誓約書テンプレート無料7種|書き方・Word/PDF/身元保証書つき
誓約書のテンプレートを7種類、Word・PDFの2形式で無料配布しています。会員登録は不要です。入社時の基本の誓約書、在職中の秘密保持、退職時の秘密保持・競業避止、身元保証書、SNS・情報機器の利用、反社会的勢力の排除、ハラスメント防止まで、会社が従業員から受け取る場面ごとにそろえました。
書き方の結論は3つです。誓約する事項は「何をしないか・何をするか」を具体的に書き、守れる範囲にとどめること。違反したときの扱いは「就業規則に従う」「法令に従い賠償責任を負う」までにして、違約金や賠償額をあらかじめ決めないこと(労働基準法16条)。身元保証書は、極度額(責任の上限額)と5年以内の期間を必ず書くことです。
この記事で分かること
- 用途別に選べる誓約書テンプレート7種類(Word・PDF)と選び方、テンプレートにない場面での直し方
- 誓約書の記載事項と、欄ごとの書き方(必須・任意と根拠)、入社誓約書と退職時の誓約書の記入例
- 競業避止・身元保証・反社会的勢力・ハラスメントの誓約で押さえる法律上の線
- 誓約書に書いても効力が限られる条項と、提出を拒まれたときの対応
- 誓約書の保管期間、個人間でお金の支払いを約束する誓約書の書き方
- AIで誓約書を下書き・チェックするときのプロンプト例
誓約書テンプレート無料ダウンロード(7種類)
入社時にまとめて1枚で済ませるなら01、情報管理を条文で固めたいなら02、退職者には03を選ぶのが目安です。身元保証人を立ててもらう会社は04を、01と組み合わせて使ってください。
FREE TEMPLATE
誓約書テンプレート 7種類
- Word・PDF
- 登録不要・無料
- 商用利用OK
労働基準法16条(賠償予定の禁止)・民法465条の2(個人根保証の極度額)・身元保証ニ関スル法律を e-Gov 法令検索で確認
書式を埋めるときの「これで合ってる?」に、根拠つきで答えます
士業AIは、経理・事務の毎日の調べ物を引き受けるAIです。専門知識がなくても、質問を入力するだけで使えます。
- Excelの関数や操作を聞く(例:「SUMIFSで複数条件の集計をしたい」)
- 送付メールや社内文書を作る・添削する
- 税務・会計・法務は専門AIに切り替え(有料プランのPlusモードで税理士試験 簿記論・公認会計士試験 財務会計論・司法試験 民法とも正答率100%)
ご利用条件:無料・商用利用可・改変可。テンプレート自体の再配布や販売はご遠慮ください。記載内容の最終確認はご自身または専門家にて行ってください。利用条件/ほかの書式テンプレート
場面 | テンプレート | ポイント |
|---|---|---|
入社時(基本) | 01 入社誓約書 | 規程の遵守・経歴の真実性・秘密保持・懲戒を1枚に |
入社時・異動時(情報管理) | 02 秘密保持誓約書 | 秘密情報の範囲と除外、持出し禁止、返還を条文で定める |
退職時 | 03 退職時の秘密保持・競業避止 | 期間1年・地域・業務を限定し、代償の欄つき |
入社時(保証人) | 04 身元保証書 | 極度額・5年の期間・会社の通知義務を条文化 |
PC・スマホの貸与時 | 05 SNS・情報機器の利用 | 貸与機器の欄、私的SNS・生成AIへの入力ルール |
入社時(コンプライアンス) | 06 反社会的勢力でないこと | 属性と行為の両面から表明、不当要求の報告 |
研修後・管理職登用時 | 07 ハラスメント防止 | 社外の人への言動、相談者の保護、確認資料のチェック欄 |
雇用契約そのものの条件(賃金・労働時間など)は誓約書ではなく、雇用契約書や労働条件通知書で定めます。雇用契約書の書き方は雇用契約書のひな形と労働条件通知書との違いで解説しています。誓約書以外の書式は無料の書式テンプレート一覧からダウンロードできます。
Word・PDFの選び方(Excel版はある?)
