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税務代理権限証書の書き方|過年分・調査通知同意の記載例と令和8年9月の新様式

税務代理権限証書は、税理士が税務代理をするときに「代理の権限があること」を税務署に示す書面です(税理士法第30条)。様式は税理士法施行規則第15条の「別紙第八号様式」で決まっていて、委任状とは別物です。令和6年4月1日以後の提出分からは、過年分に関する税務代理や調査の通知・終了の際の手続に関する同意などを欄ごとに選ぶ形になりました。さらに令和8年9月24日以降に書面で出す場合は、レ印ではなく「1」「2」の数字を書き込む新しい様式を使うよう国税庁が案内しています。

この記事では、確定申告期の前に申告担当が迷いやすい欄の書き方を、ケース別の記載例とあわせて整理します。

この記事で分かること

  • 税務代理権限証書と委任状の違い、誰がいつ出すのか
  • 税目・年分等、過年分、調査通知の同意、代表する代理人の各欄の書き方
  • 所得税の確定申告・法人の3税目・過年分の調査対応・相続税の記載例(作例)
  • e-Taxで添付するときの注意点と、令和8年9月24日以降の書面様式の変更点
  • よくある記載ミスと、顧問先に内容確認を頼む文例・AIでの点検プロンプト

税務代理権限証書とは|委任状との違い

税理士法第30条は「税理士は、税務代理をする場合においては、財務省令で定めるところにより、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない」と定めています。この「財務省令」が税理士法施行規則第15条で、書面は「別紙第八号様式による税務代理権限証書」とされています。つまり、事務所で自由に作る委任状では代わりになりません。

委任状との違いは、出せる人と効果にあります。国税庁の税理士制度のQ&A(問3-3)では、提出できるのは納税者と委嘱契約を結んだ開業税理士か税理士法人で、所属税理士は原則として出せないとしています(使用者の承諾を得て直接委嘱を受けた場合は例外)。また、提出した税理士は国税通則法上の「税務代理人」になり、税務調査の事前通知を受ける立場になります。

登記・相続手続・許認可などで使う一般の委任状の書き方は、委任状の書き方|登記・相続・許認可の類型別記載例で整理しています。本記事は税務代理権限証書の欄ごとの書き方に絞ります。

いつ・何ごとに出すか

提出時期は「随時」で、提出先は税務代理に関わる税務署・国税局・国税不服審判所などです(国税庁「H2-1 税務代理の権限の明示」)。実務では申告書に添付して出すのが基本で、委嘱を受けた時点で調査が始まっている場合などは単体で出します。

「毎年出す必要があるか」という質問は多いのですが、様式の「年分等」欄はその年分・事業年度を書く作りです。国税庁の税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)問7では、調査時点で直近の年分等の証書に同意の記載がなければ、前年まで同意付きで出していても事前通知は納税者と税理士の双方に行われるとしています。申告のたびに、その年分等の証書を出す運用が安全です。

場面

出し方

根拠・注意

毎年の確定申告・法人税申告

申告書に添付

税目ごとに税目・年分等を記載(e-Tax案内)

相続税の申告

相続人ごとに1枚

年分等欄に相続開始年月日

新規受任後に過年分の調査が来た

単体で提出

「過年分に関する税務代理」欄を使う

同意の内容を後から変えたい

証書を再提出

FAQ問2・問3・問8

委任が終わった

終了の通知書(令和6年4月以降)

H2-2

様式の欄ごとの書き方

以下は国税庁の税務代理権限証書の様式・記載要領に沿った説明です。令和8年9月24日以降の書面様式での書き方は、各欄の最後に補足します。

税理士又は税理士法人の欄

事務所の名称と所在地を書きます。税理士法人の従たる事務所で実務を担当しているときは、その従たる事務所の所在地等を書きます。本文中の「税理士/税理士法人」の部分は、従来の様式では使わない方を二重線で消し、新しい書面様式では「1:税理士」「2:税理士法人」の数字で選びます。

税目・年分等(「1 税務代理の対象に関する事項」)

