税務×AI

税務署の「お尋ね」への回答書の書き方|種類別の文例5つと放置した場合

税務署から届く「お尋ね」は、多くの場合、税務調査ではなく行政指導として送られてくる確認の文書です。回答書には、聞かれている事実を、手元の資料で裏付けられる範囲で、短く正確に書きます。申告が要らない理由も、申告する予定も、根拠と一緒に書けば足ります。

行政指導への協力は法律上「任意」とされています。ただ、それは「放っておいてよい」という意味ではありません。お尋ねは申告の要否や内容を確かめるための入口で、申告義務そのものは回答してもしなくても変わらないからです。この記事では、国税庁のFAQ・事務運営指針・国税通則法の条文を根拠に、お尋ねの性質と回答書の書き方を整理しました。種類別の文例と、税理士が顧問先から相談を受けたときの手順も載せています。

  • お尋ねが「調査」か「行政指導」か、文書のどこで見分けるか
  • 事業・不動産の購入や売却・相続など、お尋ねの種類ごとに税務署が確かめたいこと
  • 回答しない場合・期限に間に合わない場合の考え方
  • 種類別に、そのまま使える回答文例5つ(うまくいかない例と直し方つき)
  • 顧問先から「お尋ねが来た」と相談されたときの対応手順と、AIで下書きを作るプロンプト

実地調査の事前通知を受けたときの連絡の仕方は税務調査の事前通知が来たら|顧問先への説明文例と準備チェック表にまとめています。この記事は、文書で届くお尋ねへの回答に絞ります。

税務署の「お尋ね」とは|多くは行政指導として届く確認の文書

「お尋ね」は法律上の用語ではなく、税務署が納税者に事実関係を確かめるために送る文書の通称です。中身は「事業をしていますか」「この不動産をいくらで買い、資金はどう用意しましたか」「相続税の申告は必要ですか」といった質問で、回答用紙と返信用封筒が同封されていることが多いです。

実務で最初に確認したいのは、その文書が税務調査なのか行政指導なのかという点です。扱いが違うため、回答の重みも、申告漏れが見つかったときの加算税の扱いも変わります。

調査と行政指導の違い

国税庁の通達は、「調査」を、特定の納税者の課税標準や税額を認定する目的で行う一連の行為と定めています。一方、申告書の計算誤りや記載漏れについて自発的な見直しを求める行為や、申告書が出ていない人に申告義務の有無を確かめるための基礎的な情報の提供を求める行為は、調査に当たらないとしています(国税庁「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達」1-2)。お尋ねの多くは、この後者の形です。

項目

行政指導(お尋ねの多く)

税務調査

目的

自発的な見直し・申告の要請、基礎的な情報の提供の依頼

課税標準や税額を認定する

根拠

行政手続法の行政指導(協力は任意)

国税通則法74条の2などの質問検査権

応じない場合

従わないことを理由とした不利益な取扱いは禁止

正当な理由なく答弁しない・提出しない場合は罰則の対象

自主的な修正申告の加算税

過少申告加算税は課されない(延滞税はかかる場合あり)

調査通知後は過少申告加算税の対象

文書に「行政指導」か「調査」かが書かれているか確認する

国税庁の事務運営指針は、職員が調査や行政指導に当たる行為をするときは、対面・電話・書面を問わず、どちらの事務として行うかを明示するとしています(国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」第2章1)。FAQでも、具体的な手続に入る前にどちらに当たるかを示すこととしています(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2)。

そのため、届いた文書はまず本文や欄外を読み、「行政指導として」「調査ではありません」などの記載があるかを確認します。書かれていない、または読み取れない場合は、文書に記載された担当部署に「この文書は調査と行政指導のどちらですか」と電話で確かめて構いません。聞いた日時と担当者名は控えておきます。

実地調査の事前通知とは別物

税務調査で調査官が会社や自宅に来る「実地の調査」では、原則として、調査の開始日時・対象税目・対象期間などが事前に通知されます(国税通則法74条の9)。通知は原則として電話で行われ、行政指導として届くお尋ねの文書とは手続がまったく別です。事前通知を受けた場合の動き方は税務調査の事前通知を受けたときの顧問先への説明文例を参照してください。

お尋ねの主な種類と、税務署が確かめたいこと

お尋ねの文書名や回答用紙の項目は、税目や時期、税務署によって異なります。ここでは実務でよく届く類型ごとに「税務署が何を確かめたいのか」を整理します。回答するときは、手元に届いた文書の項目と回答期限を必ず優先してください。