7種類とも、Word(.docx)とPDFの2形式です。会社名や競業避止の地域・業務、身元保証の極度額など、文言を自社に合わせて直すならWord、文言はそのままで印刷し、空欄を手書きで埋めてもらうならPDFが向いています。Googleドキュメントで編集したいときは、Word版をGoogleドライブにアップロードして開けば使えます。
Excel版は用意していません。誓約書は条文を並べる文章の書類なので、条の追加や改行が崩れにくい文書作成ソフトのほうが扱いやすいためです。Excelが役に立つのは、誓約書そのものより「誰から・どの誓約書を・いつ受け取ったか」を管理する台帳のほうです。氏名、誓約書の種類、提出日、保管場所、身元保証書なら保証期間の満了日を1行ずつ並べておくと、受け取り漏れや更新漏れに気づけます。
ダウンロードしてから従業員に渡すまでの流れは、次の4段階です。
- 場面に合うテンプレートを選び、宛名(会社名・代表者名)を入れる
- 〇〇の空欄(03の地域・業務・代償額、04の極度額、05の貸与機器など)を埋め、自社の就業規則と矛盾しないか確かめる
- 従業員に内容と目的を説明し、質問があれば答えてから署名してもらう
- 原本を会社で保管し、控え(コピー)を本人に渡す
テンプレートにない場面の誓約書(内定時・副業・安全衛生など)
7種類にない場面でも、近いテンプレートの前文と誓約事項を差し替えれば対応できます。白紙から作るより、記載事項や違反時の書き方がそろった土台を直すほうが、書き漏れや違約金条項の混入を防げます。
場面 | 土台にするテンプレート | 直すところ |
|---|---|---|
内定承諾時 | 01 入社誓約書 | 前文を「採用内定を受けるにあたり」に変え、入社日までに提出する書類の項目を足す |
採用時の機密保持誓約書(NDA) | 02 秘密保持誓約書 | 取引先と結ぶNDAとは別物。従業員から受け取るのは02のような誓約書の形 |
副業・兼業の届出時 | 01 入社誓約書 | 本業の秘密を使わない、競合しない、労働時間を申告する、などの項目に入れ替える(後述) |
安全衛生 | 01 入社誓約書 | 「安全衛生に関する規程と作業手順を守り、保護具を着用する」などの項目を足す |
在職中の異動・昇格時 | 02 秘密保持誓約書 | 新しい部署で扱う情報の種類を第1条に書き足す |
取引先と結ぶ秘密保持契約書(NDA)と、従業員から受け取る機密保持誓約書の違いは秘密保持契約書(NDA)のひな形と採用時の誓約書の例文で詳しく比べています。入社時に集める書類全体の流れは入社手続きのチェックリストにまとめました。
誓約書の書き方|記載事項と欄ごとのポイント
誓約書は、従業員が会社に対して「一定の事項を守る」と約束する書面です。法律で様式が決まっているわけではありませんが、後から内容で争いにならないよう、次の項目をそろえるのが実務の基本です。身元保証書だけは民法と身元保証ニ関スル法律で必要な記載があります。
項目 | 必須/任意 | 根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
表題 | 任意(推奨) | ― | 「入社誓約書」「秘密保持誓約書」など、何の誓約かが分かる名前に |
宛名 | 必須 | ― | 「株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 殿」。差し入れる相手を特定する |
前文 | 任意(推奨) | ― | 入社・退職など、誓約する理由と場面を1文で |
誓約事項 | 必須 | ― | 具体的に。守れない広さ・期間にしない |
違反時の扱い | 任意 | 違約金・賠償額の予定は禁止。就業規則と法令に委ねる | |
日付 | 必須 | ― | 提出日。退職時は退職日と別に記載 |
署名・押印 | 必須(押印は任意) | ― | 本人の自署が望ましい。住所・生年月日で本人を特定 |
極度額(身元保証書) | 必須 | 「金〇〇円」と金額で。無いと保証契約は無効 | |
期間(身元保証書) | 推奨(無ければ3年) | 定めなければ3年、定めても上限5年 |
宛名は会社と代表者に
誓約書は従業員が会社へ差し入れるものなので、宛名は「株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 殿」とします。上司個人や人事担当者の名前にすると、誰に対する約束なのかがあいまいになります。本文では会社を「貴社」、従業員を「私」と呼び、条文の語尾は「〜いたします」にそろえると読みやすくなります。
