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秘密保持契約書(NDA)ひな形無料5種|Word・PDF/相互・M&A対応

秘密保持契約書(NDA)のひな形を、場面別に5種類(Word・PDF)用意しました。相互型(双方向)・一方向型・業務委託の検討段階・M&A/資本提携の検討・簡易版の5つで、登録不要でそのままダウンロードできます。

「機密保持契約書」「NDA(Non-Disclosure Agreement)」と呼ばれることもありますが、中身は同じ契約です。経済産業省が Word で公開している秘密保持契約書・誓約書の参考例との違いと、従業員の入社時・退職時に使う秘密保持誓約書の例文もあわせて載せています。

書き方の結論は3つです。秘密情報の範囲を「表示」や「一覧」で特定すること、除外事由・開示してよい相手・返還と消去をそろえること、そして有効期間と終了後の存続期間を分けて書くことです。秘密保持契約書は、単独なら原則として収入印紙は要りません。

この記事で分かること

  • 場面別の秘密保持契約書テンプレート5種(Word・PDF)
  • 秘密保持契約書・機密保持契約書・NDA・誓約書の違い
  • 経済産業省の参考例(Word)と本記事のひな形の使い分け
  • 入社時・退職時の秘密保持誓約書の例文と、競業避止義務との違い
  • 秘密情報の定義・除外事由・目的外使用・返還と破棄・有効期間の書き方
  • 不正競争防止法の「営業秘密」(2条6項)とNDAの関係
  • 相互型と一方向型の選び方、業務委託の検討やM&Aで足す条項
  • 収入印紙が要らない理由と、印紙が必要になる例外
  • 相手方のNDAをAIでチェックする観点と、AIに入れてよい情報の線引き

秘密保持契約書(NDA)テンプレート無料ダウンロード(5種類)

双方が資料を出し合うなら01の相互型、自社だけが情報を渡すなら02の一方向型を選んでください。外注先の選定前は03、株式譲渡や出資の検討は04、打合せで資料を見せる程度なら05が近い形です。

記入例の会社名・日付は架空のものです。ダウンロードしたファイルは記入欄が空欄になっています。ほかの書式は無料の書式テンプレート一覧から探せます。

秘密保持契約書と機密保持契約書・NDAの違い

「秘密保持契約書」と「機密保持契約書」は、呼び方が違うだけで同じ契約です。法律で決まった名称はなく、印紙税の扱いも題名ではなく書かれている内容で判断されます(国税庁 No.7100)。英語の略称では NDA(Non-Disclosure Agreement)や CA(Confidentiality Agreement)と呼ばれます。

呼び方

中身

主な場面

秘密保持契約書

当事者双方が署名・記名押印して結ぶ契約

取引・提携の検討、業務委託、M&A

機密保持契約書

同じ(「機密」と呼ぶだけで違いはない)

同じ

NDA・CA

同じ契約の英語略称

外資系企業や海外との取引で多い

秘密保持誓約書(機密保持誓約書)

従業員や見学者などが一方的に差し入れる誓約

入社時・プロジェクト参加時・退職時・工場見学時

社内で「機密保持契約書」に統一しているなら、ダウンロードしたテンプレートの表題と、本文の「秘密情報」を「機密情報」に置き換えて使えます。定義の条文とほかの条文で呼び方が混ざると解釈の争いのもとになるので、Word の置換機能で一括して変えてください。

誓約書は相手が差し入れる形なので、会社側の義務は書かれません。取引先と資料を出し合うなら契約書、従業員から受け取るなら誓約書と分けて考えます。従業員向けの例文は後半の「入社時・退職時の秘密保持誓約書」に載せています。

秘密保持契約書の記載事項と書き方

秘密保持契約書に法定の様式はありませんが、欠けると揉めやすい条文はおおむね決まっています。経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」の参考資料2(各種契約書等の参考例)にも、取引先との検討段階で使う秘密保持契約書の例が載っています(経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」)。

項目

必須/任意

根拠・参考

注意点

当事者・目的

必須

—

「〇〇の検討」と目的を特定する。目的外使用の禁止の前提になる

秘密情報の定義

必須

経産省ハンドブック第3章

「一切の情報」ではなく、表示・別紙の一覧・保管場所で特定する

除外事由

必須

経産省 参考資料2 第4

公知・既知・独自開発・第三者から適法に取得、の4類型(公知は2つに分ける)