委任を受ける税目にレ印を付け、税目に応じた年分等を書きます。所得税(申告分)は「令和○年分」、法人税・消費税・源泉所得税は「自 令和○年○月○日 至 令和○年○月○日」の期間で書く欄です。表記されていない税目(相続税・贈与税など)は空欄の行に税目と年分等を書き足します。

源泉所得税の年分等は迷いやすい欄です。FAQ問10では、法人なら事業年度、個人なら暦年と同じ期間を書いて差し支えないとしています。法人の調査では法人税・消費税・源泉所得税が同時に行われることが多いため、源泉も委任を受けているなら記載漏れに注意します(FAQ問5)。

過年分に関する税務代理

「1」の欄に書いた税目について調査があった場合に、記載した年分等より前の年分等(過年分)も税務代理を委任するときに選びます。新規に受任した顧問先で、前の年分は別の税理士が担当していたときや、過去の年分の証書を出し忘れていたときに使う欄です(FAQ問6)。

調査の通知・終了の際の手続に関する同意

令和6年4月1日以後の様式では、同意が次の3つに分かれています。顧問先の意向を一つずつ確認して選びます。

同意の項目

同意したときの効果

根拠条文

① 調査の通知

事前通知は税理士だけにすれば足りる

国税通則法74条の9第5項・税理士法34条2項

② 更正決定等をすべきと認められない旨の通知

調査終了の通知を税理士が受ける

国税通則法74条の11

③ 調査結果の内容の説明等

修正申告の勧奨時の説明・書面交付を含め税理士が受ける

国税通則法74条の11

①の同意は、法令上この証書に記載することとされています。口頭や別の書面で示しても有効とはされません(FAQ問1)。同意がない場合、事前通知は顧問先と税理士の両方に届きます。顧問先へ事前通知が来たときの説明の仕方は、税務調査の事前通知が来たときの顧問先への説明文例にまとめています。

代理人が複数ある場合における代表する代理人の定め

同じ顧問先に税理士が複数いるとき、自分を代表する代理人とする場合に選びます。代表する代理人を定めると、他の代理人への事前通知は代表する代理人に対して行われます(国税通則法74条の9第6項、税理士法34条3項)。代理人が1人だけなら選ぶ必要はありません。

「2 書類の受領」「3 その他の事項」と委任状欄

「2」は、e-Taxで代理受領する電子通知を選ぶ欄です。対象は、更正の請求に係る更正通知等、加算税の賦課決定通知、予定納税額の通知、予定納税額の減額申請の承認・却下通知、適格請求書発行事業者の登録通知です。ここに書かない書類の受領は税務代理の対象外になります。「3」には、税務代理から除く事項や範囲を限定する旨を書きます。

納税証明書の受領や申告書等閲覧サービスでの閲覧は税務代理ではないため、様式下部の「委任状」欄に書きます。

令和8年9月24日以降の書面様式で変わる点

国税庁は令和8年9月9日付の法令解釈通達で税理士法関係の様式を改正し、9月24日以降に書面で出す場合は新しい様式を使うよう案内しています。欄の意味は同じで、書き方が変わります。

欄

従来の様式

令和8年9月24日以降の書面様式

税理士/税理士法人

不要な方を二重線で抹消

1または2を記入

過年分・同意3項目・代表

□にレ印

各欄に1(する)か2(しない)

税目

該当税目にレ印

区分欄に1。表記外の税目は番号(相続税1、贈与税2など)

年分等

平成・令和を選んで記入

元号・年・月・日の欄に記入

出典は新様式の記載要領です。e-Taxで出す場合はソフトの入力画面に従います。

ケース別の記載例(作例)

以下は欄の埋め方を示すための作例です。実在の事務所・顧問先の事例ではありません。同意の欄は、顧問先に3項目それぞれの意向を確認したうえで選んでください。

ケース

税目・年分等

過年分

同意・代表

① 個人事業主の令和8年分確定申告(消費税の課税事業者・従業員あり)