誓約事項は「具体的に・守れる範囲で」
「会社の不利益になることは一切しない」のような広すぎる書き方は、何を守ればよいか分からず、いざというときに効力が認められにくくなります。「業務上知り得た顧客情報を、会社の許可なく第三者に開示しない」のように、対象と行為をはっきり書いてください。就業規則にすでにある事項を繰り返すだけなら、「就業規則を守る」の1行で足ります。
違反時の定めに違約金を書かない
労働基準法16条は、使用者が「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約」をすることを禁じています。「無断で退職したら10万円を支払う」「秘密を漏らしたら罰金50万円」といった条項は、誓約書の形をとっても無効です。テンプレートでは「就業規則に従い懲戒処分の対象となる」「法令の定めに従い損害賠償の責任を負う」という書き方にしています。
入社誓約書の記入例(見本)
テンプレート01に記入した例です。会社名・氏名は架空のもので、太字の部分が記入する欄にあたります。誓約事項の文言は、自社の就業規則と食い違わない限りそのまま使えます。
入社誓約書
株式会社みらい商事
代表取締役 佐藤 一郎 殿
私は、このたび貴社に従業員として採用されるにあたり、
下記の事項を誠実に守ることを誓約いたします。
1.貴社の就業規則その他の諸規程を守り、業務上の指示に従って、誠実に職務に励みます。
2.採用にあたり提出した履歴書、職務経歴書その他の書類の記載事項は、すべて事実と相違ありません。
(3〜7は省略)
令和8年11月1日
誓約者
住所 東京都〇〇区〇〇1丁目2番3号
氏名 鈴木 花子(自署)
生年月日 平成12年4月5日- 日付は提出した日を書きます。入社日に受け取るなら入社日と同じ日付で構いません
- 氏名は本人に自署してもらいます。押印は法律上の要件ではないため、押印欄は会社の運用に合わせて残すか消すかを決めます
- 住所・生年月日は、同姓同名の人と区別するための記載です。マイナンバーなど必要のない個人情報は書かせません
退職時のテンプレート03は、空欄の埋め方で有効性が左右されます。記入例は次のとおりです(金額・地域は例です)。
欄 | 記入例 | 書くときの注意 |
|---|---|---|
担当業務 | 法人向け会計ソフトの営業 | 実際に担当した業務を具体的に。「営業全般」のような広い書き方は避ける |
第3条の地域 | 東京都内 | 会社の営業エリアと合わせる。「全国」は理由を説明できる場合に限る |
第3条の業務 | 法人向け会計ソフトの営業の業務 | 担当業務と同じ範囲に絞る |
第4条の代償 | 金300,000円 | 退職時に別途支払うのか、在職中の手当を充てるのかを社内で決めて説明する |
日付 | 退職日またはそれより前の日 | 退職日の欄とは別に、署名した日を書く |
手書き・電子署名のどちらで受け取るか
民法522条2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面などの方式は要らないとしています。誓約書も紙に限られず、電子契約サービスなどで本人が内容を確認して同意した記録を残す方法でも受け取れます。電子で受け取るなら、本人が同意した日時と、どの版の文面に同意したかが後から分かる形で保存してください。
身元保証書だけは扱いが違います。保証契約は書面でしなければ効力を生じませんが(民法446条2項)、内容を記録した電磁的記録でした場合は書面でしたものとみなされます(同条3項)。極度額の定めにも同じルールが準用されるため(民法465条の2第3項)、電子で受け取る場合も、保証人本人が極度額を含む文面に同意したことを記録に残します。
ケース別の注意点
入社誓約書・秘密保持誓約書
厚生労働省のモデル就業規則は、採用時の提出書類に「その他会社が指定するもの」を置き、提出させる書類は目的を説明するよう求めています。誓約書を毎回提出してもらうなら、就業規則の提出書類の条に「誓約書」と明記しておくのが確実です。規程の整え方は就業規則・社内規程のドラフトとチェックをAIで行う手順も参考にしてください。
秘密保持の誓約は、不正競争防止法の「営業秘密」を守る土台にもなります。同法2条6項は営業秘密を「秘密として管理されている」「事業活動に有用な」「公然と知られていない」情報と定めており、誓約書で秘密情報の範囲を示すことは、秘密として管理していることを裏づける材料の一つです。テンプレート02は、公知の情報などを秘密情報から除く条文も入れて、義務の範囲をはっきりさせています。