秘密保持義務・開示できる相手

必須

—

役員・従業員・専門家への開示と、法令による開示を書いておく

目的外使用の禁止

必須

—

複製の範囲もここで決める

返還・破棄・消去

必須

経産省ハンドブック第3章

電子データは消去と「消去した旨の報告」まで

有効期間・存続条項

必須

—

終了後も秘密保持が何年続くかを別に書く

損害賠償・差止め

任意(入れるのが通例)

民法416条・420条、不正競争防止法3条・4条

違約金を置くなら額の妥当性に注意

準拠法・管轄

任意(入れるのが通例)

民事訴訟法11条

管轄の合意は書面(電磁的記録を含む)で

秘密情報は「表示」か「一覧」で特定する

いちばん多い失敗は、秘密情報を「本件に関して開示された一切の情報」と書いてしまうことです。経済産業省のハンドブックは、対象を「○○で開示されたすべての情報」のように広く書くと、公知の情報が混ざって範囲が不明確になる懸念があるとして、「秘密である旨を明示したもの」とする方法や、別紙で一覧にして更新する方法を例に挙げています(経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」第3章3-4(3))。

テンプレートでは、書面やデータは「秘密である旨の表示」、口頭や画面共有は「開示の際に告げ、〇日以内に概要を書面で通知」で特定しています。受け取る側も義務の範囲がはっきりするので、中立的な書き方です。

除外事由は5号でそろえる

秘密情報に当たらない情報として、次の5つを並べるのが一般的です。経済産業省の参考例も同じ5つを挙げ、受け取った側が根拠を書面で立証できる場合に限って除外する形にしています。

  1. 開示を受けた時に既に公知だった情報
  2. 開示の後に、受領者の責めによらず公知になった情報
  3. 開示を受けた時に既に受領者が正当に持っていた情報
  4. 正当な権限のある第三者から、秘密保持義務を負わずに適法に取得した情報
  5. 開示を受けた情報によらずに独自に開発した情報

3号と5号は後から争いになりやすい部分です。受け取る側は、受領前からの資料や開発記録を日付の分かる形で残しておきましょう。

開示してよい相手と目的外使用

テンプレートでは「知る必要がある役員・従業員」と「守秘義務を負う弁護士・公認会計士・税理士などの専門家」への開示を認め、その人たちの行為は受け取った会社が責任を負う形にしています。裁判所や行政機関の命令による開示の扱いも書いておきます。

目的外使用の禁止は、見積の検討で受け取った業務フローを別の顧客への提案に流用する、といった使い方を止める条文です。前提として目的を具体的に書いておきます。

返還・破棄は「消去の報告」まで書く

電子データは返還しても相手の手元に複製が残ります。ハンドブックも、消去義務に加えて消去した旨の報告義務や証明義務を設けることが有効としています。テンプレートでは消去完了の書面を出す条文を置き、法令上の保存義務があるものと自動バックアップだけを例外にしました。

有効期間と存続条項は分けて書く

「本契約の有効期間は1年」とだけ書くと、1年たった瞬間に秘密保持義務も消えてしまいます。検討が終わった後こそ情報が残るので、契約の有効期間と、終了後に秘密保持義務が続く期間(例:3年)を分けて書きます。テンプレートの01は、開示の際に営業秘密である旨を明示した情報について、営業秘密に当たる間は義務が続くとする条文も入れています。

経済産業省の参考例の注記では、提携を検討している事実そのものを秘密にする場合、その期間は他の秘密情報より短く、6か月〜2年程度とすることが一般的とされています。

損害賠償・差止め・管轄

損害賠償は「違反によって相手方に生じた損害を賠償する」とするのが中立的な書き方です。違約金(損害賠償額の予定)を定めることもできますが(民法420条)、情報の価値に比べて高すぎる額は交渉で揉めやすくなります。漏えいは起きてからでは取り返しがつかないため、違反のおそれがある段階で差止めを請求できる条文も入れておきます。

