税務×AI

住宅借入金等特別控除申告書の書き方|年末調整2年目以降の記入例【令和8年分】

給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書は、住宅ローン控除の2年目以降を年末調整で受けるために、従業員が勤務先へ出す書類です。税務署から本人に届く「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と1枚になっていて、上半分の申告書に年末残高を書き写し、控除率0.7%を掛けて控除額を求めます。

入居1年目は年末調整では控除できず、本人の確定申告が必要です。この記事では、令和8年分(2026年分)の年末調整で多い「令和4年以降に入居した人の様式」を中心に、欄ごとの書き方、年末残高等証明書・控除証明書との突合、控除額の計算と限度額、よくある誤りを、検算済みの架空の数値でたどります。

  • 住宅借入金等特別控除申告書とは何か(初年度は確定申告、2年目以降は年末調整)
  • 調書方式と証明書方式で、添付する書類がどう違うか
  • 令和4年以降入居の様式①〜⑥欄と備考欄の書き方
  • 控除率0.7%と、入居年・住宅の区分ごとの年末残高の限度額
  • 単独債務・連帯債務・贈与の特例ありの3つの記入例
  • 受け取った申告書のチェック項目とよくある誤り、AIで突合チェックの下書きを作る方法

年末調整全体の流れ(扶養控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書の書き方)は、年末調整の書き方【令和8年分】申告書の記入手順で解説しています。この記事は住宅ローン控除の1様式に絞ります。

住宅借入金等特別控除申告書とは?2年目以降は年末調整で控除できる

住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)は、住宅ローンを使って家を新築・購入・増改築し、自分で住んでいる人が、年末のローン残高を基に計算した金額を所得税から差し引ける制度です。給与所得者は、2年目以降は勤務先の年末調整で控除を受けられます。そのときに出すのが「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」です。

初年度は確定申告が必要(年末調整では受けられない)

国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」は、控除を受ける最初の年分は確定申告で控除を受ける必要があり、その後の年分は年末調整の際に申告書を出せば控除できる、としています(国税庁「住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容の確認」)。

つまり、令和8年中に入居した従業員は、令和8年分の年末調整では住宅ローン控除を入れられません。令和9年に本人が令和8年分の確定申告をし、令和9年分から年末調整に乗ります。「今年家を買った」と聞いたら、確定申告が必要だと早めに伝えておきます。

申告書は税務署から本人に届く「証明書兼申告書」

申告書の用紙は、事務所や会社が用意するものではありません。初年度の確定申告をした後に、税務署から本人へ交付されます。用紙の上半分が「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 兼 住宅借入金等特別控除計算明細書」、下半分が「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」(以下、控除証明書)です。

交付の方法

調書方式の場合

証明書方式の場合

確定申告の際にe-Taxでの交付を希望した場合(電子交付)

毎年11月中旬頃にe-Taxのメッセージボックスへ格納

毎年10月頃にe-Taxのメッセージボックスへ格納

それ以外(書面交付)

入居2年目の11月下旬頃に、控除を受ける各年分をまとめて送付

入居2年目の10月下旬頃に、控除を受ける各年分をまとめて送付

出典は上と同じ国税庁の資料です。書面交付では、入居2年目に残りの年分がまとめて届きます。そのため、従業員の手元には令和8年分・令和9年分・令和10年分……と複数年分の用紙があり、今年使うのは「令和8年分」の1枚だけです。年分の取り違えは、受け付け時に最も多い不備の一つです。

なお、古い様式では年分の欄に「平成38年分」と印字されているものがあります。国税庁は、これも令和8年分として扱い、補正は不要としています。

調書方式と証明書方式で添付書類が違う

住宅ローン控除の手続には、金融機関が税務署に年末残高の調書を出す「調書方式」と、本人が金融機関から受け取った年末残高等証明書を出す「証明書方式」の2つがあります(国税庁「住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について」)。

方式

年末調整で出すもの

年末残高の確認元

調書方式

申告書(控除証明書と一体)。年末残高等証明書の添付は不要

控除証明書の「住宅借入金等の年末残高に関する事項」欄(原則、年末残高と控除見込額が記載)

証明書方式

申告書(控除証明書と一体)+金融機関の「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

年末残高等証明書

調書方式でも、控除証明書に年末残高が記載されていない場合や、2つ以上の金融機関から調書が出ている場合は、本人が返済計画表などで実際の年末残高を確かめて計算します。2か所以上の金融機関から証明書を受けている人(証明書方式)は、すべての証明書を添付します。