退職時の競業避止は「期間・地域・業務・代償」を限定する
退職後の転職や独立を制限する競業避止義務は、職業選択の自由とぶつかるため、広すぎると無効と判断されます。経済産業省の「競業避止義務契約の有効性について」は、判例で重視される項目として次の6つを挙げています。
判断のポイント | テンプレート03での書き方 |
|---|---|
①守るべき企業の利益があるか | 秘密保持の条文とあわせ、在職中に担当した業務に絞る |
②従業員の地位 | 重要な情報に触れた役職者・担当者に限って求める |
③地域の限定 | 「〇〇県内において」と地域を書く |
④期間 | 「退職日の翌日から1年間」 |
⑤禁止する行為の範囲 | 「〇〇〇〇の業務と同種の業務」と業務を特定 |
⑥代償措置 | 「金〇〇円の支払いを受ける」欄を用意 |
期間について同資料は、1年以内は肯定的にとらえられる例が多い一方、近年は2年の期間を否定的に判断した判例も見られると整理しています。代償措置が何も無い場合は有効性を否定されることが多いとも述べているため、03では代償の金額を書く条文を入れました。退職者全員に一律に署名させるより、対象者を絞って内容を説明するほうが、トラブルになりにくいのが実務の感覚です。
退職届と一緒に受け取るとき(退職願兼誓約書)
退職届と誓約書を1枚にした「退職願兼誓約書」を使う会社もありますが、2つは性質の違う書類です。退職届は本人が退職の意思を伝える書面で、誓約書は退職後の約束を取り付ける書面です。1枚にまとめると、誓約部分への署名を拒まれたときに退職届まで受け取れない形になり、話がこじれやすくなります。
実務では、退職届は本人の書式で受け取り、誓約書(テンプレート03)は別の紙で用意するほうが扱いやすくなります。受け取るのは、貸与品やデータの返還を確認する最終出社日の前後が目安です。第1条で返還を確認する形になっているので、返還の場で一緒に説明すると話が早く済みます。本人が出す退職届の書き方は退職届・退職願のテンプレートと会社側の受理手続きで解説しています。
身元保証書は極度額と期間が要件
身元保証は、本人が将来会社に与えるかもしれない損害という「一定の範囲に属する不特定の債務」を保証するものなので、民法465条の2の個人根保証契約に当たります。2020年4月1日施行の改正民法により、極度額を定めない個人根保証契約は効力を生じません。法務省のパンフレット(保証)も、極度額は「〇〇円」などと明瞭に定める必要があると説明しています。
期間は身元保証ニ関スル法律で決まっています。期間を定めなければ3年(商工業見習者は5年)、定めても5年が上限で、長く書いても5年に短縮されます(同法1条・2条)。更新はできますが、更新後も5年が上限で、身元保証人に不利な特約は無効です(同法6条)。このため「自動的に更新する」という定めは置かず、テンプレート04は「合意した場合に限り更新」としています。
- 会社の通知義務(同法3条):本人に業務上不適任・不誠実な事跡があって保証人の責任が生じるおそれを知ったときや、任務・任地の変更で責任が重くなるときは、遅滞なく保証人に通知する
- 保証人の解除権(同法4条):通知を受けたとき、または自らその事実を知ったときは、将来に向かって解除できる
- 責任の範囲(同法5条):裁判所は、会社の監督上の過失の有無や本人の任務の変化などを考慮して賠償額を決める
なお、国税庁の印紙税額の一覧表では、債務の保証に関する契約書(第13号文書)のうち「身元保証ニ関スル法律に定める身元保証に関する契約書」は非課税とされています。身元保証書に収入印紙は不要です。
SNS・情報機器・生成AIの利用
パソコンやスマートフォンを貸与するときは、管理番号を書いた誓約書を受け取っておくと、返還や紛失時の確認がしやすくなります。テンプレート05には「会社が認めた生成AIを定められた方法で使い、秘密情報や個人情報を許可なく入力しない」という項目を入れました。社内ルールの作り方はChatGPTの情報漏洩対策と7つの手順で詳しく紹介しています。業務用機器の利用状況を確認(モニタリング)する場合は、規程で目的と範囲を定めたうえで、誓約書で了承を得ておきます。
反社会的勢力でないことの誓約
