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給与所得者異動届出書の書き方|退職・転勤の記入例と一括徴収・提出期限

給与所得者異動届出書は、住民税を給与から天引き(特別徴収)している従業員が退職・転勤・休職などで給与を受けなくなったときに、会社が市区町村へ出す届出です。提出先は、特別徴収税額の決定通知書を送ってきた市区町村(従業員のその年度の1月1日時点の住所地)で、期限は異動のあった月の翌月10日までです(地方税法第321条の5第3項、地方税法施行規則第9条の24)。

書き方でいちばん迷うのは「残りの住民税をどう払うか」の選択です。1月〜4月の退職は原則として一括徴収、6月〜12月の退職は本人の申出があれば一括徴収、なければ普通徴収(本人が納付書で払う)になり、転職先が決まっていれば特別徴収を引き継ぐこともできます。この記事では、様式の欄ごとの書き方を、10月末退職の数値例で3パターンたどります。

  • 給与所得者異動届出書を出す場面・提出先・提出期限
  • 退職した月で決まる徴収方法(一括徴収・普通徴収・特別徴収継続)の判定表
  • 欄ごとの書き方(特別徴収義務者・給与所得者・異動の事由・徴収済額・未徴収税額)
  • 10月末退職の記入例(普通徴収/一括徴収/転職先で継続)
  • 転職先で特別徴収を続けるときの旧勤務先・新勤務先の分担と、eLTAXでの提出
  • 提出が漏れたときに起きることと、AIで記入内容のチェックや退職者向けの案内文を作る方法

給与所得者異動届出書とは|出す場面・提出先・提出期限

会社は毎年5月ごろ、従業員が1月1日時点で住んでいた市区町村から「特別徴収税額の決定通知書」を受け取り、6月から翌年5月までの12回に分けて住民税を給与から差し引いて納めます。この天引きの途中で給与を払わなくなった人が出たときに、「この人の分はもう天引きできない。残りはこう払う」と市区町村に伝えるのが給与所得者異動届出書です。

根拠は地方税法第321条の5。様式は第18号様式

地方税法第321条の5第2項は、特別徴収している従業員が給与を受けなくなった場合、その翌月以降の月割額を会社が徴収・納入する義務はなくなると定めています。そのうえで第3項は、会社がその従業員の氏名や「既に徴収した月割額の合計額」などを書いた届出書を市区町村長に出さなければならないとしています(e-Gov法令検索「地方税法」)。

様式は地方税法施行規則の第18号様式「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」が土台です。1枚の様式で、1月に出した給与支払報告書についての異動(給与支払報告)と、天引き中の従業員の異動(特別徴収)の両方を届け出られる作りになっています。

出す場面:退職・転勤・休職・死亡など

届出が必要になるのは、特別徴収している従業員が「この会社から給与を受けなくなった」ときです。自治体の様式に並んでいる異動の事由は、おおむね次のとおりです。

  • 退職(自己都合・定年・解雇などの理由は問わない)
  • 転勤(グループ会社への転籍など、給与の支払者が変わる場合)
  • 休職・長期欠勤(無給になり天引きできない場合)
  • 死亡
  • 給与が少額・不定期になり天引きできない場合
  • 会社の合併・解散

見落としやすいのが、住民税が非課税(税額0円)の従業員です。東京都の特別徴収推進ステーションは、税額がゼロの従業員が異動した場合でも届出が必要としています(東京都主税局「個人住民税の特別徴収推進ステーション」)。広島市も、提出対象に非課税者を含むと案内しています。

提出期限は「異動のあった月の翌月10日」

地方税法施行規則第9条の24は、異動届出書を「事由が発生した日の属する月の翌月の十日まで」に出すよう定めています。10月31日に退職した人なら11月10日、11月1日に退職した人なら12月10日が期限です。郵送の場合、横浜市は「翌月の10日までに横浜市特別徴収センターに届くように」と、到着ベースで案内しています(横浜市「個人の市民税特別徴収に関する異動届・切替依頼書の提出」)。

期限とは別に、1月に給与支払報告書を出した従業員が4月1日の時点で在籍していないときは、4月15日までに届け出る決まりがあります(地方税法第317条の6第2項)。これは新年度の天引きを始める前に止めるための届出で、同じ第18号様式の「給与支払報告」の側を使います。給与支払報告書との関係は給与支払報告書の書き方と提出先で整理しています。