所得税(申告)令和8年分/消費税 自 令和8年1月1日 至 令和8年12月31日/源泉 同期間

継続顧問なら不要

顧問先の意向どおり3項目を選択。代理人1人なら代表は不要

② 3月決算法人の申告(法人税・消費税・源泉)

法人税・消費税・源泉とも 自 令和8年4月1日 至 令和9年3月31日

継続顧問なら不要

3税目すべてに同じ同意をそろえる

③ 新規受任した法人で過年分の調査が始まる

直近の事業年度を記載

委任する

①調査の通知に同意(FAQ問6)

④ 相続税の申告(相続人3人)

相続税・相続開始年月日

通常不要

相続人ごとに3枚作り、同意も一人ずつ確認

④の相続税は翌年分の申告がないため、申告後に同意を受けたときは速やかに同意付きの証書を再提出します(FAQ問3)。相続税申告書そのものの記入順は相続税申告書の書き方を参照してください。

申告書の作成から調査対応まで、税目ごとの論点を国税庁の公表資料に当たって確認したい場合は、税理士向けの税務AIで条文・通達・FAQを根拠つきで調べられます。

e-Taxで提出するときの注意点

e-Taxでは、申告データに税務代理権限証書を添付して送るか、証書だけを単体で送ります。e-Taxの案内では、単体で送る場合は先に申告書等を送信するよう求めています。

  • e-Taxソフト(WEB版)では作成できない。証書はe-Taxソフト等で作成するとe-TaxのQ&Aに書かれています。
  • 税目ごとに作成し、税目・年分等を記載します(添付提出の入力方法)。
  • 代理受領には3項目が必要です。税理士の利用者識別番号、税目・年分等、「2」の受領する通知の種類のどれか一つでも欠けると代理受領できません。
  • 予定納税額の通知は、入力した年分の翌年分が対象です(令和7年分を入力すると令和8年分の通知)。
  • 相続税の申告書に添付した証書は、e-Tax上で代理受領の設定がされません。
  • 令和4年分以前など古い年分の申告書には改正前の証書しか添付できない場合があり、その場合は改正後の証書を別に単体送信します(e-Tax Q&A)。

同じ納税者・税目で年分等が重なる証書が2枚出ている場合、代理受領の設定は後から出した証書の内容になります。修正申告や更正の請求で過去の年分をまとめて送るときは、どの証書が最新になるかを確認してから送信します。

よくある記載ミスと影響

ミス

起きること

防ぎ方

今年の証書だけ調査通知の同意を付け忘れた

事前通知が顧問先にも直接届く(FAQ問7)

同意の有無を顧問先台帳で管理し毎年そろえる

源泉所得税を書いていない

源泉所得税では税務代理人として扱われず、同意の効果も及ばない

給与支払がある顧問先は必ず確認

相続人全員を1枚にまとめた

記載要領に反する

相続人ごとに作成

所属税理士の名義で提出

原則として提出できない(Q&A問3-3)

委嘱契約の当事者(所長・法人)の名義で出す

代理受領の欄が空欄

電子通知を税理士が代理受領できない

受け取りたい通知を「2」で選ぶ

9月24日以降に旧様式で書面提出

国税庁の案内と異なる様式になる

書面で出すときは国税庁ページの最新様式を使う

調査結果の説明を税理士が受ける同意(③)は、FAQ問15で「提出済みの証書にこの同意が記載されていれば税務代理人に説明を行う」とされています。顧問先が「説明は自分で聞きたい」と考えていることもあるため、空欄のまま毎年コピーせず、受任時と変更時に確認します。

顧問先への内容確認の文例とAIでの点検プロンプト

同意の3項目は顧問先の意思で決まるものなので、事務所が勝手に選ぶことはできません。申告書の資料依頼と同じタイミングで確認を取ると、申告期に慌てずに済みます。資料依頼メールの型は顧問先への資料依頼メール例文も参考にしてください。

文例:顧問先への確認メール

件名:【ご確認】税務代理権限証書の記載内容について(【年分】申告)