各都道府県の暴力団排除条例は、事業者に対し、契約の相手方が暴力団関係者でないことの確認や、判明した場合に解除できる特約を契約書に定めるよう努めることを求めています(例:東京都暴力団排除条例18条)。政府の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は、反社会的勢力を暴力団・暴力団関係企業・総会屋などの「属性」と、暴力的な要求行為・法的な責任を超えた不当な要求といった「行為」の両面からとらえることが重要としています。
テンプレート06はこの考え方に沿って、属性の表明と行為の禁止の両方を入れ、業務で不当な要求を受けたときに一人で対応せず会社へ報告する条文を加えました。誓約に反する事実が分かったときの扱いは「就業規則に従い懲戒処分その他の措置の対象」とし、「直ちに解雇されても異議を述べない」とは書いていません。解雇や懲戒は、労働契約法16条・15条により客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要だからです。取引先から受け取る場合は、誓約書よりも取引基本契約書に暴排条項を入れるのが一般的です。
ハラスメント防止の誓約
厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」によると、事業主にはセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントの防止措置が義務づけられています。さらに改正法(令和7年法律第63号)により、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置も、2026年10月1日から事業主の義務になりました。
テンプレート07は、社内だけでなく顧客・取引先・求職者への言動、相談者や調査協力者への不利益な取扱いの禁止、プライバシーの保護まで入れています。誓約書は研修や方針の周知とセットで使うもので、下段のチェック欄に「どの資料を確認したか」を残しておくと、会社が措置を講じた記録にもなります。
副業・兼業を認めるときの誓約書
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、裁判例上、労働時間以外の時間の使い方は基本的に労働者の自由で、会社が副業・兼業を制限できるのは次のような場合だと整理しています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
同ガイドラインは、就業規則などに届出制を定め、副業・兼業の有無と内容を確認する仕組みを設けることが望ましいとしています。誓約書を使うなら、副業を「禁止する」約束ではなく、届出の際に「本業の秘密を使わない」「競合する業務に就かない」「副業先の労働時間を申告する」「健康に支障が出たら相談する」といった、上の4つの場面に対応する約束を取るのが筋です。テンプレート01の誓約事項を入れ替えて作れます。
誓約書に書いても効力が限られる条項
誓約書は、従業員が署名すれば会社との約束として扱われます。ただ、法律で禁じられている内容や、従業員の自由を過度に縛る内容は、署名をもらっていても効力が認められません。書いても意味がないどころか、紛争になったときに会社の説明の信用を落とします。代表的なものを一覧にしました。
条項の例 | 効力が限られる理由 | 根拠 |
|---|---|---|
違反したら違約金〇万円を支払う | 労働契約の不履行について違約金や賠償額の予定をすることが禁止されている | |
会社に与えた損害は給与から差し引く | 賃金は全額払いが原則。控除できるのは法令の定めか労使協定がある場合に限られる | 労働基準法24条1項 |
退職後は期間・地域の限定なく同業に就かない | 職業選択の自由とぶつかり、範囲が広すぎると無効と判断されやすい | 経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」 |
身元保証人は損害の全額を無制限に負う | 極度額を定めない個人根保証契約は効力を生じない | 民法465条の2第2項 |
身元保証の期間は10年、自動更新 | 5年を超える部分は5年に短縮。保証人に不利な特約は無効 | 身元保証ニ関スル法律2条・6条 |
違反したら直ちに解雇されても異議はない | 解雇・懲戒の有効性は、誓約書の文言ではなく合理的な理由と相当性で判断される | 労働契約法15条・16条 |
反対に、効力が認められやすいのは「何を守るか」がはっきりしていて、会社の正当な利益(秘密情報や顧客、信用)を守るために必要な範囲にとどまる約束です。テンプレートの違反時の条項を「就業規則に従い懲戒処分の対象となる」「法令の定めに従い損害賠償の責任を負う」にしているのは、この線を越えないためです。
