2項により代表取締役が署名または記名押印します。

株主名簿と株主リストは同じものですか

別物です。株主名簿は会社法121条に基づき会社が常時備え置く帳簿、株主リストは商業登記規則61条2項・3項に基づき登記申請に添付する書面です。株主リストは名簿から必要な株主を抜き出して作るため、名簿が整っていれば短時間で作れます。

住所が変わった株主から届出がありません。どうすればよいですか

会社法126条1項により、通知・催告は名簿記載の住所に宛てて発すれば足り、同条2項で通常到達すべきだった時に到達したものとみなされます。会社側の法的リスクは限定されますが、実務上は招集通知が届かないことで紛争の火種になります。定時株主総会前に一斉に住所確認の案内を出す運用をおすすめします。

基準日を設定すると名簿の扱いはどう変わりますか

会社法124条1項により、一定の日を基準日として、その日に名簿に記載されている株主を権利行使できる者と定められます。基準日を定めたときは、原則としてその2週間前までに基準日と権利の内容を公告する必要があり(同条3項)、定款に定めがあるときは公告が不要です。権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られます(同条2項)。

AIが出した条文番号をそのまま記載してよいですか

避けてください。生成AIは条文番号を誤ることがあります。この記事の条文も、すべて e-Gov 法令検索の現行法令データから原文を取得して確認しています。番号を引用する場面では、必ず一次情報で突き合わせてから顧問先に出してください。

まとめ

株主名簿のテンプレートづくりで押さえるべき点は3つです。第1に、会社法121条の4項目を列にし、議決権数と異動履歴を実務用に足すこと。第2に、名義書換は譲渡人・譲受人の共同請求が原則で、相続などの一般承継は施行規則22条1項4号により単独で請求できること。第3に、名簿は125条により本店備置きと閲覧対応が義務で、怠れば976条の過料の対象になることです。

名簿は一度整えてしまえば、株主リストの作成も、同族判定も、事業承継の検討も、すべてそこから始められます。逆にないまま数年が過ぎると、復元に何日もかかります。資料の読み取りと転記という重い前工程はAIに任せ、要件の当てはめと最終確認に人の時間を使う——それが現実的な進め方です。

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参考文献

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