提出先は「1月1日時点の住所地」の市区町村

提出先は従業員の今の住所地ではなく、特別徴収税額の決定通知書を送ってきた市区町村です。たとえば令和8年度(2026年6月〜2027年5月)の天引き分なら、2026年1月1日に住んでいた市区町村になります。年度の途中で引っ越していても、提出先は変わりません。

さいたま市は、1月1日時点で市内に住んでいなかった人の届出が届いても、正しい市区町村へ回送はしないとしています。提出前に、決定通知書に書かれた市区町村と指定番号を必ず確かめます(さいたま市「給与所得者異動届出書 作成方法・記入例」)。

退職した月で決まる3つの徴収方法(一括徴収・普通徴収・特別徴収継続)

給与から引けなくなった残りの住民税(未徴収税額)の払い方は3つあります。どれを選べるかは、退職した月と本人の希望で決まります。

退職などの時期

原則の扱い

選べるもの

6月1日〜12月31日

本人の申出がなければ普通徴収

本人が申し出れば一括徴収。転職先が決まっていれば特別徴収継続

1月1日〜4月30日

一括徴収(会社の義務)

転職先で継続する申出があれば特別徴収継続。最後の給与・退職金が未徴収税額以下なら普通徴収

5月

その年度の天引きは5月分で終わる

未徴収税額は残らないが届出は必要。新年度分の扱いは自治体に確認

1月〜4月の退職は、原則として一括徴収

地方税法第321条の5第2項ただし書は、1月1日から4月30日までに給与を受けなくなった場合、5月31日までに払う給与や退職手当等が残りの月割額の全額を超えるときは、会社がそこから残り全額を差し引いて納めなければならないとしています。本人の申出は要りません。江東区も「1月1日から4月30日までの異動は、一括徴収が原則義務」と案内しており、目黒区も同じ期間の退職者は本人の申出によらず一括徴収するとしています。

例外は2つです。転職先で特別徴収を続ける申出があるときは、一括徴収ではなく特別徴収継続を選べます。最後の給与・退職金が未徴収税額以下で引き切れないときは、普通徴収になります。

6月〜12月の退職は、本人の申出で一括徴収

6月1日から12月31日までの退職では、本人が申し出たときだけ一括徴収をします。申出の期限は、給与を受けなくなった月の末日までです(地方税法施行規則第9条の23)。申出がなければ普通徴収になり、市区町村から本人あてに納税通知書が届きます。

横浜市は、普通徴収の納期は年4回(6月・8月・10月・1月)なので、届出の処理時期に応じて残りの納期で分けて払うことになると案内しています。年の後半に退職した人ほど、1回あたりの納付額が大きくなりやすい点は、退職時の説明に入れておくと後の問い合わせが減ります。

死亡退職と、最後の給与が少ないとき

死亡による退職の場合、江東区は普通徴収になるとしており、広島市も死亡退職等の場合は一括徴収できないと案内しています。様式の普通徴収の理由欄にも「死亡による退職であるため」という選択肢があります。

また、一括徴収は「最後に払う給与・退職手当等が未徴収税額を超える」ことが前提です。最後の給与が少なく引き切れないときは、1月〜4月の退職でも普通徴収にし、理由欄で「5月31日までに支払われるべき給与又は退職手当等の額が未徴収税額以下であるため」を選びます。

5月の退職と、新年度分の扱い

住民税の年度は6月から翌年5月なので、5月に退職した人は、その年度の天引きが5月分で終わります。一方で、6月からの新年度分の決定通知書がすでに会社に届いている(または届く)ことがあり、こちらも止める必要があります。施行規則第9条の24ただし書は、4月2日から5月31日までの異動について、新年度から新たに特別徴収をする市区町村への届出期限を「通知のあつた日の属する月の翌月の十日まで」としています。年度欄の選び方を含め、5月退職の書き方は提出先の自治体の記載例で確認してください。

様式は自治体ごとに少しずつ違う

第18号様式が土台なので、どの市区町村の様式でも大きな構成は同じです。ただ、異動の事由の選択肢や注意書き、記載例の作り込みは自治体ごとに少しずつ違います。たとえば世田谷区と横浜市の様式では、事由の並びが次のように異なります。

項目

世田谷区の様式

横浜市の様式

異動の事由

1.退職 2.転勤 3.合併 4.休職 5.死亡 6.会社解散 7.住所誤報 8.その他

1.退職 2.転勤 3.休職・長欠 4.死亡 5.支払少額・不定期 6.合併・解散 7.その他

徴収方法

1.特別徴収継続 2.一括徴収(1月以降は必須) 3.普通徴収(本人納付)