誓約書がなくても従業員が負う義務
誓約書を出してもらえなかった従業員が、何の義務も負わないわけではありません。合理的な内容の就業規則が周知されていれば、就業規則に定めた秘密保持や服務規律の義務は誓約書の有無にかかわらず及びます(労働契約法7条)。前述の副業・兼業ガイドラインも、労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務を負い、在職中は使用者と競合する業務を行わない義務を負うと解されていると説明しています。
一方で、退職後の競業避止は、就業規則か個別の合意で定めておかないと求めにくい分野です。誓約書が役に立つのは、在職中の義務の確認よりも、退職後の約束と、身元保証のように法律が書面を求める場面だと考えると、どの誓約書に力を入れるべきかが見えてきます。
誓約書の提出を拒まれたときの対応
誓約書に署名するかどうかは本人の意思によるため、無理に書かせることはできません。とくに退職時の競業避止は拒まれることも珍しくありません。拒まれたときは、次の順に対応するのが現実的です。
- 提出の目的と、どの条文が何を求めているかを口頭と書面で説明する
- 本人の懸念を聞き、期間・地域・業務の範囲が広すぎないか見直す
- 就業規則の提出書類・秘密保持などの規定を確認し、就業規則に定めた義務は誓約書が無くても及ぶことを伝える
- それでも提出されないときは、説明した日時と内容を記録に残す
提出を拒んだことだけを理由にした懲戒や解雇は、労働契約法15条・16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が問われ、無効と判断されるおそれがあります。対応に迷うときは、社会保険労務士や弁護士に相談してください。
誓約書の保管期間と管理
保存期間は退職日から3年以上を目安に
誓約書を名指しして保存期間を定めた条文はありません。ただ、労働基準法109条は、労働者名簿・賃金台帳と「雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」を5年間保存するよう求めています(附則143条の経過措置により、当分の間は3年)。労働基準法施行規則56条は、雇入れに関する書類の起算日を労働者の退職または死亡の日としています。
入社時の誓約書は雇入れの際に受け取る書類なので、これに準じて退職日から少なくとも3年は保存しておくのが安全です。もっとも、誓約書は法定の保存期間よりも「約束の効力が続く間」のほうが長くなることがあります。退職後も続く秘密保持の誓約や、身元保証書の保証期間中は、期間が終わるまで捨てずに残してください。
誓約書 | 保存の目安 |
|---|---|
入社誓約書・秘密保持誓約書 | 在職中+退職日から3年以上(退職後の秘密保持を定めているなら、さらに長めに) |
退職時の誓約書(競業避止つき) | 競業避止の期間が終わるまで。その後も退職日から3年以上 |
身元保証書 | 保証期間(最長5年)が終わるまで。更新した場合は更新後の期間まで |
SNS・情報機器の誓約書 | 機器の返還を確認するまで+退職日から3年以上 |
身元保証人の個人情報と期間満了の管理
身元保証書には、従業員本人だけでなく保証人の住所・氏名・続柄・電話番号が書かれています。人事書類と同じ鍵のかかる場所か、閲覧できる人を絞ったフォルダで保管し、使い道は身元保証に関する連絡に限ります。保証期間は最長5年で自動的には延びないため、満了日を台帳に書いておき、更新するかどうかを満了前に決めてください。保存方法の考え方は労働者名簿のテンプレートと保存期間も参考になります。
よくある間違いと直し方
よくある書き方 | 問題点 | 直し方 |
|---|---|---|
「違反した場合は違約金として金50万円を支払う」 | 労働基準法16条の賠償予定の禁止に当たり無効 | 「法令の定めに従い損害賠償の責任を負う」とし、金額は書かない |
「退職後いかなる同業他社にも就職しない」 | 期間・地域・業務の限定が無く、無効と判断されやすい | 「退職後1年間」「〇〇県内」「〇〇の業務」と限定し、代償を定める |
身元保証書に極度額が無い | 民法465条の2により保証契約が効力を生じない | 「極度額は金〇〇円とする」と金額で書く |