類型

届くきっかけの例

税務署が確かめたいこと

関わる申告

事業に関するお尋ね

開業の届出、取引先などからの資料

事業の有無・内容・売上規模

所得税・消費税の確定申告

不動産などの購入に関するお尋ね

不動産の取得

買入価額と、購入資金の出どころ

贈与税など

譲渡(売却)に関するお尋ね

不動産・株式などの売却

売却価額・取得費・譲渡費用

所得税(譲渡所得)

相続についてのお尋ね

死亡の届出に基づく通知

相続税の申告が必要かどうか

相続税

事業に関するお尋ね

事業を始めた人や、事業収入があると見られる人に届くことがある文書です。聞かれる項目は文書によって異なりますが、事業の有無や内容、始めた時期、売上の規模などを確かめる趣旨のものです。申告書を出していない人に申告義務の有無を確かめるための情報提供の依頼であれば、先に見た通達1-2の(3)の行為に当たります。

回答では、事業の実態をそのまま書きます。事業を始めたなら開始日と内容を、副業程度で申告が不要と考えるなら、その根拠(収入と経費の概算)を書きます。開業したのに届出がまだなら、回答とあわせて開業届の書き方と提出期限も確認しておくと、その後の手続がそろいます。

不動産などの購入・売却に関するお尋ね

不動産を買ったときに届く文書では、買入価額や支払方法とともに、購入資金をどう用意したか(自己資金・借入・親族からの援助など)の記入を求められることがあります。親から資金援助を受けているなら、贈与税の申告が必要かを一緒に確認します。贈与税の申告書の書き方は贈与税の申告書の書き方と記入例にまとめています。

売却したときに届く文書は、譲渡所得の申告が必要かどうかを確かめるためのものです。売却価額だけでなく、取得費(買ったときの価額)や仲介手数料などの譲渡費用を書けるよう、売買契約書や領収書を用意します。売却益が出ない場合も、その計算を書いて回答しておくと、後の確認が減ります。

相続についてのお尋ね

相続税法58条により、市町村長は死亡届を受理したとき、亡くなった人が持っていた土地・家屋の固定資産税の登録事項などを税務署長に通知することになっています(e-Gov法令検索「相続税法」第58条)。こうした情報をもとに、相続税の申告が必要かどうかを確かめるために届くのが「相続についてのお尋ね」です。

国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で作成した「相続税の申告要否検討表」は、お尋ねの提出に代えて税務署に提出できます。住所・氏名欄は手書きでも差し支えないとされています(国税庁 相続税の申告要否判定コーナー FAQ 6-1)。PDFをe-Taxで送ることもでき、手続名は「相続についてのお尋ね(相続の申告要否検討表)」です(国税庁「e-Taxで送信する手順について」)。ただし検討表は申告書ではなく、結果は概算です。基礎控除との差が小さい場合は、財産の評価を詰めてから判断します。基礎控除の計算は相続税はいくらからかかるか(基礎控除の計算と申告要否の判断)で解説しています。

海外取引などその他のお尋ね

このほか、海外との送金や取引の内容、申告書と税務署が持つ資料との食い違いを確かめる文書が届くこともあります。様式は案件ごとに違うため、聞かれている項目を一つずつ表にして、手元の資料(通帳、契約書、取引明細)と突き合わせてから回答するのが確実です。

回答は義務か|放置した場合・期限に遅れる場合の考え方

「お尋ねに答えなくても罰則はない」と言い切る説明を見かけますが、文書の性質によって答えが変わるため、分けて考える必要があります。

行政指導への協力は任意。従わないことによる不利益扱いは禁止

行政手続法32条は、行政指導の内容は相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであり、従わなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと定めています(e-Gov法令検索「行政手続法」第32条)。国税通則法74条の14第2項は、税務の行政指導について行政手続法の一部の規定(書面の交付など)を適用除外にしていますが、32条は除外の対象に入っていません。

ただし申告義務は回答の有無と関係なく残る

お尋ねに答えるかどうかと、申告が必要かどうかは別の問題です。申告が必要なのに出していなければ、回答しなくても申告義務はそのまま残ります。期限後の申告や修正申告になれば、延滞税や加算税の問題が生じます。税務署が必要と判断すれば、行政指導ではなく法律に基づく調査で改めて確認される可能性もあります。

調査では、正当な理由なく質問に答えなかったり、帳簿書類の提示・提出に応じなかったり、偽りの答弁をしたりすると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(国税通則法128条、一般納税者向けFAQ 問3)。お尋ねの段階で事実を整理して答えておくほうが、結果として本人の手間も少なく済むことが多いと考えます。