書き始める前に手元にそろえる書類と確認事項

申告書は、控除証明書に印字された内容を書き写して計算する書類です。先に材料をそろえると、記入はほぼ転記と掛け算だけになります。

書類・情報

使う欄

確認すること

令和8年分の申告書兼控除証明書

全欄

年分が令和8年分か。証明事項の㋑居住開始年月日・㋺㋭取得対価の額・㋩㋬居住用割合・㋥㋣連帯債務割合・住宅の区分等

年末残高等証明書(証明書方式)

①欄

年末残高、「住宅借入金等の内訳」(住宅のみ・土地等のみ・住宅及び土地等)、予定額による証明か

返済計画表

①欄

調書方式で年末残高が空欄の場合や、繰上返済をした場合の実際の12月31日残高

本年の所得の見込み

年間所得の見積額

給与以外の所得も含めた合計所得金額が2,000万円を超えないか

欄ごとの書き方(令和4年以降に入居した人の様式)

ここでは国税庁の記載例(記載例3:令和7年分を確定申告で受けた人が令和8年分を年末調整で受ける場合)と同じ様式を前提に、上から順に説明します(国税庁「住宅借入金等特別控除申告書兼計算明細書の記載例」)。計算欄は、横に「Ⓐ住宅のみ」「Ⓑ土地等のみ」「Ⓒ住宅及び土地等」「Ⓓ増改築等」の4列、縦に①〜⑥の行が並んでいます。

上部欄:給与の支払者・あなたの氏名と住所

「給与の支払者の名称」「法人番号」「所在地」と、左上の「税務署長」欄は、申告書を受け取った勤務先が書く欄です。本人が書くのは氏名(フリガナ)、世帯主の氏名と続柄、住所です。

①欄:住宅借入金等の年末残高

年末残高等証明書(調書方式は控除証明書の「住宅借入金等の年末残高に関する事項」欄)の年末残高を、「住宅借入金等の内訳」の区分に合わせてⒶ・Ⓑ・Ⓒのいずれかの列に書きます。土地と建物をまとめて借りた一般的なケースは、Ⓒ「住宅及び土地等」の列です。

下段のかっこ内には、そのうち連帯債務による借入金の額を書きます。2か所以上の金融機関から借りている場合は、すべての証明書の残高を基に記入します。

②欄:連帯債務がある場合の自分の負担分

②欄には「①のうち単独債務の額+①のうち連帯債務の額×連帯債務割合」を書きます。連帯債務割合は、控除証明書の証明事項㋥・㋣に記載されています。単独債務だけの人は、①と同じ金額を書きます。

国税庁の記載例では、連帯債務の年末残高39,500,000円に連帯債務割合50.00%を掛け、②欄を19,750,000円としています。

③欄:年末残高と取得対価の額の少ない方

年末残高が家屋・土地の取得対価の額を上回る場合、控除の対象は取得対価の額までです。③欄には、②と証明事項の㋺(家屋の取得対価の額)・㋭(土地等の取得対価等の額)を比べた少ない方を書きます。Ⓒ列なら「②と(㋺+㋭)の少ない方」です。

取得対価の額は、補助金等の交付を受けた場合はその額を、住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合はその金額を、それぞれ差し引いた後の額で比べます。

④欄:居住用割合を掛けた金額

③に、証明事項の居住用割合(㋩・㋬)を掛けて④欄に書きます。店舗併用住宅などで自宅として使う部分が一部だけの場合に、ここで按分されます。全部を自宅として使っていれば100.0%で、③と同じ金額になります。

⑤欄:年末残高等(④の合計)と年間所得の見積額

⑤欄は、各列の④を合計した金額です。欄の左上に「最高○,○○○万円」と借入限度額が印字されているので、合計がこれを超える場合は印字された最高額を書きます。

⑤欄の右にある「年間所得の見積額」には、その年の1月1日から12月31日までの合計所得金額の見積額を書きます。令和4年以降に入居した人は、合計所得金額が2,000万円を超えると、その年分の控除は受けられません。給与以外に不動産所得や株式の譲渡所得がある人は特に確認が必要です。

⑥欄:住宅借入金等特別控除額

⑥欄は「⑤×0.7%」で、100円未満の端数を切り捨てます。欄内に印字された「最高○○○,○○○円」(各年の控除限度額)を超える場合は、最高額が控除額です。国税庁の記載例では、19,750,000円×0.7%=138,250円を切り捨てて138,200円です。