1.特別徴収継続 2.一括徴収 3.普通徴収(本人納付)

受給者番号

電子で税額通知を受け取っている場合は必ず記載

必ず記載(未記載なら市で付番)

出典:世田谷区「給与所得者異動届出書 記入例」、横浜市の異動届出書様式。

複数の市区町村に従業員がいる会社では、どこか1つの自治体の様式で全員分を書くのではなく、提出先ごとの様式と記載例を使うのが安全です。とくに異動の事由は番号で書くため、ある区の「4」と別の市の「4」が違う事由を指すことがあります。

欄ごとの書き方|上段(年度・特別徴収義務者・給与所得者)

ここからは欄ごとの書き方です。手元に特別徴収税額の決定通知書(特別徴収義務者用)を用意しておくと、番号や金額をそのまま写せます。さいたま市も、決定・変更通知書を見ながら作ると円滑だと案内しています。

「給与支払報告」と「特別徴収」、年度欄の選び方

様式の表題は「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」で、どちらの届出かを○で示します。6月以降に天引き中の従業員が退職した通常のケースは「特別徴収」です。1月に給与支払報告書を出したあと、新年度の天引きが始まる前に退職した人は「給与支払報告」を選びます。

年度欄には「1.現年度 2.新年度 3.両年度」の選択肢があります。今の年度の天引きを止めるなら現年度、1月に報告した翌年度分を止めるなら新年度、その両方にかかるなら両年度です。

特別徴収義務者(給与支払者)の欄

  • 特別徴収義務者指定番号・宛名番号:決定通知書に書かれた番号をそのまま写します。番号は市区町村ごとに違います
  • 所在地・氏名又は名称・個人番号又は法人番号:会社の情報を書きます
  • 連絡先(担当者の所属・氏名・電話):新宿区は、未記載だと確認事項があっても連絡できないと注意しています

給与所得者(従業員)の欄

  • 氏名・フリガナ・生年月日・個人番号
  • 受給者番号:決定通知書に書かれた番号。横浜市・世田谷区は記載を強く求めています
  • 1月1日現在の住所:決定通知書の住所です。今の住所ではありません
  • 異動後の住所:1月1日現在の住所と違う場合に書きます。普通徴収の納税通知書の送り先になるので、退職時に本人から聞き取ります

異動年月日と異動の事由

異動年月日は退職日(休職なら休職の開始日など)を書きます。異動の事由は自治体の様式の番号で記入し、「その他」を選んだときは具体的な理由も書きます。

(ア)特別徴収税額・(イ)徴収済額・(ウ)未徴収税額

中央の金額欄は、普通徴収や一括徴収の金額を決める一番大事な欄です。

  • (ア)特別徴収税額(年税額):決定通知書(税額が変わった場合は変更通知書)の年税額
  • (イ)徴収済額:すでに給与から差し引いた月割額の合計。世田谷区は、最後の給与で差し引く予定の額(徴収見込額)も含めて書くよう案内しています。「○月から○月まで」の欄に、天引きした月も書きます
  • (ウ)未徴収税額:(ア)−(イ)。「○月から○月まで」の欄に、残りの月(翌年5月まで)を書きます

新宿区は、普通徴収に切り替えるときの確認点として「徴収済月と徴収済額が一致しているか」「年税額・徴収済額・未徴収税額・徴収済月・未徴収月の記載があるか」「徴収済額と未徴収税額の合計が年税額になっているか」の3点を挙げ、記載漏れや誤りがあると普通徴収へ切り替えられないとしています(新宿区「給与所得者異動届出書等の記入上の注意点」)。

記入例|10月末退職の3パターン

次の従業員を例に、下段の「異動後の未徴収税額の徴収方法」の書き方を比べます。数値は説明用です。

項目

内容

異動年月日・事由

2026年10月31日・退職

(ア)特別徴収税額(年税額)

180,000円(月割額15,000円)

(イ)徴収済額

75,000円(2026年6月〜10月の5回分)

(ウ)未徴収税額

105,000円(2026年11月〜2027年5月の7回分)

提出期限

2026年11月10日

パターンA:普通徴収(本人が納付書で払う)