自主的に直せば過少申告加算税はかからない

FAQ問2は、行政指導に基づいて自主的に修正申告書を出した場合、延滞税は納める場合があるものの、過少申告加算税は課されないとしています。当初の申告が期限後申告だった場合は、無申告加算税が原則5%課されます。通達1-2も、行政指導だけをきっかけにした修正申告や期限後申告は、更正や決定を「予知して」したものに当たらないと明記しています。お尋ねで誤りに気づいたときは、早めに自分から直すのが合理的です。

回答期限に間に合わないとき

文書には「○月○日までにご回答ください」と期限が書かれているのが一般的です。資料集めに時間がかかる場合は、期限前に文書記載の担当者へ連絡し、「資料を確認中のため○日ごろに回答したい」と伝えておきます。相続のように、遺産の全体像がつかめるまで時間がかかる案件では、分かっている範囲で一度回答し、残りを後日補う形にできないか、担当者に相談してみる価値があります。黙って期限を過ぎるのが、もっとも誤解を生みやすい対応です。

回答書の書き方|押さえる5つの原則

回答用紙が同封されていれば、その様式に書くのが基本です。欄が足りないときは「別紙のとおり」と書いて、A4の別紙を添えます。どの類型でも、次の5点を守ると、追加の問い合わせが減ります。

  1. 聞かれた項目にだけ答える:質問されていない取引の説明や、感想・事情の長い説明は書かない。必要なら税務署から改めて聞かれます。
  2. 金額・日付は資料から転記する:記憶で書かず、契約書・通帳・領収書の数字を写す。概算なら「概算」と明記する。
  3. 根拠資料の写しを添付する:売買契約書、金銭消費貸借契約書、通帳の該当ページなど。原本は送らない。
  4. 結論を一文で書く:「申告は不要と考えます。理由は〜」「〇年分の確定申告で申告済みです」と、最初に結論を置く。
  5. 控えを残す:回答書と添付資料をコピーし、提出日・提出方法(郵送・持参・e-Tax)を記録する。後で調査に進んだときの説明の土台になります。

分からない項目を空欄にするか推測で埋めるか迷ったら、空欄のまま「現在確認中」と書きます。推測で書いた数字が後で資料と食い違うと、かえって説明が必要になります。回答用紙は本人あての様式なので、本人の名前で出すのが基本です。税理士が作成を手伝った場合は、事務所名と連絡先を書き添えておくと、問い合わせが事務所に来るようになります。

種類別の回答文例|そのまま使える5例

回答用紙の自由記載欄や別紙に書く文例です。【 】を差し替えて使ってください。各例のあとに、実務で起きやすい「うまくいかない例」と直し方を添えています。

文例1:事業に関するお尋ね(副業で申告不要と考える場合)

【税務署名】御中
【回答日】
住所:【住所】 氏名:【氏名】 電話:【電話番号】

【文書の日付】付のお尋ねについて、下記のとおり回答いたします。

1 事業の状況
 【令和○年○月】から、会社員の副業として【事業内容】を行っています。
2 収入と経費(【令和○年】1月~12月の見込み)
 収入:【金額】円(取引先からの入金記録より集計)
 経費:【金額】円(領収書より集計)
 所得:【金額】円
3 申告の要否についての考え
 給与以外の所得が20万円以下のため、所得税の確定申告は不要と考えています。
 所得の見込みが変わった場合は、期限内に確定申告いたします。
添付:入金記録の写し、経費の集計表

うまくいかない例→直し方:「趣味程度なので申告していません」とだけ書くと、規模が分からず追加の問い合わせが来ます。収入と経費の数字、集計の根拠を必ず書きます。なお給与所得者の20万円以下の判定は所得税の話で、住民税の申告は別に必要になる場合があります。顧問先には、その点も添えて伝えます。

文例2:不動産の購入に関するお尋ね(資金の内訳)

【物件の所在地】の【土地・建物】の取得について回答いたします。

1 取得日:【令和○年○月○日】(売買契約日:【令和○年○月○日】)
2 買入価額:【金額】円(売買契約書のとおり)
3 購入資金の内訳
 (1) 自己資金(預金):【金額】円
 (2) 借入金(【金融機関名】住宅ローン):【金額】円
 (3) 父【氏名】からの贈与:【金額】円
4 贈与税の申告
 (3)について、【令和○年分】の贈与税の申告を【令和○年○月○日】に提出しました。
添付:売買契約書、金銭消費貸借契約書、贈与税申告書の控えの写し