調書方式の場合は、原則として控除見込額が印字されているので、計算結果と一致するかの確認に使えます。繰上返済などで実際の残高が印字額と違う場合は、実際の年末残高で計算し直します。

備考欄:連帯債務者の記載・調書方式の記載

連帯債務がある場合、控除証明書に負担割合が記載されていなければ、備考欄に他の連帯債務者の記載(例:「私は、連帯債務者として、住宅借入金等の残高○○円のうち○○円を負担することとしています。」と住所・氏名、給与所得者なら勤務先の所在地・名称)を受けます。負担割合が記載された控除証明書を添付する場合は不要です。

調書方式の場合は「調書方式に対応する金融機関からの借入れ」など、調書方式の金融機関からの借入れである旨を記載します。災害で住めなくなった後も控除を続ける人は「災害発生日 令和○年○月○日」と書きます。

控除額の計算:控除率0.7%と年末残高の限度額

令和4年以降に入居した人の控除額は、年末残高等(限度額まで)×0.7%です。限度額は、入居した年と住宅の区分、子育て世帯等の特例に当たるかで変わります。

令和8年分の年末調整で使う限度額(令和4〜7年入居)

令和8年分の年末調整で控除を受けるのは、令和7年までに入居して確定申告を済ませた人です。国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」の一覧表から、令和4年以降入居分を整理すると次のとおりです(新築・買取再販の場合)。

入居年

住宅の区分

借入限度額

各年の控除限度額(控除期間)

令和4・5年

認定住宅

5,000万円

35万円(13年)

令和4・5年

ZEH水準省エネ住宅

4,500万円

31.5万円(13年)

令和4・5年

省エネ基準適合住宅

4,000万円

28万円(13年)

令和4・5年

その他の住宅

3,000万円

21万円(13年)

令和6・7年

認定住宅

4,500万円(特例対象個人5,000万円)

31.5万円(35万円)(13年)

令和6・7年

ZEH水準省エネ住宅

3,500万円(特例対象個人4,500万円)

24.5万円(31.5万円)(13年)

令和6・7年

省エネ基準適合住宅

3,000万円(特例対象個人4,000万円)

21万円(28万円)(13年)

令和6・7年

その他の住宅(一定の期日までに建築確認等を受けたもの)

2,000万円

14万円(10年)

中古住宅(既存住宅)の取得や増改築等の場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年・控除限度額14万円(認定住宅等の既存住宅は3,000万円・10年・21万円)など、新築と異なります。表は判断の目安で、実際の計算は、申告書の⑤欄・⑥欄に印字された「最高」額を使います。国税庁も、令和元年以降に入居した人は交付された申告書で控除限度額を確認できるとしています。なお、令和3年以前(特別特例取得は令和4年まで)に入居した人は控除率1.0%で様式も異なり、合計所得金額の上限は3,000万円です(国税庁の記載例1・2が該当)。

子育て世帯等の特例(特例対象個人)の扱い

令和6・7年に認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅に入居した人のうち、「特例対象個人」に当たる人は借入限度額が上乗せされます。特例対象個人とは、年齢40歳未満で配偶者がいる人、年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者がいる人、または年齢19歳未満の扶養親族がいる人です(国税庁 タックスアンサー No.1211-1)。

この判定は、入居した年の12月31日の状況で行います。年末調整の現場で「子どもが19歳になったから限度額が下がるのでは」と聞かれることがありますが、2年目以降の年末調整では判定し直さず、申告書に印字された最高額で計算します。印字額に疑問がある場合は、事務所で判断せず本人から税務署へ確認してもらいます。

令和8年度税制改正で何が変わったか(令和8年以降の入居分)

財務省の資料によると、令和8年度税制改正で住宅ローン控除は適用期限が令和12年入居分まで5年延長され、省エネ性能の高い既存住宅の借入限度額の拡充、合計所得金額1,000万円以下なら床面積40㎡以上も対象とする扱い(子育て世帯等への上乗せとは選択適用)、令和10年以降入居分から災害レッドゾーンでの新築(建替えを除く)を対象外とすることなどが示されています(財務省「住宅ローン控除の見直し(令和8年度改正)」)。