徴収方法の欄に「3」(普通徴収)を記入し、下段の「3.普通徴収の場合」の理由で「1.異動が12月31日までで、一括徴収の申出がないため」を選びます。未徴収税額105,000円は、市区町村が本人あてに送る納税通知書で払ってもらいます。異動後の住所欄が空だと、通知書が届かないおそれがあります。

パターンB:一括徴収(最後の給与・退職金から差し引く)

本人が10月中に一括徴収を申し出た場合です。徴収方法の欄に「2」を記入し、「2.一括徴収の場合」の理由で「1.異動が12月31日までで、一括徴収の申出があったため」を選びます。あわせて、徴収予定月日と徴収予定額((ウ)と同じ105,000円)、何月分として納めるか(「○月分(翌月10日納入期限分)で納入します」)を書きます。

最後の給与から105,000円を差し引いたら、徴収した月の翌月10日までに、他の従業員の住民税とまとめて納めます(地方税法第321条の5第2項)。新宿区は、一括徴収の納入予定月が書かれていないと退職の処理が遅れる場合があるとしています。

パターンC:転職先で特別徴収を続ける

11月から次の会社で働くことが決まっていて、本人が引き続き天引きを希望した場合です。旧勤務先が上段と金額欄を書き、徴収方法の欄に「1」を記入して、下段の「1.特別徴収継続の場合」の「新しい勤務先へは、月割額15,000円を11月分(翌月10日納入期限分)から徴収し、納入するよう連絡済みです」を埋めます。新しい勤務先の欄(指定番号、所在地、名称、法人番号、担当者の連絡先、受給者番号)は新勤務先が書きます。

新勤務先がその市区町村で初めて特別徴収をする場合は、指定番号の欄で「新規」を選び、納入書が必要かどうかも書きます。新宿区は、新勤務先の特別徴収の開始月と会社名のフリガナの記載を求めています。

転職先で続けるときの旧勤務先・新勤務先の分担

特別徴収継続は、旧勤務先と新勤務先の2社で1枚の届出書を仕上げる手続きです。横浜市は次の流れを示しています。

  1. 旧勤務先が異動届出書に所定の事項を書き、速やかに新勤務先へ送る
  2. 新勤務先が新しい勤務先の欄を書き、市区町村へ出す
  3. 期限は、異動のあった月の翌月10日(異動が4月中なら4月30日)

この期限は、地方税法第321条の4第5項の「新たに給与の支払をする者となつた者を通じて」申し出る規定に対応しています。さいたま市は、転勤前の事業所が書ける部分を作って本人に渡し、転勤先で完成させる方法と、両社の担当者同士で相談して作る方法の2通りを挙げています。

退職から翌月10日までは時間が短いため、実務では退職の手続きを始める段階で「次の勤務先は決まっているか」「住民税の天引きを続けたいか」を本人に聞いておきます。新勤務先の側の受け入れ手順は、入社手続きチェックリストの「住民税の特別徴収を前職から引き継ぐ」でも触れています。

eLTAXで提出する方法と注意点

異動届出書は、紙の郵送・窓口持参のほか、地方税ポータルシステム(eLTAX)で電子的に出せます。江東区は、特別徴収に関する各種書類をeLTAXからインターネットで提出できると案内しています(江東区「給与からの特別徴収」)。

横浜市は、eLTAXを使うと入力誤りや計算誤りのチェック機能があり、郵便料金がかからず、1回の送信操作で複数の参加団体に提出できると説明しています(横浜市の市区町村コードは141003)。従業員の住所地が複数の自治体に分かれている会社ほど、手間の差が大きくなります。

一方、提出の手段には制限があります。横浜市は電話・FAX・電子メールによる届出を受け付けておらず、世田谷区もeLTAX以外の電子送信やFAXでは提出できないとしています。eLTAXの利用開始や操作方法は、eLTAXのホームページで確認してください。

提出漏れ・遅れで起きること

広島市は、異動届出書を出さないと、その従業員についての特別徴収義務が続いたままになり、未納の金額について督促状などが送られることがあると明記しています(広島市「給与所得者異動届出書の提出」)。さいたま市も、提出が遅れた場合は督促状が届く可能性があるとしています。

従業員本人にも影響があります。普通徴収への切替えが遅れると、本人に納税通知書が届くのが遅れ、残りの納期にまとめて払うことになります。目黒区は、普通徴収から特別徴収へ切り替える場面について、納期限が過ぎた分は切り替えられないと案内しています(目黒区「給与からの特別徴収」)。転職先での継続を希望していた人の手続きが遅れると、その希望に沿えなくなることがあります。