「身元保証の期間は10年とする」「自動更新する」 | 5年を超える部分は5年に短縮。保証人に不利な特約は無効 | 「本書作成の日から5年間」「合意した場合に限り更新」 |
「会社の指示には一切異議を述べない」 | 範囲が広すぎ、何を約束したのか特定できない | 守ってほしい行為を具体的に列挙し、残りは就業規則に委ねる |
「会社に与えた損害は給与から差し引く」 | 賃金全額払いの原則(労働基準法24条1項)に反するおそれ | 天引きの約束は書かず、損害の扱いは「法令の定めに従う」とする |
始末書の代わりに誓約書を書かせる | 反省・経緯の記録と、将来の約束が混ざる | 経緯は始末書・顛末書、再発防止の約束は誓約書と分ける |
不祥事の後に書いてもらう書面の違いは始末書の書き方とケース別テンプレートで整理しています。
個人間・お金の支払いを約束する誓約書の書き方
「誓約書」は会社と従業員の間だけでなく、個人同士で約束を書面に残すときにも使われます。この記事のテンプレートは会社が従業員から受け取る用途に合わせたものなので、個人間で使う場合は次の点を押さえて作り直してください。
支払いを約束する誓約書(支払誓約書)の記載事項
お金の支払いを約束する誓約書では、何の支払いなのかと、いつ・いくら・どうやって払うのかが後から読んで分かることがいちばん大切です。最低限、次の項目をそろえます。
- 宛名(支払いを受ける人)と誓約者(支払う人)の住所・氏名
- 支払う理由(「令和〇年〇月〇日に借り受けた金銭の返済として」など)
- 金額(算用数字に加えて「金参拾万円」のように大字でも書く)
- 支払期日と方法(一括か分割か、振込先、分割なら各回の金額と期日)
- 作成日と誓約者の自署
すでに負っている借金があることを認めて支払いを約束する書面は、民法152条1項の「権利の承認」にあたり、その時から消滅時効が新たに進み直す根拠にもなります。貸し借りそのものを書面にする場面なら、誓約書より借用書の形のほうが項目がそろいます。借用書の書き方と返済予定表は借用書テンプレートと書き方で解説しています。収入印紙が要るかどうかは書面の内容で決まるため、印紙税額の早見表で確認してください。
個人間なら違約金を書けるが、上限と公序良俗に注意
労働基準法16条の違約金の禁止は、使用者と労働者の労働契約に関するルールです。個人同士の約束では、民法420条により当事者が損害賠償の額をあらかじめ決めることができ、違約金は賠償額の予定と推定されます。ただし、金額が不当に高い場合や、人の自由を過度に縛る約束は、民法90条(公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効)によって効力が否定されることがあります。
家族間・恋人間の誓約書のように、生活や人間関係そのものを縛る内容は、署名があっても守らせる手段が限られます。お金がからむ約束なら金額と期日を、それ以外なら「何をしないか」を具体的に書き、争いになりそうなときは弁護士に相談するのが確実です。
AIで誓約書を下書き・チェックする方法
テンプレートを自社の事情に合わせて直すときは、生成AIに下書きと点検を任せると早く進みます。社名や個人名は伏せ字にして入力し、出てきた文案は必ず人が条文と照らして確認してください。
あなたは労務に詳しい社会保険労務士です。
次の誓約書の条文を、従業員が会社に差し入れる形(宛名:株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 殿)で点検してください。
【点検すること】
1. 労働基準法16条(違約金・賠償額の予定の禁止)に反する条項がないか
2. 範囲が広すぎて効力が否定されそうな条項がないか
3. 語尾が「〜いたします」でそろっているか
問題のある条項は、理由と修正案を表にしてください。
【条文】
(ここに誓約書の本文を貼り付け)次の条件で、退職時の競業避止に関する誓約書の条文案を作ってください。
・対象者:【役職・担当業務】
・期間:退職日の翌日から【1年間】
・地域:【〇〇県内】
・禁止する業務:【在職中に担当した〇〇の業務と同種の業務】
・代償:【金〇〇円の支給】
経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」の6つの判断要素に照らし、弱い点があれば指摘してください。うまくいかない例として多いのが、「誓約書を作って」とだけ頼むことです。この頼み方だと、違約金の条項や無期限の競業避止が混ざった文案が出ることがあります。場面・対象者・期間を指定し、「労働基準法16条に反しないこと」と条件を付けると、使える文案に近づきます。