管轄の合意は第一審の裁判所に限り、書面(電磁的記録を含む)ですることが必要です(e-Gov法令検索「民事訴訟法」第11条)。「専属的合意管轄」と書いておくと、他の裁判所に訴えられる余地を減らせます。

経済産業省の秘密保持契約書ひな形(Word)と本記事のテンプレートの違い

経済産業省は「秘密情報の保護ハンドブック」の参考資料2「各種契約書等の参考例」を Word 形式で公開しています(2024年2月改訂版)。経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」のページからダウンロードできます。「秘密保持契約書 経済産業省 word」で探している方が使うのは、このファイルです。

参考資料2には、次の7つの例が入っています。

  1. 秘密情報管理に関する就業規則(抄)
  2. 秘密情報管理規程・秘密情報管理基準
  3. 秘密保持誓約書(従業員の入社時・プロジェクト参加時・退職時、他社による工場見学時)
  4. 業務提携・業務委託等の事前検討・交渉段階における秘密保持契約書
  5. 取引基本契約書(製造請負契約)(抄)
  6. 業務委託契約書(抄)
  7. 共同研究開発契約書(抄)

取引先と結ぶ秘密保持契約書は第4です。本記事のテンプレート01(相互型)と比べると、主に次の点が違います。

比べる点

経済産業省 参考資料2 第4

本記事のテンプレート01

秘密情報の範囲

開示の際に秘密である旨を明示した情報のほか、「本契約の存在及び内容その他一切の情報」。注記で、特定できるなら別紙でリスト化するなど具体的にするよう求めている

秘密である旨の表示で特定。口頭や画面共有は、開示の際に告げて〇日以内に概要を書面で通知

除外事由

5つ。受領者が書面で根拠を立証できる場合に限る

同じ5類型

第三者への開示

法令にもとづく開示を除き、相手方の書面による事前承諾が必要

知る必要のある役員・従業員と、守秘義務を負う弁護士・税理士などへの開示を認める

返還・消去

返還に加え、消去と「消去した旨」の書面報告

消去完了の書面。法令上の保存義務があるものと自動バックアップは例外

期間

有効期限は満○年で、通知がなければ自動更新。終了後の存続期間の定めはない

有効期間と、終了後に秘密保持義務が続く期間を分けて定める

違反したとき

必要な措置を直ちに講じ、損害を賠償する

損害賠償に加え、違反のおそれがある段階での差止め

使い分けの目安は次のとおりです。

  • 自社のひな形を作り直す:経済産業省の第4は条文ごとに注記で考え方が書かれているので、下敷きとして読む価値があります。
  • 相手に出してそのまま合意したい:専門家への開示や終了後の存続期間など、交渉で直されやすい点をあらかじめ入れた本記事の01が近い形です。
  • 従業員から取る:取引先向けのNDAではなく、第3の誓約書(入社時・退職時など)を使います。

どちらを使う場合も、第4の「本契約の存在及び内容」のように範囲を広げる定めは、受け取る側にとって義務が重くなります。自社が受領者の立場なら、必要な範囲かどうかを確かめてから残してください。

不正競争防止法の「営業秘密」とNDAの関係

不正競争防止法は、「営業秘密」を秘密として管理されている、事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないものと定義しています(2条6項)。秘密管理性・有用性・非公知性の3要件です(e-Gov法令検索「不正競争防止法」)。

営業秘密に当たれば、示された営業秘密を不正の利益を得る目的などで使ったり開示したりする行為が「不正競争」になり(2条1項7号)、差止め(3条)や損害賠償(4条)を求められます。ここでNDAが効いてくるのが秘密管理性です。経済産業省の「営業秘密管理指針」は、取引先に営業秘密を示す場合、営業秘密を特定したNDAを結んで秘密管理の意思を明らかにするのが典型的な方法だとしています(経済産業省「営業秘密管理指針」(2025年3月改訂))。

比べる点

NDA(契約)

不正競争防止法(営業秘密)

守られる情報

契約で決めた秘密情報(営業秘密でなくてもよい)

3要件を満たす情報だけ

相手

契約の相手方(その役員・従業員の行為は相手方が責任を負う)