届出書を出したあとで誤りに気づいたときは、自治体の指示に従って訂正します。横浜市は、正しい届出書の上段欄外に朱書きで「訂正分」と書いて至急出し、本人と納税管理課にも連絡するよう求めています。

退職者が出るたびに、自治体ごとの様式・期限・記載ルールを調べ直すのは、少人数の総務・経理担当者にとって負担の大きい作業です。届出書のチェックや退職者への案内文づくりのような定型業務をAIで下書きする使い方は、事務所スタッフ・経理総務向けの士業AIで紹介しています。

退職時にあわせて行う住民税以外の手続き

異動届出書は、退職時に会社がする手続きの一つです。住民税の届出と同じ時期に、次の書類も動きます。

  • 退職届の受理と退職日の確定:退職届・退職願テンプレートと会社側の受理・手続き
  • 源泉徴収票の交付:年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に交付します(所得税法第226条第1項)。書き方は源泉徴収票の書き方で確認できます
  • 退職金を払う場合の住民税:退職所得の住民税は給与の住民税とは別に計算し、退職金から差し引きます。計算は退職金の税金の計算方法を参照してください
  • 翌年1月の給与支払報告書:年の途中で退職した人も、支払った給与が30万円を超える場合は、翌年1月31日までに退職時の住所地の市区町村へ給与支払報告書を出します(地方税法第317条の6第3項)

一括徴収は、最後の給与だけでなく退職手当等からも差し引けます。退職金からは退職所得の住民税も差し引くため、同じ明細に「退職所得の住民税」と「給与の住民税の一括徴収分」が並びます。本人に渡す明細や案内では、2つを分けて表示すると誤解を防げます。

AIで異動届出書をチェックし、社内案内文を作る

生成AIは、異動届出書の「金額の整合を確かめる」「徴収方法の判定を整理する」「退職者への説明文を書く」作業と相性が良い道具です。ただし、自治体ごとの様式の番号や期限はAIの知識が古かったり混ざったりしやすいので、最後は提出先の自治体の記載例で確認する前提で使います。

使う前に:個人情報は外して渡す

異動届出書には氏名、個人番号、住所、税額が並びます。AIに渡すときは、氏名を「従業員A」に置き換え、個人番号と住所は削除し、市区町村名と金額だけを残します。事務所や会社でAIの利用規程がある場合は、それに従います。

プロンプト1:金額欄と徴収方法のチェック

あなたは個人住民税の特別徴収に詳しい給与担当者です。
以下は「給与所得者異動届出書」に記入する予定の内容です。
地方税法第321条の5のルール(1月1日〜4月30日の退職は原則一括徴収、
6月1日〜12月31日の退職は本人の申出があれば一括徴収、なければ普通徴収、
転職先での特別徴収継続の申出があれば継続)に照らして、次をチェックしてください。
1. (ア)=(イ)+(ウ)になっているか
2. 徴収済額の月数×月割額と(イ)が一致しているか(6月分だけ金額が違う場合は通知書の金額で判定)
3. 選んだ徴収方法と理由の番号が、退職日と本人の申出に合っているか
4. 一括徴収の場合、最後の給与・退職金の額が未徴収税額を超えているか
5. 提出期限(異動のあった月の翌月10日)はいつか
自治体ごとの様式の番号や細かい運用は判定せず、「自治体の記載例で要確認」と書いてください。

【提出先】【市区町村名】
【異動年月日・事由】【2026年10月31日・退職】
【(ア)年税額】【180,000】円 【月割額】6月分【15,000】円、7月以降【15,000】円
【(イ)徴収済額】【75,000】円(【6】月から【10】月まで)
【(ウ)未徴収税額】【105,000】円(【11】月から【5】月まで)
【本人の申出】【一括徴収の申出あり/なし/転職先で継続希望】
【最後の給与・退職金の額】【金額】円
【選んだ徴収方法と理由】【2.一括徴収・理由1】

うまくいかない例:「異動届の書き方を教えて」とだけ聞くと、特定の自治体の様式を前提にした番号で答えたり、退職月による一括徴収の義務を取り違えたりします。直し方:上のように、判断のルールを明示し、自治体固有の番号は判定させず「要確認」にさせます。