士業AIには、e-Gov法令データなどの公的情報を参照する法務特化AIと、就業規則や社内文書の下書きに使える汎用なんでもAIがあります。下書きは汎用AIで作り、条文に照らした確認は専門特化のAIで行う、という分担にすると効率的です。社労士事務所や総務・人事の担当者が日々の書類づくりにどう使えるかは、社労士・事務所スタッフ向けの士業AIの紹介ページにまとめています。
まとめ
- 誓約書は宛名・前文・誓約事項・日付・署名をそろえ、誓約事項は具体的に、守れる範囲で書く
- 違反時は「就業規則に従う」「法令に従い賠償責任を負う」まで。違約金・賠償額の予定は労働基準法16条で禁止
- 退職時の競業避止は期間(1年程度)・地域・業務を限定し、代償措置を用意する
- 身元保証書は極度額(金額)と5年以内の期間が必須。収入印紙は不要。電子で受け取るときも極度額への同意を記録に残す
- 「給与から差し引く」「直ちに解雇」などの条項は、署名があっても効力が限られる
- 入社時の誓約書は退職日から3年以上、身元保証書は保証期間が終わるまで保存する
本記事は2026年10月時点の法令・公的資料にもとづいています。誓約書の有効性は個別の事情で判断が分かれるため、具体的な事案は社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
参考文献
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第16条・第24条・第109条・附則第143条)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第56条)
- e-Gov法令検索「民法」(第90条・第152条・第420条・第446条・第465条の2・第522条)
- e-Gov法令検索「身元保証ニ関スル法律」
- e-Gov法令検索「労働契約法」(第15条・第16条)
- e-Gov法令検索「不正競争防止法」(第2条第6項)
- 経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」参考資料5 競業避止義務契約の有効性について
- 法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」(パンフレット)
- 厚生労働省「モデル就業規則について」
- 厚生労働省「副業・兼業」(副業・兼業の促進に関するガイドライン)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
- 法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」
- 警視庁「東京都暴力団排除条例について」
- 国税庁 No.7141「印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
よくある質問
書けません。労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。誓約書でも同じで、違反時は「就業規則に従い懲戒処分の対象となる」「法令の定めに従い損害賠償の責任を負う」といった書き方にとどめます。
身元保証は民法465条の2の個人根保証契約に当たるため、極度額(保証人が責任を負う上限額)を定めないと保証契約は効力を生じません。2020年4月1日施行の改正民法によるルールで、「金〇〇円」と金額で明確に書く必要があります。
身元保証ニ関スル法律により、期間を定めない場合は3年、定める場合も5年が上限です。5年より長く定めても5年に短縮されます。更新は可能ですが、更新後の期間も更新の時から5年を超えることはできず、保証人に不利な自動更新のような特約は無効とされます。
法律で年数の上限は決まっていません。経済産業省の資料は、判例上1年以内は肯定的に判断される例が多く、近年は2年を否定的に判断した例もあると整理しています。期間だけでなく、地域・対象業務の限定や代償措置の有無も含めて総合的に判断されます。
提出を拒んだことだけを理由とする懲戒や解雇は、労働契約法15条・16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が問われ、無効とされるおそれがあります。目的と内容を説明し、範囲が広すぎないか見直したうえで、判断に迷うときは社会保険労務士や弁護士に相談してください。