うまくいかない例→直し方:資金の合計が買入価額と一致しないまま出すと、差額の出どころを必ず聞かれます。諸費用を含めるかどうかも含め、合計が買入価額(または支払総額)と一致することを確かめてから出します。親族からの援助を「借りた」と書く場合は、借用書と返済の記録があるかを先に確認します。

文例3:不動産の売却に関するお尋ね(申告する予定の場合)

【物件の所在地】の【土地・建物】の譲渡について回答いたします。

1 譲渡日:【令和○年○月○日】(引渡日)
2 譲渡価額:【金額】円
3 取得費:【金額】円(【取得年】取得時の売買契約書による)
4 譲渡費用:【金額】円(仲介手数料・印紙代)
5 申告の予定
 【令和○年分】の所得税の確定申告で、譲渡所得として申告する予定です。
添付:譲渡時・取得時の売買契約書、仲介手数料の領収書の写し

うまくいかない例→直し方:取得時の契約書が見つからないからと取得費の欄を空けたまま「不明」とだけ書くと、計算の見通しが伝わりません。資料を探している最中なら「取得時の資料を確認中。○月までに判明分を報告します」と書き、見つからない場合の扱いは税理士と相談して決めます。

文例4:相続についてのお尋ね(申告不要と考える場合)

被相続人【氏名】(【令和○年○月○日】死亡)の相続について回答いたします。

1 法定相続人:【人数】人(【続柄を列挙】)
2 遺産の概要(【評価の基準日・方法】)
 土地・建物:【金額】円(固定資産税評価額・路線価による概算)
 預貯金:【金額】円(相続開始日の残高証明書による)
 その他:【金額】円
 債務・葬式費用:【金額】円
3 申告の要否
 課税価格の合計額が基礎控除額【金額】円を下回るため、申告は不要と考えます。
 国税庁の相続税の申告要否判定コーナーで作成した「相続税の申告要否検討表」を添付します。

うまくいかない例→直し方:預貯金を通帳の現在残高で書いてしまうのはよくある誤りです。死亡日時点の残高で書きます。名義は家族でも実質は亡くなった人の財産である預金や、死亡保険金の非課税枠を超える部分を落とすと、判定そのものが変わります。基礎控除との差が小さいときは、申告不要と書く前に税理士の確認を入れます。

文例5:お尋ねで申告の誤りに気づいた場合

【文書の日付】付のお尋ねについて回答いたします。

ご照会の【取引内容】について確認したところ、【令和○年分】の確定申告で
【収入・所得の種類】【金額】円の記載が漏れていたことが分かりました。
【令和○年○月○日】までに修正申告書を提出いたします。
提出後、あらためてご連絡いたします。

うまくいかない例→直し方:「誤りがあったかもしれません」と曖昧に書いて修正申告を出さずにいると、調査に進んだ場合に自主的な修正の扱いを受けられなくなるおそれがあります。誤りが分かったら金額を確定させ、回答とあわせて修正申告まで済ませます。

税理士が顧問先から相談を受けたときの対応手順

顧問先から「税務署から変な手紙が来た」と連絡が来たときは、次の順で進めると手戻りが少なくなります。

  1. 文書の写しをもらう:封筒と回答用紙を含めて全ページ。PDFやスマートフォンの写真で受け取り、文書の日付・発信部署・担当者・回答期限を控える。
  2. 性質を確認する:行政指導か調査かの記載を探す。不明なら担当部署に確認する。調査の事前通知なら、別の手順に切り替える。
  3. 聞かれている項目を表にする:項目ごとに「答えられる/資料待ち/判断が必要」に分ける。
  4. 資料を集める:契約書・通帳・領収書など。顧問先への依頼は、どの資料を何のために出してほしいかを一覧にして送る。資料依頼の文面は顧問先への資料依頼メール例文が使えます。
  5. 申告の要否を判断する:ここは税理士の判断。申告漏れがあれば修正申告・期限後申告の段取りを先に決める。
  6. 回答書を作り、顧問先に確認してもらう:事実関係は顧問先本人に読んでもらい、署名をもらう。
  7. 提出と記録:控えを事務所と顧問先の双方で保管し、提出日を記録する。

顧問先に最初に聞く5項目

  • 文書が届いた日と、回答期限
  • 同じ件で税務署から電話や来訪があったか
  • 文書に書かれた取引(購入・売却・相続・事業)の時期と金額の概要
  • その取引を過去の申告に入れたかどうか、本人の認識
  • 関係する資料が手元にあるか、誰が持っているか