プロンプト2:退職者に渡す「住民税の残りの払い方」の案内文

退職する従業員向けに、住民税の残りの払い方を説明する案内文を作ってください。
専門用語はできるだけ避け、A4で半分程度、箇条書きを使ってください。

【退職日】【2026年10月31日】
【残りの住民税】【105,000】円(【11】月分から【翌年5】月分まで)
【会社が選べる方法】
・最後の給与(【10月25日】支給)からまとめて差し引く(一括徴収)
・ご自身で市区町村からの納付書で払う(普通徴収)
・次の勤務先が決まっている場合は、次の会社で天引きを続ける(特別徴収の継続)
【希望の回答期限】【10月20日】(一括徴収を希望する場合は退職月の末日までの申出が必要)
【回答方法】【総務 担当者名 宛てにメール】
【注意書きに入れること】
・普通徴収を選ぶと、納付書は退職後の住所に届くので、引越し予定があれば新住所を教えてほしい
・次の会社で天引きを続ける場合は、会社が書類を次の勤務先へ送るので、勤務先名と担当者の連絡先を教えてほしい
・退職金からは、退職金にかかる住民税が別に差し引かれる

うまくいかない例:回答期限を書かずに作ると、「いつでも選べる」と読める案内になり、一括徴収の申出が退職月を過ぎてしまうことがあります。直し方:施行規則第9条の23の「退職月の末日まで」を踏まえた社内の回答期限を必ず入れます。

プロンプト3:退職者一覧から提出先と期限の一覧を作る

以下は今月の退職者・休職者の一覧です(個人名は伏せています)。
提出先の市区町村ごとにまとめ、次の列を持つ表を作ってください。
列:従業員記号/提出先の市区町村/異動年月日/事由/未徴収税額/
徴収方法(一括・普通・継続)/提出期限(異動月の翌月10日)/
新勤務先への書類送付の要否/一括徴収した税額の納入月
1月〜4月の退職で徴収方法が「普通」になっている行、
6月〜12月の退職で「一括」なのに本人申出の記録がない行には「要確認」と付けてください。

従業員記号,1月1日現在の住所地,異動年月日,事由,未徴収税額,本人の希望
【A,横浜市,2026/10/31,退職,105000,一括】
【B,世田谷区,2026/10/15,転勤,48000,継続】
【C,さいたま市,2026/10/31,休職,36000,未回答】

うまくいかない例:「今の住所」を列に入れると、AIが今の住所の自治体を提出先として並べてしまいます。直し方:列名を「1月1日現在の住所地」にして、決定通知書の市区町村を入れます。

汎用のAIでもここまでの整理はできますが、住民税の制度は法令と自治体の運用が重なっているため、「どの根拠で答えているか」の確認が欠かせません。税理士事務所で顧問先の給与・住民税の質問に答える場面では、公的資料を根拠に回答する税理士向けの士業AIも使えます。

給与所得者異動届出書のよくある質問

住民税が非課税の従業員が退職したときも、異動届出書は必要ですか?

必要です。東京都の特別徴収推進ステーションは、税額がゼロの従業員が異動した場合でも、異動が生じた翌月の10日までに提出するよう案内しています。

退職者が引越していたら、どこに出しますか?

特別徴収税額の決定通知書を送ってきた市区町村(その年度の1月1日時点の住所地)に出します。引越し先は「異動後の住所」欄に書きます。

休職で給与が出なくなる場合も出しますか?

給与を受けなくなり天引きできなくなる場合は届出の対象です。横浜市の様式には「休職・長欠」の事由があります。復職後に天引きを再開する手続きは自治体によって違うため、提出先に確認してください。

一括徴収した税額はいつ納めますか?

差し引いた月の翌月10日までに、他の従業員の住民税とあわせて納めます。納期の特例を受けている会社について、さいたま市は、退職があっても納期限は変わらないとしています。

まとめ|退職月・本人の希望・1月1日の住所地を先に確かめる

給与所得者異動届出書は、住民税の天引きを途中で止めたり引き継いだりするための届出で、異動のあった月の翌月10日までに、1月1日時点の住所地の市区町村へ出します。書き始める前に「退職した月」「本人の希望(一括・普通・継続)」「提出先の市区町村」の3点を確かめれば、徴収方法の欄で迷うことはほとんどなくなります。

金額欄は(ア)=(イ)+(ウ)と、天引きした月・残りの月の記載をそろえることが基本です。様式の番号や細かい運用は自治体ごとに違うため、提出先の記載例を確認しながら書き、金額の検算や退職者への案内文の下書きはAIに任せると、退職が重なる時期でも漏れを抑えられます。

参考文献

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