相手方に限らず、不正に取得・使用・開示した者

主な手段

契約違反の損害賠償・差止め

差止め・損害賠償(損害額の推定規定あり)・刑事罰

立証のポイント

契約の条文と違反の事実

3要件と「不正な目的」など

NDAは、営業秘密に当たるかどうかに関係なく情報を守る「契約上の網」であり、営業秘密として守られるための「秘密管理の証拠」にもなります。指針は、NDAなしで開示しても直ちに秘密管理措置を欠くことにはならないとしつつ、立証を考えると書面が望ましいとしています。

ケース別の注意点

相互型と一方向型の選び方

提携や共同開発の検討では双方が資料を出すのが普通なので、迷ったら01の相互型を使ってください。義務が対等なので、修正を求められることも少なくなります。

一方向型は、開示者が一方だけの場面向けです。受領者だけが義務を負う片務的な契約なので、テンプレートの02は表題の下に「開示者:甲 受領者:乙」と明示し、乙が甲に出す提案書などには秘密保持義務がかからないことを条文で確認しています。受け取る側も資料を出すことになったら、相互型に切り替えるか、別に合意してください。

  • 秘密保持契約書(NDA)テンプレート「一方向型(開示者が一方)」の記入例(無料・Word・PDF)

    02一方向型(開示者が一方)

    自社だけが情報を渡し、相手は受け取るだけの場面(外部への見積依頼・提案依頼など)で使う。

    • 一方向
    • 片務
    • 開示者が一方

業務委託の検討段階:個人データは原則として渡さない

外注先の選定や見積依頼の前は、業務フローや取引件数などの資料を相手に渡します。ここで顧客名簿など個人データまで渡すと、個人情報保護法上の委託先の監督(25条)の問題が早い段階で生じます(e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。03は、検討段階では原則として個人データを提供せず、やむを得ない場合は範囲・安全管理措置・消去方法を先に書面で決める形にしています。

03は開示した資料を別紙の一覧に記録する方式で、後から業務委託契約を結んだ場合にどちらの契約が適用されるかも決めています。契約に進んだ後の書式は業務委託契約書テンプレート(請負・準委任の書き分け)を使ってください。

  • 秘密保持契約書(NDA)テンプレート「業務委託の検討段階」の記入例(無料・Word・PDF)

    03業務委託の検討段階

    外注先の選定・見積依頼の前に結ぶ。個人データの扱いと、開示した資料の一覧(別紙)つき。

    • 業務委託
    • 見積前
    • 開示情報一覧

M&A・資本提携の検討:検討の事実と接触制限

株式譲渡や事業承継、出資の検討では、決算書・税務申告書・取引先別の売上など事業の中身がほぼすべて開示されます。相互型に次の条項を足しておくと安心です。

  • 検討していること自体を秘密情報に含める(取引先や従業員に知られると事業に響くため)
  • ファイナンシャル・アドバイザーや仲介者、融資を検討する金融機関への開示を認める
  • 対象会社の役職員・株主・取引先に、窓口を通さず接触しない
  • 一定期間、対象会社の役職員を勧誘しない(一般公募への応募は除く)
  • NDAは取引の実行や独占交渉の義務を生まないことを確認する

04は、バーチャルデータルームなど指定の保管場所を通じて開示された情報を秘密情報とし、最終契約を結んだ後は最終契約の定めを優先する形にしています。

  • 秘密保持契約書(NDA)テンプレート「M&A・資本提携の検討」の記入例(無料・Word・PDF)

    04M&A・資本提携の検討

    株式譲渡・事業承継・出資の検討で、決算書や顧客情報を開示する前に結ぶ。接触制限・勧誘禁止つき。

    • M&A
    • 事業承継
    • 資本提携

簡易版を使ってよい場面

05は要点だけの1枚ものです。技術情報や顧客情報をまとめて渡す場合は、口頭開示・消去の報告・存続条項まで書いた01を使ってください。

入社時・退職時の秘密保持誓約書(従業員向けの例文)

採用時に従業員から取る秘密保持誓約書(機密保持誓約書)は、取引先と結ぶNDAとは別の書式です。経済産業省の営業秘密管理指針も、就業規則や秘密保持契約(あるいは誓約書)で守秘義務を明らかにすることを、従業員に向けた秘密管理措置の例に挙げています(営業秘密管理指針)。