ただし、これらは令和8年以降に入居した人の話です。令和8年入居の人は令和9年に確定申告をするので、令和8年分の年末調整の計算には影響しません。令和8年以降入居分の限度額などは、本人が確定申告をする前に国税庁・財務省の最新資料で確認してもらいます。

記入例:3つのケースを架空の数値で検算

以下はすべて架空の数値です。計算は、②→③→④→⑤(限度額で頭打ち)→⑥(×0.7%、100円未満切捨て、控除限度額で頭打ち)の順に行います。

記入例1:単独債務・ZEH水準省エネ住宅(令和6年入居)・限度額で頭打ち

令和6年に新築のZEH水準省エネ住宅に入居、特例対象個人には当たらない人です。印字された最高額は⑤欄3,500万円・⑥欄245,000円です。

欄

Ⓒ住宅及び土地等

計算

①年末残高

38,200,000円

年末残高等証明書から転記

②

38,200,000円

単独債務なので①と同額

③

38,200,000円

取得対価 ㋺26,000,000円+㋭15,000,000円=41,000,000円より少ない

④

38,200,000円

居住用割合100.0%

⑤

35,000,000円

最高3,500万円で頭打ち

⑥

245,000円

35,000,000円×0.7%=245,000円(最高245,000円と同額)

⑤欄に①の38,200,000円をそのまま書いて0.7%を掛けると267,400円になり、22,400円の過大控除です。限度額の頭打ちは、受け付け時に必ず見る点です。

記入例2:夫婦の連帯債務・認定住宅(令和5年入居)

令和5年に認定長期優良住宅に入居し、夫婦で連帯債務を組んだ人(負担割合50.00%)です。印字された最高額は⑤欄5,000万円・⑥欄350,000円、証明事項の取得対価は㋺18,000,000円・㋭12,000,000円とします。

欄

Ⓒ住宅及び土地等

計算

①年末残高

52,400,000円(うち連帯債務 52,400,000円)

証明書の残高全額を転記

②

26,200,000円(50.00%)

52,400,000円×50.00%

③

26,200,000円

取得対価 18,000,000円+12,000,000円=30,000,000円より少ない

④・⑤

26,200,000円

居住用割合100.0%、限度額5,000万円以内

⑥

183,400円

26,200,000円×0.7%=183,400円

夫婦が同じ会社に勤めている場合は、2人の②欄の合計が①を超えていないかを並べて見ると、割合の書き間違いに気づけます。

記入例3:住宅取得等資金の贈与の特例あり(令和7年入居・特例対象個人)

令和7年に新築の省エネ基準適合住宅に入居した特例対象個人(最高額は⑤欄4,000万円・⑥欄280,000円)で、物件価格36,000,000円のうち1,000万円は親からの住宅取得等資金の贈与(非課税特例を適用)、年末残高は27,800,000円の人です。③は年末残高27,800,000円と「36,000,000円−10,000,000円=26,000,000円」の少ない方で26,000,000円、⑥は26,000,000円×0.7%=182,000円です。

贈与分を差し引かずに年末残高で計算すると194,600円となり、12,600円の過大控除です。証明事項の取得対価の額が贈与分を差し引いた後の金額で印字されているかは、本人の初年度の確定申告書の控え(計算明細書)で確認できます。

受け取った申告書のチェック:年末残高等証明書・控除証明書との突合

申告書を受け取った勤務先は、申告書を保管し、内容を確認して年末調整に反映します。国税庁「年末調整のしかた」の注意事項を、受け付け時のチェック表にすると次のとおりです。

突合する箇所

見るポイント

年分

申告書・控除証明書が「令和8年分」(または「平成38年分」)か

①欄と年末残高等証明書

残高が一致しているか。内訳の区分(Ⓐ・Ⓑ・Ⓒ)の列が合っているか。複数の金融機関分が漏れていないか

②欄と連帯債務割合

証明事項㋥・㋣の割合で計算しているか。備考欄の記載が必要なケースか

③欄と取得対価

証明事項㋺・㋭と比べた少ない方になっているか

⑤・⑥欄と最高額

印字された最高額を超えていないか。⑥は100円未満切捨てか

年間所得の見積額

2,000万円以下か(令和4年以降入居)。給与以外の所得の記入漏れはないか

調書方式の控除見込額

⑥の計算結果と印字された見込額が一致するか。違う場合は理由(繰上返済など)を確認

繰上返済・返済遅延で残高が証明書と違う場合

控除証明書の年末残高情報や、予定額で証明された年末残高等証明書を基に控除を受けた後、繰上返済や返済の遅れで実際の年末残高が違うことになった場合は、実際の年末残高で正しい申告書を出し直す必要があります。調書方式は本人が返済計画表などで実際の残高を確認し、証明書方式は金融機関から実際の額での年末残高等証明書をもらい直します。