税務AIなら、国税庁などの公的情報を根拠に、お尋ねで問われた論点(贈与税の申告要否、譲渡所得の取得費、相続税の基礎控除など)を調べて、根拠リンクつきで答えます。税理士事務所向けの使い方は税理士向けの士業AI紹介ページで紹介しています。

生成AIで回答書の下書きと顧問先への説明文を作る手順

回答書は定型的な文書なので、生成AIで下書きを作ると時間を短縮できます。ただし、AIに任せてよいのは「文章の形を整えること」までです。金額の転記、申告要否の判断、根拠条文の確認は人が行います。

進め方の4ステップ

  1. 個人情報を伏せる:氏名・住所・マイナンバー・口座番号は【顧問先A】のような記号に置き換えてから入力する。事務所としての基準は顧問先データをAIに貼ってよいかの判断基準(税理士法38条・守秘義務)で整理しています。
  2. お尋ねの質問項目と、確認済みの事実を箇条書きで渡す:AIに推測させない。
  3. 回答書の下書きと、顧問先への説明文を別々に作る:宛先が違うので、敬語と説明の深さを変える。
  4. 人が検算・確認する:金額の合計、日付、添付資料の一覧、申告要否の結論を、資料と照らして確認する。

プロンプト例1:回答書の下書き

あなたは税理士事務所の職員です。税務署から届いた「お尋ね」への回答書の下書きを作ってください。

# 条件
- 宛先:【税務署名】
- お尋ねの種類:【例:不動産の購入に関するお尋ね】
- 聞かれている項目:【回答用紙の項目を箇条書きで貼る】
- 確認済みの事実:【取得日・金額・資金の内訳などを箇条書き】
- 申告の状況:【例:贈与税は令和○年○月○日に申告済み】
- 添付する資料:【資料名を列挙】

# 書き方
- 聞かれた項目にだけ、番号を振って答える
- 冒頭に結論を1文で書く
- 金額は私が渡した数字だけを使い、計算や補完をしない
- 不明な項目は「確認中」と書き、推測で埋めない
- 最後に、資金の合計が買入価額と一致しているかを確認した結果を別に示す

うまくいかない例→直し方:「回答書を書いて」とだけ頼むと、AIはもっともらしい金額や「申告不要です」という結論を補ってしまうことがあります。上のように「渡した数字だけを使う」「推測で埋めない」と明記し、合計の一致確認も出力させると、見落としに気づきやすくなります。

プロンプト例2:顧問先への説明文

税務署から顧問先に「【お尋ねの種類】」が届きました。顧問先(【個人事業主・相続人など】、税務に詳しくない方)へ送るメールを作ってください。

# 伝えること(この順番で)
1. 文書の性質:【行政指導として届いた確認の文書であり、税務調査の通知ではないこと】
2. 事務所の見立て:【例:申告が必要かどうかを確認すれば、回答書の提出で終わる見込み】
3. お願いしたい資料:【資料名と、何のために使うかを1行ずつ】
4. 期限:回答期限は【日付】。資料は【日付】までにお送りください
5. 誤りが見つかった場合:自主的に直せば過少申告加算税はかからないこと

# 条件
- 400字以内、専門用語には一言の説明を添える
- 不安をあおる表現(「罰則」「調査」など)を見出しや冒頭に置かない
- 断定できないことは「〜と考えています」と書く

うまくいかない例→直し方:AIは「ご安心ください、問題ありません」と言い切る文面を作りがちです。事務所がまだ判断していない段階で断定すると、後で申告が必要だと分かったときに説明が苦しくなります。「見込み」「確認後にお伝えします」と、判断の段階に合った言い方に直します。

AIに任せてはいけないところ

  • 申告が必要かどうかの最終判断(基礎控除・20万円以下などの判定を含む)
  • 財産の評価額や取得費の計算
  • 条文・通達・様式名の引用(必ず国税庁やe-Govの原文で確認する)
  • 税務署への提出そのもの

まとめ|お尋ねは「性質の確認→事実の整理→根拠つきの回答」

税務署のお尋ねは、多くが行政指導として届く確認の文書です。まず調査か行政指導かを文書の記載で確かめ、聞かれている項目を表にして、資料で裏付けられる事実だけを回答します。行政指導への協力は任意で、従わないことを理由とした不利益な扱いは禁止されていますが、申告義務は回答の有無に関係なく残ります。誤りに気づいたら、自主的に修正申告するのが負担のいちばん軽い道です。

回答書や顧問先への説明文の下書きは生成AIで時短できます。ただし数字の転記・申告要否の判断・根拠の確認は人が行う、という線引きを事務所で決めてから使いましょう。

参考文献

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