入社時の秘密保持誓約書の例文

経済産業省の参考資料2 第3「従業員等の入社時」の例を土台に、条文を絞った例です。秘密情報の範囲は、自社に情報管理規程があればそちらを引用してください。

秘密保持に関する誓約書

【会社名】
代表取締役 【代表者名】 殿

私は、貴社に採用されるにあたり、次の事項を守ることを誓約いたします。

第1条(在職中の秘密保持)
私は、貴社の就業規則および【情報管理規程の名称】を守り、次の秘密情報を、貴社の許可なく第三者に開示し、または業務以外の目的に使用しません。
(1)【製品の技術資料、製造原価、価格決定に関する情報】
(2)【顧客・取引先の名簿、取引条件】
(3)【人事・財務・経営計画に関する情報】
(4)その他、貴社が秘密である旨を指定した情報

第2条(退職後の秘密保持)
前条の秘密情報は、貴社を退職した後も、第三者に開示し、または使用しません。退職時には、改めて秘密保持誓約書を提出することに同意します。

第3条(資料の返還・消去)
退職するとき、または貴社から求められたときは、秘密情報が記録された書類・電子データ(複製を含みます)を返還または消去し、その旨を書面で報告します。

第4条(前の勤務先などの秘密情報)
前の勤務先などの第三者の秘密情報を、その第三者の承諾なく貴社に開示し、または貴社の業務に使用しません。第三者に対して秘密保持義務や競業避止義務を負っている場合は、その内容を上司に申告します。

第5条(外部サービスへの入力)
貴社が利用を認めたサービス以外の生成AIやクラウドサービスに、秘密情報を入力し、またはアップロードしません。

第6条(損害賠償)
本誓約書に違反して貴社に損害を与えた場合は、その損害を賠償します。

【  年  月  日】
住所 【住所】
氏名 【氏名】

第4条は、転職者が前の勤務先の情報を持ち込むトラブルを防ぐための条文です。経済産業省の例の注記も、採用の過程で前の勤務先での秘密保持義務や競業避止義務の内容を確認し、このような条項を設けることが望ましいとしています。

うまくいかない例は、第6条を「違反した場合は違約金として【100万円】を支払う」とすることです。労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じているため(e-Gov法令検索「労働基準法」第16条)、金額を決め打ちする書き方は同条に抵触するおそれがあります。金額は書かず、実際に生じた損害を賠償する形にとどめてください。

退職時の誓約書と競業避止義務の違い

退職時の誓約書では、資料を返還・消去して手元に残っていないことの確認と、退職後も秘密を使わない約束を取ります。経済産業省の退職時の例は、有効期間を定めたうえで、秘密情報が公知になったものはその時点で義務が終わる形にしています。

混同しやすいのが競業避止義務(退職後に競合他社へ就職したり、競合する事業を始めたりしない義務)です。経済産業省の参考例の注記は、退職後の競業避止義務が有効と認められるには、企業側に守るべき利益があることを前提に、従業員の地位、地域の限定、存続期間、禁止する競業行為の範囲、代償措置などが、具体的な事情の下で合理的なものになるよう考える必要があるとしています。

比べる点

秘密保持義務

競業避止義務

制限するもの

秘密情報を漏らすこと・使うこと

競合他社への就職や競合する事業

書き方の要点

守る情報の範囲を具体的に特定する

期間・地域・対象業務を限定し、代償措置(補償手当など)を考える

経済産業省の例での扱い

誓約書の本文

注記で別条項の例として紹介(補償手当の条項例つき)

競業避止を入れるなら、秘密保持の条文とは分けて、期間(例:【6か月/1年】)・対象業務・代償を書きます。誓約書全般の書き方は誓約書テンプレート無料7種(入社・退職・身元保証)で解説しています。

秘密保持契約書に収入印紙は必要か

印紙税がかかるのは、印紙税法の課税物件表に掲げられた20種類の文書に当たる事項が書かれた文書だけです。判断は名称ではなく、書かれている内容で行います(国税庁 No.7100「課税文書に該当するかどうかの判断」)。秘密の保持と目的外使用の禁止だけを定めた契約書は、この20種類のどれにも当たらないため、原則として課税文書に当たらず、印紙は要りません。国税庁の印紙税額の一覧表(No.7140・No.7141)に、秘密保持の約束だけを内容とする文書が掲げられていないためです。