年末調整の後に判明した場合は、翌年1月末までなら年末調整のやり直しで直せます。手順は年末調整のやり直しと源泉徴収票の再発行手順で解説しています。

住宅ローンを借り換え、借換え後の当初金額が借換え直前の残高を上回る場合は、「本年の年末残高×借換え直前の当初住宅借入金等残高÷借換えによる新たな住宅借入金等の当初金額」を①欄に書きます。たとえば架空の数値で、残高30,000,000円を31,500,000円で借り換え、本年末の残高が30,450,000円なら、①欄は29,000,000円です。

源泉徴収簿・源泉徴収票への反映と、控除しきれない場合

申告書の⑥欄の金額は、源泉徴収簿の年末調整欄「住宅借入金等特別控除額㉔」に書き、「算出所得税額㉓」から差し引いて「年調所得税額㉕」を求めます。年末調整全体の計算の流れは源泉徴収簿の書き方と年末調整欄の記入例で確認できます。

所得税から控除しきれない場合

㉔が㉓より多く控除しきれないときは、㉕に「0」と書き、控除しきれない部分は年末調整では切り捨てます。このとき、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除可能額」欄に、㉔欄の金額(申告書の⑥欄の金額そのもの)を転記します(国税庁「過不足額の精算」)。「控除しきれなかった差額」を書く欄ではない点に注意します。

記入例1の人(⑥=245,000円)の算出所得税額㉓が98,500円なら、㉕は0円、源泉徴収票の控除可能額欄は245,000円です。所得税から引ききれなかった146,500円は、翌年度の個人住民税で控除される場合があります。令和4年以降入居の人は、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)が上限で、市区町村への申告は不要です(総務省「個人住民税の住宅ローン控除」)。源泉徴収票の書き方は源泉徴収票の書き方と欄別の記入例にまとめています。

なお、提出を受けた申告書は税務署へは出さず、給与の支払者の下で保管します。

よくある誤り10選と防ぎ方

実務で差し戻しが多いのは、記入ミスよりも「前提の取り違え」です。受け付けの段階で次を確認すると、12月の計算がやり直しになりません。

  1. 入居1年目の人の申告書を受け付ける:初年度は年末調整では控除できません。本人の確定申告へ案内します。
  2. 令和9年分の用紙を出してくる:書面交付は複数年分がまとめて届くため、年分を必ず確認します。
  3. 年末残高をそのまま⑤に書き、限度額を超える:⑤・⑥は印字された最高額で頭打ちにします(記入例1)。
  4. 取得対価との比較を飛ばす:年末残高が取得対価を上回る場合、③で取得対価に置き換えます。
  5. 贈与の特例・補助金を差し引かない:取得対価からこれらを引いた額で比べます(記入例3)。
  6. 連帯債務の全額で計算する:②で自分の負担割合を掛けます(記入例2)。
  7. ⑥を四捨五入する:100円未満は切り捨てです。
  8. 給与以外の所得を見積額に入れない:合計所得金額2,000万円超の年は控除できません。
  9. 繰上返済後も予定額の残高で計算する:実際の12月31日残高で計算し直します。
  10. 12月31日時点で住んでいない人を控除する:年の途中で売却・転居して12月31日まで引き続き住んでいない場合は、その年は控除できません(死亡の場合などの例外あり)。

年末調整の書類回収から不備チェックまでの段取り全体は、年末調整の効率化(回収・不備チェック・電子化)で整理しています。

AIの使いどころ:証明書の読み取りと突合チェックの下書き

住宅借入金等特別控除申告書のチェックは、「証明書の数字を読む」「欄どうしを突き合わせる」「掛け算と切捨てを確かめる」の繰り返しです。この部分は生成AIと相性が良く、チェックの下書きをAIに作らせ、人が最終確認する分担にすると、件数が多い事務所でも見落としを減らせます。