【顧問先名】
【ご担当者名】様

いつもお世話になっております。【事務所名】の【担当者名】です。
【年分】の申告にあわせて、税務署に提出する「税務代理権限証書」の内容をご確認ください。

1. 当事務所が代理する税目と期間
   【税目と年分等】
2. 税務調査があった場合の連絡先
   (1) 調査の事前通知を当事務所だけで受けること:同意する/同意しない
   (2) 調査で修正がなかった場合の通知を当事務所が受けること:同意する/同意しない
   (3) 調査結果の説明(修正申告のご案内を含む)を当事務所が受けること:同意する/同意しない
3. 以前の年分について調査があった場合も当事務所に代理を任せること:任せる/任せない

同意いただくと、税務署からの連絡はまず当事務所に入ります。
同意しない場合は、御社と当事務所の両方に連絡が入ります。
【回答期限】までにご返信ください。

AIでの点検プロンプト

作成した証書の内容をテキストにして貼り付け、欄の漏れや前年との違いを点検させます。マイナンバーや利用者識別番号は入れず、顧問先名は記号に置き換えてください。

あなたは税理士事務所の申告担当の点検役です。
次の税務代理権限証書の記載内容を、国税庁の記載要領に沿って点検してください。
判断できないことは「要確認」と書き、推測で埋めないでください。

【顧問先の区分】個人/法人(【決算月】月決算)/相続
【今年の記載内容】
・税目と年分等:【記載内容】
・過年分に関する税務代理:【1 or 2】
・同意(調査の通知/終了の通知/結果説明等):【1 or 2を3つ】
・代表する代理人:【1 or 2】
・2 書類の受領:【選んだ通知】
【前年の記載内容】【同じ形式で】
【事務所の把握している事実】給与支払の有無、消費税の課税事業者か、他の税理士の関与の有無

出力:
1. 欄ごとの漏れ・期間のずれ(源泉所得税の期間、消費税の課税期間など)
2. 前年と変わった項目と、顧問先に確認すべき点
3. 相続税の場合は、相続人ごとに作成されているか

うまくいかない例は「この証書をチェックして」とだけ頼むことです。AIは様式の一般論を返すだけで、前年との違いや源泉の漏れには触れません。前年の内容と事務所が知っている事実(給与支払・他の税理士の有無)を一緒に渡すと、指摘が具体的になります。点検結果は申告担当が記載要領と照らして最終確認してください。

申告書に添付する33条の2の書面も同じ時期に作るなら、計算事項等記載書面の記載例で欄の違いを確認できます。スタッフ向けの共通業務(メール・議事録など)でAIを使う場面は事務所スタッフ向けのページにまとめています。

よくある質問

過去の年分に同意を付け直す必要はありますか

次回の申告時に、過去の年分等も含めることを明らかにして同意付きの証書を出せば、過去分の再提出は不要とされています(FAQ問2)。次の申告より前に調査が来た場合は双方に通知されるため、急ぐときは直近の年分について同意付きの証書を再提出します。

顧問先が「事前通知は自分で受けたい」と言い出したら

同意を記載しない証書を再提出するか、調査担当者から連絡があった際にその旨を伝えても差し支えないとされています(FAQ問8)。

印紙税の調査も税理士が通知を受けられますか

印紙税は税理士業務の対象税目ではないため、同意付きの証書を出しても事前通知は納税者に行われます(FAQ問14)。

地方税の税務代理はどうなりますか

本記事は国税の様式を扱っています。地方税の申告で代理する場合の書面や提出方法は、提出先の地方公共団体やeLTAXの案内で確認してください。

まとめ|「誰に通知が届くか」を顧問先と決めてから書く

税務代理権限証書で迷うのは、税目・年分等よりも、過年分と同意の欄です。どちらも「調査のときに誰に連絡が来るか」を決める欄なので、事務所の判断で埋めずに顧問先の意思を確認し、毎年同じ内容で出し続けることが記載ミスを防ぐ近道です。書面で出す場合は、令和8年9月24日以降の新しい様式を使うことも忘れないでください。

様式や記載要領は改正されることがあります。提出前に国税庁の「税務代理の権限の明示」のページで最新の様式を確認してください。

参考文献

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