ただし、秘密保持の条文を業務委託などの契約と一体にした契約書は別です。

こんな契約書

判定の目安

秘密保持だけを定めたNDA

課税文書に当たらない(印紙不要)

請負の内容と契約金額も書いた業務委託契約書(秘密保持条項つき)

第2号文書。金額に応じた印紙が必要(国税庁 No.7102)

営業者間の継続的な売買・請負の取引条件(単価・支払方法など)も定めた基本契約書

第7号文書に当たることがある。1通4,000円(国税庁 No.7104)

事業譲渡の対価などを定めた契約書(M&Aの最終契約など)

営業の譲渡に関する契約書(第1号文書)に当たることがある(国税庁 No.7140)

電子契約(PDFに電子署名など)で締結

電磁的記録は文書に含まれず、印紙税はかからない(国税庁 質疑応答事例)

テンプレート5種は秘密保持の事項だけを定めているため、収入印紙の欄は設けていません。取引条件を書き足したら判定し直してください。文書の種類ごとの税額は契約書の収入印紙はいくら?印紙税額の早見表にまとめています。

Word・PDFで締結するときの実務の注意

  • 交渉中は Word:変更履歴を残して送り、修正箇所が相手に分かるようにします。送る前に、社内のコメントや作成者などの情報を「ドキュメント検査」で消しておきます。
  • 相手方の Word を使うとき:自社のひな形と Word の「比較」機能で突き合わせ、変えられた条文を確認します。
  • 条文が固まったら PDF:PDF は署名に回す段階で使います。交渉中の版を PDF にすると、修正のやり取りが手間になります。
  • 紙で締結する:2通作って各自1通を保有します。秘密保持だけの契約書なら収入印紙は貼りません。
  • 電子契約で締結する:電子契約サービスや PDF への電子署名で結んだものは電磁的記録なので、印紙税はかかりません。

よくある間違いと直し方

よくある書き方

何が問題か

直し方

「開示された一切の情報を秘密とする」

公知情報が混ざり、どこまで守るかが不明確

表示・別紙一覧・保管場所で特定する

除外事由がない

受け取る側が、自社で前から持っていた情報まで使えなくなる

公知・既知・第三者から取得・独自開発を入れる

有効期間しか書いていない

契約終了と同時に秘密保持義務も終わる

存続条項で「終了後〇年間」を別に書く

第三者への開示を一律に禁止

顧問弁護士や税理士に相談できず、検討が進まない

守秘義務を負う専門家への開示を認める

返還だけで消去がない

メールやクラウドに複製が残る

消去と「消去した旨の報告」を入れる

一方向型なのに受領者も資料を出している

受領者の情報が守られない

相互型に切り替えるか、別途合意する

受け取った資料をそのまま生成AIに入力

第三者への開示や目的外使用に当たるおそれがある

社内ルールで入力できる情報と使える環境を決める

最後の点は見落とされがちです。営業秘密管理指針も、情報が生成AIの提供事業者などの第三者に提供される場合は秘密管理性が否定される場合があり得ると注記しています。事務所や社内でのAIの使い方はChatGPTの情報漏洩対策(士業事務所が顧問先情報を守る7手順)や、顧問先データをAIに貼ってよいかの判断基準(税理士法38条・守秘義務)で整理しています。

AIで秘密保持契約書を下書き・チェックする方法

ひな形の修正や、相手から届いたNDAのチェックはAIに下書きさせると早くなります。相手の社名や開示情報の中身は入力せず、【】のプレースホルダーに置き換えてください。1つ目は、テンプレートを案件に合わせて直すプロンプトです。

案件に合わせてひな形を直すプロンプト

次の秘密保持契約書(相互型)を、以下の条件に合わせて修正してください。
条文は常体(である調)で、条番号と引用している条番号のずれがないようにしてください。

【目的】【甲乙で検討する取引の内容】
【開示される主な情報】【技術資料/顧客情報/財務資料 など】
【有効期間】【1年】 【終了後の存続期間】【3年】
【口頭で開示する情報の有無】【あり】
【個人データを渡す予定】【なし】