入力前の注意:個人情報は必ず外す

申告書と証明書には、氏名・住所・借入先・残高、場合によっては連帯債務者の氏名と勤務先まで載っています。AIに入力するときは、氏名を「従業員A」「連帯債務者B」に置き換え、住所・勤務先・金融機関名・ローン番号は削除し、必要な数値だけを渡します。画像やPDFをそのまま貼り付けるかどうかは、事務所の規程と、使うAIサービスの入力データの扱い(学習に使われない設定か等)を確認してから決めます。判断の考え方はChatGPTの情報漏洩対策|顧問先情報を守る7手順が参考になります。

プロンプト例:証明書の数値整理と検算・突合チェック

あなたは年末調整を担当する税理士事務所のスタッフです。
令和4年以降に入居した人の「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」の
記入内容を、次の手順で検算してください。
1. ②=①の単独債務分+①の連帯債務分×連帯債務割合
2. ③=②と取得対価の額(家屋+土地等)の少ない方
3. ④=③×居住用割合
4. ⑤=④の合計。ただし⑤欄の最高額を上限とする
5. ⑥=⑤×0.7%。100円未満切捨て。⑥欄の最高額を上限とする
各ステップの計算式と結果を表にし、本人の記入と違う欄を指摘してください。
読み取れない・渡されていない数値は推測せず「不明」と書いてください。
限度額・控除率の制度の数値は、私が渡した最高額だけを使い、推測で補わないでください。

【証明書の数値(個人情報を除く)】
取得対価 家屋㋺【金額】円 土地等㋭【金額】円
居住用割合【%】 連帯債務割合【%】
⑤欄の最高額【金額】円 ⑥欄の最高額【金額】円
年末残高等証明書の残高【金額】円(調書方式の控除見込額【金額】円)
【本人が記入した①〜⑥と年間所得の見積額】
①【金額】②【金額】③【金額】④【金額】⑤【金額】⑥【金額】
年間所得の見積額【金額】

証明書の画像からAIに数値を読み取らせる場合は、連帯債務割合と居住用割合の取り違えや桁の読み落としが起きやすいため、読み取った値は人が原本と1つずつ照合します。

うまくいかない例:「住宅ローン控除の計算が合っているか見て」とだけ頼むと、AIが令和3年以前の控除率1%や、入居年が違う限度額で計算して「誤り」と指摘することがあります。直し方:上のように手順と控除率を明示し、限度額は申告書に印字された最高額だけを使わせます。

汎用のAIでも、数値の整理と検算まではこの形で十分に任せられます。一方、「この人は特例対象個人に当たるか」「借換え後の借入金は対象か」のような制度の判断は、国税庁の資料で根拠を確かめる必要があります。国税庁などの公的資料を根拠に回答する税務特化のAIなら、出典を見ながら確認できます。税理士事務所向けの機能は税理士向けの士業AI、経理・総務の担当者向けの使い方は事務所スタッフ・経理向けの士業AIで紹介しています。

住宅借入金等特別控除申告書のよくある質問

申告書や控除証明書をなくした場合は?

本人から税務署に再交付を申請してもらいます。勤務先側で用紙を用意したり、別の年分の用紙で代用したりはできません。12月の年末調整に間に合わない場合は、年末調整では住宅ローン控除を入れず、本人が確定申告で控除を受ける方法もあります。

医療費控除のために確定申告をする場合、住宅ローン控除も確定申告ですか?

確定申告をする場合は、年末調整で受けた住宅ローン控除も含めて申告します。年末調整で控除を受けていても、確定申告書に住宅借入金等特別控除額を記入しないと、その年分の控除が反映されないので注意が必要です。医療費控除の明細書の書き方は医療費控除の明細書の書き方と記入例で解説しています。

まとめ:印字された証明事項と最高額に沿って書けば迷わない

住宅借入金等特別控除申告書は、初年度に確定申告を済ませた人が、2年目以降に年末調整で控除を受けるための書類です。税務署から届いた令和8年分の用紙を使い、①年末残高→②自分の負担分→③取得対価との少ない方→④居住用割合→⑤限度額で頭打ち→⑥×0.7%(100円未満切捨て)の順に書きます。

受け付ける側は、年分、限度額の頭打ち、取得対価との比較、連帯債務割合、合計所得金額2,000万円の5点を必ず確認します。数値の整理と検算はAIに下書きさせ、制度の判断と原本との照合は人が国税庁の資料で行う分担にすると、年末の繁忙期でも精度を保てます。

参考文献

FREE TRIAL

士業AIで業務を効率化しませんか?

税務・会計・法務の専門業務を AI がアシスト。 まずは無料でお試しいただけます。

無料で試す

クレジットカード不要・数分で開始