修正した箇所は、最後に「変更点」として箇条書きで示してください。
(ここにテンプレートの条文を貼る)

相手方から届いたNDAをAIでチェックする観点

2つ目は、相手方から届いたNDAを自社の立場でチェックするプロンプトです。8と9は、AIの利用が広がってから見落とされやすくなった観点です。

あなたは企業法務の担当者です。次の秘密保持契約書を、当社(【開示者/受領者/双方】)の立場で確認してください。
次の観点ごとに「問題なし/要修正/要確認」と理由、修正案の条文を表で示してください。
1. 秘密情報の定義は特定されているか(「一切の情報」になっていないか)
2. 除外事由(公知・既知・第三者から取得・独自開発)はそろっているか
3. 役員・従業員・専門家への開示が認められているか
4. 返還・消去と、その報告の定めがあるか
5. 有効期間と、終了後の存続期間が書かれているか
6. 損害賠償・違約金が一方に偏っていないか
7. 管轄裁判所・準拠法は当社にとって不利でないか
8. 生成AIやクラウドサービスへの入力の扱いが書かれているか(第三者への開示に当たるか)
9. 契約の存在や内容そのものが秘密情報に含まれていないか
(ここに契約書の条文を貼る)

汎用のAIでも論点の洗い出しはできますが、条番号の参照ずれや法令の条番号の誤りはよく起こるので、出力は必ず原文と照らしてください。レビュー全般のプロンプトと検証手順は契約書レビューをAIで効率化するプロンプト集にまとめています。士業AIの法律AI(弁護士・法務向け)は e-Gov の法令情報を参照して根拠を示す作りなので、条番号を確かめながら直したい場面で使えます。

機密情報をAIに入れるときの線引き

相手方から届いたNDAそのものが、秘密情報に当たることがあります。経済産業省の参考例(第4)は「本契約の存在及び内容」を秘密情報に含めており、同じ定めのNDAをそのまま外部のAIサービスに貼ると、それ自体が第三者への開示と言われかねません。営業秘密管理指針も、情報が生成AI提供事業者などの第三者に提供される場合は秘密管理性が否定される場合もあり得ると注記しています。

情報

AIへの入力

理由・やり方

自社のひな形・公開されている参考例

入力してよい

秘密情報を含まない

相手方から届いたNDAの条文

社名・取引内容を【】に置き換え、入力データが学習に使われない契約・設定の環境で

「契約の存在及び内容」が秘密情報に含まれていることがある

NDAにもとづいて受け取った資料(技術資料・財務資料など)

原則として入力しない

目的外使用や第三者への開示に当たるおそれ。必要なら開示者の書面による承諾を取る

個人データを含む資料(顧客名簿など)

入力しない

個人情報保護法上の扱いを先に整理する必要がある

自社が開示する側なら、NDAに「受領者は、開示者の書面による承諾なく、秘密情報を外部の生成AIサービスに入力しない」といった一文を足しておくと、後で揉めにくくなります。また、自社の契約書ではなく他社の契約書を報酬を得てレビューする仕組みを考えるときは、弁護士法72条とAI(非弁行為の線引き)を確認してください。

まとめ

  • 「機密保持契約書」「NDA」も同じ契約。題名と本文の呼び方はそろえる
  • 秘密保持契約書は、秘密情報を「表示」や「一覧」で特定し、除外事由・開示できる相手・目的外使用の禁止をそろえる
  • 返還だけでなく電子データの消去と報告、有効期間とは別の存続期間を書く
  • NDAは営業秘密(不正競争防止法2条6項)の秘密管理性を示す証拠にもなる
  • 迷ったら相互型。一方向型は開示者が一方だけのときに使う
  • 経済産業省の参考例(Word)は自社ひな形の下敷きに。従業員からは入社時・退職時に誓約書を取り、違約金は書かない
  • 相手方のNDAをAIに入れる前に、契約の存在・内容が秘密情報に含まれていないかを確かめる
  • 秘密保持だけの契約書は原則として印紙不要。取引条件を書き足したら判定し直す

本記事は2026年10月時点の法令・公的資料にもとづいています。テンプレートは一般的な内容のひな形であり、取引の内容によって必要な条文は変わります。個別の事情は弁護士などの専門家へご相談ください。

参考文献

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